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【働き方改革】行政による履行確保措置・裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

働き方改革では、非正規雇用労働者の待遇改善が大きな柱とされています。また、労働条件や不合理な待遇差をめぐる労使間のトラブルも増加しており、有効な解決方法の確立も求められてきました。

行政ADR等の規定の整備は、この問題を是正するための具体策です。本施策によって労働者の負担を減らしつつ、より幅広い労働問題を迅速に解決できると期待されています。

では、行政ADRとは具体的にどんな制度でしょうか。また、紛争の防止に向けて、事業主にはどのような対応が求められるのでしょうか。本記事で詳しく解説していきます。

働き方改革により紛争処理の規定が強化

働き方改革では、短時間労働者や有期雇用労働者、派遣社員といった非正規雇用労働者の待遇改善が大きな柱となっています。

その具体策として、行政による履行確保措置裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定が整備され、非正規雇用労働者の保護が広く図られることとなりました。また、ADRの対象事案も追加され、より手軽に行政手続きを利用できるようになりました。

具体的には、下表のとおり対象範囲が拡大されています。

短時間 有期 派遣
行政による履行確保措置 ○ → ○ × → ○ ○ → ○
行政ADR → ○ × → ○ × → ○

×:規定なし △:部分的に規定あり ○:規定あり
※均衡待遇は行政ADRの対象外

有期雇用労働者も行政による報告徴収・助言・指導等の対象に

これまで、行政による履行確保措置の対象はパートタイム労働者と派遣労働者のみであり、有期雇用労働者は対象外でした。つまり、契約社員の雇用管理に問題があっても、行政から事業主に報告を求めたり、助言・指導したりできなかったということです。

しかし、働き方改革により、有期雇用労働者も行政指導等の対象に含まれることとなりました。
これは、かつてパートタイム労働者の待遇を定めていた法律が改正され、有期雇用労働者まで法の適用範囲が拡大されたためです(パートタイム・有期雇用労働法)。

また、行政からの勧告にも従わない場合、企業名が公表される可能性があるため注意が必要です。

有期雇用労働者・派遣労働者に関わる行政ADRの規定を整備

行政ADRとは、労使間の紛争を裁判以外の方法で解決するための手続きです。
これまで、行政ADRに関する規定があったのは短時間労働者のみでしたが、法改正により、有期雇用労働者や派遣労働者も対象となりました。

これにより、有期雇用労働者や派遣労働者も、裁判手続きを経ることなくスムーズに労働トラブルを解決できるようになると期待されています。

均衡待遇・待遇差の内容・理由に関する説明も行政ADRの対象に

法改正では、行政ADRの対象事案も拡大されています。具体的には、公正な待遇の確保にかかわる以下2つの項目も行政ADRの対象に加わりました。

  • 均衡待遇
  • 待遇差の内容や理由に関する説明

なお、以前から行政ADRの対象だった短時間労働者も、均衡待遇に関する規定はありませんでした。対象事案が拡大したことで、紛争解決の選択肢も広がったことになります。

また、上記の2つは、働き方改革の柱である「同一労働同一賃金」を実現するために欠かせない要素です。行政ADRの拡大により、問題の見落としや紛争の悪化も防ぐことができるでしょう。

均衡待遇や不合理な待遇差の禁止とは

雇用形態による格差をなくすには、「均衡待遇」と「不合理な待遇差の禁止」がポイントです。
それぞれどんな考え方で、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。詳しくは以下のページをご覧ください。

不合理な待遇差の禁止の改正要点

改正の目的

今回の法改正の目的は、非正規雇用労働者の処遇改善労働生産性の向上といえます。

近年、働き方の多様化や不景気の影響により、非正規雇用労働者の割合は急激に増加しています。
その一方で、正社員との賃金格差やキャリアアップの機会が少ないなど様々な問題も浮き彫りとなっています。また、正社員との待遇差がある理由も明確にされず、非正規雇用労働者にとって不公平な状況が続いてきました。

少子高齢化による人手不足を解消するため、非正規雇用労働者の人材活用は大きなカギとなります。
そこで、待遇改善によって非正規雇用労働者のモチベーションアップや能力向上を図り、もって労働力の長期的な確保につなげることが狙いといえます。

また、行政ADRの整備もこれに起因しています。不合理な待遇差をめぐる労使間の紛争は増加しており、ADRによって柔軟な解決が期待できるためです(行政ADRの詳細は次項でご説明します)。

行政ADRとは

ADRとは、民事上の紛争を裁判以外の方法で解決する手続きです。このうち、独立の行政委員会や行政機関が行うものを行政ADRといいます。
不合理な待遇差などの労働紛争の場合、都道府県労働局が主体となるのが基本です。

行政ADRには、調停・あっせん・仲裁という3つの手続きがあり、いずれも労働問題に詳しい第三者が当事者の間に入り、紛争の解決を目指します。
ただし、「調停」は第三者が積極的に解決案を提示する一方、「あっせん」は当事者の自主的な解決をサポートするなど、進め方に違いがあります。

また、行政ADRのメリットは、裁判よりも迅速・柔軟に紛争を解決できるということです。また、無料で利用できるため、費用負担も抑えることができます。
さらに、裁判は外部に公開され、誰でも傍聴することができますが、ADRでは企業名や紛争の内容が非公開となります。そのため、企業や労働者のプライバシーを保護したうえで手続きを進めることが可能です。

使用者が講ずべき措置

労働者の雇用形態を確認し必要な措置を講ずる

行政ADRは有効な手段ですが、そもそも紛争が起きないようにするのが最善です。そこで、まずは自社で不合理な待遇差を確認・是正し、紛争の発生を未然に防ぎましょう。

具体的には、以下の流れで進めるのが効果的です。

  1. 法の対象となる労働者がいるか確認する
  2. 社員タイプごとに、待遇の違いがあるか確認する
  3. 待遇の違いがある場合、その理由を確認する
  4. 待遇差が「不合理でない」と説明できるようにする
  5. 不合理な待遇差があれば、改善策を決定・実行する

それぞれのステップの具体的な手順は、以下のページで解説しています。

  →働き方改革_雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(サブフロント)の「使用者が取り組むべきこと」へリンク(制作予定)
雇用形態に関わらない公正な待遇の確保|使用者が取り組むべきこと

説明義務の内容について理解

事業主は、非正規雇用労働者から説明を求められた際、正社員との待遇差の内容や理由を開示しなければなりません。これまで待遇に関する説明義務はありませんでしたが、働き方改革によって規定が設けられました。

また、パートタイム・有期雇用労働法の改正により、契約社員などの有期雇用労働者に対しても、雇入れ時の待遇説明をすることが義務付けられました。

  

では、説明方法などにもルールがあるのでしょうか。詳しくは以下のページで解説していますので、併せてご覧ください。

待遇に関する説明義務の強化の改正要点

紛争処理の注意点

行政ADRは、労働者の負担を減らし、紛争の円満な解決を図るための手続きです。したがって、事業主は、労働者が紛争処理の援助を申し出たこと調停を申し立てたことを理由に、当該労働者へ不利益な取扱いをすることが禁止されています。不利益な取扱いとは、以下のようなものです。

  • 解雇
  • 雇用契約を打ち切る(又は更新しない)
  • 降格や減給
  • 昇格や昇給、賞与にかかる人事考課で不利益な評価を行う
  • 不当な配置転換

また、労働者が待遇に関する説明を求めたことを理由に、不利益な取扱いをすることも禁止されているため注意が必要です。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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