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労働基準法における派遣元・派遣先の責任分担

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

派遣労働という働き方は、労働者と雇用契約を結んでいる派遣元会社、実際の業務遂行について労働者に対する指揮命令権をもつ派遣先会社と、複数の会社が絡むものです。

また、労働者を雇用する際は、使用者にはさまざまな責任が伴います。複数の会社がかかわる派遣労働という状況下では、どの責任を、いずれの会社が負うのでしょうか。

このページでは、派遣元もしくは派遣先が負う責任、またはその双方が共に負う責任について、詳しく解説します。

労基法における派遣元・派遣先の責任分担

労働基準法の適用がある条文と派遣元、派遣先の責任分担一覧表
適用条項 ()内は条文 派遣元 派遣先 備考
第1章 総則
均等待遇(3) 〇 〇
男女同一賃金の原則(4) 〇
強制労働の禁止(5) 〇 〇
中間搾取の排除(6) (何人も)
公民権行使の保障(7) 〇
第2章 労働契約
この法律違反の契約(13)
契約期間(14)
〇
労働条件の明示(15)
賠償予定の禁止(16)
〇
前借金相殺の禁止(17)
強制貯金(18)
〇
解雇制限(19)
解雇の予告(20,21)
〇 労働者の解雇権は派遣元
使用証明(22)
金品の返還(23)
〇
第3章 賃金
賃金の支払(24)
非常時払制(25)
〇
休業手当(26)
出来高払制の保障給(27)
〇
第4章 労働時間、休憩、休日及び休暇
労働時間(32~33) 〇 変形労働時間の定めは派遣元
休憩(34) 〇
休日(35) 〇
時間外及び休日の労働(36) 〇 36協定の締結・届出は派遣元
時間外
休日及び深夜の割増賃金(37)
〇
年次有給休暇(39) 〇
労働時間及び休憩の特例(40) 〇
適用の除外(41) 〇 監視断続業務の許可を含む
第6章 年少者
最低年齢
年少者の証明書(57)
〇
労働時間及び休日(60) 〇
深夜業(61) 〇
危険有害業務の就業制限(62)
坑内労働の禁止(63)
〇
帰郷旅費(64) 〇
第6章の2 女性
坑内労働の禁止(64の2) 〇
妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限(64の3) 〇
産前産後(65) 〇 休業に関するもの
産前産後(66) 〇 時間外・休日労働、深夜業に係るもの
育児時間(67) 〇
生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置(68) 〇
第7章 技能者の養成
従弟の弊害排除(69) 〇 〇
職業訓練に関する特例(70~74) 〇
第8章 災害補償
災害補償(75~87) 〇 いずれについても派遣元
第9章 就業規則
作成及び届出の義務(89)
作成の手続(90)
〇
制裁規定の制限(91) 〇
法令及び労働契約との関係(92) 〇
効力(93) 〇
第10章 寄宿舎
寄宿舎(94~96の3) 〇 いずれについても派遣元
第12章 雑則
法令等の周知、義務(106) 〇 〇 派遣先は就業規則を除く
労働者名簿(107)
賃金台帳(108)
〇
記録の保存(109) 〇 〇
第13章 罰則
罰則(117~120)
両罰規定(121)
〇 〇

労働基準法における派遣労働の特例適用

労働者派遣においては、原則として、労働者と雇用契約を結んだ派遣元会社が労働基準法に基づいて使用者としての責任を負います。ただし、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、労働者派遣法)」44条においては、派遣労働の労働基準法適用についての特例が規定されており、派遣労働という働き方に則して、また労働者保護の観点から、雇用主である派遣元会社が責任を負い得ない事項、就労先である派遣先会社が負うべき事項については、派遣先会社が使用者責任を負うものと定められています。

労働基準法以外の派遣元・派遣先が負う責任に関しては、以下のページで解説していますので、ご参照ください。

派遣労働における派遣元・派遣先の責任について

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派遣元・派遣先両方の責任

ここでは、派遣元・派遣先、どちらか一方ではなく、双方が負う責任について解説します。

均等待遇

派遣元会社・派遣先会社の双方が負う責任として、まず労働基準法上の均等待遇があります。同法は、『使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない(同法3条)』と定め、ここで述べられている事項を理由とした差別的取扱いを禁じています。これに違反すると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されるおそれがあります(同法119条1号)。

基本的人権にかかわるこのような規定は、派遣元・派遣先の双方が負わねば意味がなく、また、以下で説明する項目についても同様となります。

強制労働の禁止

強制労働の禁止もまた、派遣元・派遣先、双方が負う責任です。労働基準法では『使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない(同法5条)』と定めており、これに違反すると、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金に処されるおそれがあります(同法117条)。

中間搾取の排除

中間搾取に繋がる行為を行ってはならないという義務も、派遣元・派遣先の双方が負います。この義務は、労働基準法で『何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない(同法6条)』と明記されています。例えば二重派遣はこの禁止行為に該当し、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されるおそれがあります(同法118条)。

二重派遣の問題に関しては、以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。

派遣労働における二重派遣について

技能者の養成:徒弟制度の弊害排除

徒弟制度の弊害排除も、派遣元・派遣先の双方が責任を負います。この制度に関する労働者の呼び方は、徒弟や見習、養成工等とさまざまですが、労働基準法ではその呼称にかかわらず使用者責任が定められています。まず、「労働者が目標とする技術を取得するため」との理由に基づく労働者酷使の禁止です(同法69条)。また、『家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させてはならない(同法69条2項)』という禁止事項もあります。

雑則:法令等の周知義務

法令等の周知義務

労働基準法では、法律での定め及びそれを根拠とした命令や就業規則といった内容を、常に『各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること(同法106条)』、『書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない(同法106条)』と労働者への通知を定めています。作成しただけでは意味がなく、労働者へ知らせることでその意味をなすからです。

ただし、就業規則に関しては労働者は派遣元のものに従うため、派遣先ではなく、派遣元が責任を負います。

記録の保存

労働基準法109条では、『使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない』と、法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿のこと)等の保存を定めています。この義務は、派遣元・派遣先の双方が負います。違反した場合、30万円以下の罰金に処されるおそれがあります(労基法120条1号)。

罰則・両罰規定

労働基準法117条~120条では、均等待遇、強制労働の禁止、法令等の周知義務、記録の保存等、派遣元・派遣先の双方が責任を負う事項に対して、違反した場合の罰則を定めています。

また、121条では『この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する』と、違反行為の行為者だけでなく、事業主を処罰するための両罰規定を設けています。

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派遣元の責任

ここからは、派遣元が責任を負う労働基準法の定めについて解説します。

男女同一賃金の原則

使用者責任でのひとつである、『労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない(労基法4条)』という男女同一賃金の原則は、派遣元が負うものです。

派遣労働者が雇用契約を結ぶのは派遣元会社であり、賃金を支払うのもまた派遣元であるため、この責任は派遣元が負います。

労働契約

労働基準法違反の契約・契約期間

労働基準法13条では、労働基準法に違反する労働契約や労働条件は効力を持たないと定めています。

また、14条では、労働契約は期間の定めのないものを除き、3年(特定の業務に就く者を雇い入れる場合や、満60歳以上の者を雇い入れる場合には5年)を超える期間について締結してはならないと定めています。これらも、雇用主である派遣元が負うものです。

労働条件の明示・賠償予定の禁止

労働基準法15条では、『使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない』と労働条件の明示を義務づけています。

また、16条では『使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない』と賠償予定の禁止を定めています。ここでいう禁止事項とは、例えば退職の際に労働者に違約金を支払わせる契約等を指します。

これらも、派遣元が負う責任です。

前借金相殺の禁止・強制貯金

労働基準法17条では、『使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない』と、前借金相殺の禁止を定めています。これは、労働者に賃金を前貸しし、労働を強制することや退職を妨げること、前貸し分を給料から引くことを禁止したものです。

また、18条では『使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない』と強制貯金の禁止を定めています。

派遣労働者に賃金を支払うのは派遣元会社ですので、この責任は派遣元が負います。なお、労働者に支払う賃金は『通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない(労基法24条)』と定められています。

解雇制限・解雇の予告

労働基準法19条では解雇制限を、20条と21条では解雇の予告を定めています。

負傷や病気で休業している労働者の休業期間及びその前後30日間、産前産後の女性が休業する期間及びその前後30日間は、当該労働者を解雇することはできません。また、解雇する場合は30日前までに予告しなければならず、予告なしに解雇する場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を労働者に支払う必要があります。

派遣労働者が雇用契約を結んでいるのは派遣元ですので、これらの責任は派遣元が負います。

使用証明・金品の返還

労働基準法22条では、労働者退職時の派遣元の責任である、証明書の交付について定めています。労働者が『使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した』とき、派遣元はそれら証明書類の早急な交付義務を負うことになります。

また、23条では、労働者死亡や退職に伴い権利者から求めがあれば、7日以内に退職金などの労働債権を支払う必要があるという金品返還義務も定められています。

賃金

賃金の支払い・非常時払制

賃金の支払い方法に関しては、労働基準法24条にて、通貨で、直接その者に、その全額を、毎月1回以上という定めがあります。また、支払い期日の設定も必要です。加えて、25条では非常時払制について定められており、条件を満たす時は、期日の前でも該当労働者への賃金を支払う必要があるとしています。条件としては、『労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合』が挙げられています。

労働者への賃金の支払いは派遣元会社が行いますので、派遣元が負う責任です。

休業手当・出来高払制の保障給

休業手当に関しては、『使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない(労基法26条)』と定められています。

また、27条では、出来高払制やその他請負制で従事する労働者に対しての保障給というものを定めています。使用者は『労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない』とされており、出来高が少ない場合でも、労働時間に応じた賃金の支払いを保証することにより労働者の保護を図ることを目的としています。

労働時間・休憩及び休暇

労働時間に関して、詳細を以下のページで解説していますので、ぜひご一読ください。

労働時間について

時間外、休日及び深夜の割増賃金

労働基準法37条では、法定労働時間を超えた時間外労働、法定休日の労働、深夜労働に対して、使用者は割増賃金を支払わなければならないと定めています。時間外労働、深夜労働は25%以上の割増率、法定休日の労働は35%以上、1ヶ月に60時間を超えた時間外労働の分は50%以上の割増率となります。

派遣労働者が就労し、指揮命令を受けるのは派遣先会社ですが、時間外労働等の割増賃金を支払うのは派遣元ということになります。

年次有給休暇

年次有給休暇に関しては、労働基準法39条に定められています。雇用から6ヶ月経ち、全労働日の8割以上出勤している労働者には、10日間の有給休暇を与えなければなりません。また、6ヶ月経過した日を起算日とし、そこから1年経つごとに、継続勤務年数に応じて有給休暇の日数を加算しなければなりません。

有給休暇を付与するのは派遣先会社ではなく、派遣元会社となります。

年少者

最低年齢・年少者の証明書

労働基準法56条では、『使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない』と、労働させることができる対象者の下限年齢が定められています。

また、57条では『使用者は、満十八才に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない』と、年少者の証明書について定めています。これらの責任は、労働者と雇用契約を結ぶ派遣元が負います。

帰郷旅費

労働基準法64条では、帰郷旅費について定めています。解雇者が満18歳に達しておらず、かつ解雇より14日に満たない期間内で帰郷する場合、その費用を使用者が負担するというものです。

一方、但書では例外の条件が書かれており、同じく満18歳に達していない当該労働者が『その責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、この限りでない(同法64条)』と定められています。『責めに帰すべき事由』とは、例として横領による懲戒解雇等が挙げられます。

産前産後休業

女性の産前産後休業に関しては、労働基準法65条で定められています。産前は6週間、産後は8週間、女性を就労させることは禁止されています。また、妊娠中の女性が請求した場合、簡易な業務に転換させなければなりません。これらに関しては、派遣元が責任を負います。

なお、女性の産前産後休業に関しては以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

産前産後休業について

技能者の養成:職業訓練に関する特例

職業訓練に関する特例に関しては、労働基準法70条~73条に定められています。

労働基準法の保護規定の原則を固守してしまうと、職種によっては技能の習得や向上を図れない場合があります。

そこで、技能の取得・向上に必要な限度で、契約期間、年少者及び妊産婦等の危険有害業務の就業制限、年少者及び女性の坑内労働の禁止に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができます。

災害補償

労働基準法75条~87条に定められた災害補償に関しては、派遣元が責任を負います。

災害補償に関しての規定では、療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料、打切補償、分割補償、補償を受ける権利や、その例外等について定めています。

就業規則

就業規則全般に関しては以下のページで解説していますので、ぜひご一読ください。

就業規則について

作成及び届出の義務・作成の手続

労働基準法89条、90条では、作成及び届出の義務、作成の手続が定められています。これは、常時10人以上の労働者を雇用している事業場では、就業規則を作成し、労働者の過半数で構成される労働組合、または過半数の代表者の意見を聴取して添付し、労働基準監督署に届け出なければならないという決まりです。

派遣労働者は、派遣元会社の就業規則に従い、派遣元に労働組合がある場合には、その労働組合に所属することとなります。

制裁規定の制限

労働基準法91条は、使用者が制裁を下す際のルールを明記しており、この責任は派遣元が負います。

労働者への減給制裁を取り決めていることを前提とし、減給額は『一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない』という定めに従わなければなりません。

つまり、労働者のある行為に対して減給判断を下すのであれば、1日の平均賃金の2分の1以下、かつ、1周期分(一般的には1ヶ月分)の賃金総額の10分の1以下の額に設定する必要があります。

法令及び労働協約との関係

法令および労働協約との関係に関しての定め、『就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない(労基法92条)』に関しても、派遣元が責任を負います。

この「協約」とは、団体交渉における使用者と労働組合の合意内容を書面化したものを指します。労働基準法に違反する就業規則の取り決めは不可ですが、法令や労働協約違反に該当する内容を定めることも無効となります。無効となった部分は、労働基準法の定めに則します。

効力

労働基準法93条では、『労働契約と就業規則との関係については、労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第12条 の定めるところによる』と定めています。これは、就業規則に反する内容の労働契約は無効となり、就業規則で定める基準によることになります。

ただし、前項で述べたように、法令・労働契約に反する就業規則は無効となります。

寄宿舎

労働基準法94条で定められている寄宿舎生活の自治、95条で定められている寄宿舎生活の秩序、96条で定められている寄宿舎の設備及び安全衛生、96条の2、3で定められている監督上の行政措置に関しては、派遣元がその責任を負います。

寄宿舎とは、紡績工場や炭鉱場などに併設されていた、労働者が共同生活を送る場のことをいい、①独立または区画した施設であり、②常に相当数の労働者が宿泊しており、③共同生活実態がある(風呂やトイレが共同であり、起床・就寝時間の定め等のルールがあること)、この条件を満たしていると寄宿舎とみなされ、現在でいう“社宅”等とは区別されます。

雑則:労働者名簿・賃金台帳

労働基準法107条での労働者名簿、108条での賃金台帳といった定めに関しても、責任は派遣元にあります。

労働者名簿とは、労働者それぞれ(日々雇い入れられる者を除く)の個人情報、具体的には氏名や生年月日、住所等が事業場ごとに記入されたものです。派遣元はこれを作成し、更新が必要な場合は早急に記載内容を変更しなければなりません。

また、賃金台帳とは、賃金を計算するための基礎となる事項や賃金の額等を記すもので、派遣元は賃金の支払いごとにこれを遅滞なく記載しなければなりません。

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派遣先の責任

次項からは、派遣先が責任を負う労働基準法の定めに関して解説します。

公民権行使の保障

労働者の公民権を保障すべく、使用者は、労働基準法7条に記載されている『労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。』という定めに従わなければなりません。一方、但書として『権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる』と例外規定もあります。

ここでの「権利」の具体的内容としては、選挙権や最高裁判所裁判官の国民審査、住民投票、国民投票等が挙げられます。また公の職務の例としては、裁判員、検察審査員、労働審判員、民事訴訟法上の証人、労働委員会の証人、選挙立会人等があります。

労働時間・休憩及び休暇

労働時間全般に関しての解説は、以下のページをぜひご一読ください。

労働時間について

労働時間

労働時間の定めがある労働基準法32条、災害等を理由とし臨時で要する時間外労働等の定めがある33条の責任は、就労先である派遣先が負います。

労働基準法32条では、1日、1週間単位の労働時間の上限や、時間外労働、フレックスタイム制、賃金の清算等を定めています。

ただし、変形労働時間に関する定めに従う責任は、派遣元にあります。

休憩

労働基準法34条で定められた休憩に関しても、派遣先が責任を負います。

労働時間が6時間を超え、8時間未満のときは、少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、派遣先は労働者に与えなければなりません。

休日

『使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない』と定められている労働基準法35条に関しては、派遣先が責任を負います。ただし、4週間を通じて4日以上の休暇を与える場合は、この規定は適用されません。

時間外及び休日の労働

労働基準法36条では、時間外、及び休日の労働について定めており、これについては派遣先が責任を負います。1日8時間、1週間40時間以上、または法定休日に労働者に労働させる場合は、派遣元が締結・届出を行う「36協定」の枠内で、派遣先が各日の始業・就業時刻、休憩時間、深夜労働の有無等を管理し、具体的な労働時間の決定を行い、記録する義務を負います。

労働時間及び休憩の特例

労働基準法40条では、労働時間及び休憩の特例に関して定められており、この管理責任は派遣先が負います。これは特別な事情がある場合、労働基準法36条の定めが例外的に適用外になるというものですが、例えば手待ち時間が多い業種では、週の労働時間が44時間まで認められています。そのほか、旅客業、郵便業、接客娯楽業等の業種では、休憩を一斉に与えなくともよいという例外が認められています。

適用の除外

労働基準法41条では、労働時間、休憩、休日に関しての規定が適用されない例外を定めており、この管理責任は派遣先が負います。例外となっているのは、農業(林業を除く)、畜産、養蚕、水産、事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者(管理監督者)、機密の事務を取り扱う者、監視または断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたものです。この監視断続業務の許可を受ける責任も、派遣先にあります。

年少者

労働時間及び休日

労働基準法60条では、年少者の労働時間及び休日に関して定められています。満18歳未満の年少者には、1日8時間、1週間40時間を超えた時間外労働、休日労働をさせることは禁止されています。この責任は、派遣先が負います。

深夜業

労働基準法61条では、年少者の深夜業に関して定められており、この責任も派遣先が負います。満18歳未満の年少者には、午後10時から午前5時までのあいだの深夜労働をさせることは、原則禁止されています。

危険有害業務の就業制限・坑内労働の禁止

労働基準法62条では、18歳未満の年少者に機械の危険な部分の清掃やボイラー清掃等をさせてはいけないという、危険有害業務の就業制限を定めています。また、63条では年少者を坑内で労働させることを禁止しています。坑内の労働とは、地下での鉱山の採掘やトンネル工事などのことをいいます。

女性の労働

女性労働者の労働全般に関して、以下のページで解説していますので、ぜひご一読ください。

女性従業員の労働

坑内労働の禁止

労働基準法64条の2では、女性の坑内業務の就業制限について定めています。

妊娠中、もしくは申出のあった産後1年以内の女性を、坑内で行われる業務に就かせてはいけません。また、妊娠中・産後以外でも、坑内で行われる業務のうち、人力により行われる掘削の業務、その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるものに就かせることは禁止されており、この責任は派遣先が負います。

妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限

労働基準法64条の3では、妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限について定めており、この責任も派遣先が負います。

妊娠中、及び産後1年経過していない女性(妊産婦)については、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務等、厚生労働省で定める妊娠・出産・哺育等に有害な業務に就かせることはできません。また、妊産婦以外の女性に対しても、この制限は厚生労働省令で準用されます。

産前産後の時間外労働・深夜業

産前産後の時間外労働・深夜業に関しては、労働基準法66条で定められています。

使用者は、妊産婦からの請求があった場合、36協定を結んでいても、または変形労働制を採用していても、1日8時間、1週間40時間を超えて時間外労働、法定休日労働をさせてはなりません。

また、同じく妊産婦からの請求があった場合、午後10時から午前5時までの深夜労働をさせてはなりません。

これらの責任は、派遣先が負います。

育児時間

労働基準法67条では、「育児時間」について定められています。生後1年に満たない生児を育てる女性は、通常の休憩時間に加えて、1日2回、少なくとも30分ずつ、育児のための時間を請求することができます。また、この請求があったとき、使用者は育児時間中の女性に業務を命じてはなりません。

生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置

労働基準法68条では、使用者が行うべき「生理日における就業が著しく困難とされる女性への措置」が定められています。女性労働者から、生理日で就業が困難であることを理由とした休暇の請求を受けたときは、その日に就業させてはならないとするもので、いわゆる「生理休暇」の付与にあたります。

ノーワーク・ノーペイの原則により、休暇取得日の賃金については労働基準法上の規定がないことから無給としても問題ありませんが、有給と定めることに関しては自由です。この責任に関しても、派遣先が負います。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、企業法務担当執行役員を務め、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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