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2021年3月からの障害者雇用率制度について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

障害のある方の雇用を今よりも推し進めるための施策として、2021年3月1日から法定雇用率が引き上げられて、民間企業では2.3%になりました。

2020年の法定雇用率は2.2%でしたが、法定雇用率を達成した企業の割合は48.6%であり、法定雇用率の引き上げによってさらに悪化するおそれがあります。

このページが、法定雇用率の引き上げによって企業が受ける影響や対応を検討するだけでなく、企業が障害者雇用にどのように向き合うべきか、考えるきっかけとなれば幸いです。

障害者雇用率制度

「障害者雇用率制度」は、労働者のうちの“一定割合”以上、障害のある者を雇用することを企業等に義務付ける制度です(障害者雇用促進法43条1項)。
障害者は雇ってもらうのが難しい実態があるため、法定雇用率以上の割合で障害者の雇用を義務づけることにより、障害者の雇用機会を確保するために設けられています。

なお、【障害者雇用】に関する基礎知識・留意事項について広く知りたい方は、以下のページも併せてご覧ください。

障害者雇用

2021年3月からの雇用率引き上げについて

事業主区分 2021年2月以前の法定雇用率 2021年3月からの法定雇用率
民間企業 2.2% 2.3%
国、地方公共団体等 2.5% 2.6%
都道府県等の教育委員会 2.4% 2.5%

上記の表のように、2021年3月から法定雇用率が引き上げられました。この引き上げによって、対象となる事業主の範囲が、常時雇用している労働者の人数が「45.5人以上」から「43.5人以上」に拡大されました。

障害者を雇用する義務のある事業者は、毎年6月1日時点で雇用している障害者数をハローワークに報告しなければならず、義務を達成できなければ行政指導を受けるリスク等があります。

法定雇用率の対象となる労働者と障害の種類

障害者雇用率の算定対象となるのは、身体障害や知的障害、精神障害があるために、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者です。

てんかんにかかっている者等の例外はありますが、基本的には「障害者手帳」を持っていることが条件となります。

雇った障害者のうち、障害の程度が重い「重度身体障害者」や「重度知的障害者」については、1人の障害者について2人雇用していると扱うことができます。

対象となる障害 対象となる労働者
身体障害(身体障害者手帳)
  • 視覚障害
  • 聴覚又は平衡機能の障害
  • 音声機能
  • 言語機能又はそしゃく機能障害
  • 肢体不自由
  • 心臓やじん臓、呼吸器など内部障害がある人
知的障害(療養手帳等) 知的障害者判定機関(児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医、障害者職業センターなど)によって知的障害があると判定された人
精神障害(精神障害者保健福祉手帳)
※てんかん等、手帳があることを求められない障害もあります。
統合失調症、そううつ病又はてんかんにかかっている者のうち、症状が安定していて就労が可能な状態にある者

法定雇用率の対象となる事業主

2021年3月に法定雇用率が引き上げられたことに伴い、常用雇用している労働者が43.5人以上の事業主が対象となっています。
それまでは、常時雇用している労働者が45.5人以上の事業主が対象でした。

法定雇用率の変更により最も影響を受けるのは、常用雇用している労働者が43.5人以上45.5人未満の事業主でしょう。今日まで障害者雇用に関する取り組みがなかった場合、少なくとも障害者1人以上の雇用が必要であり、就業規則や施設設備の見直しなど、さまざまな面で改善を図らなければなりません。

グループ会社の場合

本来、企業ごとに法定雇用率を適用し、雇用するべき障害者の人数を算定するのが原則です。

しかし、「企業グループ算定特例(関係子会社特例)」という仕組みでは、一定の要件を満たす“企業グループ”であると厚生労働大臣に認められた場合に、グループ全体において実雇用率を合算することができます。

また、「特例子会社制度」は、障害者雇用の促進や安定を図ることを目的としています。このために、企業が子会社を設立して、厚生労働大臣から認定を受けた場合には、“特例として”、その子会社で雇用されている労働者を親会社が雇用しているとみなすことができます。

厚生労働大臣に認められるための要件については、下の表をご覧ください。

例外が認められるケース 親会社の要件 子会社の要件
企業グループ算定特例(関係子会社特例)
  • 関係子会社の意思決定機関を支配している(子会社の議決権の過半数を有する)こと。
  • 障害者雇用推進者を選任していること。
  • 各子会社の規模に応じて、1.2%以上の障害者雇用率を満たしていること。
  • ただし、中小企業については、次に掲げる人数以上の障害者を雇用していること。
    • 常用労働者数167人未満:要件なし
    • 常用労働者数167人以上250人未満:障害者1人
    • 常用労働者数250人以上300人以下:障害者2人
  • 施設の改善、指導員の配置等、適正に障害者の雇用管理を行うことができると認められること、またはほかの子会社が雇用する障害者の行う業務に関し、人的関係もしくは営業上の関係が緊密であること。
特例子会社制度 株主総会など、子会社の意思決定機関を支配していること。
  • 親会社からの役員派遣、出向があるなど、人的交流が密であること。
  • 雇用する障害者が5人以上で、かつ全労働者の20%以上を占めること。また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者、精神障害者の合計数割合が30%以上であること。
  • 施設の改善、指導員の配置等、障害者雇用の管理を適正に行うに足る能力があること。
  • その他、障害者雇用の促進・安定が確実に達成されると認められること。

事業所が複数ある場合

支店など複数の事業所を持つ企業では、事業所単位ではなく、企業全体で法定雇用率を満たしていれば問題ありません。

障害者の実雇用率について

自社の実際の障害者雇用率(=「実雇用率」)が、法定雇用率を上回っているかどうか確認するための算定方法を紹介します。

実雇用率の計算方法

次の計算式を用いて実雇用率を計算します。

(対象障害者である常用雇用労働者の人数+対象障害者である短時間労働者の人数×0.5+失業している障害者の人数)÷(常用雇用労働者の人数+短時間労働者の人数×0.5+失業者の人数)

障害者のカウント方法

障害の種類 週所定労働時間
30時間以上
(常用雇用労働者)
20時間以上30時間未満
(短時間労働者)
身体障害者 1人 0.5人
重度身体障害者 2人 1人
知的障害者 1人 0.5人
重度知的障害者 2人 1人
精神障害者 1人 0.5人(※例外あり)

法定雇用率を使った計算方法>の、常時雇用している労働者の総数をカウントするときと同じく、常用雇用労働者を1人、短時間労働者を1人につき0.5人とカウントするのがベースとなります。

障害のある方の場合、特に障害が重いとされる“重度身体障害者”と“重度知的障害者”については例外的に、常用雇用労働者1人につき2人分としてカウントし、短時間労働は、0.5人ではなく1人分としてカウントします。

なお、短時間労働者である“精神障害者”の例外的な措置については、次項で説明することとします。

精神障害者の特例措置

“精神障害者”の雇用促進を目的として、平成30年より目下のところ5年間※1は、以下の要件を満たす短時間労働者である“精神障害者”のカウント方法を、0.5人ではなく1人分としてカウントできるようになりました。

《要件》
(ア)①か②のどちらかに該当する方
  ①雇入れから3年以内
  ②精神障害者保健福祉手帳の取得から3年以内
(イ)令和5年3月31日までに雇入れられ、かつ精神障害者保健福祉手帳を取得した方

ただし、退職後3年以内に同じ事業主に再雇用された場合など、条件に該当しても対象とならないケースもあります。

※1:令和5年4月1日以降の取扱いについては、特例措置の効果等を考慮して、今後検討がなされる予定となっています。

必要障害者雇用数の計算方法

次の計算式に数字をあてはめることで、障害のある方を何人雇用すれば「法定雇用率」を満たすのか算定することができます。

常時雇用している労働者の総数 × 法定雇用率
※小数点以下は切り捨てとします。

例として、常用雇用労働者が150人、短時間労働者数50人の民間企業の場合を上記の式にあてはめてみましょう。

{150人+(50人 × 0.5)}× 2.3% = 4.025人

原則として、常用雇用労働者は1人、短時間労働者は1人につき0.5人とカウントします。端数は切り捨てになりますから、この例の民間企業では、障害のある方を「4人」以上雇用しなければならないことになります。

法定障害雇用率が未達成の場合の罰則

法定の障害者雇用率が未達成の場合には、次のようなペナルティを受けるリスクがあります。

  • ①行政指導を受ける
  • ②企業名を公表されてしまう
  • ③納付金を納めなければならなくなる

これらのペナルティについて、以下で解説します。

ハローワークによる行政指導

実雇用率の低い企業に対しては、ハローワークから、翌年1月を始期とする2年間の雇入れ計画を作成するよう命じられます。
この計画を着実に実行することによって、障害者雇用を推し進めるよう行政指導が行われます。

企業が計画通り実行しない、あるいは計画の進みが思わしくないといった場合には、1年目の12月に「雇入れ計画の適正実施勧告」がなされ、特にその傾向が顕著な企業には、計画終了後に9ヶ月間の「特別指導」が行われます。

企業名の公表

ハローワークからの「雇入れ計画の適正実施勧告」に従わず、企業名の公表を前提とした「特別指導」を行った企業において、なお障害者の雇用状況に改善が見られない場合には、「企業名の公表」がなされるおそれがあります。

障害者雇用納付金制度により納付金を納める

障害者を雇用した場合、作業施設や職場環境の整備等、経済的な負担がかかることが多いです。そのため、障害者を多く雇用している企業の経済的負担を減らすこと等を目的として、「障害者雇用納付金制度」が設けられました。

法定雇用率を達成しておらず、常時雇用している労働者が100人を超える企業については、不足する障害者雇用者数に応じた納付金(=1人につき月額5万円)を支払う必要があります。

法定雇用率を上回る障害者を雇っている企業には、障害者雇用率未達成の企業から徴収した納付金を原資として、調整金や報奨金が支給される仕組みとなっています。

業種による除外率制度

障害のある方の就労が難しい職務を扱う企業に対して、一律に法定雇用率を適用するのは難しいと考えられたため、「除外率制度」が設けられました。
これは、障害者の就業が難しい業種については、“常時雇用している労働者の総数”から除外率に相当する労働者数を差し引くことができる制度です。

しかし、ノーマライゼーション(障害者が障害のない人と同じように生活できる社会にしようという考え方)の観点から、2004年に「除外率制度」の廃止が決定しました。当面の間は経過措置として、業種ごとに除外率が設けられていますが、廃止に向けて段階的に引き下げられています。

障害者の雇用状況の報告を怠った場合

常時雇用している労働者が43.5人以上の企業には、毎年6月1日時点の対象障害者の雇用状況をハローワークに報告する義務がありますが、報告を怠った、あるいは虚偽の報告をした場合には、罰金が科せられます。

障害者雇用に関する届出を怠った場合の罰則規定についての詳しい解説は、以下のページに譲ります。ぜひ併せてご覧ください。

障害者雇用の届出
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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