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障害者の雇用率について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

このページでは、障害者雇用について理解を深めるためのキーポイントとなる【雇用率】について解説していきます。

障害のある方の雇用をさらに推し進めるための施策として、法律で定められた【雇用率】が引き上げられたことも記憶に新しいですが、この改正によって企業が受ける影響、対応を検討するだけでなく、企業が障害者雇用にどのように向き合うべきか、考えるきっかけとなれば幸いです。

障害者雇用率制度

「障害者雇用率制度」は、労働者のうちの“一定割合”以上、障害のある者を雇用することを企業等に義務付ける制度です(障害者雇用促進法43条1項)。

なお、【障害者雇用】に関する基礎知識・留意事項について広く知りたい方は、以下のページも併せてご覧ください。

障害者雇用

法定雇用率について

障害者を何人雇用すれば“一定割合”の雇用を達成することができるのか計算する基準となるのが、「法定雇用率」です。

障害者雇用促進法は、障害者について、常時雇用している労働者の“一定割合”、すなわち「法定雇用率」以上の人数を雇用することを民間企業や国、地方公共団体等に求めています。

常時雇用している労働者とは、1年を超えて雇用されている、あるいは雇用されることが見込まれる週20時間以上勤務する労働者のことをいいます。正社員など雇用期間の定めのない労働者のみならず、パートタイマーやアルバイトなど期間の定めのある労働者でも、雇用期間が反復更新され、事実上期間の定めのない場合と同視できる労働者も含まれます。

なお、このページでは、計算等の際に区別がしやすいよう、常時雇用している労働者を「常用雇用労働者(週30時間以上勤務)」と「短時間労働者(週20時間以上30時間未満勤務)」の総数として説明していきます。

では、「法定雇用率」とは具体的にどの程度の割合のことをいうのか見ていきましょう。

令和3年2月以前の法定雇用率

「民間企業」「国、地方公共団体等」「都道府県等の教育委員会」の事業主区分別に、法定雇用率は異なります。平成30年4月から令和3年2月以前の雇用率は、下表の法定雇用率を後述する計算に用いることになります。

事業主区分 法定雇用率
民間企業 2.2%
国、地方公共団体等 2.5%
都道府県等の教育委員会 2.4%

令和3年3月から雇用率が引き上げに

令和3年3月1日より、法定雇用率は0.1%ずつ引き上げられました。

事業主区分 法定雇用率
民間企業 2.3%
国、地方公共団体等 2.6%
都道府県等の教育委員会 2.5%

令和3年1月に法定雇用率の引き上げが行われる予定だったものの、新型コロナウイルス流行による雇用状況悪化の影響を受けて、引き上げの時期が2ヶ月後ろ倒しになりました。企業はこの引き上げを受けた対応が求められます。

なお、法定雇用率は5年に1度見直されることが予定されています。

法定雇用率を使った算定方法

次の計算式に数字をあてはめることで、障害のある方を何人雇用すれば「法定雇用率」を満たすのか算定することができます。

《計算式》
常時雇用している労働者の総数 × 法定雇用率

※小数点以下は切り捨てとします。

例として、常用雇用労働者が150人、短時間労働者数50人の民間企業の場合を上記の式にあてはめてみましょう。

{150人+(50人 × 0.5)}× 2.3% = 4.025人

原則として、常用雇用労働者は1人、短時間労働者は1人につき0.5人とカウントします。端数は切り捨てになりますから、この例の民間企業では、障害のある方を「4人」以上雇用しなければならないことになります。

法定雇用率の対象となる障害者

障害者雇用率の算定対象となるのは、以下にあげるような障害があり、心身の障害があるために、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者で、基本的には“障害者手帳”を持っていることが条件となります。

  • 身体障害(身体障害者手帳)
  • 知的障害(療養手帳等)
  • 精神障害(精神障害者保険福祉手帳)※てんかん等、手帳があることを求められない障害もあります。

法定雇用率の対象となる事業主

法定雇用率が2.2%(令和3年2月以前)の場合、常用雇用している労働者が45.5人以上いる事業主が障害者雇用義務の対象でした。しかし、令和3年3月に法定雇用率が引き上げられたことに伴い、常用雇用している労働者が43.5人以上の事業主に対象範囲が拡張しました。

法定雇用率の変更により最も影響を受けるのは、常用雇用している労働者が43.5人以上45.5人未満の事業主でしょう。今日まで障害者雇用に関する取り組みがなかった場合、少なくとも障害者1人以上の雇用が必要であり、就業規則や施設設備の見直しなど、さまざまな面で改善を図らなければなりません。

グループ会社の場合

本来、企業ごとに法定雇用率を適用し、雇用するべき障害者の人数を算定するのが原則です。

しかし、一定の要件を満たす“企業グループ”として厚生労働大臣に認められた場合に限り、グループ全体で実雇用率を合算することができます。この仕組みを、「企業グループ算定特例(関係子会社特例)」といいます。

《親会社の要件》

  • 関係子会社の意思決定機関を支配している(子会社の議決権の半数を有する)こと。
  • 障害者雇用推進者を選任していること。

《関係子会社の要件》

  • 各子会社の規模に応じて、1.2%以上の障害者雇用率を満たしていること。
  • ただし、中小企業については、次に掲げる人数以上の障害者を雇用していること。
    • ・常用労働者数167人未満:要件なし
    • ・常用労働者数167人以上250人未満:障害者1人
    • ・常用労働者数250人以上300人以下:障害者2人
  • 施設の改善、指導員の配置等、適正に障害者の雇用管理を行うことができると認められること、またはほかの子会社が雇用する障害者の行う業務に関し、人的関係もしくは営業上の関係が緊密であること。

特例子会社制度

特例子会社制度」は、障害者雇用の促進や安定を図ることを目的としています。この実現のために、企業が障害者雇用について特別の配慮を講じた子会社を設立し、以下で挙げるような一定の要件を満たしていることが厚生労働大臣から認定された場合に、“特例として”、その子会社で雇用されている労働者を親会社の雇用とみなし、実雇用率を算定できるという制度です。

《親会社の要件》
・株主総会など、子会社の意思決定機関を支配していること。

《子会社の要件》

  • 親会社からの役員派遣、出向があるなど、人的交流が密であること。
  • 雇用する障害者が5人以上で、かつ全労働者の20%以上を占めること、また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者、精神障害者の合計数割合が30%以上であること。
  • 施設の改善、指導員の配置等、障害者雇用の管理を適正に行うに足る能力があること。
  • その他、障害者雇用の促進・安定が確実に達成されると認められること。

事業所が複数ある場合

支店など複数の事業所を持つ企業では、事業所単位ではなく、企業全体で法定雇用率を満たしていれば問題ありません。

業種による除外率制度

障害のある方の就労が難しい職務を扱う企業に対し、一律に法定雇用率を適用することは適切でないとして、一般的に障害者の就業が困難と認められる業種については、障害者雇用義務を満たす人数の算定にあたり、“常時雇用している労働者の総数”から除外率に相当する労働者数を差し引くことができる「除外率制度」が設けられていました。

しかし、ノーマライゼーション(障害者が障害のない人と同じように生活できる社会にしようという考え方)の観点から、平成16年に「除外率制度」の廃止が決定しました。当面の間は経過措置として、除外率設定業種ごとに除外率が設けられていますが、廃止に向けて段階的に除外率の引き下げが行われる予定です。

実雇用率について

2-3 法定雇用率を使った算定方法>では、自社が“障害者雇用義務を満たす人数”を算定するための計算式を紹介しました。今度は、自社の実際の障害者雇用率(=「実雇用率」)が、法定雇用率を上回っているかどうか確認するための算定方法を紹介します。

実雇用率の算定方法

次の計算式を用いて実雇用率を計算します。

(対象障害者である常用雇用労働者の人数+対象障害者である短時間労働者の人数×0.5+失業している障害者の人数)÷(常用雇用労働者の人数 + 短時間労働者の人数×0.5 + 失業者の人数)

障害者のカウント方法

障害の種類 週所定労働時間
30時間以上
(常用雇用労働者)
20時間以上30時間未満
(短時間労働者)
身体障害者 1人 0.5人
重度身体障害者 2人 1人
知的障害者 1人 0.5人
重度知的障害者 2人 1人
精神障害者 1人 0.5人(※例外あり)

2-3 法定雇用率を使った算定方法>の、常時雇用している労働者の総数をカウントするときと同じく、常用雇用労働者を1人、短時間労働者を1人につき0.5人とカウントするのがベースとなります。

障害のある方の場合、特に障害が重いとされる“重度身体障害者”と“重度知的障害者”については例外的に、常用雇用労働者1人につき2人分としてカウントし、短時間労働は、0.5人ではなく1人分としてカウントします。

なお、短時間労働者である“精神障害者”の例外的な措置については、次項で説明することとします。

精神障害者の特例措置

“精神障害者”の雇用促進を目的として、平成30年より目下のところ5年間※1は、以下の要件を満たす短時間労働者である“精神障害者”のカウント方法を、0.5人ではなく1人分としてカウントできるようになりました。

《要件》
(ア)①か②のどちらかに該当する方
  ①雇入れから3年以内
  ②精神障害者保険福祉手帳の取得から3年以内
(イ)令和5年3月31日までに雇入れられ、かつ精神障害者保険福祉手帳を取得した方

ただし、退職後3年以内に同じ事業主に再雇用された場合など、条件に該当しても対象とならないケースもあります。

※1:令和5年4月1日以降の取扱いについては、特例措置の効果等を考慮して、今後検討がなされる予定となっています。

実雇用率が法定雇用率を下回る場合

ハローワークによる行政指導

実雇用率の低い企業に対しては、ハローワークから障害者の「雇入れ計画作成命令」が出され、この計画を着実に実行することによって障害者雇用を推し進めるよう行政指導が行われます。企業が計画通り実行しない、あるいは計画の進みが思わしくないといった場合には「雇入れ計画の適正実施勧告」がなされ、特にその傾向が顕著な企業には、「特別指導」が行われます。

企業名の公表

ハローワークからの「雇入れ計画の適正実施勧告」に従わず、企業名の公表を前提とした「特別指導」を行った企業において、なお障害者の雇用状況に改善が見られない場合には、「企業名の公表」がなされるおそれがあります。

納付金の徴収

法定雇用率を達成しておらず、常時雇用している労働者が100人を超える企業については、不足する障害者雇用者数に応じた納付金(=1人につき月額5万円を支払う必要があります。

障害者を雇用した場合、作業施設や職場環境の整備等、経済的な負担がかかることがあります。そのため、障害者を多く雇用している企業の経済的負担を減らすことなど目的として、「障害者雇用納付金制度」が設けられました。

法定雇用率を上回る企業には、障害者雇用率未達成の企業から徴収した納付金を原資として調整金報奨金が支給される仕組みとなっています。

調整金の支給

障害者雇用調整金

常時雇用している労働者の人数が100人以上の企業で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合には、超過分の人数に応じた障害雇用調整金(=1人につき月額2万7000円)が支給されます。

報奨金

常時雇用している労働者の人数が100人以下の企業で、各月の雇用障害者の年度間合計数が次の(ア)・(イ)のどちらか多い方を超えている場合は、その一定数を超えて雇用している障害者の人数に応じて報奨金(=1人につき月額2万1000円)が支給されます。

(ア) 各月の[常時雇用している労働者の人数×4%]の年度間合計数
(イ) 72人

報告を怠った場合の罰則規定

常時雇用している労働者が43.5人以上の企業には、毎年6月1日時点の対象障害者の雇用状況をハローワークに報告する義務がありますが、報告を怠った、あるいは虚偽の報告をした場合には、罰金が科せられます。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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