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労働者が守るべき職務専念義務と服務規律

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

職務専念義務とは、簡単に言うと「仕事中は業務に集中しなければならない」という義務です。この義務は、労使間で労働契約を締結した時点で発生すると考えられています。

ただし、どの程度まで職務に専念すべきなのか不明確だと、様々な労働トラブルを招くおそれがあります。また、職務専念義務違反を理由に懲戒処分しようにも、違反行為の程度によっては認められないこともあります。

そこで、会社としては、職務専念義務の範囲を明確にし、労働者に周知しておくことが重要です。規定方法や懲戒処分が認められる条件について、本記事で解説していきます。

職務専念義務とは

職務専念義務とは、「労働者は就業時間中、使用者の指揮命令下で職務に専念する義務」のことをいいます。つまり、仕事中は業務に集中し、私的行為は控える必要があるということです。

労働契約では、労働者は職務専念義務を負い、会社は賃金支払義務を負うとされています。そのため、労働者が就業時間中に、業務と関係のない行為をしていれば職務専念義務違反ということになります。

なお、職務専念の対象となるのは身体活動の面に限りません。
過去の裁判例では、精神的活動の面で、注意力の全てが職務遂行に向けられていなかったことを職務専念義務違反としたものもあります(最高裁 昭和52年12月13日第三小法廷判決、目黒電報電話局事件ほか)。

職務専念義務の法的根拠

職務専念義務は、必ずしも法律で明文化されているわけではありません。ただし、公務員民間企業の労働者かによって法的根拠の有無が異なるため注意が必要です。
それぞれどのように規定されているのか、以下でご説明します。

公務員の場合

公務員の場合、国家公務員法や地方公務員法によって職務専念義務が明文化されています。そのため、業務中に私的なメールをやりとりしたり、ネットを閲覧したりする行為は職務専念義務違反となり得ます。

ただし、以下の状況では職務専念義務が免除されます(職務免)。

  • 休憩時間、休日、年次有給休暇
  • 懲戒による停職
  • 組合に専従することによる休職
  • 育児休業、時短勤務

つまり、一般的な「年休」や「育休」も、公務員においては「職務免」に分類されることになります。

民間労働者の場合

民間企業の労働者の場合、職務専念義務が明文化された法律はありません。

ただし、職務専念義務は労働契約締結により当然に存在するもの考えられています。
つまり、わざわざ明文化しなくても、労働契約の締結と同時に職務専念義務も発生するということになります。

「職務専念」の程度について

職務専念義務があっても、すべての私的行為を制限するのは望ましくありません。例えば、トイレや給湯室に行くための離席まで制限するのは、違法と判断される可能性があります。
一方、タバコ休憩や私用の電話については、“許可制”にするなど制限しても問題ないでしょう。

なお、裁判例では、実際に業務に支障が出ていなくても、職務怠慢行為があったことで職務専念義務違反が認められる傾向があります。
また、会社のパソコンを使ってアダルトサイトに登録したり、大量の私的メールを送受信したりと悪質性が高い場合、懲戒解雇が認められる可能性もあります(福岡高等裁判所 平成17年9月14日判決、K工業技術専門学校事件など)。

職務専念義務が違法となる場合とは

業務命令の内容に合理性がない場合や、業務とは無関係の命令をした場合、当該命令は違法となり得ます。例えば、以下のようなケースは違法と判断される可能性があります。

  • 本来の業務とは無関係の仕事を命じた
  • 容姿がそれほど重視されない職種の社員を、髪色や服装を理由に解雇した
  • 高所作業で命綱の使用を禁止するなど、生命に危険が及ぶ仕事を命じた

違法な業務命令をした場合、労働者の職務専念義務違反を主張することはできません。

職務専念義務違反に対する処分

職務専念義務に違反した労働者は、懲戒処分の対象になり得ます。
ただし、就業規則の懲戒規定で定められていることが前提です。例えば、「勤務時間中に私的行為をした場合、懲戒処分をすることがある」などと規定しておく必要があります。

さらに、就業規則に規定があっても、懲戒処分が必ず認められるとは限りません。

労働者の行為やその他の事情を踏まえ、懲戒処分に合理性・相当性が認められない場合、懲戒権の濫用にあたり当該処分は無効となります(労働契約法15条)。
例えば、勤務時間中に私的メールを数回だけやりとりしても、悪質性が低いため懲戒処分が否定される傾向があります。

一方、何度注意しても私的行為をやめない場合、けん責などの処分も認められるでしょう。

懲戒処分における注意点は、以下のページでも詳しく解説しています。

懲戒処分とは|種類や懲戒処分の行う際の手順について

違反か否かの判断基準

「職務専念義務違反にあたるかどうか」は、以下2つの考え方があります。

  • ①具体的専念義務説
    本来の業務に支障がない限り、職務専念義務違反にならない
    →本来の業務と両立できていれば、勤務時間中の私的行為も認められる
  • ②包括的専念義務説
    支障の有無にかかわらず、職務怠慢行為があった時点で職務専念義務違反が成立する
    →勤務時間中は職務にのみ従事しなければならず、私的行為は認められない

なお、実際の裁判では、「②包括的専念義務説」がとられる傾向があります。

職務専念義務違反にあたる事例

では、具体的にどんな行為が職務専念義務違反にあたり、懲戒処分の対象となるのでしょうか。代表的なのは、以下の3つです。

  • 政治活動
  • 組合活動
  • 宗教活動
  • インターネットの私的利用

以下でそれぞれ解説していきます。

政治活動

政治活動とは、政治上の目的をもって行うすべての行為をいいます。例えば、以下のような行為です。

  • 特定の政治家を普及宣伝し、投票を促すこと
  • 政策に反対するプレートを掲げ、訴えかけること
  • 政党や政策に関する文書を作成し、配布すること

勤務時間中に政治活動を行った労働者は、就業規則の懲戒規定に基づき、懲戒処分とすることが可能です。また、休憩時間や終業後の政治活動についても、企業秩序を乱すおそれがあるため、懲戒処分の対象になり得ます。

ただし、他の労働者への影響や使用者の対応の経緯などを踏まえ、企業秩序を乱す可能性が低いものについては、就業規則違反にはあたらないため注意が必要です。

なお、政治活動が懲戒事由に含まれていないという会社もあるでしょう。
この場合も、労働契約上の職務専念義務は認められますので、勤務時間中は職務に集中するよう注意・指導することは問題ありません。

組合活動

組合活動とは、労働組合の集会や組織活動、ビラ配布、組合ニュースの作成・配信などが挙げられます。
かつて、これらの組合活動が正当なものであれば、懲戒処分は無効と判断されてきました。

しかし、近年の裁判例では、勤務時間中の組合活動は職務専念義務違反にあたるとして、懲戒処分の有効性が認められる傾向にあります(ただし、就業規則や労働協約に許容規定がある場合や、労働慣行上許されている場合、懲戒処分は認められません)。

また、勤務時間中に組合活動としてのリボンやゼッケンを着用する行為も、企業秩序を乱すおそれがあるため、職務専念義務及び服務規律違反にあたると判断されています。この場合、当該労働者に着用禁止や取外しを命じることも可能です。

宗教活動

勤務時間中の宗教活動も、職務専念義務違反にあたります。宗教活動とは、自身が信仰する宗教を布教したり、勧誘したりする行為です。

 

これらの行為は、職務とは関係ない私的活動ですので、職務専念義務違反にあたります。
また、他の労働者の業務進行を妨げたり、企業秩序を乱したりするおそれがあるため、服務規律違反にあたる可能性もあります。また、懲戒事由に定めがある場合、懲戒処分とすることもあり得ます。

ただし、日本では信教の自由(憲法20条)が保障されているため、勤務中の宗教活動を理由に、労働者が信仰する宗教を規制することはできません。

インターネット等の私的利用

インターネットの私的利用も、職務専念義務違反になり得ます。例えば、会社のパソコンでサイトを閲覧した場合や、私用のメールを送受信した場合です。また、自身の携帯やスマホを操作した場合も同様です。

これらの行為が就業規則上の懲戒事由に定められている場合、当該労働者を懲戒処分とすることもあり得ます。

一方、就業規則に定めがない場合、懲戒処分とするかは「私的行為の頻度・回数・時間」などを踏まえて個別に判断することになります。
例として、1日に数回だけメールを送受信したケースでは、懲戒処分が否定される可能性が高いでしょう。

一方、会社のパソコンで違法サイトに登録していたり、何度注意しても改善されなかったりする場合、懲戒処分が認められる可能性があります。

また、インターネットの私的利用を防ぐため、モニタリングを実施する会社もあるでしょう。
しかし、モニタリングはプライバシーの侵害を訴えられるおそれがあるため、調査方法や調査対象を就業規則で明確にしておくことをおすすめします。

副業・兼業は職務専念義務違反にあたるか?

副業や兼業が職務専念義務違反にあたるかは、ケースバイケースといえます。

そもそも、労働者には職業選択の自由(憲法22条)が保障されているため、会社が一方的に副業・兼業を禁止するのは難しいといえます。
そのため、就業規則に“副業・兼業禁止の規定”があっても、直ちに懲戒処分が認められる可能性は低いでしょう。

ただし、副業や兼業によって労務提供に支障が出ている場合、職務専念義務違反が認められる可能性があります。例えば、疲労で仕事中に居眠りしていたり、遅刻や欠勤が増えたりした場合です。

このような場合、就業規則(懲戒事由)に定めがあれば、懲戒処分にすることも可能です。

就業規則の服務規律に定める必要性

職務専念義務は、就業規則の服務規律に定めておくことをおすすめします。
「服務規律」とは、労働者が守るべきルールや義務のことで、行動規範のようなものです。

 

服務規律は必須事項ではありませんが、会社の秩序を守るために規定を設けるのが一般的です。また、服務規律の内容を具体的に定めることで、労働者とのトラブル防止につながるでしょう。

さらに、服務規律違反を懲戒事由に定めておくことで、懲戒処分の正当性も認められやすくなります。実際の裁判では懲戒処分の有効性が争いになりやすいため、きちんと根拠を定めておくと安心です。

服務規律の詳細は、以下のページをご覧ください。

服務規律の策定と労働者の遵守義務

服務規律の規定例

職務専念義務を服務規律として定める場合、以下のような規定を設けると良いでしょう。また、職務専念義務違反に該当する行為も具体的に明記することで、トラブル防止につながるでしょう。

〈規定例〉
【服務規律(職務専念義務)】
労働者は、就業時間中は職務のみに従事する義務を負い、以下に掲げる職務専念に関する事項を守らなければならない。

(1)就業時間中は許可なく職場を離れ、責務を怠ってはならない。
(2)就業時間中は、業務に関係ないサイトを閲覧したり、私的にインターネットを利用したりしてはならない。
(3)就業時間中に、政治活動、組合活動、宗教活動をしてはならない。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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