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災害発生時に企業が行うべき措置と再発防止対策

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働災害には、事業場における事故だけでなく、通勤途中や仕事に関する移動中等の事故で負傷する場合も含まれ、実際にこうした労働災害が発生した場合に使用者が行う措置や判断が重要であるといえます。また、使用者はもちろん、労働者に対しても労働災害発生時にとるべき行動を周知、教育することも重要になります。

本記事では、労働災害が発生した際に会社としてどのような措置をとるべきなのか、解説していきます。

労働災害発生の要因とそのリスク

労働災害とは、労働者が労務に従事したことによって被った死亡、負傷、疾病のことをいいます。

そして、労働災害の原因となるものには、作業中の火災等による事故リスクと、長時間労働による過労等の安全衛生リスクがあります。

このような労働災害が生じてしまうと、会社としては、業務が滞り、業務中止や倒産、イメージの低下等、損害を受けてしまうおそれがあります。そのため、労働災害についてよく理解し、リスクがあることを理解しておく必要があります。

メンタルヘルスの労災や、危険防止・有害業務についての詳細は、下記の各ページをご覧ください。

メンタルヘルスと労災
危険防止・有害業務について

労働災害発生時に問われる企業責任

労働災害発生時には、まずは被害が拡大しないよう、初期対応が重要となります。具体的には、被災した労働者の救出や他の労働者の退避、病院への搬送等、使用者としての措置を行う必要があります(労安衛法25条)。

また、会社には、労働者の安全に配慮する義務(労契法5条)があるので、労働災害が発生してしまった場合、安全配慮義務を怠ったととらえられ、刑事責任・民事責任、さらに社会的責任を問われるおそれがあります。

労働安全衛生法

(事業者の講ずべき措置)第25条

事業者は、労働災害発生の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させる等必要な措置を講じなければならない。

労働契約法

(労働者の安全への配慮)第5条

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

安全配慮義務の責任が問われた判例

実際に、使用者に安全配慮義務の責任が問われた判例をご紹介します。

【最高裁 昭和58年12月6日第3小法廷判決】

事件の概要
駐屯地に向けて自衛隊車両を走行させていた運転者が、道路交通法上の注意義務に違反した結果、車両がスリップして道路側に転落、転覆し、荷台に同乗していた隊員が車外に投げ出されて死亡しました。そこで、死亡した自衛隊員の遺族が、国の安全配慮義務違反を争い、損害賠償を請求した事案です。
裁判所の判断
裁判所は、国が公務員に対して負担する安全配慮義務は、国が公務遂行に当たって支配管理する人的及び物的環境から生じるべき危険の防止について信義則上負担するものであるとしました。そして、国は、自衛隊員を自衛隊の車両に乗車させる場合は、安全配慮義務として車両の整備を万全にし、危険を防止し、運転者として適任する者を選任し、運転する上で特に必要な安全上の注意を与えて車両の運行から生ずる危険を防止すべき義務を負うとしました。
しかし、運転者が道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、安全配慮義務の内容に含まれないとされたことから、本件では、国が同乗隊員に対して負担する安全配慮義務の不履行があったとすることはできないとされました。

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労働災害に関する規程の策定

事故によって負傷、疾病、死亡等の労働災害が生じるに至った場合、治療費や出勤できなかった期間の休業手当、慰謝料等の補償が必要となります。補償を行う際の基準を定めるのが、災害補償規定です。具体的な金額や、どのような場合にこの規定が該当するかといった内容を、就業規則として規程することが望ましいです。また、労働者に対して、こういった規程があることを周知することで、後々のトラブルを回避することができます。

それ以外にも、業務中に異常を発見した場合は必ず報告する等の義務を規程し、周知すると良いでしょう。

労働災害発生時に企業が講ずべき措置

労働災害発生時、災害の規模等によって異なりますが、まずは人命救助と二次災害の防止を優先的に行いましょう。また、救助にあたる者や災害拡大を防止する者の安全に関しても、特に注意しなければなりません。労働災害はいつ起きるか分からないですが、使用者や現場の責任者等が冷静に判断し、正確な指示ができるように心がけておく必要があります。

本項では、具体的に労働災害発生時に使用者が行う対応について、説明していきます。

労働災害発生時の対応

実際に労働災害が発生した場合、被災者の救護が最優先です。負傷した労働者を医療機関へ搬送するため救急車を呼び、労働基準監督署、警察へと通報します。また、二次災害を防ぐために、他の労働者への退避指示をし、事業場によっては機械等の緊急停止をします。さらに、火災が発生した場合は、消防にも通報したうえで、延焼の可能性の有無、有毒ガスが漏れていないか等を確認する必要があります。

労働災害状況・原因の調査

再発防止のためにも、災害状況や原因の調査が必要になるため、労働災害が発生した事故現場の状態は正確に残さなければなりません。警察署や労働基準監督署による現場検証が行われます。

また、労働災害の発生後、できるだけ早期に関係者への事情聴取をしなければなりません。事故処理等に追われがちですが、後回しにしてしまうと関係者の記憶が曖昧になってしまい、正確な状況を聴取できません。誰が、どのようにして労働災害を発生させたのか、事故直後の言動等は会社にとっても重要になるため、後回しせずに行うことが重要です。

労働基準監督署への届出

労働災害が発生し労働者が怪我や疾病にかかり、死亡もしくは休業した場合、労災事故報告書労働者死傷病報告書を労働基準監督署に提出しなければなりません(労安衛法97条)。これらの報告書は、災害発生後、遅滞なく提出しなければなりません(おおむね1週間から2週間以内)。

報告書に記載する事故の発生状況や内容等は、具体的に記載する必要があり、虚偽の記載をした場合や災害の報告をしなかった場合は罰金刑に処せられるため、正確な内容を記載するようにしましょう。

労働安全衛生法

(労働者の申告)第97条1項

労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

建設業等における救護措置

労働災害が起きた場合、適切な救護措置をとることが必要です。これは、どのような業種においても当てはまります。特に、建設業や政令等で定められている業種の使用者は、救護措置が必要になる労働災害に備えて、救護措置を講ずる必要があります(労安衛法25条の2)。ここでいう政令で定められている業種とは、➀ずい道等の建設の仕事で、出入り口からの距離が1000m以上の場所での作業や、深さが50m以上となるたて杭の堀削を伴うもの、➁圧気工法を用いた作業を行う仕事で、ゲージ圧が0.1メガパスカル以上の状態で行うもの、となっています(安全衛令9条の2)。

労働安全衛生法

(事業者の講ずべき措置等)第25条の2

建設業その他政令で定める業種に属する事業の仕事で、政令で定めるものを行う事業者は、爆発、火災等が生じたことに伴い労働者の救護に関する措置がとられる場合における労働災害の発生を防止するため、次の措置を講じなければならない。

一 労働者の救護に関し必要な機械等の備付け及び管理を行うこと。

二 労働者の救護に関し必要な事項についての訓練を行うこと。

三 前二号に掲げるもののほか、爆発、火災等に備えて、労働者の救護に関し必要な事項を行うこと。

労働安全衛生施行令

(法第二十五条の二第一項の政令で定める仕事)第9条の2

法第二十五条の二第一項の政令で定める仕事は、次のとおりとする。

一 ずい道等の建設の仕事で、出入口からの距離が千メートル以上の場所において作業を行うこととなるもの及び深さが五十メートル以上となるたて坑(通路として用いられるものに限る。)の掘削を伴うもの

二 圧気工法による作業を行う仕事で、ゲージ圧力〇・一メガパスカル以上で行うこととなるもの

労働災害時の出勤命令可否について

会社は、使用している労働者に対して、出社を命じる「業務命令権」があります。この権利は、規則等に明記がなくても労使関係であれば当然に命令できる権利です。対して、労働者も会社のこの権利に原則として応じなければならない義務があります。

しかし、地震等の自然災害により、出勤すると労働者の生命・身体に危険が及ぶおそれがある場合は、業務命令権の行使としての出勤命令に従わなくても良い場合があります。

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再発防止対策の実施

使用者は労働者が健康で安全に働けるようにする必要があります。そのため、万が一労働災害が起きてしまった場合は、再発防止に努めなければなりません。

再発防止対策としては、実際に起きた労働災害の経過や原因を把握し、分析することが大切になります。また、実際に働く労働者の意識を変える対策も必要です。本項では、使用者が行う労働災害の再発防止対策について説明していきます。

労働災害発生時の行動マニュアルの整備

労働災害は発生しないことが望ましいですが、気をつけていても起きてしまうことはあります。そこで、事故等が起きてしまった場合、どのように行動したら良いのか、マニュアルとして作成しておく必要があります。さらに、作成するだけでなく、日々の業務の変更等に合わせてマニュアルも変更していくことが重要となります。そして、マニュアルを労働者にきちんと周知させることも重要です。

事業継続計画(BCP)の策定

事業継続計画(BCP)とは、会社が自然災害等の緊急事態に遭った場合、事業の継続や早期復旧を可能とするための方法、手段等を取り決めておく計画のことです。緊急事態により、会社が稼働しなくなってしまうと、自社だけでなく他社にも損害が出るおそれがあるため、その事業を守るためにも事業継続計画は大切になります。

事業継続計画の策定をする際には、まず業務が停止した場合に全体に与える影響を分析するビジネスインパクト分析を行います。この分析は、早期復旧を目指して、優先順位を付ける等するためにも必要になります。さらに、リスクの洗い出しや事業継続計画を発動させる基準の明確化も必要です。

安全衛生教育の実施

使用者は、労働者の安全と健康を確保する義務があります。しかし、いくら使用者が安全に意識して取り組んでいても、労働者ひとりひとりの安全への意識がないと、事故や災害へつながってしまいます。使用者は、労働者に対して安全意識や危険に対する認識を高めるためにも、必ず安全衛生教育を行うようにしましょう。

詳しい安全衛生教育については、下記のページをご覧ください。

安全衛生教育の重要性

リスクアセスメントの導入

リスクアセスメントとは、作業における危険性又は有害性を特定し、既存の予防措置による災害防止効果を考慮したうえで、リスクを見積り、そのリスクに基づきリスクの除去又は低減の措置をとることをいいます。

リスクアセスメントについての詳細は、下記のページをご覧ください。

危険有害業務に関する規制

危険予知訓練の実施

危険予知訓練は、作業や職場に潜む危険性や有害性等の危険要因を発見し、職場等の状況が描かれたイラストシートを使用する等しながら、解決能力を高める訓練です。この訓練は、危険のK、予知のT、訓練(トレーニング)のTをとり、KYTと称されます。

実際のKYTの進め方としては、職場のさまざまな問題を解決するための手法である問題解決4ラウンド法と結びつけ、進めていきます。具体的なKYT4ラウンド法の訓練の進め方は、下図のとおりです。

ラウンド 危険予知訓練の
4ラウンド
危険予知訓練の進め方
1R どんな危険がひそんでいるか イラストシートの状況の中にひそむ危険を発見し、危険要因とその要因が引き起こす現象を想定して出し合い、チームのみんなで共有する。
2R これが危険のポイント 発見した危険のうち、これが重要だと思われる危険を把握して印、さらに皆の合意で絞り込み、印とアンダーラインをつけ「危険のポイント」とし、指差し唱和で確認する
3R あなたならどうする 印をつけた危険のポイントを解決するにはどうしたら良いかを考え、具体的な対策案を出し合う
4R 私達はこうする 対策の中から皆の合意で絞り込み、※印をつけ「重点実施項目」とし、それを実践するための「チーム行動目標」を設定し、指差し唱和で確認する

ヒヤリ・ハット活動の実施

ヒヤリ・ハットとは、結果として災害や事故に至らなかったものの、事故等が起きてもおかしくなかったような事象のことをいいます。

こうした事象を集め、分析することにより、業務にかかわる危険有害要因を把握できます。集まったヒヤリ・ハットを共有することで、対策と危険の認識を深めることができ、重大な事故を未然に防ぐことが可能になります。また、ヒヤリ・ハットの情報はできるだけ早く報告し、同じことを繰り返さないように労働者と共有をしましょう。

労働災害発生による労災認定について

労働者が業務中や通勤中に負傷したり、疾病にかかったり、死亡してしまったりした場合、当該労働者やその家族に対して国が使用者に代わって必要な補償をするというのが労災保険になります。正式には、労働者災害補償保険といわれます。

労災保険は、労働基準監督署長に労働災害と認められる必要があり、業務遂行性業務起因性という2つの要件を満たさなければなりません。

業務遂行性とは、使用者と労働者とに労働契約が認められたうえで発生した負傷や疾病等であることで、業務起因性は、業務と負傷・疾病等の間に因果関係があることを指します。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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