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解雇事由

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

解雇は自由にできるわけではありません。しかし、解雇を制限する規定はあっても、具体的にどのような場合に解雇ができるのか、ということを労働基準法は明確にはしてくれていません。解雇は、労働者にとって従業員たる地位そのものひいては収入源を喪失することになるので、深刻な事態を引き起こしかねません。解雇に伴うトラブルを未然に防止するためには、解雇が有効となるために必要な事情を知っておくことが重要です。

労働者の解雇における正当な解雇事由の必要性について

民法は、雇用契約に期間の定めのない場合については、各当事者はいつでも解約の申込みをすることができ、この場合において雇用契約は解約の申込み後2週間の経過によって終了すると定めています(民法627条1項)。この規定のみを見れば、使用者には解雇の自由が認められるかのように見えます。しかしながら、労働者は、解雇されると生活の基盤を失うのみならず、社会的にもさまざまな不利益を受けることから、労働契約法(以下、労契法とします。)は、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない限りは、その権利を濫用したものとして、無効とすると定めて(労契法16条)、使用者による解雇が制限されており、労働者を解雇するには正当な解雇事由が必要とされています。

就業規則による解雇事由の明示

平成15年7月4日法律第104号の労働基準法(以下、労基法とします。)の一部改正において、就業規則の作成・届出義務の対象事項として、「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」(労働基準法89条3項)が追加され、就業規則の必要的記載事項として、「解雇」が含まれることが明らかになりました。これにより就業規則の中に、解雇事由を記載しなければならないことが明確になりました。

解雇を行うにあたっては、まずは、就業規則において明示的な定めを根拠の有無を確認したうえで実施することになりますので、必要な解雇事由が就業規則に盛り込まれているか否かは、確認するほか、社内における問題が生じた場合には、今後の対策として、解雇事由への追加を検討する必要もあります。

解雇の種類

「解雇」とは、会社から社員に対して一方的に労働契約を終了させることをいい、3つの種類があります。

➀整理解雇
経営不振や天災事変等でやむを得ず事業を廃止、縮小するときに行われます。
➁普通解雇
病気や勤務怠慢等さまざまな理由で、社員として適格性が著しく低いと認定されたときに行われます。
③懲戒解雇
社員としてふさわしくない行動をし、会社秩序を著しく乱したときに行われます。
退職及び解雇

普通解雇における解雇事由

私傷病による就業不能

私傷病により業務遂行が困難になった者について、会社は、業務内容・勤務時間の配慮や、傷病欠勤、傷病休暇等の休職制度により療養の便宜と機会を与え、病状の回復・改善を待つのが通例です。しかしながら、療養による回復・改善の機会を十分に与えても、業務を遂行できるような回復がない場合には、就業規則の該当解雇事由に基づき、解雇を検討することになります。

勤務態度の不良、協調性の欠如

労働契約は、労働者が使用者の指揮命令に従って誠実に労務提供することが基本的要素になっています。誠実に労務提供するということは、使用者の指揮命令に従って労務を提供することであり、成果さえ出せれば自分勝手に働けば良いということではありません。特に、上司に反抗的であり指揮命令に従わない、正当理由のない遅刻、早退、無断外出による職務怠慢が認められれば、このような勤務態度の不良は契約内容違反として契約解消のための解雇事由となります。

また、会社は集団で労務を提供する「共働」の場ですから、会社運営の円滑な遂行のためには必然的に他の労働者との協調性が求められます。そのため、協調性が欠如するということは、労務提供に瑕疵がある、すなわち契約解消事由になります。

能力不足、成績不振

労務提供も単に働けば良いというものではなく、当該労働契約で約束された一定の成果を出す必要があります。したがって、能力不足を理由として当該労働契約において約束した一定の成果が出せない場合には、契約内容を守られていないため、能力不足や成績不振等も契約解消のための解雇事由になることがあります。

また、誠実に労務を提供するということは、労働契約で定められた労働時間を遵守するとともに、始業時刻や終業時刻の約束を守る必要があります。すなわち、欠勤、遅刻、早退等は契約違反であるので、それらの勤務成績不良についても契約解消事由になります。

懲戒解雇における解雇事由

懲戒解雇とは、社員として相応しくない行動をし、そのことによって著しく経営秩序を乱し、会社の運営に悪影響を及ぼした場合に懲戒を行使して解雇処分とするものです。

懲戒処分 懲戒解雇・諭旨解雇

法律に抵触する行為

就業規則においては、「法令に違反した場合」や「刑罰法規に反する行為を行い、その犯罪事実等が明らかになった場合」等が懲戒解雇の事由として定められていることがあります。

しかしながら、労働契約は、会社がその事業活動を円滑に遂行するに必要な限りでの規律と秩序を根拠づけるものにすぎず、労働契約に基づく労務提供以外の時間帯や労働者の私生活に対して使用者が支配できるわけではありません。たとえ、労働者の私生活上の行為において法令違反や犯罪行為が生じたとしても、事業活動に直接関連性を有するものや会社の社会的評価の毀損をもたらす場合に限って、のみが懲戒解雇になると考えるべきでしょう。

長期間の無断欠勤

無断欠勤は、それ自体では単なる債務不履行であって、直ちに懲戒解雇できるとはいえません。ただし、注意や指導を行ったにもかかわらず繰り返されたりすることで、それが就業に関する規律に反したり、職場秩序を乱したりしたと認められる場合には、懲戒解雇事由となり得ます。

重大な経歴詐称

労働契約は、労働者と使用者との間に継続的な関係をもたらすものです。重大な経歴の詐称は、会社秩序の根幹をなす会社と労働者間の信頼関係を破壊するものであり、懲戒解雇事由となり得ます。

実務上は、いかなる経歴が「重大」といえるかという点が問題となりますが、求人や面接の際に、求職者に求める能力や実績等が明らかにされている場合や、業務の内容から明確に必要とされる資格等が詐称されている場合等には、「重大」と評価されることが多いでしょう。

セクハラ、パワハラ

セクシュアルハラスメント・パワーハラスメントは、いずれも、職場内の環境を害する性的言動や優越的な関係を背景とした言動等を含んでおり、これらの行為は著しく経営秩序を乱し、会社の運営に悪影響を及ぼす場合があるため、多くの会社で禁止する旨が就業規則に明記され、懲戒解雇事由とされることが多くなっています。

ハラスメント セクハラ

整理解雇が有効となる解雇事由

整理解雇は経営者側の事情によるものですから、普通解雇や懲戒解雇以上に制約が多く、権利の行使や義務の履行にあたり、社会生活を営む者として労働者の信頼や期待を裏切らないよう誠意をもって解雇権を行使することが求められます。具体的には、

  1. 会社の維持・存続をはかるために人員削減の必要性があること
  2. 整理解雇を回避するための策を実行していること
  3. 解雇する人選基準が合理的であること
  4. 社員側に事情説明があること
という4つの要素を考慮して判断されます。

不当解雇とみなされる解雇事由とは

普通解雇と懲戒解雇のいずれであっても、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労契法16条)。

まず、客観的に合理的な理由とは、通常は就業規則に定められた解雇事由に該当する具体的に明らかな事由(誰が、いつ、どこで、どのような行為をし、それが就業規則に規定するどの条項に該当するか)の存在が求められます。

次に、客観的に合理的な理由が存在する場合であっても、解雇以外のほかの異動等の人事権の行使や、他の軽い処分が相当とされる場合、社会的相当性を欠くものとされます。

いずれの要件も非常に厳格に判断される傾向があるため、これまでにいかなる指導や改善を試みてきたのかという点や、解雇以外の手段が選択できないのかという点も検討しながら、解雇処分の実施に向けて解雇事由を正確に把握しておく必要があります。

解雇の妥当性が争われた裁判例

セガ・エンタープライゼス事件(東京地方裁判所 平成11年10月15日決定)を例に挙げて説明します。

労働者である原告は、被告会社に入社後、勤務態度等により被告から退職勧告を受けました。それに対して原告が応じなかったため、被告は就業規則の「労働能率が劣り、向上の見込みがない」との解雇事由に該当するとして解雇をし、原告が解雇の効力について仮処分を申し立てた事例です。

裁判所は、就業規則の当該規定は、平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能力が劣り、向上の見込みがないときでなければならないとして、解雇が有効となるわけではないとしました。したがって、労働能率が劣り、向上の見込みがない、積極性がない、自己中心的で協調性がない等としてなされた解雇を無効としました。

裁判例の傾向としては、能力不足による解雇については、その理由について具体的かつ解雇以外の手段による改善を尽くしたことの立証を求められる傾向にあるといえます。

解雇対象者への解雇予告について

使用者は労働者を解雇する場合、原則として解雇日の30日以上前の解雇予告をする必要があります。また、30日以上前に解雇予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労基法20条)。このことは、普通解雇であっても懲戒解雇であっても変わりません。ただし、労働者の責に帰すべき事由がある場合には、労働基準監督署に申請することにより、解雇予告の除外認定を受けることができます。

解雇予告
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