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変形労働時間制とは?メリット・デメリットを含めて分かりやすく解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

変形労働時間制は、業務量などに合わせて1日の労働時間を調整できる制度です。業務効率のアップや残業時間の削減、ワークライフバランスの実現など様々なメリットがあるため、導入する会社も増えています。

しかし、導入すると労働者を管理する手間が増える等のデメリットもあるため、よく検討してから導入しなければなりません。

本記事では、変形労働時間制の種類や導入方法、メリットやデメリット等について解説します。

変形労働時間制とは

変形労働時間制とは、業務量などに応じて労働時間を調整できる制度です。
そのため、繁忙期に労働時間を増やし、閑散期に減らすといった調整が可能となります。

「1ヶ月の所定労働時間:1日8時間×20日=160時間」のケースでご説明します。
通常は1日8時間・週40時間を超えた時点で残業代が発生しますが、変形労働制の場合、1ヶ月の労働時間が160時間以内なので残業扱いにはなりません。

変形労働時間制を導入した場合

労働時間のルールは、以下のページでも解説しています。

労働時間について

変形労働時間制でも残業代は発生する

変形労働時間制でも、一定期間で法定労働時間を超えた場合は残業代が発生します。そのため、1週間あたりの労働時間が40時間を超えた部分については、残業代(時間外労働割増賃金)を支払う必要があります。

また、就業規則で定めた労働時間を変更することはできません。
例えば、就業規則で所定労働時間が“7時間”と定められている日に“8時間”働いた場合、1時間分の残業代が発生します。
このとき、翌日の勤務を1時間減らして相殺したことにするといった対応は認められません。

変形労働時間制の種類

変形労働時間制は、次の期間を単位とします。

  • 1ヶ月単位
  • 1年単位
  • 1週間単位

これらの期間の変形労働時間制を導入するためには、定められた手続きを行わなければなりません。また、それぞれに労働時間の上限が定められています。
それぞれの違いについては、下の表でご確認ください。

労働時間の上限

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月単位の変形労働時間制の場合、該当月における1週間あたりの平均労働時間が40時間を超えないよう、1日の労働時間を設定していきます。

また、1ヶ月の所定労働時間の合計が、上限を超えないようにすることも必要です。この上限は、1ヶ月の日数によって下表のように異なります。

1ヶ月の日数 法定労働時間(40時間) 法定労働時間(44時間)
28日 160.0時間 176.0時間
29日 165.7時間 182.2時間
30日 171.4時間 188.5時間
31日 177.1時間 194.8時間

就業規則や労使協定で定める際は、上記のルールを守るようにしましょう。
なお、1週間の法定労働時間を44時間にできるのは、一定の要件(労働者の人数や業種)をクリアした特例措置対象事業場のみとなります。

1ヶ月単位の変形労働時間制の残業時間の計算方法

1ヶ月単位の変形労働制では、「1日」「1週間」「1ヶ月」それぞれで算定した時間の合計を“残業時間”とみなします。

①1日ごとの基準 所定労働時間が8時間を超えている場合
→所定労働時間を超えた分はすべて“残業時間”
所定労働時間が8時間以内の場合
→8時間を超えた分が“残業時間”
②1週間ごとの基準
(①で残業時間にカウントした部分は含まない)
所定労働時間が40時間を超えている場合
→所定労働時間を超えた分はすべて“残業時間”
所定労働時間が40時間以内の場合
→40時間を超えた分が“残業時間”
③1ヶ月全体の基準
(①、②で残業時間にカウントした部分は含まない)
月ごとの法定労働時間(1ヶ月の日数により異なる)を超えた分はすべて“残業時間”

したがって、①~③の合計が、当該期間における“残業時間”となります。

1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制とは、1ヶ月以上1年以内の期間を対象に、1週間あたりの労働時間の平均を40時間以内に収めるものです。
例えば、1~3月の所定労働時間を“1日10時間”にし、4~6月を“1日6時間”にするといった調整が可能です。

会社カレンダーを作成し、始めから1年間全日の労働時間を決めることもできますが、1年後のスケジュールまで設定するのは難しいこともあるでしょう。
そこで、1年間を数ヶ月単位で区切り、対象期間ごとに労働時間を設定することも可能です。この場合、当該期間が始まる30日前までに、従業員の同意を得たうえで周知する必要があります。

また、1年間の所定労働時間にも以下の上限があるため、きちんと管理しましょう。

日数 法定労働時間
365日 2085.7時間
366日(うるう年) 2091.4時間

なお、1年単位の変形労働時間制を導入する場合、労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。

1年単位の変形労働時間制の残業時間の計算方法

1年単位の変形労働制では、「1日」「1週間」「1年」それぞれで算定した時間の合計を“残業時間”とみなします。

①1日ごとの基準 所定労働時間が8時間を超えている場合
→所定労働時間を超えた分はすべて“残業時間”
所定労働時間が8時間以内の場合
→8時間を超えた分が“残業時間”
②1週間ごとの基準
(①で残業時間にカウントした部分は含まない)
所定労働時間が40時間を超えている場合
→所定労働時間を超えた分はすべて“残業時間”
所定労働時間が40時間以内の場合
→40時間を超えた分が“残業時間”
③1年全体の基準
(①、②で残業時間にカウントした部分は含まない)
年間の法定労働時間(1年間の日数により異なる)を超えた分はすべて“残業時間”

したがって、①~③の合計が、当該期間における“残業時間”となります。

なお、1年単位の変形時間労働制では、“1日の労働時間の上限”や“1週間の労働時間の上限”など厳格に決められています。上限を超えないよう、導入前にしっかり確認しましょう。

1週間単位の非定型的変形労働時間制

「日によって閑散の差が激しく、事前に労働時間を設定するのが難しい事業場」については、1週間単位で労働時間を調整することが認められています。
ただし、小規模の事業場に向けた制度ですので、すべての会社が導入できるわけではありません。導入できるのは、従業員数が30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店です。

1週間単位の非典型的変形労働時間制を実施する場合、その週が始まるまでに、1週間の所定労働時間を書面で通知する必要があります。
また、本制度の導入時は、労使協定を締結して、所轄の労働基準監督署へ届け出ることが必要です。さらに、就業規則にも本制度を実施する旨を追記しなければなりません。

1週間単位の非定型的変形労働時間制の残業時間の計算方法

1週間単位の非定型的変形労働制では、「1日」「1週間」それぞれで算定した時間の合計を“残業時間”とみなします。

①1日ごとの基準 所定労働時間が8時間を超えている場合
→所定労働時間を超えた分はすべて“残業時間”
所定労働時間が8時間以内の場合
→8時間を超えた分が“残業時間”
②1週間ごとの基準
(①で残業時間にカウントした部分は含まない)
所定労働時間が40時間を超えている場合
→所定労働時間を超えた分はすべて“残業時間”
所定労働時間が40時間以内の場合
→40時間を超えた分が“残業時間”

例えば、以下のケースで考えてみます。

月曜:所定労働時間8時間、実労働時間9時間→1時間残業
火曜:所定労働時間6時間、実労働時間7時間→残業時間はゼロ
水曜:所定労働時間10時間、実労働時間10時間→残業時間はゼロ
木曜:所定労働時間7時間、実労働時間10時間→2時間残業
金曜:所定労働時間9時間、実労働時間10時間→1時間残業

1週間の実労働時間は46時間ですが、1日ごとにカウントした残業時間は除外するため、この週の残業時間は2時間(46時間-4時間=42時間)となります。

変形労働時間制のメリット・デメリット

変形労働時間制は、理想的な運用ができれば労使双方にとって利益のある制度です。しかし、労使双方にとって負担となるおそれがあるため、導入する前に十分な検討が必要です。

変形労働時間制を導入することのメリットとデメリットについて、以下で解説します。

メリット

変形労働時間制のメリットは、以下のような点です。

残業時間を削減できる

繁忙期と閑散期に合わせて労働時間を調整できるため、無駄なく働くことができます。
通常の勤務体系だと、「暇なのに終業時刻まで帰れない」「繁忙期の残業が多すぎる」など様々な問題が起こり得ます。
変形労働時間制を導入することで、残業時間が減り、残業代の削減にもつながるでしょう。

メリハリのある働き方を実現できる

閑散期の労働時間を短くすることで、労働者は退勤後の時間を自由に使うことができます。家族と過ごす時間や趣味に費やす時間が増え、ストレスも減るでしょう。

会社のイメージアップにつながる

「ワークライフバランスが実現できる」「柔軟な働き方ができる」といった点は、大きなアピールポイントとなります。新規採用の応募者が増え、優秀な人材も確保できるかもしれません。

デメリット

変形労働制のデメリットは、以下のような点です。

繁忙期の労働時間が長くなる

閑散期に早く帰れる分、繁忙期の拘束時間は長くなります。また、長時間働いても所定労働時間を超えなければ残業扱いにならないため、労働者のモチベーションが下がるおそれがあります。

人事担当者の手間が増える

変形労働制は、通常の勤務体系よりも残業時間の計算が複雑になります。また、導入時には就業規則の変更や労使協定の締結など様々な手続きが必要です。

不公平感が生まれる

特定の部署だけで変形労働制を導入している場合、他部署と就業時間が異なり、不公平感が生まれる可能性があります。また、社内の一体感がなくなるおそれもあるでしょう。

変形労働時間制での年次有給休暇の取扱い

変形労働時間制では、有給休暇取得時の賃金の計算方法に注意が必要です。計算方法としては次の3つがあります。

  • ①所定労働時間働いた場合に支払われる“通常の賃金”
  • ②平均賃金
  • ③健康保険法における“標準報酬額”に相当する金額

これらのうち、「①通常の賃金」を採用しており、時給制であるケースが問題となります。この場合、有給休暇取得日の所定労働時間によって、支給額が異なります。
そのため、所定労働時間が長い日を狙って、労働者が有給休暇を申請してくる可能性があるでしょう。

一方、「②平均賃金」又は「③標準報酬額」を採用している場合、各日の所定労働時間が異なっても支給額は変わりません。また、月給・日給制の場合も、支給額は一定額となります。

有給休暇の取扱いは、以下のページでも解説しています。

休暇・年次有給休暇

変形労働時間制の導入の流れ

変形労働時間制を導入する際は、以下の手順で進めましょう。

  1. 従業員の勤務実態を調査
  2. 対象者や変形期間の決定
  3. 就業規則の作成や労使協定の締結
  4. 労働基準監督署への届出
  5. 社内への周知
  6. 適切な運用と残業代の計算

なお、導入する制度の種類(1ヶ月単位・1年単位など)によっては、“1日10時間以内”“1週間52時間以内”など所定労働時間の上限が設けられています。
また、残業時間の計算方法も変わるため注意が必要です。

各手順の詳細や注意点は、以下のページをご覧ください。

変形労働時間制の導入手順や注意点

変形労働時間制の導入の注意点

変形労働制を導入する際は、就業規則の変更や労使協定の締結、労働基準監督署への届出など必要な手続きを漏れなく行いましょう。
なお、1日の所定労働時間などは、一度決定すると基本的に変更することができません。制度の内容を決める際は、法律上のルールや上限を超えていないか十分に確認しましょう。

また、制度の導入後も、人事担当者はミスのないよう運用する必要があります。
特に、シフト作成やその管理、残業時間の計算や残業代の計算は煩雑ですので、定期的にチェックするのが望ましいでしょう。

変形労働時間制と似ている制度

変形労働時間制に似た制度として、次に挙げるような制度があります。

  • ①シフト制
  • ②フレックスタイム制
  • ③裁量時間労働制

それぞれの特徴やメリット・デメリットを知ったうえで、どの制度を導入するか決めると安心でしょう。以下でそれぞれ説明します。

シフト制

シフト制とは、いくつかの勤務パターン(早番・遅番など)が決められており、労働者の都合に合わせて“交代制で”勤務する制度です。

変形労働制は、業務量に応じて“柔軟に”労働時間を調整できるのが特徴です。1日の中で、働いている者が入れ替わるシフト制とは異なり、それぞれの労働者の労働時間が日によって変動します。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、一定期間の総労働時間を守れば、労働者が出退勤時刻を自由に調整できる制度です。
変形労働制との違いは、労働時間を会社が決めるか、個人が決めるかという点です。
変形労働時間制は、残業時間の削減や効率アップを目的に、会社が1日の所定労働時間を決定します。

一方、フレックスタイム制は、労働者が自由に労働時間を決められるため、ワークライフバランスの実現に向いているといえます。

フレックスタイム制の仕組みは、以下のページで詳しく解説しています。

フレックスタイム制の仕組み

裁量労働制

裁量労働制とは、労働時間や時間配分について、労働者がすべて自由に決められる制度です。出退勤時刻も自由で、遅刻・早退という概念もありません。
柔軟性が高いのがメリットですが、その分高い専門性や成果が求められるのが基本です。

変形労働制も労働時間を柔軟に調整するという点は同じですが、裁量権が会社にあるという点で異なります。また、法定労働時間のきまりや、残業時間の発生の有無などにおいても違いがあります。

裁量労働制の詳細は、以下のページをご覧ください。

裁量労働制の仕組み
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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