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育児時間

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働基準法67条には、「育児時間」という制度が規定されています。これは、特に育児の負担が大きい時期の女性労働者を対象とした、育児と就労の両立を支援する制度です。

本記事では、育児時間という制度の概要や、実際に労働者から付与するよう請求された場合の労務管理上の注意点等、使用者の方や企業の人事部の方が気になるであろうポイントについて解説します。

なお、育児・介護休業法で定められている「育児休業」については、下記の記事で説明しています。本記事で説明する育児時間とは異なる制度ですので、この機会に併せてご確認ください。

育児・介護休業 育児休業

育児時間について

育児時間とは、文字どおり育児を行うための時間です。満1歳未満の子供を育てる女性労働者から請求された使用者は、通常の休憩時間とは別に、原則として1日2回各30分以上(労働時間が4時間以内の場合は1日1回30分)の育児時間を付与しなければなりません(労基法67条)。なお、制度の対象者から請求されて初めて、使用者側に付与する義務が生じます。この育児時間中は、当該女性労働者を就業させることはできません。

また、育児の対象となる子供は必ずしも実子である必要はなく、養子もその対象に含まれます。

育児時間の請求を拒否することはできない

使用者は、対象となる労働者から育児時間を請求された場合には、必ず付与しなければなりません。これに違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられるおそれがあります(労基法119条1号)。

もっとも、請求がないときにまで、育児時間を付与しなければならない趣旨ではありません。対象となる労働者が請求しない場合には、刑罰に処されることはありません。

育児時間に関する労務管理上の注意点

育児時間を請求された際、使用者はどのような点に気をつけて付与するべきなのでしょうか。次項より、育児時間に関する労務管理上の注意点について説明します。

育児時間の対象者

育児時間の制度は、雇用形態にかかわらず、満1歳未満の子供を育てる女性労働者であれば利用できます。育児休業制度等とは異なり、なぜ男性労働者が対象とならないのかというと、育児時間の本来の制度趣旨は、授乳の機会確保や母体保護だったからです。

もっとも、「育児を行うための時間」には、授乳だけでなく、保育所への送り迎え等、その他様々な世話のための時間が含まれると解釈できます。そのため、男性も育児時間の制度の対象に含めるべきであるとする主張もなされることがあります。労働基準法が定める内容はあくまでも最低基準であるため、「満1歳未満の子供を育てる男性労働者」についても、育児時間の取得を認める旨の規定を就業規則に置くことは妨げられません。労使間の協議を踏まえて、就業規則に男性労働者も対象とした育児時間を定めることもできます。

育児時間の取得可能な時間帯

育児時間を取得する時間帯は、原則として請求者の自由です。そのため、例えば、使用者が一方的に「育児時間」として指定した時間帯以外での育児時間の取得を拒否することは違法となります。

実際の育児時間の取得方法としては、次のような形が一般的なようです。

  • ・始業と終業に30分ずつ利用し、「30分の遅出・30分の早帰り」を可能にする
  • ・始業または終業にまとめて1時間利用し、「1時間の遅出」または「1時間の早帰り」を可能にする
  • ・(育児時間の事後申請が可能な場合)朝の授乳や登園等で遅刻してしまった時間や、子供の急病等で仕事を抜け出さなければならなくなった時間に充てる

育児時間の回数

育児時間は、原則として1日2回、各30分以上と定められています。しかし、必ずしも2回に分けて取得させなければならないわけではなく、1回にまとめて1時間取得させる等、柔軟な運用が可能です。

パートタイム労働者の場合

使用者は、「満1歳未満の子供を養育する女性労働者」という条件を満たした労働者から請求があれば、雇用形態を問わず、育児時間を付与しなければなりません(労基法67条)。

もっとも、当該規定は、フルタイム労働者(1日の労働時間が8時間の労働者)を予定して、育児時間の回数や長さについて定めています。そのため、アルバイトやパートタイマー等で、1日の労働時間が4時間以下の場合には、1日1回30分の育児時間を付与すれば足りると解されます。

変形労働時間制の場合

変形労働時間制の適用を受ける労働者であっても、当該労働者が満1歳未満の子供を育てる女性であり、育児時間を請求してきた場合には、使用者は育児時間を付与しなければなりません。

なお、変形労働時間制の適用を受ける女性労働者が、妊産婦にかかる労働時間制限(労基法66条1項)を請求せず就業を続けており、「1日の所定労働時間が8時間以上」である場合には、具体的状況に応じて法定以上の育児時間を取得させることが望ましいと考えられています(昭和63年1月1日基発第1号、婦発第1号)。

育児時間中の賃金の有無

育児時間について規定する労働基準法やその他の法律には、育児時間中の賃金の取扱いに関する定めはなく、使用者と女性労働者に定められた労働条件によって決定するべきだと考えられています。もっとも、育児時間を有給扱いとする旨の就業規則(給与規定)等の社内規則がない限り、いわゆるノーワーク・ノーペイの原則によって、無給扱いとなるでしょう。育児時間を有給扱いにしたい場合には、あらかじめ就業規則等に定めておく必要があります。

育児時間の用途

育児時間は、そもそも授乳を目的として定められた規定ですが、用途が哺育に限定されていません。そのため、対象となる労働者は、授乳だけでなく自由な用途に使用することができます。言い換えれば、使用者が育児時間の用途を制限することはできません

育児短時間勤務との併用について

育児時間の制度は、育児短時間勤務の制度(育介法23条1項)と併用することができます。なぜなら、制度の趣旨および目的が異なると解されているからであり、行政通達も同様に解釈しています(平成21年12月28日職発1228第4号、雇児発第1228第2号)。

育児短時間勤務制度とは、3歳に達しない子供を養育中の労働者の所定労働時間を、原則として6時間に短縮するものです。詳しくは下記記事の該当部分をご覧ください。

育児・介護休業 育児休業

その他の妊娠・出産に関する規定

育児時間以外にも、妊娠・出産に関する保護規定は存在します。妊娠・出産に関する保護規定は、雇用機会均等法に定められる母性健康管理措置と、労働基準法に定められる母性保護規定(育児時間をその内容のひとつに含みます)に分けられます。

母性健康管理措置や母性保護規定として定められている、女性労働者の保護のための各種制度に関しては、下記の各記事の該当部分をご覧ください。

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