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会社の施設利用について服務規律を設ける必要性

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

会社の施設利用については、ある程度の規律を定めておく必要があります。

なぜなら、会社の施設は、労働者一人だけの空間ではなく、他の労働者など多数の人が集まる場所であり、そこで会社の秩序を乱すような行為をされてしまうと、社内の空気が悪くなり、仕事の効率も落ちてしまうおそれがあるからです。そのような事態にならないためにも、労働者へ周知する就業規則の服務規律には、施設利用に関する遵守事項について明記しておく必要があるでしょう。

本記事では、会社が服務規律において、施設利用に関する規定を設ける必要性や明記しておくべき事項などを解説していきます。

会社の施設利用に関する服務規律

服務規律における会社の施設利用に関する規定は、当該施設の管理保全のために定められています。労働者だからといって休憩時間中や労働時間外になんでも自由に行って良いとしてしまうと、社内の秩序が乱れてしまうおそれがあります。そのようなリスクを防ぐためにも、施設利用に関する規定をルールとして定め、周知することが大切になってきます。

会社の施設といった企業財産の管理保全のための規律や、社内の秩序維持に関する規律については、以下のページをご覧ください。

企業財産の管理・保全のための規律

使用者の施設管理権

使用者は、会社の施設を目的に沿うよう管理・保全する権限を持っており、これを「施設管理権」といいます。基本的に、会社の施設において通常の業務以外の活動をする場合には、会社の利用許可が必要となります。また、会社の施設の範囲には、休憩室や食堂といった業務とは関連性を有しない場所も含めておくと良いでしょう。その他、会社の許可がない残業などによる施設利用の禁止についても定めておくと、後々のトラブル防止になります。

労働者が遵守すべき義務

労働者は、労働契約、就業規則を遵守する義務を負うため、施設管理権にも服することになります。施設管理権は、一般的に就業規則の服務規律に定めることとなり、労働者は使用者と労働契約を締結したときからこの施設管理権に服することになります。

施設利用に関する服務規律

会社の施設利用に関する規律は、あらかじめ定めておくことが重要となります。具体的には、以降で解説する終業時間後の施設の利用方法や、施設において禁止すべき活動などを定めておくことが考えられます。会社は、労働環境を良くすることも大切ですが、労働者本人にもしっかりとこの規律の内容を理解させ、会社内の秩序を守るよう周知していかなければなりません。

また、施設ではなく、細かな備品の管理等についての規律については、以下のページで解説しています。ぜひ、ご一読ください。

企業財産の管理・保全のための規律

終業後の滞留

労働者が終業時間後も退社せず、会社内に滞留することを防ぐため、服務規律に禁止事項として明記するケースがあります。また、労働時間外に会社の許可を得ない時間外労働(休日出勤など)の禁止についても明記しておくと良いでしょう。会社の施設は、あくまで会社が管理しているため、許可や責任者があずかり知らないうちに労働者が活動を行い、事件や事故が発生してしまうことは未然に防止すべきです。

会合・宣伝活動

使用者は、施設管理権を有しているため、労働者が労働組合等の活動を会社内の施設で行っている場合には、それが労働時間外であっても一定の制約を与えるべきです。労働者は、会社の許可がなければ、原則として会社の施設において組合活動を行うことはできません。そこで、その旨は、あらかじめ服務規律内に明記しておく必要があります。

政治・宗教活動等の禁止

労働者が政治活動や宗教活動を行うことは、個人の自由です。しかし、“会社の施設内で”これらを行うことは、禁止をするのが一般的です。本来、労働者は、業務に専念しなければならないという「職務専念義務」を負っています。会社の施設内で業務以外の活動を行われてしまうと、他の労働者の業務にも支障をきたし、会社内の秩序が乱れてしまうおそれがあります。そのため、服務規律には、会社施設内での政治・宗教活動を禁止する旨を明記しておきましょう。併せて、ビラの配布や演説、集会、勧誘等を禁止する事項も加えておくと良いでしょう。

職務専念義務についての詳細は、以下のページをご覧ください。

職務専念義務違反にあたる行為

会社施設の立入禁止・退去について

労働者が会社の施設を利用するにあたり、服務規律に立入禁止や退去を命じる事項を明記しておく必要があります。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

  • 会社の風紀・企業秩序を乱すおそれがある場合
  • 凶器等の危険物を所持している場合
  • 衛生上有害と認められる場合 等

もちろん、服務規律は会社が自由に定めることができるため、施設の入退場に関してこれら以外の事項を定めることもできます。

立入禁止・退去させた場合の勤怠

会社の施設への立入禁止、退去の事項について定めたのであれば、その場合の勤怠についても一緒に明記しておく必要があります。例えば、立入禁止の事項に該当する者は欠勤にする、勤務時間の途中で退去を受けた者は早退にする、というように具体的に明記しておくことをおすすめします。

休憩時間中における施設利用の制限

使用者は、労働者に対して休憩時間を自由に利用させる義務があります(労基法34条3項)。法律で定められていますので、休憩時間は、労働者に自由に利用させることが原則となります。もっとも、会社の施設利用について制限を加える場合、休憩施設の管理や整備等を目的とした制限であれば、休憩の目的をそこなわない限り差し支えないとされています(昭和22年9月13日発基第17号)。さらに、他の労働者の休憩を妨げるような行動や活動を禁止する旨の規定も定めておくべきでしょう。

休憩については、以下のページにて解説していますので、併せてご覧ください。

休憩時間とは

施設利用に違反した場合の処分

就業規則の服務規律において、施設利用に関する事項を定めておけば、当該事項に違反した者を懲戒処分の対象とすることができます。ただし、その場合であっても「服務規律に違反した者は懲戒処分の対象とする」旨を別に明記して、明確にしておくことをおすすめします。

服務規律違反における懲戒処分についての詳細は、以下のページをご覧ください。

服務規律違反における懲戒処分

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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