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退職者等の義務

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働者が退職する、または使用者が労働者を解雇した際、会社が行う手続は様々です。しかし、そういった手続以外にも、労働者が会社を去った後、会社に不利益を及ぼさないよう、遵守事項を定めておく必要があります。遵守事項は、基本的に勤務期間中に守るべき定めですが、退職時においても定めることができます。

本記事では、労働者の退職・解雇時における遵守事項について解説します。

退職する・解雇された労働者の義務について

退職あるいは解雇時、労働者は会社に対して負う義務はあるのでしょうか?実際は会社の就業規則によって異なりますが、多くの会社では、退職までのルールが定められていることが多いです。内容としては、退職・解雇する際の業務の引継ぎや、会社からの貸与品の返却に関する義務です。これらの義務は、トラブルになるケースもあるため、次項以降で詳しい内容を解説していきます。

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業務の引継ぎ義務

 労働者の退職時における業務の引継ぎは、一般的に労働契約に付随する信義則上の義務といえるでしょう。使用者と労働者の間の信頼や期待を裏切らないように、労働者は引継ぎをする必要があると考えられています。しかし、最近では、労働者が退職をすると意思表示をしたきり、音信不通となり引継ぎを行わないケースも多発しています。そういった状況を防ぐためにも、会社としてはあらかじめ、退職・解雇時の業務の引継ぎに関しての規定を定めておくべきでしょう。

退職時の有給休暇の消化

退職時、残っている有給休暇を消化するため、まとめて取得するケースは多いかと思います。退職間際に有給休暇を取得されてしまい、業務の引継ぎも不十分なまま退職されてしまうと、会社にとっての不利益につながるおそれもあります。そのような場合、会社としてはどのような対処ができるのでしょうか。以下の項で解説していきます。

有給休暇の請求を拒否することは可能か?

法律上、使用者は労働者の有給休暇の申請を拒否することは、原則としてできません。しかし、有給休暇を申請された時季に休暇を取得されてしまうと、会社の業務に支障がある場合は、有給休暇の取得日を変更する時季変更権を行使することができます(労働基準法39条(以下、労基法とします。))。ただし、時季変更権は退職予定日を超えて行使できないため、注意が必要です。

時季変更権が行使できなかった場合、業務引継ぎを現実化するためには、使用者が有給休暇の買い取りを申し出て協議する方法をとることが考えられます。ただし、有給休暇の買い取りは使用者の義務でもないので、労働者がこれに応じるか否かは任意となります。あくまでも、両者が協議の結果に応じた場合で、かつ退職時や年次有給休暇制度等の趣旨を損なわないときに限って認められると考えられています。

年次有給休暇についての詳細は、下記のページをご覧ください。

年次有給休暇の基礎知識

労働基準法

(年次有給休暇)第39条

5 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

引継ぎ不履行に対する損害賠償請求

労働者が退職時に業務の引継ぎをするのは、労働契約に付随する信義則上の義務とされています。よって、労働者が引継ぎを一切行わなかった場合、使用者は当該労働者に対して損害賠償請求をできる場合もあります。また、会社の就業規則に引継ぎ義務が定められているにもかかわらず、引継ぎをせずに退職をした場合も、労働契約上の義務違反に基づき、損害賠償請求や懲戒処分が可能と考えられます。

ただし、労働者が業務引継ぎ義務に違反したとしても、業務の引継ぎと会社に生じた損害との間の因果関係は、使用者が立証する必要があります。

退職時の引継ぎが争点となった裁判例

実際に、退職時の引継ぎについて争われた裁判例について、ご紹介します。

(1)【横浜地方裁判所 平成29年3月30日判決】

<事件の概要>

原告は、原告の従業員であった被告の「躁うつ病に罹患したという虚偽の事実を捏造して退職し、就業規則に違反して業務の引継ぎをしなかった行為」が、不法行為に該当する等と主張して、被告に対して損害賠償を求めました。それに対し、被告も原告の請求等が不法行為に該当する等と主張し、原告に対して慰謝料等の損害賠償を求めました。

<裁判所の判断>

裁判所は、原告の請求を棄却し、被告の主張を一部認容としました。

労働者には退職の自由があることを前提としたうえで、実際に被告は虚偽の事実は述べておらず、仮に虚偽の退職理由であっても退職の効力は発生するとしました。そして、原告の主張する損害は、被告の退職と因果関係がないことから原告の請求を棄却しました。

(2)【東京地方裁判所 平成4年9月30日判決、ケイズインターナショナル事件】

<事件の概要>

原告に入社した被告が入社後1週間で突然退職し、原告に損害を与えたとして、原告と被告との間で200万円の損害賠償金の支払いをする約束をしました。しかし、被告から支払われることはなかったため、原告は被告に対して、この金銭給付を求めました。これに対し、被告は、被告の雇用契約は試用期間付のものであったため退職は自由であり、損害賠償金を支払う旨の約束は、原告の強迫によるものであったとして、取消を主張する等をして争いました。

<裁判所の判断>

裁判所は、被告が突然退職したことによって、原告が得るはずだった利益を失ったとしても、原告側も被告採用・労務管理において欠ける点があったこと、期間の定めのない雇用契約は一定の期間をおきさえすれば、労働者が何時でも自由に解約することができること、使用者として労働者に損害賠償義務を課すことは今日の経済事情に適するか疑問があること等を踏まえて、信義則を適用して賠償額を減額し、当初の約3分の1の金額を支払うことが相当であるとしました。

退職時の引継ぎを促すための規定

退職時にきちんと業務の引継ぎをしてもらうためには、会社としても規定を設ける必要があります。その際どのような規定を定めるべきか、また注意するべきことは何か等、本項で解説していきます。

引継ぎの完了を退職金支給の要件とする

引継ぎがない状態での退職を防ぐために、会社もさまざまな対策を行います。そのひとつとして、退職金制度が挙げられます。

労働者が退職する際、業務の引継ぎを行わずに退職した場合は、退職金を不支給ないし減額(一部不支給)する規定を就業規則等に定めておくことにより、引継ぎを促すことができます。

ただし、規定を定めてからは、会社における退職金の性質、業務の引継ぎの重要性、その他の引継ぎに関する情状を考慮する必要があるため、注意が必要です。

退職金についての詳細は、下記のページをご覧ください。

退職金制度

退職金の不支給を認めた裁判例

ここでは、不十分な引継ぎによって退職金の不支給が認められた裁判例をご紹介します。

【大阪地方裁判所 昭和57年1月29日判決、大宝タクシー退職金請求事件】

<事件の概要>

被告は、従業員に対し、「従業員が依頼退職しようとするときは14日前に退職願を提出し従前の勤務を継続しなければならない。」と就業規則に規定していました。また、退職金支給規定においても、「会社承認を得ずして一方的に退職した者」は退職金を支給しないと規定していました。

これに対して、原告は退職届を提出してから退職日まで8日間は出勤しましたが、それ以外の日は年次有給休暇を取得したほか、無断欠勤を含む欠勤をしました。原告は規定に反する行動をしたにもかかわらず、退職金支給を求めた事案です。

<裁判所の判断>

原告は、就業規則の内容は、主に年次有給休暇の取得を妨げることから、労基法39条に違反すると主張しましたが、裁判所は退職日から遡って14日間の制約に過ぎないものであること、退職日は相互の合意で任意に定めることができること等から、同条に違反するものではないとし、退職金の不支給を定めた規定は有効であり、退職金の支払いを求める請求は理由がないとしました。

引継ぎ不履行を懲戒処分の対象事由とする

退職金制度の規定のほかに、業務の引継ぎ義務に違反した者は、懲戒処分になる旨の規定を定める方法も有効と思われます。また、退職金の不支給に関する規定においても、懲戒事由に該当する場合等と定めている場合も多いため、これと連動させておくことが望ましいでしょう。

また、万が一、懲戒処分になってしまうと、転職等に影響を及ぼすおそれもあるため、防止する効果も一定程度あると思われます。

懲戒については以下のページにて詳しく解説していますので、ご覧ください。

懲戒処分

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貸与品等の返却義務

仕事において必要となる備品や機器等として、モバイルPCや携帯電話等を労働者に貸与している会社も増えています。そして、退職や解雇時には返却することを義務付けているでしょう。しかし、なかには貸与品を紛失してしまった、返却せずに会社に来なくなってしまった等で、回収が困難になることもあり得ます。そういった場合に、会社としては、貸与品の回収についてどのように対応すべきか、本項で解説していきます。

貸与品の返却・紛失に対する損害賠償請求

会社からの貸与品を紛失した、または返却しなかった場合、罰金や損害賠償を請求することは可能です。しかし、一定額の損害賠償の負担を予定する規定を就業規則等に定めておくことは、労基法違反になります(労基法16条)。もっともこの規定は、あらかじめ賠償額を固定化しておくことを禁止しているものであり、実際に生じた損害が立証できる場合に、労働者へ請求することまで禁止しているわけではありません。

とはいえ、仮に損害賠償を請求することになった場合であっても、労働者の給与から控除することも労基法に違反することになります。

労働基準法

(賠償予定の禁止)第16条

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

貸与品等の返却を促すための規定

使用者側としては、貸与品が返却されなかった場合は給与を差し止める、という対応をとることも思い浮かぶかと思いますが、給与差し止めは労基法に反する行為になるため実行してはいけません。では、どのような対応が効果的でしょうか。一つとして、最終の給与の支払いを現金払いとして、面前で交付する、といった方法が挙げられます。

給与に関しては、銀行振込をとっている会社が多いかと思います。その支払いのうち、退職時の最終給与を現金支払いと規定することで、現金を交付した際に貸与品の返却を会社から求められれば、その場で応ずるほかないでしょう。ただし、このような方法をとるには事前に、退職する労働者に対して貸与品の返却を促したうえで、給与を現金で支払う旨を伝えておく必要があります。また、労働条件において、賃金の支払方法が合意されている場合が多いことからすると、労働契約や就業規則においても、最終の賃金支払い方法については、現金交付による旨規定しておくべきでしょう。

債務の返済義務

労働者のなかには、従業員貸付等によって会社に対して債務を負っている場合もあります。その労働者が退職する際の債務の精算に関する規定も必要となります。

使用者は労働者に対して、労働の強制をすることはできないため(労基法5条)、債務を理由に労働を強制できません。また、債務の返済方法に関しても、給与や退職金からの控除することは違法になるためできません(労基法17条)。ただし、労使協定がある場合に限っては認められる場合もあります。

労働基準法

(強制労働の禁止)第5条

使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

(前借金相殺の禁止)第17条

使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

(賃金の支払)第24条

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

寮または社宅の退去義務

労働者は、退職や解雇によってその会社の労働者としての身分を喪失します。そうなると、会社の寮や社宅に住む資格も同時に喪失することになります。寮や社宅制度を導入している場合は、退職時の対応として、退去時期や明け渡しについて規定を定めておく必要があるでしょう。

また、寮や社宅の利用者をしっかりと管理できていない場合には、明け渡しを実現する手続や原状回復義務の実現に支障を来す場合がありますので、日常的な管理も怠らないようにするべきでしょう。

退職後の秘密保持義務及び競業避止義務

労働者が退職する際、会社としては、退職者であっても会社に不利益を及ぼしてほしくないと考えるでしょう。そのような場合、労働契約や就業規則によって、労働者に対して、退職後の行動を一定程度制限することができます。それが、秘密保持義務および競業避止義務です。

簡単にいうと、労働者に使用者の営業上の秘密(顧客名簿や特殊な技術・ノウハウ等)を保持させて漏洩を防止することを秘密保持義務、使用者の利益に反する同業他社や同一地域内での競業を控えさせることを競業避止義務といいます。

秘密保持義務と競業避止義務の詳細については、下記のページにて説明していますので、ご覧ください。

秘密保持義務
競業行為
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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