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【働き方改革】不合理な待遇差の禁止の改正要点

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

働き方改革では、労働者がより多様な働き方を選択できるよう、非正規雇用労働者の保護に力を入れています。その中心となる施策が、不合理な待遇差の禁止です。
正社員よりも賃金や職務の内容が制限されやすいパートタイマー・契約社員・派遣労働者の保護を図るため、様々な法改正が行われました。

では、非正規雇用労働者の待遇は具体的にどう改善したのでしょうか。また、事業主にはどんな責務が課されるのでしょうか。本記事で詳しく解説していきます。

働き方改革により不合理な待遇差を禁止

働き方改革により、正社員と非正規雇用労働者の間における不合理な待遇差が禁止されました。具体的には、基本給や賞与、教育訓練や福利厚生など様々な待遇について、雇用形態による不合理な差を設けてはいけないというものです。

この背景には、日本の少子高齢化や非正規雇用労働者の増加などがあります。非正規雇用労働者の処遇を改善し、多様な働き方を提供することで、労働者のモチベーションアップや労働力不足の解消を図るのが狙いといえます。

この点、不合理な待遇差の禁止以外にも様々な施策が掲げられています。詳しくは以下のページで解説しますので、併せてご覧ください。

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保のための改正要点

パートタイム労働者・有期雇用労働者に関する改正

パートタイム・有期雇用労働法の改正により、正社員と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を禁止することが明文化されました。
また、不合理な待遇差を判断する基準として、均衡待遇(8条)と均等待遇(同法9条)の規定も設けられました。これは、「同じ仕事をしていれば同じ賃金を支払うべきだ」という同一労働同一賃金の考えに基づき、雇用形態によらない公正な待遇を目指すための規定です。
また、どのような待遇差が不合理といえるのか明確にするため、厚生労働省によるガイドラインも策定されています。
※パートタイム・有期雇用労働法は、働き方改革に伴いパートタイム労働法から改名された法律です。従来はパートタイマーのみを対象としていましたが、法改正によって有期雇用労働者も含まれることとなりました。

×:規定なし ○:規定あり ◎:明確化
短時間 有期
均等 ○ → ○ × → ○
均衡 ○ → ◎ ○ → ◎
ガイドライン × → ○ × → ○

均衡待遇とは

均衡待遇とは、以下3つの要素を考慮したうえで、正社員と非正規雇用労働者の不合理な取扱いを禁止するという規定です。

  • 職務内容
  • 職務内容・配置変更の範囲
  • その他の事情
  

つまり、これらを踏まえ、合理的な範囲であれば待遇差を設ける事が認められるということです。
ただし、合理性の判断は待遇ごとに、またそれぞれ適切な要素を考慮して行わなければなりません。

では、3つの要素はそれぞれどのようなものでしょうか。詳しくみていきます。

職務内容

職務内容は、業務内容責任の程度の2つに分けられます。正社員と非正規雇用労働者の間でこれら2つを比較し、その違い応じた範囲で待遇差を設ける必要があります。

業務内容
職業上、継続して行う仕事を指します。業務内容が異なるかは、販売職・事務職・営業職といった職種と、個々の中核的業務をもとに判断します。
例えば、同じ接客業であっても、パートタイマーは主にレジ打ちを、正社員は商品発注や在庫管理も行うといった場合、中核的業務に違いがあるといえます。ただし、扱う商品が異なるというだけでは、業務に差があるとはいえません。
※「厚生労働省編職業分類」の細分類を参照します。

責任の程度
与えられた権限によって判断します。具体的には、個人で契約可能な金額・管理する部下の人数・ノルマの有無・トラブル発生時に求められる対応・繁忙期における残業の必要度合などです。
例えば、接客業で正社員のみが突発的なクレーム対応を行う場合、責任の程度も大きいといえるでしょう。

職務内容・配置の変更範囲

人事異動の有無や範囲、役割変更の可能性といった「人材活用の仕組み」によって判断します。具体的には、以下の要素を考慮するのが一般的です。

  • 転勤や出向
  • 昇進や昇格
  • 指導や管理など役割の変更
  • キャリア形成の機会
  • 人事考課制度の適用

また、現状だけでなく将来的な変更の可能性も踏まえて判断する必要があります。例えば、まだ一度も転勤していないが、正社員にのみ転勤を命じうるとの規定がある場合、非正規雇用労働者とは異なると判断できます。

その他の事情

主に業務上の成果や経験、個人の能力やノウハウ等を踏まえて判断します。その他、労使交渉の経緯や勤務形態(フレックス、裁量労働など)、定年後の再雇用の有無といった様々な事情も考慮されることがあります。

ただし、その他の事情は合理的なものに限られ、考慮すべき事項がある場合にのみ用いられます。また、いずれかの要素を選ぶのではなく、諸事情を総合的に考慮して判断することが必要です。

均等待遇とは

均等待遇とは、正社員と非正規雇用労働者の職務内容、職務・配置変更の範囲が同一の場合、待遇で差別的取扱いをしてはいけないとする規定です。つまり、同じ労働をしているなら、雇用形態にかかわらず同じ待遇をするということです。
例えば、正社員と非正規雇用労働者が別店舗の店長を務めているとします。この場合、業務内容等が同じで能力・経験にも差がなければ、同じ待遇をしなければなりません。

なお、職務内容や職務・配置変更の範囲が異なる場合も、以下のものは同一の付与を行う必要があります。

  • 時間外手当や休日手当の割増率
  • 食堂、休憩室、更衣室等の利用
  • 慶弔休暇や有給休暇
  • 健康診断に伴う勤務免除
  • 法定外有給休暇など勤続期間に応じて付与しているもの

職務内容

均等待遇の職務内容は、均衡待遇と同様です。正社員と非正規雇用労働者の業務内容責任の程度が同じであれば、職務内容は同一であると判断されます。

職務内容の詳細は、〈均衡待遇/職務内容〉をご覧ください。

職務内容・配置の変更範囲

職務内容・配置変更の範囲も、均衡待遇と同様です。正社員と非正規雇用労働者の間で、人事異動の有無や役割変更の可能性を比較し、同一であれば職務内容・配置変更の範囲が同じと判断されます。
職務内容・配置変更の範囲の詳細は、〈均衡待遇/職務・配置変更の範囲〉をご覧ください。

派遣労働者に関する改正

派遣法改正により、派遣労働者の待遇の決定方法が義務化されました。具体的には、派遣元事業主は派遣労働者を雇用する際、「派遣先均等・均衡方式」又は「労使協定方式」のいずれかを用いて待遇を決定することが義務付けられました。

また、派遣先も、派遣労働者の業務に応じて派遣元へ様々な情報を提供することが義務付けられています。

この点、これまで派遣社員と正社員の待遇を同等にすべきという規定はありませんでしたが、働き方改革に伴い、派遣労働者の保護が明確化されることとなりました。これは派遣労働者と正社員の不合理な待遇差を解消し、多様な働き方を実現することが目的とされています。

では、待遇の決定方法について詳しくみていきましょう。

派遣先労働者との均等・均衡方式

均等・均衡方式とは、派遣先で同じ業務を行う正社員とのバランスを考慮して、派遣社員の待遇を決定する方法です。

 

派遣社員と正社員の職務内容や配置変更の範囲が同じ場合、同一の待遇をしなければならないとされています(均等待遇)。
一方、職務内容や配置変更の範囲、スキルや経験において差がある場合、その差に応じた待遇差を設けることができます。ただし、不合理な待遇差は認められないので、考慮要素や待遇差を設けた理由を明確にしておく必要があります(均衡待遇)。さらに、均衡待遇を維持しつつ、派遣労働者の成果や意欲等も踏まえて賃金を決定すべきという努力義務も課されています。

なお、派遣先は、派遣労働者の比較対象となる正社員の待遇情報を派遣元に提供することが義務付けられています。これは、派遣元が派遣先の正社員の待遇を把握することで、より均等・均衡のとれた待遇を実現するためです。

労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式

労使協定による待遇決定方式とは、派遣元の労使間で労使協定を締結し、それに基づき派遣労働者の待遇を決定する方法です。派遣元会社の協定なので、派遣先の正社員とのバランスは考慮しません。
この制度は、派遣先企業の規模によって待遇が左右され、派遣労働者の生活が不安定になるリスクを避けるのが目的とされています。

  

なお、労使協定は派遣元事業主と過半数労働組合(労働組合がない場合は過半数代表)の間で締結されますが、注意点もあります。まず、派遣労働者の賃金は、同じ業務を行う一般労働者の平均賃金以上の金額で定めなければなりません

また、教育訓練や休憩室・更衣室の利用等については労使協定の対象外なので、派遣先の正社員と均等・均衡を確保する必要があります。そこで、派遣先は、派遣労働者と同じ業務を行う労働者(正社員)に実施している教育訓練や、給食施設・休憩室・更衣室の利用について、派遣元に情報提供することが義務付けられています。
※厚生労働省職業安定局長通達を参照します。

労使協定に定める事項

派遣労働者の待遇を労使協定で定める場合、以下の事項を必ず記載する必要があります。これらの記載がない場合、「労使協定方式」ではなく「派遣先均等・均衡方式」が適用されます。

  • 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲
    一部の労働者を対象とする場合、その理由も記載します。
  •     
  • 賃金の決定方法
    同じ業務を行う一般労働者の平均賃金以上であることが必要です。
  •    
  • 職務内容や成果、意欲、スキルが向上したときの賃金の改善
    「能力手当を支給する」「新たな派遣就業の機会を提示する」等の措置を定めておきます。
  • 評価方法
    正当な評価を行い、待遇に反映することが重要です。例えば、「半年ごとの目標達成度合に応じて評価する」といった方法があります。
  • 賃金以外の待遇
    労使協定の対象となるその他の事項の決定方法を定めます。ただし、派遣元の一般労働者との間に不合理な待遇差を設けてはいけません。
  • 段階的、体系的な教育訓練の実施
    派遣業許可申請時に定めた「キャリアアップに資する教育訓練計画」を着実に実行する旨を記載します。
  • 協定の有効期限
    2年以内が望ましいとされています。
        

同一労働同一賃金ガイドラインの策定

正社員と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を解消する取組みは、同一労働同一賃金といわれています。これを着実に実行するため、政府は「同一労働同一賃金ガイドライン」を策定しました。ガイドラインでは、どのような待遇差が不合理であるのか示し、その具体例も掲載しています。
また、賃金だけでなく福利厚生やキャリアアップ支援の決定方法にも言及しており、事業主の理解を深めるために有効でしょう。

同一労働同一賃金の詳細は、以下のページをご覧ください。

同一労働同一賃金ガイドラインの具体例や注意点
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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