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育児・介護休業法における所定労働時間の短縮措置について

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)には、子供を養育したり家族を介護したりしながら働く労働者が離職せずに就労を継続することができるよう、様々な制度が定められています。

そのうちのひとつに、所定労働時間の短縮措置があります。このページでは、育児・介護をしながら働く労働者に対する所定労働時間の短縮措置に関して、事業主が講ずるべき措置や義務、把握しておかなければならないこと等を説明します。

所定労働時間の短縮措置を設ける必要性

人口が減少し、労働力不足が叫ばれている現代、育児や介護をしながら働いている現役世代は多く、事業主としては貴重な労働者が離職してしまうことは避けたいものです。そのような状況の中では、短時間勤務の労働者も貴重な戦力といえます。労働者が育児・介護をしながらでも働き続けることができるよう、事業主には家庭と仕事を両立できる職場環境づくりが求められているといえます。

育児のための所定労働時間の短縮等の措置

育児休業を取得せずに3歳に満たない子供を養育する労働者が希望する場合には、労働者の申出に基づき、育児のための所定労働時間の短縮措置、いわゆる短時間勤務を講じなければならないことが、育児・介護休業法23条1項に定められています。具体的には、その労働者に対して1日の所定労働時間を6時間にするか、1日の所定労働時間を6時間とすることを含む複数の短縮された所定労働時間を選択できるような制度を整えなければなりません。

短時間勤務制度の具体的な内容

所定労働時間の短縮を実施する際は、1日の所定労働時間は原則として6時間と定められています。ただし、これはあくまでも原則です。例えば、所定労働時間が7時間45分である企業では、短縮後の時間が5時間45分となりますので、5時間45分から6時間までが許容されています。

なお、所定労働時間を原則として6時間としたうえで、1日の労働時間を7時間としたり、隔日勤務等で所定労働日数を短縮する措置を併せて設けたり等、労働者の選択肢を増やすよう心がけることが望ましいとされています。

育児による労働時間短縮の対象者

育児による所定労働時間の短縮措置は、次のすべてに該当する労働者が対象となります。

  • ・1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
  • ・日々雇用される者(1日限りの雇用契約または30日未満の有期契約で雇われている労働者)でないこと
  • ・短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていないこと
  • ・労使協定により定められた適用除外者ではないこと

労使協定による適用除外者に関しては、次項で解説します。

労使協定により対象外となる労働者

次の労働者に関しては、あらかじめ労使協定で定めることにより、所定労働時間の短縮措置の対象外とすることができます。

  • ・その事業主に継続雇用されている期間が1年未満の労働者
  • ・1週間の所定労働日が2日以下の労働者
  • ・業務の性質または実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者

変形労働時間制の場合の注意点

変形労働時間制を採用している企業は、留意が必要です。所定労働時間の短縮措置においては、対象となる条件に「1日の所定労働時間が6時間以下でないこと」というものがあります。変形労働時間制を採用している場合、対象期間を平均して割り出した1日の労働時間で判断するのではなく、その労働者が出勤しているすべての日の労働時間が6時間以下でないか否かで判断します。

対象となる期間

育児による短時間勤務制度の対象期間は、原則、労働者の子供が3歳に達するまでとされています。ですが、小学校就学の始期に達するまでの子供(その子が6歳になる誕生日を含む年度の3月31日まで)を持つ労働者も制度を利用できるようにすることが事業主の努力義務とされています。

短時間勤務制度の適用除外者への代替措置

『業務の性質または実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者』は、労使協定により、育児による短時間勤務制度の対象外とすることができます。しかし、育児・介護休業法23条2項に『育児のための所定労働時間の短縮措置を講じないこととするときは、…当該労働者が就労しつつ当該子を養育することを容易するための措置を講じなければならない』と定められています。3歳に満たない子供を養育しながら短時間勤務制度を利用できない労働者がいる場合、具体的には、

  • ・フレックスタイム制度
  • ・時差出勤制度(始業・終業時間の繰り下げ・繰り上げ)
  • ・保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与(ベビーシッターの手配や費用の援助等)
これらの内、いずれかの措置を講じなければなりません。

育児時間と短時間勤務制度の併用について

1歳に満たない子供を養育している女性が、1日2回、少なくとも30分ずつ、子供の養育のために時間を使うことができる「育児時間」という制度が定められています。育児時間を利用している労働者が、同時に短時間勤務を取得する申出をしたとしても、事業主はそれに応じなければなりません。育児時間、そして育児のための短時間勤務については、主旨および目的が異なるので、別の制度として措置を講じるべきであるという行政解釈が出されています。

育児時間に関しては、下記のリンク先で詳しく解説していますので、ご参照ください。

育児時間

介護のための所定労働時間の短縮等の措置

事業主は、子育てをしている労働者だけでなく、要介護状態の家族を持つ労働者が家庭と仕事を両立し働きやすくなるよう、介護休業を取得していない労働者に対して、さまざまな措置を講じなければならないことが、育児・介護休業法23条3項に定められています

  • ①所定労働時間の短縮
    • ・1日の所定労働時間を短縮する制度
    • ・週または月の所定労働時間を短縮する制度
    • ・隔日勤務や、特定の曜日のみの勤務
    • ・労働者に個々に勤務しない日または時間を請求することを認める制度
  • ②フレックスタイムの制度
  • ③時間差出勤の制度(始業・終業時間の繰り下げ・繰り上げ)
  • ④労働者が利用する介護サービスの費用の助成、その他これに準ずる制度

事業主は、労働者の申出に基づき、このうちの1つを、④を除き、2回以上利用できる措置として講じなければなりません。

短時間勤務制度の具体的な内容

育児・介護中の労働者を支援する制度としては、短時間勤務制度のほかにもさまざまなものがあります。

所定労働時間を超えて労働させてはならないという「所定外労働の制限」、1ヶ月24時間、1年150時間を超えて労働時間を延長してはならないという「時間外労働の制限」、深夜(午後10時から午前5時まで)に労働させてはならないという「深夜業の制限」等があります。

また、昨今では、「短時間勤務正社員」という働き方も注目されています。事業主にとっては、十分な能力や意欲がありながら、育児・介護のためにフルタイムで働くことが難しい人材を活用するチャンスとなる、新しい雇用形態といえるでしょう。

介護による労働時間短縮の対象者

子供を養育している労働者を対象にした所定労働時間短縮措置のほかに、要介護の対象家族を介護している労働者を対象にした短時間勤務制度もあります。これは、日々雇用される者(1日限りの雇用契約または30日未満の有期契約で雇われている労働者)を除く、すべての男女労働者が対象となります。

有期雇用契約の労働者やパート・アルバイトの労働者も対象となりますので、留意が必要です。

労使協定により対象外となる労働者

介護のための所定労働時間短縮の措置は、日々雇用者以外のすべての男女労働者が対象となりますが、

  • ・事業主に継続して雇用された期間が1年未満の労働者
  • ・1週間の所定労働日が2日以下の労働者
以上のいずれかに当てはまる労働者に関しては、労使協定であらかじめ定めておけば、対象外とすることができます。

法改正により変更された取得期間

事業主は、対象家族を介護する労働者に対して、所定労働時間の短縮措置、フレックスタイム制度、始業・終業時間の繰り下げ・繰り上げ、介護サービス費用の助成のうち、いずれかの措置を講じなければならないとされています。これに関しては、「介護休業と通算で93日までの取得」と定められていましたが、平成29年1月施行の育児・介護休業法の改正によって、介護休業とは別に、連続する3年以上の期間で2回以上利用できるようになりました。「連続する3年以上の期間」とは、労働者が短時間勤務等を利用すると申し出た日から起算します。

申請手続と就業規則の規程について

短時間勤務措置利用の申出の方法に関しては、育児・介護休業法では定められていません。よって、就業規則の定めによりますので、必ず記載しましょう。また、労働者が措置を受けやすくするため、あらかじめ就業規則に短時間勤務措置の利用者に対する待遇に関する事項や、申出の期限等について記載し、周知することが望ましいとされています。

短縮時間勤務中の賃金・社会保険料の扱い

【賃金】
短時間勤務中の労働者の賃金に関しては、育児・介護休業法に定めはありません。よって、事業主に短縮された分の賃金を払う義務はありません。ただし、就業規則の絶対的必要記載事項である「賃金」に関することに当たりますので、短時間勤務中の賃金に関しては必ず就業規則に記載しましょう

【社会保険】
労働時間の短縮措置を利用した労働者は賃金が下がってしまいますが、社会保険に関しては、育児休業と同じく、標準報酬月額を改定することが可能です。これは労働者から申出を受けた事業主が、日本年金機構に書類を提出して申請しなければなりません。

【将来受け取る年金】
年金に関しては、賃金が低下してしまった場合でも、短時間勤務利用前の標準報酬月額に基づいて将来の年金を受け取れる「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という制度があります。この手続も、事業主が日本年金機構に書類を提出して申請しなければなりません。

事業主が行わなければならない社会保険、年金等の手続については、以下のページで詳しく解説しています。

育児休業

短時間勤務者が有給休暇を取得した場合

短時間勤務者が年次有給休暇を取得した場合、実際の勤務分、つまり通常の勤務時間ではなく、短縮された後の労働時間分が免除になります。よって、賃金は短時間勤務分のみ発生します。

また、全労働日の8割以上出勤していれば有給休暇は付与されますので、短時間勤務をしていても有給休暇の付与日数に変わりはありません。しかし、短時間勤務者が有給休暇を取得する場合、付与された時点での通常の労働時間が免除されるのではなく、取得を申請したとき、つまり短縮された労働時間分が免除されることに留意が必要です。

年次有給休暇については、以下のページで詳しく解説していますのでご参照ください。

労働基準法で定められる年次有給休暇の基礎知識

短時間勤務者への残業命令について

短時間勤務をしている労働者に残業をさせること自体は、育児・介護休業法で禁止されてはいません。ただし、毎日のように頻繁に残業させてしまっては短時間勤務を利用している意味がなくなってしまいますので、望ましくありません。

また、育児・介護をしている労働者が求めた場合、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはならないという「所定外労働の制限」という制度があります。よって、労働者側から申請があった場合は、残業をさせてはいけません。

労働時間の短縮に関する不利益取扱い

事業主は、育児・介護休業法によって制定されている休業、休暇、所定労働時間の短縮等を労働者が申し出たこと、利用したことを理由に、労働者に対して不利益な取扱いをすることは禁じられています。具体的には、解雇、降格、減給等がこれに当たります。

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