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派遣対象の業務と派遣可能期間(期間制限)について

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、労働者派遣法、労派遣法)」には、改正以前、派遣労働の対象となる業務が定められていました。その対象であった「専門26業務」という言葉に聞きおぼえがある方もいらっしゃるかと思います。

改正された現在の労働者派遣法では、派遣労働の対象業務は自由化されています。また、派遣元会社から同一事業所に派遣できる期間、一人につき同じ組織単位に派遣労働できる期間は3年までという“3年ルール”も制度化されましたが、同時にさまざまな例外もあります。

このページでは、これら労働者派遣の派遣対象業務と、派遣可能期間について詳しく解説します。

派遣対象となる業務

派遣労働の対象となる業務は、長期雇用慣行による育成がしにくい業務と定められていました。労働者派遣法が施行された1986年は特に専門性が高いとされる13業務が対象とされ、同年16業務になり、1996年の改正を経て26業務となったことから「専門26業務」と称され、その言葉が浸透しました(現在では28業務が対象となっていますが、一般的には「26業務」の用語が使用されています)。

当初の13業務は、ソフトウェア開発、通訳、秘書、財務処理等でした。1996年の改正で、既存の16業務に機械設計、放送番組など演出、放送機器など操作等の10業務が追加され、26業務となりました。

これによりほとんどの業務が派遣労働の対象となったため、派遣対象とされていた業務のポジティブリストは、禁止されている業務のネガティブリストに変わり、港湾運送業務、建設業務、警備業務、「士」業務がリストアップされました。医師、歯科医師、薬剤師等の医療系業務の派遣は原則禁止されていますが、社会福祉施設等での医療関連業務、紹介予定派遣、産休・育休の代替要員、へき地への医師の派遣は例外として認可されています。

なお、過去には製造業務への派遣も禁止されていましたが、現在は解禁されています。

派遣労働全般については以下のページで解説していますので、ぜひご一読ください。

派遣労働について

専門26業務について

労働者派遣法が施行されたとき、常用雇用代替防止という考えから、派遣が可能なのは常用雇用の代替になりにくい特定の10業務だけでした(同年、13業務に増えています)。

1996年、それまで派遣労働の対象とされていた16業務にさらに10業務が追加され、「26業務」となりました。追加された職種には、広告デザイン、アナウンサー、書籍などの制作・編集、インテリアコーディネーター等があります。

1999年、適用業務は原則自由化されました。

2004年、これら「26業務」は、そのほかの一般業務の派遣上限期間が3年と定められていたのに対して、上限が無制限となりました。専門性が高く、代替がきかないという理由からです。その後、2015年、専門26業務も上限が3年間と定められました。

現在では、派遣労働者の雇用安定や正規職員化を促すため、業務にかかわらず、すべての派遣労働が原則3年以上同じところで働いてはいけないという“3年ルール”が適用されています。

派遣を行ってはならない業務(適用除外業務)

港湾運送業務、建設業務、警備業務は派遣労働を禁じられています。また、病院・診察所等医療関連業務、「士」業務は例外つきで原則禁止されています。以下で解説します。

港湾運送業務

港湾運送業務とは、船内荷役、はしけ運送、沿岸荷役・いかだ運送、船積貨物の鑑定、検量等の業務のことをいいます。その業務の特殊性から、港湾労働法において港湾労働者派遣制度が別途導入されているため、労働者派遣法に基づく派遣は禁止されています。

建設業務

建設業務とは、土木、建築その他工作物の建設、改造、修理、破壊・解体の作業等のことをいいます。

業務の特殊性、また、建設労働者の雇用の改善等に関する法律において建設業務労働者就業機会確保事業制度が設けられているため、労働者派遣は禁じられています。

警備業務

警備業務とは、住宅、駐車場、遊園地等、または運搬中の現金等の盗難等における事故の発生を警戒し、防止する業務のことをいいます。

警備業法上、請負形態で業務を行うため、派遣先会社が指揮命令権を持つことがでません。よって、労働者派遣は認められません。

病院・診察所等医療関連業務

医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、助産師、栄養士、歯科医衛生士、診療放射線技師等、医療関連の業務も労働者派遣が禁じられています。とりわけ専門性が高いことや、経験を積まなければならないこと、また、医療はチーム制がとられることが多く、派遣を行ってしまうとそれが崩れ適正な医療ができなくなってしまうこと等が理由です。例外として、紹介予定派遣、社会福祉施設等において行われる医業等の業務、産前産後休暇及び育児・介護休業の代替要員、へき地への医師の派遣のみ認められています。

「士」業務(弁護士・社会保険労務士等)

弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士、管理建築士等、「士」業務も派遣労働を禁じられています。医療関連業務と同じく専門性が高く、また、士業は資格保有者がクライアントに委託されて直接業務にあたることから、いわばみずからが指揮命令権者のような状態となってしまうため、派遣業態にはそぐわないといえます。そのため、労働者派遣の適用外とされています。ただし、公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士等、一部の業務では、労働者派遣を利用することが認められています。

これらの業務に関しては、労働者派遣法4条、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令」2条で定められています。

派遣労働における指揮命令権に関しては、以下のページで解説していますので、ご参照ください。

派遣の仕組み

派遣労働の派遣可能期間(期間制限)について

労働者派遣法では、労働者を派遣できる上限期間について、事業所単位、個人単位でそれぞれ定められており、それを超えて派遣し続けることはできません。

次項から、派遣上限期間について解説します。

派遣先事業所単位の期間制限

労働者派遣法では、『派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない(労派遣法40条の2)』と定めています。

同一事業主からの派遣労働者受け入れは、原則3年までと制限されています。これが事業所単位の期間制限です。3年を超えて受け入れたい場合、派遣先会社の過半数労働組合、または労働者の過半数を代表する者から意見聴取しなければなりません。そのような合意が必要なのは、派遣社員が多くなりすぎ、いわゆる正社員の立場が脅かされないようにという理由があります。

派遣労働者個人単位の期間制限

労働者派遣法では、派遣元の事業主は、就業の場所における組織単位ごとの業務について、3年を超える期間、同一の派遣労働者を派遣してはならないと定められています(労派遣法35条の3)。また、派遣先会社は、派遣元の事業主から、3年を超える期間、同一の派遣労働者からの役務の提供を受けてはならないと定められています(労派遣法40条の3)。

つまり、同一派遣労働者の同一単位組織(同じ会社の同じ〇〇課など)への派遣は、原則3年が上限とされています。これは個人単位の期間制限ですので、会社の労働組合が合意したとしても、3年以上同じ組織単位で働くことはできません。このような制限の理由には、派遣労働は長期間に及ぶものではなく、あくまでも一時的な働き方であるという考え方があります。

期間制限の例外

労働者派遣には事業所単位、個人単位で期間制限がありますが、例外として期間制限の定めがないケースもあります。

  • ・無期雇用(派遣元と期限の定めのない雇用契約を結んでいる)の派遣労働者
  • ・60歳以上の派遣労働者
  • ・有期プロジェクト業務(あらかじめ期限が決まっているプロジェクトでの業務)
  • ・日数限定業務(派遣先会社の通常の労働者の所定労働日数より相当程度少なく(具体的には半分以下)かつ10日以下の業務)
  • ・産前産後休暇、育児・介護休業による欠員の代替要員
  • ・事業の開始・転換・拡大・縮小・廃止のための業務で、完了の目途がすでに立っている業務

このほかに、紹介予定派遣の場合は上限が6ヶ月と定められています。

派遣の抵触日について

労働者派遣には、事業所単位、個人単位の期間上限があり、どちらも3年と定められています。期間制限である3年が完了した翌日のことを「抵触日」といい、例えば派遣されてから3年になるのが8月31日であれば、抵触日は9月1日となります。抵触日を過ぎると、派遣労働者はその会社で就労することはできず、派遣先会社も、同一の派遣労働者の受け入れは不可となります。

なお、抵触日は、個人単位よりも事業所単位が優先されます。例えば、派遣社員Xさんの派遣先会社A社への期間制限が、2020年9月1日から2023年8月31日までだとします。しかし、Xさんが雇用されている派遣元会社B社から派遣先会社A社への期間制限が2022年8月31日までだった場合、Xさんは2022年8月31日までしかA社では働けないことに注意が必要です。

抵触日を迎えた派遣の期間制限延長について

抵触日を迎えても、期間制限を延長する方法はあります。

事業所単位の期間延長は、過半数労働組合か、組合がなければ労働者の過半数を代表する者に対して、抵触日の1ヶ月前までに意見の聴取をします。事業所単位での期間制限が設けられているのは、派遣労働者がいわゆる正社員の立場を脅かさないようにとの理由からなので、組合(なければ代表者)の合意が得られれば事業所単位での期限は延長が可能です。

個人単位の期間延長は、同一社内で所属する部署を変えるという方法があります。例えば、総務課から経理課など、部署移動をすることで3年の期限を延長することが可能です(ただし、この場合も過半数労働組合か過半数労働者代表への意見聴取と合意は必要です)。

その他の制限事項

これまで説明してきたこと以外にも、派遣対象業務における制限事項など、派遣労働者を雇い入れるにあたって知っておくべきこと、留意しなければならないことがあります。

グループ企業への派遣禁止

派遣元会社の事業主が属するグループ企業への派遣は、全体の8割以下と定められています。派遣業界では、同一企業グループに派遣会社もあり、そこからグループ内の別企業に労働者を派遣するという形態もよく見られます。しかし、このような形態は労働力の需要と供給の調整がグループ内で完結してしまうばかりか、正規雇用の社員を登用せず、派遣社員ばかりで代替することになってしまいます。そのような事態を防ぐため、2012年に法改正がなされました。

なお、全体の8割以下というのは労働者の人数ではなく、総労働時間で判断されます。

離職後1年以内の労働者の派遣禁止

派遣元は、ある会社に直接雇用されていた労働者(いわゆる正社員だけでなく、パートタイマー・アルバイトも含む)を、離職後1年が経過していないうちに同じ会社へ派遣することは禁止されています。また、派遣先会社も、その労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることはできません。

これは、労働者を直接雇用せず派遣労働者として労働させることで、待遇や労働条件を下げることを防止するための決まりで、2012年の法改正から導入されました。

ただし、60歳以上の定年退職者は対象から除外されます。

日雇い派遣(30日以内)の禁止

2012年の法改正により、雇用管理責任がどこにあるか不明確であること、雇用の不安定さ、給与のピンハネ等の問題が多いことから、日雇い派遣も原則禁止されました。「日雇い」といいますが、1日のみの派遣ではなく、日々または30日以内の期間で雇用される労働者も含みます。日雇い派遣に該当するか否かは、派遣元との労働契約が30日以内であるかどうかで判断されます。労働契約が31日以上であれば、日雇い派遣とはみなされません。

日雇い派遣の例外

日雇い派遣禁止の規制には、例外対象もあります。

  • ・特定の業務(ソフトフェア開発、通訳、秘書、財務処理、添乗、広告デザイン、OAインストラクション等)
  • ・60歳以上の人
  • ・雇用保険の適用を受けない学生
  • ・副業として従事する人(生業の収入が500万円以上ある人に限る)
  • ・主たる生計者以外の人(世帯収入が500万円以上の人に限る)

上記に当てはまる人は、日雇派遣の禁止は適用されません。

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