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労働組合法上の労働者性

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働組合法上の「労働者」とはどのようなもので、また、「労働者性」はどのような基準について判断されるのでしょうか。労働基準法上では、「労働者」は専用従属性を中心として判断されます。それとは異なり、労働組合法上の「労働者」は経済的従属性を中心として判断されることから、労働基準法上の労働者性よりも緩やかに認められるという点に特徴があります。

本記事では、労働者の定義、労働者性について等、詳しく解説していきます。

労働者の定義について

「労働者」の概念については、労働基準法と労働組合法とで、その意味内容が異なるため、場合に応じて慎重に取り扱う必要があります。この点、判例上は、労働組合法上の労働者概念につき、経済的従属性を中心とした判断基準を採用しており、労働者性をより広く捉えています。

労働組合について、詳しくは下記のページをご覧ください。

労働組合

使用者はどのような構成の団体と労使交渉をしなければならないのか

我が国においては、労働者が加入する単位組合(企業内組合等)と、当該労働者を雇用する使用者との間で交渉が行われる場合が多いですが、場合によっては、単位組合の上部団体(産業別組合など)や下部組織(支部、分会)等も法適合団体の要件を満たしており、団体交渉の当事者となることもあり得ます。このような状況においては、単位組合と上部団体ないし下部組織が競合して団体交渉権を持つことから、同一事項について二重交渉のおそれが生じると考えられます。このおそれが強い場合には、使用者は、二重交渉のおそれを回避するために、団体間で団体交渉権が調整・統一されるまで、一時的に団体交渉を拒否することができると考えられています。

労働組合法上と労働基準法上の労働者の違い

労働基準法上の労働者とは

労働基準法は、同法上の労働者を、『職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という)に使用される者で、賃金を支払われる者』と定義しています(労基法9条)。当該規定は、労働基準法及び労働基準法を基礎とした労働関係の諸法規(労働安全衛生法、労働者派遣法、パートタイム・有期雇用労働法他多数)の適用対象を画する意味を持つ重要な定義です。

裁判例においては、「使用」性(労働が指揮監督下で行われているか)につき、①仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、②業務遂行上の指揮監督の有無、③拘束性の有無、④代替性の有無により判断がされ、「賃金」性(報酬が労務の対償として支払われているか)については、報酬が使用者の指揮監督のもとに一定時間労務を提供していることに対する対価として支払われているかによって判断されることが一般的です。

労働組合法上の労働者とは

労働組合法は、同法の労働者を、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義しています(労組法3条)。この点、本定義は、労働組合法の適用対象を画定する意義を有しています。また、この概念は、憲法28条の「勤労者」及び労働関係調整法上の「労働者」と同一の射程を持つ概念であると理解されています。

問題となる労働者が、上記定義に当てはまるか否かを判断する基準としては、2011年厚労省労使関係法研究会報告書が示した判断基準が参考になります。

両者に違いが生じるのはなぜか

労働基準法の趣旨は、労働条件に関する最低基準を設定して労働者にこれを保障することにある一方で、労働組合法の趣旨は、使用者と比して経済的に劣位に置かれる労働者に対して、団体行動や団体交渉を行うことを認め、労使が対等な関係で労働条件を決定できるよう促すことにあります。このような趣旨の違いから、学説においては労働組合法上の労働者概念は、経済的従属性の有無を中心として判断されるべきであり、使用者への従属性を主たる判断要素とする労働基準法上の労働者概念よりも、労働者性を広くとらえるべきであるという考え方が一般的です。

労働組合法上の「労働者性」の判断基準

2011年厚労省労使関係法研究会報告書において、労働組合法上の労働者性の判断基準について、①事業組織への組入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性を基本的判断要素とし、④業務の依頼に応ずべき関係、⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束の存在を補充的判断要素として示しています。また、⑥顕著な事業者性は、労働者性の評価において消極的に作用する判断要素であるとされています。

基本的判断要素

2011年厚労省労使関係法研究会報告書においては、①事業組織への組入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性の3点が、労働者性の基本的判断要素として挙げられています。このうち①については、相手方の業務遂行に質的量的に不可欠な労働力として組織において位置付けられているか等の点に基づいて判断されます。また、②については、契約締結や更新の際に個別に労働条件を交渉する余地がないか等の点に基づいて判断されます。さらに、③については、報酬が業務量や時間に基づいて算定されていたり、一定額の支払いが保障されていたりするなど、労働組合法3条にいう「賃金・給料その他これに準ずる収入」との性格を有しているか否か等の点に基づき判断されます。

補充的判断要素

2011年厚労省労使関係法研究会報告書においては、④業務の依頼に応ずべき関係、⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束という2点が、労働者性の補充的判断要素として挙げられています。④については、業務依頼を実際に拒否した場合に、契約の解除や更新拒絶等、事実上の不利益取扱いがなされる運用が存在するか、また業務以来の拒否自体が実際に行われているか否かによって判断されます。また、⑤については、労務供給の態様がマニュアル化されているなどして裁量の余地がないか、労務提供の日時・場所等について労務提供者に裁量の余地がないかなどに応じて判断されます。

消極的判断要素

労働者性の評価に当たっては、⑥顕著な事業者性は、消極的に作用しうる判断要素であるといえます。例えば、労務供給者に自己の才覚を発揮することで利得を増加する余地が広範にある場合や、想定外の利益得失が労務供給者自身に帰属する場合、受託した業務を他人に代行させることが可能である場合や実際に代行させている場合においては、当該労務提供者の経済従属性は弱く、その分労働組合法上の労働者性が薄くなるものと位置づけられます。

労働者性が認められた事例

具体的な労働者性の判断の局面においても、労働基準法上の労働者性と比較して、労働組合法上の労働者性は緩やかに認められています。

労働者性が認められた裁判例は多岐にわたります。例えば、これまでの裁判例では、個人事業主に近い業態の傭車運転手や、業務委託契約により製品を修理する個人代行店、専門的技能を持つ芸能関係者、プロスポーツ選手、NHK等の委託集金人、サンダルの賃加工を行う職人など、個別的労働関係における労働契約の当事者とは若干異なる範囲まで、労働者性が認められています。

以下のリンク先で事例の詳細を紹介していますので、ご参照ください。

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