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従業員の申告・届出義務に関する服務規律

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

申告・届出に関するルールは、服務規律に定めることが重要です。社内ルールを統一することで秩序が守られたり、労働者の管理がしやすくなったりするメリットがあるためです。

しかし、「具体的にどのような規定を設けるべきなのか」、「どんな事由で申告・届出を求めることができるのか」など疑問を持たれる方も多いでしょう。 そこで本記事では、申告・届出に関するルールを定める際のポイントについて、詳しく解説していきます。社内規定の作成に悩まれている方は、ぜひ参考になさってください。

労働者の申告・届出義務と服務規律

会社は、必要に応じて労働者に申告・届出を求めることができます。例えば、勤怠に関する届出や、婚姻時の申告が挙げられます。

これらの申告・届出は、会社が労働者の状況を正しく把握するだけでなく、給与計算や社会保険の加入といった基本的な手続きに欠かせません。

そこで、申告・届出のルールは服務規律として定め、就業規則に明記しておくことが重要です。また、就業規則に定めるだけでなく、その内容を労働者にしっかり周知することも必要です。

効力の発生と不遡及の原則

申告・届出の効力は、それが承認された時点で発生することが通常です。そのため、労働者が申告・届出を怠った場合、手続きが正しく行われない可能性があることに注意が必要です。例えば、勤怠システム上では時間外の在社が確認されても、時間外労働の届出が出ていなければ、残業代の支給対象として漏れてしまう可能性があります。

このような事態を防ぐため、会社は申告・届出の期限についても周知・徹底することが重要です。

ただし、就業規則の規定は、当該規定が定められる前の事案に遡って適用することができません(不遡及の原則)。よって、申告・届出を求めることができるのは、当該規定が策定された後の事由に限られるのが基本です。

労働者としての地位・身分における申告・届出義務

申告・届出には、労働者である以上必ず行わなければならないものがあります。
どのような事由で申告・届出が必須とされるのか、具体的にみていきましょう。

なお、申告・届出以外にも、労働者が遵守すべき事項には様々なものがあります。詳しくは以下のページで解説しますので、併せてご覧ください。

労働者としての地位・身分による規律

異動の申告・届出

結婚や離婚、出産、住所変更といった事由が発生した場合、申告・届出が必須となります。

これらの事由は、家族手当や通勤手当の支給額に影響するものであり、申告・届出がないと賃金の不正受給や未払いになる可能性があるためです。

服務規律では、以下のような規定を設けておきましょう。

  • 結婚又は離婚した場合及び氏名・住所・家族の状況等に異動があった場合、変更があった日より〇日以内に、所定の様式により会社に届け出なければならない
  • 住所・家族関係及びその他申告すべき事項について、虚偽の申告を行わないこと
  • 本規則に違反した場合、懲戒処分の対象とする

公職立候補・公職就任時の申告・届出

労働者が公職(裁判員や議員)に立候補又は就任した場合、必ず申告・届出を求めましょう。
なぜなら、労働者が公務を執行するための時間を要求した場合、会社は休暇や休職の措置をとる必要があるためです(労基法7条)。

具体的には、以下のような規定を設けると良いでしょう。

  • 労働者は、公職選挙法による選挙に立候補しようとするとき、及び公職に就任しようとするときは、あらかじめ会社に届け出ること
  • 公民権行使によって業務に支障が出る場合、会社は当該労働者に対して休職命令を出すことができる

なお、公務の執行を理由に“懲戒解雇”とするケースもありますが、必ず認められるとは限りません。懲戒解雇の有効性は、業務への支障の程度や労働者の立場等を踏まえ、個別的に判断されるためです。

遅刻・早退・欠勤の申告・届出義務

突然の遅刻・早退・欠勤は業務に大きな支障をきたすため、勤怠関連の事由は「事前申請・事前承認」とすべきでしょう。また、その旨を就業規則で明確化することが重要です。

例えば、「遅刻・早退についてはあらかじめ会社の承認を得ることとし、事前承認なく遅刻する場合、事後速やかに届け出ること」といった規定を設けます。

また、交通機関の遅延などやむを得ない理由により遅刻する場合、遅延証明書の提出を義務付けるといった例外的な取扱いも定める必要があります。

なお、当日の遅刻・欠勤連絡は「労働者本人が電話で行う」と定めるのが望ましいでしょう。家族からの連絡やメールなど一方的な報告では確実な承認ができませんし、出勤時期の目安や急ぎの業務の確認もできないためです。

始業・終業時刻について

勤務状況を正確に管理するため、始業・終業時刻についても具体的に定めます。例えば、以下のような規定を設けましょう。

  • 始業時刻とは“業務を開始する時刻”をいい、終業時刻とは“業務を終了する時刻”をいう
    ※業務に付随する強制的な作業(着替え等)がある場合、その時間も会社の指揮命令下にあるため、労働時間に含まれるのが基本です。
  • 始業・終業時刻は、タイムカードの打刻記録に基づいて管理すること
    ※その他、使用者が現認する方法や、パソコンの使用時間の記録に基づく方法等があります。

なお、やむを得ず自己申告制によって労働時間を管理する場合、使用者は以下の点に留意する必要があります。

  • 自己申告の適切な運用について十分な説明をすること
  • 自己申告により把握した労働時間と、実際の在社時間に乖離がないか調査すること
  • 労働者が自己申告できる時間数の上限を設けないこと
  • 残業時間を削減するための社内措置が、労働者が適正な労働時間を申告する妨げとなっていないか確認すること

労働時間の考え方は、以下のページでわかりやすく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

労働時間

無断欠勤の取扱い

申告・届出もせず、自己都合で会社を休むことは「無断欠勤」となります。狭義には申告・届出を怠る「無届欠勤」にあたりますが、より悪質性が高いといえるでしょう。

就業規則では、無断欠勤となるケースを明確にするのがポイントです。例えば、「申告・届出がなく、かつ正当な理由がない欠勤については、無断欠勤とする」「申告・届出があっても、欠勤に正当な理由がない場合は無断欠勤とする」といった記載が考えられます。

また、申告・届出のタイムリミットを決め、それを過ぎた場合は無断欠勤とすることも可能です。その場合、就業規則には、「○時までに連絡をせず欠勤した場合、無断欠勤とする」といった規定が必要です。

ただし、不慮の事故に遭った場合等を想定し、「やむを得ない事情により連絡が遅れた場合、無断欠勤としないものとする」といった配慮もすべきでしょう。

傷病による欠勤と診断書の提出

病気や怪我による欠勤の場合、欠勤理由や出社日の目安を確認します。おおよその欠勤日数が不明だと、他の労働者のスケジュールが立たず混乱を招くおそれがあるためです。

なお、まだ病院を受診していない場合、診断後に改めて報告をもらうようにしましょう。

また、欠勤が長引く場合は診断書の提出を求めるのが一般的です。欠勤何日以上で診断書を提出させるかは会社の任意ですので、定めたうえで就業規則に明記しておきましょう。

個人番号(マイナンバー)の申告・届出義務

個人番号(マイナンバー)は、社会保険の加入手続きや源泉徴収票作成事務で必要になります。そこで、会社は労働者に対してマイナンバーの提出を求めることができるとされています(マイナンバー法14条)。

ただし、個人情報の開示に消極的な労働者もいるため、マイナンバーの取得・利用目的を就業規則で明確にしておく必要があります。

また、マイナンバーの提出を服務規律に定めることで、これを拒否する労働者を懲戒処分にできる可能性もあります。

ただし、直ちに懲戒処分が認められるとは限らないため、まずは提出の必要性を十分に説明し、それでも応じない場合は書類の提出先(税務署等)に相談されると良いでしょう。

申告・届出の方法や期限に関する定め

申告・届出の方法や期限は、服務規律で明確に定めましょう。曖昧な規定だと申告・届出が遅れ、手続きに支障をきたす可能性があります。

では、具体的にどのように規定すべきか以下でご紹介します。

申告・届出方法の指定

申告・届出は、所定の様式を用いるよう定めることができます。遅刻や早退、欠勤、住所変更といった事由によって、必要事項を記入できる書式を準備しましょう。

特に、有給休暇については、基本的に年5日以上取得させることが義務付けられているため、管理のしやすさも追及すべきといえます。例えば、取得した合計日数が一目で分かるような書式を作成しても良いでしょう。

事後の申告・届出について

勤怠関連の申告・届出は、業務への影響を最小限にするため、「事前申請・事前承認」とするのが基本です。突然の遅刻・早退・欠勤は業務の遅れにつながり、職場全体を巻き込む可能性もあるためです。

ただし、当日の朝に体調不良になるなど事前申請ができないケースでは、例外的に事後申請を認める必要があります。

これを踏まえると、規定例は以下のようになります。

遅刻、早退、欠勤等をする場合、あらかじめ会社に届け出て承認を得ること。ただし、やむを得ない事情で事前申請ができない場合、出勤後速やかに届け出て承認を得ること。

服務規律に違反した場合

申告・届出に関する服務規律違反があった場合、懲戒処分の対象となる可能性があります。ただし、必ず懲戒処分が認められるわけではなく、違反の程度等を踏まえて個別的に判断することになります。

懲戒処分の詳細は、以下のページで解説しています。併せてご覧ください。

服務規律違反における懲戒処分
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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