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整理解雇を行う際にポイントとなる「整理解雇の4要件」

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

企業が不況や経営難等で人員削減の必要に迫られて解雇を行うことがあります。“リストラ”や“整理解雇”等と呼ばれますが、多数の労働者を解雇の対象とするためには、高度な必要性が求められており、裁判例においては、4つの要素を満たす必要があるという基準が示されています。

ここでは、“整理解雇”に着目し、その概要について解説していきます。

整理解雇の定義

整理解雇とは、企業が、資金繰りの悪化、支店や部門の閉鎖等に伴い経営上必要とされる人員削減のために行う解雇をいいます。通常は、少数の労働者の解雇にとどまるものではなく、多数の労働者に対して同時期に解雇することになります。

整理解雇は労働者の私傷病や非違行為といった労働者の責めに帰すべき事由による解雇とは異なり、使用者の経営上の理由に基づく解雇である点に特徴があります。労働者の責に帰すべき事由があるわけではないことから、終身雇用をはじめとした長期雇用慣行が一般的なわが国では、解雇権濫用の法理の適用において、通常の解雇よりも厳しく判断するために、裁判例によって判断要素が整理されてきました。

解雇権濫用の法理について

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となります(労働契約法16条、解雇権濫用法理とも呼ばれます。)。整理解雇においても、同様であり、解雇権を濫用していると評価された場合には、その解雇は無効とされてしまいますが、その判断要素については、通常の解雇よりも詳細に分析されています。

詳しくはこちらも併せてご覧ください。

退職及び解雇

整理解雇の4要素

整理解雇も解雇である以上、その有効性は解雇権濫用法理に照らして判断されますが、裁判例においては、整理解雇の正当性を慎重に判断するために、独特の4つの要素が確立されています。

人員削減の必要性

整理解雇が解雇権の濫用とならないためには、まず人員削減を行う経営上の必要性が存在することを要します。この「必要性」は、人員削減をしなければ倒産必至という状況までは要求されませんが、高度の経営上の困難から当該措置が要請される程度は求められるとされています。概して裁判所の判断は、経営者の判断を基本的に尊重する立場にあると評価されており、この要素が否定されるケースは、財務状況の把握や予測が不正確と認められた場合や、人員削減の決定後に多数の新卒者を採用する等明らかに矛盾する行動をした場合に限られると考えられます。

解雇回避努力義務の履行

次に、解雇回避努力義務を十分に履行したことが求められています。すなわち、人員削減を実現する際には、使用者は、配転、出向、一時帰休、希望退職の募集等、解雇以外の他の手段(労働者にとって解雇よりも負担が小さい手段)によって、できる限り解雇回避の努力をすることが求められています。これらの手段を実施することにより整理解雇対象者の数を減少させる点も努力の一環といえるでしょう。労働者にとって不利益の程度が小さくなる他の手段を試みることなく、整理解雇を最初の手段として講じた場合には、ほぼ例外なく整理解雇が解雇権の濫用とされていることから、裁判例においても重要な要素として位置づけられていることは間違いありません。

もっとも、整理解雇を回避するためにどのような手段をどのような手順で試みるかについては、企業の規模や事業内容、それに伴って労働者に求められる技術や資格等、多様な要素を考慮する必要があるため、企業の裁量の余地は広いものと考えられており、企業が採択した手段と手順が当該人員削減の具体的状況の中で、全体として整理解雇回避のための真摯かつ合理的な努力と認められるかという観点から評価される傾向にあります。

人選基準及び人選の合理性

さらに、使用者は被解雇者の選定について、客観的で合理的な基準を設定し、これを公正に適用して行うことが必要となります。基準をまったく設定しないでなされた整理解雇や、裁判所が客観的かつ合理的なものではないとみなした基準による整理解雇は無効とされています。通常は、労働者の労働能力、解雇が労働者の生活に与える打撃、労働者間の公平等を考慮しながら、勤務成績、勤続年数、年齢(定年に近いか否か)、職種(幅広い業務を担当できるか、限定された職種であるか等)、転職可能性といった要素が複合的に基準として用いられます。

手続きの相当性

整理解雇が認められるためには、労働組合または労働者に対して事前に説明し、納得を得るよう誠実に協議を行ったことも必要となります。労働協約上、解雇一般または人員整理について、使用者に組合との協議を義務付ける条項がある場合には、具体的な人選の基準や当否について十分な協議を経ないでなされた解雇が協約違反として無効となることに争いはありませんが、そのような協約がない場合にも、使用者は労働組合または労働者に対して整理解雇の必要性とその時期・規模・方法につき納得を得るために説明を行い、さらにそれらの者と誠意をもって協議すべき信義則上の義務を負うと考えられています。

このような手続きの相当性を遵守することは、解雇以外の解決手段を見出す機会になることもありますので、十分な協議を重ねることは整理解雇に臨むにあたって重要でしょう。

会社解散、倒産に伴う整理解雇

使用者が法人であって、その法人が解散する場合には、清算手続きが完了すれば法人格は消滅し、労働契約関係も消滅します。

会社解散、倒産による解雇の場合といえども、労働基準法の解雇予告義務(20条)や労働協約上の解雇協議義務の適用があります。また、解雇権濫用規制(労働契約法16条)も雇用関係の一般的ルールとして適用されますが、解散等による企業廃止に伴うものであることが「客観的合理的理由があり、社会通念上相当として是認できる場合」にあたると考えられます。さらに、会社解散等による解雇は、企業が存続しつつ人員削減措置をとる整理解雇とは異なるため、整理解雇の4要素は適用されません。しかし、解散会社等であっても、解散等のいきさつ、解雇せざるを得ない事情、解雇の条件等は従業員に対し説明すべきであり、そのような手続き的配慮を著しく欠いたまま解雇が行われた場合には、「社会通念上相当として是認」できない解雇として、例外的に解雇権の濫用と判断されると考えられます。

整理解雇の通知方法

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前に予告をしなければなりません。30日前に予告をしない使用者は30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。

解雇予告に関する詳細はこちらをご覧ください。

解雇予告について

整理解雇と退職金の支給について

労働基準法は、「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定めています(労働基準法11条)。そして、一般的には、就業規則やこれと一体をなす賃金規則において、支給条件が明確に規定され、使用者がその支給を約束しているときは、その支給金は「労働の対償」であり、賃金とされています。

退職金は、支給条件が明確で使用者に支払義務があれば賃金の後払い的性格を有し、「賃金」にあたると解されています。ですから、整理解雇の場合であっても、就業規則等で退職金について定めているときは、その支給条件が明確である限りはその請求権が発生するものであり、退職金を支払わなければなりません。

解雇理由証明書の交付義務

整理解雇の場合でも、通常の解雇と同様に、解雇理由証明書を交付する必要があります。ただし、労働者が、解雇の予告をされた日から退職するまでの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合に限られていますので、使用者は、全員に対して交付しなければならないわけではありません(労働基準法22条2項)。とはいえ、交付を求められた場合には遅滞なく交付する義務が生じますので、整理解雇の実施にあたって準備しておくべき事項といえます。

解雇理由証明書の交付の趣旨は、解雇が恣意的な理由でされるのを防止すること、労働者が解雇についてやむを得ないと受忍するか、これを争うかを迅速に判断できるようにすること、争う場合にも、第三者機関(あっせんを担当する行政機関や裁判所)が解雇の有効性を迅速適格に判断できるようにすることが狙いと考えられています。実際に、裁判所において解雇の効力について争われた場合には、解雇理由証明書に記載した解雇事由の範囲で、使用者と労働者の双方が主張・立証を尽くすことになります。

詳しくはこちらも併せてご覧ください。

退職証明書・解雇理由証明書について

整理解雇に関する裁判例と解説

整理解雇が有効となった裁判例

「半日パート」の廃止に伴う整理解雇が有効とされた【前橋地方裁判所 平成14年3月1日判決】を紹介します。

<事案の概要>

Xは、平成3年9月頃、労働時間は午前中の3時間45分のみのパートタイマーとしてY社に雇用されました。 平成9年10月17日、Y社は、Xを含む半日パート全員に対し、生産ラインの製品検査の機械化による余剰員を理由に同年12月15日をもって退社してもらいたい旨通告しました。Xは、Y社に対し、引き続き就労したい旨申し入れました。これに対しY社は、Xに対し、退職慰労金の支払いを提示し、重ねて退職を勧奨しましたが、Xは退職慰労金の受取りを断りました。Y社は、Xに解雇通知書を交付して同月15日限りで解雇する旨通知しました。

同月10日頃、XはY社に対し解雇撤回申入書を提出し、同月15日には1ヶ月間の有給休暇届を提出しました。

同月17日、XはY社から提示された退職慰労金の受取りを断り、平成10年2月6日及び同3月10日にXが加入していた労働組合との間で団体交渉がもたれましたが解決には至りませんでした。

その後、Xは前橋簡易裁判所に解雇撤回等を求めた調停を申し立てましたが、調停は不成立で終了し、Xは本件解雇は無効であるとして労働契約上の地位確認を求めました。

<裁判所の判断>
  • ・Y社が半日パート従業員を職種として廃止する方針をとったことには合理性が認められ、いいかえれば、半日パート従業員について人員削減の必要性があったということができる。
  • ・Xが任意の退職に応じなかった以上、Y社がXを解雇したことは真にやむを得なかった。
  • ・本件において、解雇の人選に誤りを生じる余地はない。
  • ・Y社は、できる限り誠意をもってXに対したものといえる。
  • ・本件解雇の無効をいうXの請求部分は理由がない。
<コメント>

本判決は、いわゆる整理解雇の4要素に沿って判断を行ったうえ、整理解雇を有効とした事案です。 上述のとおりXはいわゆる半日パート従業員であり、人選の合理性に関しては、正社員や準社員等との取扱いに差異が認められています。本判決はかかる点を指摘し、整理解雇の個々の要素を検討するにあたっては、正社員や準社員等を整理解雇する場合とは差異が認められるとしており、非正規社員の整理解雇の事案検討にあたって参考になると考えられます。

整理解雇が無効となった裁判例

旅行事業部の廃止に伴う整理解雇が無効とされた【東京地方裁判所 平成14年7月9日判決】を紹介します。

<事案の概要>

XはY社の従業員であるところ、Y社は個品割賦事業部と旅行事業部からなっており、Xはこのうち旅行事業部に勤務していました。

Y社は、旅行事業部の廃止を決定し、従業員に対し、約2ヶ月後旅行事業部を廃止するとともに、同日をもって旅行事業部所属の従業員の全員を会社都合により解雇すると通知しました。

通知の翌月に、Y社は、Xに対し、「解雇通知書」と題する書面により、旅行事業廃業に伴う整理解雇を理由に解雇することを最終的に書面によって通知しました。

Xは解雇が無効であると主張し、Y社に対し、Xがその後自らY社を退職するまでの間についての雇用契約上の地位確認(会社への復職)を請求しました。

<裁判所の判断(解雇権濫用であるとして、解雇を無効と判断)>
  • ・Y社が旅行事業部を廃止すべき必要性は高度とまではいえない。
  • ・Y社には、旅行事業部を廃止したとしても、余剰人員を他の部門で吸収する余地がなかったとはいえない。
  • ・Y社は、Xの配転可能性を検討したことはなく、提案したこともなかった。
  • ・したがって、Y社が本件解雇を回避するための努力を十分に尽くしたとはいえない。
  • ・そのほか、Y社は、X及びXの所属する労働組合との間で本件解雇について十分な説明や協議をしたとはいえない。
<コメント>

経営の合理化等の要請から、企業が事業部の廃止を迫られるケースはいつの時代も避けられないと思われます。

本判決は、事業部の廃止に伴う所属人員全員の整理解雇につき、いわゆる整理解雇の4要素と実質的に同様の要素を検討し、解雇が客観的かつ合理的理由を欠くものであるから、解雇権の濫用として無効であると判断しました。

また、本判決は、「原告が時給社員であり正社員とは立場が異なるという被告会社の主張を考慮しても」として、時給社員と正社員の取扱いに差異が認められる可能性があることを示唆している点も特徴的ですが、やはり、解雇回避努力の要素が不十分であることが影響して、解雇の有効性が否定されています。

解雇にあたっては、解雇回避に向けた努力をはじめとする解雇に至るまでのプロセスが非常に重要であり、弁護士とも相談しながら検討する必要性は高いといえるでしょう。

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