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内定取り消しの際に違法とならないための注意点

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

採用内定の取り消しは、景気が急激に悪化した場合に増える傾向にあります。2020年に新型コロナウイルス感染症の影響で件数が大幅に増加し、2021年には前年より減少したものの、依然として高止まりしています。

しかしながら、会社側からの一方的な内定取り消しは基本的に違法とされており、一定の要素を満たしていなければ無効とされるおそれがあります。内定者とトラブルに発展した際に会社が被る社会的・経済的ダメージは大きいため、やむを得ず内定を取り消さなければならない事情がある場合には、慎重に手続きを進める必要があるでしょう。

ここでは、採用内定の取り消しにおいて、会社が注意するべき点について解説していきます。

採用内定取り消しは解雇と同じ

採用内定の時点で、原則として、労働契約は法律上成立しているものとして扱われます。労務提供を開始していなくても、労働契約自体は成立していると理解されます。 一度成立した労働契約は、簡単には取り消すことができません。

以下のページで「労働契約」の概要を解説していますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。

労働契約|基本原則と禁止事項について

採用内定を取り消すときには、内定通知書や誓約書に記載された「取消事由」に基づくこととなります。

ただし、採用試験の段階で会社が知ることのできた情報をもとに採用内定の取り消しはできず、また、採用試験の段階では知り得なかった情報でも、客観的に合理的で、社会通念上相当と認められるような事由でない限り、有効な「取消事由」にはなりません。

内定と内々定の違いと内定取り消しについて

内定は、既に採用が決定しいつから就業を開始するかも決定してるので、正式な労働契約の一種です。そのため、内定を会社側から一方的に取り消すことは、労働契約の解雇と同様に、適切な理由がなければ、基本的に違法とされます。

一方で、内々定は「採用予定の通知」です。内々定を行ったとしても、法律上は内定と異なり、労働契約は成立していません。そのため、内々定を会社側から取り消しても、基本的には違法とされません。

ただし、内定をもらえるという合理的な期待を有しているにもかかわらず、この期待を裏切ったときには、不法行為として会社に損害賠償責任が生じることがあるので注意しましょう。

内定取り消しが有効となるための条件

内定取り消しが有効となるためには、客観的かつ合理的な理由が必要であり、相当であると認められなければなりません。
具体的に、どのような事由があるときに内定取り消しが有効となるのかについて、内定者側の事由と、会社側の事由とに分けて解説します。

内定者側の事由

虚偽の申告があった場合 経歴詐称等、内定者の申告に虚偽があったことが判明した場合、その内容が重大で、内定者として不適格なケースでは、内定取り消しが認められる可能性があります。
刑罰法規に違反した場合 採用内定後に、内定者が傷害事件等の重大な犯罪行為をしたことによって逮捕された場合には、内定取り消しもやむを得ないとの判断があり得ます。
疾病などで働けなくなった場合 業務に耐えられないと思われるほど著しく内定者の健康状態が悪化した場合には、適切な労務提供が期待できなくなりますので、内定取り消しも可能と考えられます。
大学等を卒業できなかった場合 大学等の卒業を条件に採用内定を出しているケースで、その内定者が卒業できなかった場合には、採用の条件を満たさないため、内定取り消しが認められます。

内定者側に上表のような事由があるときには、内定取り消しが有効となる可能性があります。

なお、上表のような事由にあてはまるとしても、実際に適法な内定取り消しと認められるかどうかは個々の具体的な事情により異なります。

内定者側の事由によって内定取り消しが認められた判例

内定者側の事由によって内定取り消しが認められた判例として、無届デモを行って逮捕され、起訴猶予処分を受けた内定者の内定を取り消した事例があります(最高裁 昭和55年5月30日第2小法廷判決、電電公社採用内定取消事件)。

なお、当該事例では、「逮捕されたこと」や「刑事事件を起こしたこと」等は、会社が交付した書類に内定取り消しの要件として明記されていませんでしたが、内定を取り消す事由は、明記したものに限定されるわけではないと解しています。

会社側の事由

会社側の事由によって、一方的に採用内定を取り消す場合には、内定者には責任がないため、内定取り消しは簡単には有効だと認められません。

会社側の事由による場合の典型例としては業績悪化などが考えられますが、このような場合には、整理解雇が認められる場合と同様の基準に照らして、内定取り消しが有効か否かが判断されます。

会社都合により内定取り消しを行う際の注意点

会社都合により内定取り消しを行うときには、内定者が法的手段をとることによって無効と判断されないように、慎重に行う必要があります。
そこで、注意するべき点を以下で解説します。

労働契約法第16条

労働契約法16条は、判例によって確立された「解雇権濫用法理」を明文化したものであり、解雇を有効に行うためには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当であること」が求められるというものです。

労働省発職第134号

内定取り消しを行うときには、労働省発職第134号により会社が留意すべき事項がまとめられています。会社としては、内定取り消し防止のために最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講ずるものとされており、どうしても内定取り消し等を行わざるを得ない場合には、事前にハローワークへ通知し、ハローワークからの指導があれば、それを尊重する必要があります。

その他、内定取り消しの対象となった学生等の就職先の確保についても最大限の努力を行うこと、補償等の要求には誠意をもって対応することなども求められています。

解雇権濫用法理との関係

会社が労働者を解雇する場合、それによって労働者が被る不利益は大きいため、労働者保護の観点から解雇権濫用法理(労契法16条)が適用されます。

解雇とは、会社から一方的に労働契約を終了させることです。そして、採用内定の取り消しも解雇に該当します。なぜなら、内定取り消しは、対象者の意思にかかわらず会社の一方的な判断で採用内定により成立した労働契約を終了させるものだからです。そのため、採用内定の取り消しにも解雇権濫用法理が適用されます。したがって、客観的に合理的で、社会通念上相当と認められない採用内定の取り消しは無効となります。

なお、「解雇」について詳しく知りたい方は、以下のページから解雇事由等についてご覧いただけます。

解雇権濫用法理について

整理解雇の4要件

業績の悪化等を理由に内定取り消しをする場合は、基本的に《整理解雇の4要件》を満たす必要があるとされています。

《整理解雇の4要件》
①人員削減の必要性
②解雇回避努力義務の履行
③人選基準及び人選の合理性
④手続きの相当性(労働者や組合と誠実かつ十分な協議がなされたかどうか)

各要素の具体的な解説は、以下のページでご確認いただけます。ぜひこちらも併せてご覧ください。

整理解雇を行う際にポイントとなる「整理解雇の4要件」

労働基準法第20条

労働基準法20条により、労働者を解雇するためには30日前までに予告する必要があります。ただし、これが採用内定の取り消しに適用されるかどうかについては争いがあります。場合によっては対象者から解雇予告手当相当額を請求されるリスクもあるので注意しましょう。

内定取り消しの手続き

採用内定の取り消しは、労働契約が成立していると認められる以上は、通常の解雇と同様のルールに則り、手続きを踏むことが適切でしょう。

前出の労働省発職134号においては、内定取り消しにあたっても解雇予告を定めた労基法20条等の関係法令に抵触することのないように十分留意することを求めています。

以下、トラブル防止のための具体的な対策については、以下のページで紹介しています。

円満に内定取消を行う方法

新卒者の内定取り消し

新卒者の内定取り消しや、入社時期の繰下げをした会社は、その旨をハローワークに通知することが厚生労働省の通達で求められています。そして、「内定取り消しに関する対応が不十分なケース」であると認定されてしまうと、厚生労働省によりこの通知の内容と会社名が公表されることがあります。

会社名の公表は、学生が適切に会社を選択できるようにするための措置でもあります。採用内定を取り消した企業として公表されてしまうと、学生の応募控えのリスクを負うことになるため、内定取り消しの局面においては慎重に対応していく必要があります。

解雇予告・解雇予告手当

労働契約が成立していると認められる採用内定を取り消す場合、解雇予告を行うか、解雇予告手当を支払うべきです。

通常の解雇の場合には、少なくとも30日前には労働者に解雇の予告をしなければならず、また、それをしない場合には、予告から解雇までの期間が30日に足りない日数分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

なお、解雇予告等が採用内定の取り消しにも適用されるかについて、労基法21条で「試の使用期間中の者」が適用除外とされていることから、その前の段階にあたる採用内定にも適用されないとする説も存在します。しかし、前述のとおり厚生労働省は、支払いが必要との見解を明確に示しています。

解雇予告・解雇予告手当に関してさらに詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

従業員への解雇予告|通知と解雇手当について

証明書の交付について

内定者が求める場合には、会社は、採用内定の取り消し事由を書面に起こした解雇事由証明書を交付しなければなりません(労基法22条)。

内定者の請求を拒否したり、交付までに必要以上の遅滞が生じたりしたときには、会社に罰則が科せられるおそれがあります。それだけでなく、不誠実な対応が内定取り消しの有効性の判断に不利に影響するおそれもありますので、誠実な対応が求められます。

内定取り消しによる企業への影響

内定取り消しは、状況によっては、社会から問題視されるリスクや会社名を公表されてしまうリスク、損害賠償が必要になるリスク等を伴います。
それぞれについて、以下で解説します。

企業のイメージダウン

近年では、内定を取り消された者がSNS等を利用して、その事実を暴露する事例が見受けられます。仮に、内定を取り消された本人が社名等を公表しなかったとしても、他の情報から会社が特定されてしまうリスクがあることは否定できません。

「内定を取り消す企業」として名前が広まってしまうと、採用に支障をきたすおそれがあるため、内定取り消しの際には十分な補償を行い、「内定を取り消した事実を口外しない」という合意書を作成することをお勧めします。

内定取り消しによる会社名の公表

以下に挙げるような、“内定取り消しに関する対応が不十分なケース”に該当すると判断された会社は、厚生労働省によって会社名が公表されてしまいます。

  • 2年続けて内定取り消しを行ったケース
  • 同一年度内に10人以上の内定取り消しを行ったケース
  • 明らかに事業活動の縮小を余儀なくされているとは認められない取り消しを行ったケース
  • 内定取り消しの対象となった内定者に対して、内定取り消しの理由を十分に説明しなかったケース
  • 内定取り消しの対象となった内定者に対して、別の就職先を確保する支援を行わなかったケース

損害賠償請求の可能性

採用内定取り消しの事由として、「社風に合わない」といった、面接等によって認識できる理由を挙げる場合や、採用決定時にすでに予見できたはずの業績悪化等の事情を理由に入社日の直前に採用内定の取り消しを言い渡した場合には、不当な取り消しであるとして、内定者から損害賠償請求を受けるリスクがあります。

裁判等によって内定の取り消しが無効となれば、内定者は、内定取り消しの時点から労働者としての地位を維持していたことになるため、入社予定日から支払うはずだった賃金(バックペイ)を請求されるおそれがあります。

それに加えて、債務不履行又は不法行為に基づいて、慰謝料や、再就職までに要する一定期間の賃金相当額など、バックペイ以外のお金の支払いを求められるケースもあります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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