会社側・経営者側の労働問題(就業規則、問題社員対応、ハラスメント、メンタルヘルス、労働審判、退職勧奨)は弁護士法人ALGへ

採用

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

採用における労働契約の成立要件

労働者が企業等で働くためには、使用者との間に労働契約が成立する必要があります。

労働契約は、労働契約法6条、労働基準法9条、民法623条に書かれているように、労働者が使用者の元で労働することの対価として賃金を受けとることについての契約であり、労働者と使用者の両者の「合意」によって成立するものです。

また、労働契約の成立は、必ずしも書面で交わす必要はないとされています(民法522条2項)。

労働条件明示の義務

使用者は労働者と労働契約を締結する際に、賃金や労働時間やその他の労働条件等を明示しなければならず、基本的な労働条件以外にも、労働契約の期間や、労働契約を更新する基準、就業場所や業務等についても必ず明示しなければなりません(労基法15条1項)。

採用時の労働条件明示の義務について、さらに詳しい解説は、以下のページをご覧ください。

労働条件明示

労働者の募集

平成30年1月1日から、改正された職業安定法が施行され、求人情報に記載する労働条件が変更されました。

具体的には、試用期間の有無を明示しなければならない等、5つの項目が追加されています。また、令和2年4月1日以降は、就業場所における受動喫煙防止のための取組を明示する必要があります。

なお、求人情報掲載中に労働条件が変更になった場合には、変更前と変更後の労働条件を明示しなければならないものとされています。

採用に関する定めについて

憲法22条で保障されているように、公共の福祉に反しない限りはすべての人に職業選択の自由が与えられています。

採用する側の企業にも採用するかしないかの自由がありますが、差別的な取扱いをしないように、適切な基準を持って採否を決める必要があります。

例えば、憲法14条では人種や信条や性別や社会的身分で差別をしてはならないとしていますので、これらの事項を理由にして不利益な取扱いを行うことはできず、採用に関する基準を設けるにあたっては注意が必要です。

採用に関する事項は、就業規則に定めることは義務とされておらず、任意的記載事項とされているため、必ずしも就業規則に記載しておく必要はありませんが、後々のトラブル回避を考えれば、記載しておいた方が良いといえるでしょう。

採用基準について

採用基準に関しては、企業の現状や将来の状況を勘案して設定しておくべきでしょう。なお、採用基準に関して就業規則に明示的に定めることは企業の義務ではなく、企業の裁量の範囲も広く、経営状況に応じて変動しうるものでもあるため、明示することが適切ともいえません。

ただし、採用において、企業は、人種や信条、社会的身分による差別を行ってはなりません。厚生労働省は、「公正な採用選考の基本」を公表しており、そこでは、本人に責任のない事項(本籍、出生地、家庭環境等)を把握することや、本来自由であるべき事項(思想・信条、宗教、支持政党、労働組合の活動歴等)を把握することには配慮が必要とされています。

採用基準自体は企業ごとに自由に決定しても良いものですが、採用方法に疑義を持たれることの内容に配慮は必要です。

採用基準に関するさらに詳しい解説は、以下のページをご覧ください。

採用基準

採用選考における提出書類

採用のための提出書類は企業ごとに異なりますが、一般的には履歴書や職務経歴書、業務に必要な資格の取得に関する証明書等が挙げられます。

また、新卒であれば成績証明書や卒業見込証明書等も考えられます。

これらほとんどの提出書類は、個人情報にあたるものが多いため、取得目的を明示するほか、取得後の管理においても取扱いには注意が必要です。

採用内定について

応募者に対して内定通知書を発送し、内定承諾書や誓約書等を受領した場合、遅くともこの時点では、労働契約が成立していると評価されることが多いでしょう。

ただし、内定手続において労働契約が成立したからといっても、すぐに働き始めるわけではないため、内定後、働き始めるまでの期間は、始期付解約留保権付きの労働契約の成立と評価されることが通常です。

採用した労働者の管理

使用者が労働者を採用した場合、たとえまだ労務提供を受けていないとしても、内定者が企業秩序を乱すことのないように、決められたルールをきちんと守らせるといった管理は大切です。内定者の行為について一定の管理をすることにより、未然にトラブルを防止することもできます。

ここでは、採用した労働者の管理について詳しく解説します。

採用の種類と就業規則

就業規則とは、事業所ごとに作成される使用者と労働者の雇用に対するルールを定めたものです。

常時10人以上の労働者を使用する事業所に作成義務があります。

労働契約も就業規則と同様に使用者と労働者との間のルールを定めたものですが、異なったことが書かれていた場合は就業規則が優先されます。

就業規則は、正社員用、パート・アルバイト用等の雇用形態ごとに作成することができます。

例えば、就業規則が1種類しか無い場合は、すべての雇用形態にその労働条件が適用されてしまいます。

それを防ぐためには、「退職金に関する規定はアルバイトには適用しない。」等の文言を記載しておく必要があります。

採用における提出書類

採用が決定した場合は、入社誓約書や雇用契約書、中途採用の場合は年金手帳や雇用保健被保険者証等の労務管理に必要な書類を提出してもらうことが一般的です。このような提出書類については就業規則に規定しておくことで、内定者に提出義務を負担させることが可能です。

身元保証人について

採用時の提出書類である「身元保証書」は、法的に必ず取得しなければならない書類ではありません。

企業としては、身元保証人を定めることにより、採用された労働者に人物的な問題がないことを保証させるほか、労働者が企業に損害を与えた場合の保証人としての機能を持っています。

ただし、身元保証ニ関スル法律によって、期間制限が設けられているほか、民法の改正により保証の限度額となる極度額を定めておかなければ無効となるため、注意が必要です。

試用期間の定めについて

労働者を採用する場合、採用前は履歴書や面接等でその人材に適性があるかどうかを判断する必要があります。

しかし、採用された労働者が実際に業務に適しているかどうかは働いてみないとわからない部分もあります。

そのため、ほとんどの企業では、内定後の労務提供に関しては、正社員となる前に試用期間を設ける旨就業規則に定めることを行っています。

試用期間に関する詳しい解説は、以下のページをご覧ください。

試用期間

労働者が外国人の場合

現状の日本では、少子高齢化による人材不足により働き手が少ないという社会問題があります。

このため、外国人労働者の雇用に興味を持つ企業が増えています。

しかし、外国人を雇用するにあたっては、出入国管理法の規制を理解したうえで、自社の業務と適合する在留資格の確認が必要となります。

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます