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有期労働契約の解雇・解除について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

有期労働契約を締結した場合、原則として、使用者は契約した期間が満了するまでその労働者を雇用しなければなりません。しかし、やむを得ない事情があり、期間の途中で契約解除したり、解雇したりするケースもあるでしょう。そういったケースでは、契約解除や解雇が有効であるかを確認する必要があります。

このページでは、有期労働契約の途中契約解除・解雇についての概要を解説します。

有期契約者の途中契約解除の争点

労働契約は、労使間の合意に基づくものです。そのため、有期であっても、合意によって途中で契約を解除することは可能です。

しかし、会社都合(経営上の都合)で有期労働契約を途中解除するためには制限があり、法的に有効な途中解除だとみなされるには、一定の要件を充たす必要があります。

有効性の争点となるのは、主に以下の2点です。

  • ①そもそも解雇できる事情があるか(解雇の有効性)
  • ②契約途中に解雇できるか(中途解雇の有効性)

解雇の有効性

 労働者の解雇に関しては、以下のページで詳しく解説していますので、こちらをご参照ください。

正当な解雇事由とは

経営上の理由による解雇が有効であるかどうかは、以下の「整理解雇の4要件」で判断されます。

  • ①人員削除の必要性
  • ②解雇回避努力
  • ③手続の妥当性
  • ④被解雇者選択選定の妥当性

整理解雇については以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

整理解雇を行う際にポイントとなる「整理解雇の4要件」

有期労働契約期間途中の解雇・解除

民法
(やむを得ない事由による雇用の解除)第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

労働契約法
(契約期間中の解雇等)第17条
1 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

民法628条では、上記のように定められています。一方で、労働契約法17条では、期間満了まで労働者を解雇することはできないとしています。民法628条の解釈では、「やむを得ない事由」がない場合には雇用契約の解除をすることができないと労働契約法17条1項との関係から解されています。民法628条は強行法規ですので、「やむを得ない事由」にあたらなければ、契約の内容によらず、解雇することはできません。

以上のことからわかるように、使用者の都合で有期労働契約を解除するときに問題となるのは、この2つの条文にある「やむを得ない事由」です。整理解雇の要件を充たしていても、やむを得ない事由があると認められなければ、会社には、契約期間が満了するまでは労働者としての地位を保障し、賃金を支払う義務が生じます。この「やむを得ない事由」はかなりハードルの高いものであり、また、「やむを得ない事由」よりも緩やかな途中解除の可能性が示された契約を結んでいたとしても、労働契約法17条の規定によって「やむを得ない事由」がなければ期間満了まで労働者を解雇することはできないとされています。

また、民法628条の規定では、当事者の一方の過失による途中契約解除は、相手方に対して損害賠償の責任があるとしています。会社都合で途中契約解除をするに際し、会社側に過失が認められる場合、契約期間満了までの賃金を目安とする損害賠償の責任があります。反対に、労働者側からの契約期間中の途中解除で、その過失が労働者側にある場合、使用者側から損害賠償を請求できる可能性があります。

有期労働契約期間途中の解雇・解除(裁判例)

有期労働者の契約期間中の途中解除については、次のような裁判例があります。

【福岡高等裁判所 平成14年9月18日決定 安川電機八幡工場(パート解雇)事件】

事件の概要

原告X1とX2は、安川電機八幡工場において期間3ヶ月の労働契約でパートタイム従業員として雇用され、X1は14年間、X2は17年間、同様の契約が更新されていました。X1らは平成13年6月20日頃、同月21日から同年9月20日までの契約更新手続をしましたが、5日後の6月27日に会社は「パート退職願い」をXらに配布し、7月中に解雇する旨の意思表示をしました。原告らは会社には解雇理由が存在せず、解雇権の濫用であると主張し、労働契約上の地位保全及び賃金仮払いの仮処分を申し立てました。一審では申立ては却下されています。

裁判所の判断

福岡高裁は、この事件について、解雇の有効性についてはいわゆる整理解雇の4要件のうち、人員削減の必要性・解雇回避努力・手続の妥当性は認められ、X1については非解雇者選択の妥当性も認めました。しかし、契約の途中解除については、人員削減の必要は認めたものの、原告らの解雇は3ヶ月の雇用期間の中途でなされなければならないほどのやむを得ない事由を認めるに足りる資料はないことから、民法628条の規定によって無効であると判断しました。

有期労働契約途中解除の予告

やむを得ない事由の発生によって有期労働契約の途中解除を行う場合には、有期労働者に解雇の予告をしなければなりません。労働契約の締結に際して退職に関する事項を書面で明示するほか、解雇する場合、少なくとも30日前にその予告をするか、日数分の解雇予告手当を与える必要があります。

ただし、次の場合を除きます。

  • ・やむを得ない事由による経営破綻等を理由とする解雇の場合
  • ・懲戒処分を理由とする解雇の場合
  • ・日雇いの労働者の場合
  • ・2ヶ月以内の有期契約労働者の場合
  • ・試用期間である労働者等の場合

有期労働契約締結時の明示事項については以下のページで解説していますので、ご参照ください

有期労働契約締結の明示事項

解雇予告・手当に関しては以下のページで解説しています。こちらもご参照ください。

従業員への解雇予告|通知と解雇手当について

契約の自動更新

使用者は、契約更新の有無をあらかじめ労働者に通知しておかなければなりません。ただし、労働契約の締結にあたり、「異議がない場合は、契約は自動的に更新される」というような文言が明示されている場合、契約を自動更新することが可能です。また、契約書にそのような記載がなくとも、契約期間経過後に更新の手続をすることなく働き続けている状況を黙認した場合、民法629条1項「黙示の更新」があったものとして扱われます。

「黙示の更新」によって有期労働契約が反復された場合、労働者が、期間の定めのない雇用契約が締結された、あるいは継続して雇用される合理的期待があるという印象を持つことにより、雇止めに一定の制限がかかるケースがあります。

有期労働契約の自動更新によって生じるトラブルを防ぐため、更新の都度、面談を行い、労使間での意思確認の場を設ける等の注意が必要となります。

なお、有期労働契約者の雇止めに関しては以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

有期労働の雇止め法理

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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