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生理休暇に関する労働基準法上の定め

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

生理休暇とは、生理による症状がつらくて働けない女性のために設けられた休暇です。
労働基準法で定められた法定休暇であるため、たとえ就業規則に規定がなくとも、労働者から請求されたら、使用者は拒否することはできません。

しかし、生理休暇をとることを上司に言いにくい、自分だけとると周りから不公平と言われそうと感じる女性が多いようで、実際の取得率は低いのが現状です。

生理休暇は労働者の大切な権利であるため、使用者は法律上のルールを理解し、社内にも周知したうえで、女性労働者が生理休暇を取得しやすいような体制を整備することが必要です。

本記事では、生理休暇の概要や、生理休暇を取得させるうえでの注意点などについて解説しますので、ぜひご一読ください。

なお、生理休暇以外の女性従業員の労働に関する制度については、以下の記事をご覧ください。

女性従業員の労働

生理休暇とは

生理休暇とは、生理による体調不良で働くことが難しい女性が請求した場合に与えられる休暇です。
生理休暇は、有給休暇や産前産後休業、育児休業などと同じく、労働基準法68条で定められた法定休暇であり、会社が独自に与える夏季休暇、リフレッシュ休暇などの特別休暇とは異なります。

そのため、たとえ就業規則に規定がなかったとしても、生理で働けない女性労働者から請求された場合には、使用者は必ず生理休暇を与えなければなりません。請求を認めなかったり、無理に出勤させて働かせたりした場合には、30万円以下の罰金が科されるおそれがあるため注意が必要です。

生理休暇の取得率

厚生労働省の調査によると、2019~2020年に生理休暇を取得した女性労働者の割合は0.9%となっており、取得する女性はほとんどいないのが現状です。

取得率が低くなってしまう理由として、休みを取りにくい職場の雰囲気であることや、男性の上司や同僚から生理の辛さを理解してもらえないこと、恥ずかしくて言いにくいと感じていること等が挙げられます。
そのため、生理が辛かったとしても、痛み止めを飲んで我慢したり、生理休暇ではなく有給休暇を取って休んだりするケースが多いようです。

また、生理休暇という名称も取得しづらい要因となっていることが考えられます。そのため、最近では、「エフ休」や「ウェルネス休暇」などの名称に変更する企業も出てきています。

生理休暇の対象者

生理休暇は、生理による体調不良で働くことが難しい女性労働者であれば、誰でも取得できます。
役職や年齢、勤続年数、雇用形態、業務内容などによる制限はありません。

そのため、正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員などの非正規社員から請求された場合であっても、使用者は拒否することができず、生理休暇を与えなければなりません。

なお、公務員については、「生理休暇」というものはありませんが、「病気休暇」等を申請すれば、実質的に生理休暇を取得することが可能です。

生理休暇中の賃金

生理休暇中の賃金を有給とするか無給とするかは、労働基準法に定められていないため、労使間の取り決めによって決めることができます。そのため、生理休暇を無給としても違法ではなく、「1ヶ月に1日だけ生理休暇を有給で取得できる、それ以上の日数は無給とする」などと有給扱いとする日数を定めることも可能です。

ただし、生理休暇を有給にするか無給にするかについては、あらかじめ就業規則や賃金規程等に定めておかなければなりません。

なお、有給の生理休暇を取得した場合でも、年次有給休暇の日数が減ることはないため、年休を使い切ってしまった労働者であっても、生理休暇を請求することが可能です。

生理休暇の日数

従業員から生理休暇を請求された場合に、付与する日数には明確な上限がありません。なぜなら、「生理日の就業が著しく困難な女性」であれば生理休暇の請求が可能であり、日数を制限する規定が存在しないからです。

なお、生理の前に頭痛や腹痛等を生じるPMS(月経前症候群)については「生理日」ではないため、企業が生理休暇を与える義務は無いと考えられます。しかし、PMS(月経前症候群)も生理が原因で症状が出るものであり、人によっては重い症状が出るケースもあるため、各社の就業規則等により生理休暇の対象とすることは可能です。

取得日数の制限

就業規則等によって、生理休暇の日数を制限することは許されません。なぜなら、生理の期間の長さや苦痛の程度、就労の難易度は個人で異なるので、一般的な基準が存在しないからです。

そのため、たとえ特定の従業員が生理休暇を毎月取得しても拒否することはできません。

ただし、「有給とするのは1ヶ月につき1日に限り、それ以上取得した場合は無給とする」というように、生理休暇自体の日数を制限しないのであれば、有給扱いにする日数を定めても問題ありません。

時間・半日単位での取得

生理休暇は、必ずしも暦日単位で与える必要はなく、女性労働者から時間単位や半日単位で請求された場合には、時間・半日単位での取得を認める必要があります。

例えば、朝に痛み止めを飲んで、痛みが治まった後に出社する場合に時間単位で休暇をとる、出社してから生理痛が激しくなってきたので、午後から半日単位で休暇をとるようなことも可能です。

労働基準法の通達でも、労働者が希望する範囲内で、生理休暇を取得させることが望ましいとされています。

有給休暇付与への影響

生理休暇の取得日数に制限はありませんが、取りすぎることで、有給休暇の付与に影響するおそれがあるため注意が必要です。

会社には、生理休暇を出勤扱いとする法律上の義務はないため、生理休暇を欠勤扱いとしても違法とはなりません。
ただし、年次有給休暇は、出勤率が8割に満たない従業員には付与されません(労働基準法39条)。
そのため、生理休暇を欠勤扱いとした場合、生理休暇の取得日数が多いと、出勤率が下がり、翌年の有給休暇の付与日数に影響を与えるおそれがあります。

よって、生理休暇については、できる限り出勤日として扱うか、出勤率の算定で不利にならないよう、全労働日から除外するなどの配慮が求められます。

なお、年次有給休暇の出勤率の算定方法については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

年次有給休暇の出勤率の算定方法について
 

生理休暇の申請方法

生理休暇については、あらかじめ申請に関するルールを定めて、従業員に周知しておく必要があります。

生理休暇は、口頭によって当日に申請することが可能とされています。なぜなら、生理による体調不良は当日にわかることが多く、事前に生理で働けない日や何日休みが必要かどうかを予測するのが難しいからです。
申請時の伝え方は、口頭以外にも、メールでの連絡や勤怠システムなどの利用が考えられます。

なお、生理休暇を申請する場合に、医師の診断書を提出する必要はないとされています。

診断書等の提出

生理休暇を取得するために、従業員が医師の診断書等で「就業が著しく困難であったこと」までも証明させる必要はないと解されています。仮に会社側が証明を必要とする場合でも、上司や同僚の証言程度の簡単な証明で足りるとされます。

生理休暇の取得条件として診断書等の提出を義務づけてしまうと、就業が困難なほどの症状に耐えてまで通院し、費用をかけて診断書を入手しなければならなくなり、本人の負担が大きくなってしまいます。結果的に、生理休暇という労働基準法で保障される権利の行使が妨げられてしまうおそれがあるため、厳密な証明は必要ないとされているのです。

生理休暇の不正取得への対策

生理休暇は「生理で働くことが難しいこと」が取得条件となるため、生理日だからといって当然に取得できるわけではありません。
生理休暇を取得するときに厳格な証明が求められないことを利用して、取得条件を満たさないのに、生理休暇を取得することができてしまうという現状があります。

しかし、虚偽の申告を疑うあまり、生理の症状等について詳しく聞き出そうとすれば、セクシャルハラスメントで苦情を申し立てられてしまうリスクがあります。
そこで、生理休暇の不正取得を防ぐ対策として、以下のような、虚偽の申告で取得するメリットをなくす方法が考えられるでしょう。

  • 就業規則等で生理休暇を無給とする旨を定める。
  • 有給とする生理休暇の日数を制限し、制限日数を超えた分は無給とする。
  • 不正取得者に対する懲戒のルールを定める。

不正取得で懲戒処分が有効とみなされた判例

従業員が生理休暇を不正取得したとして下された懲戒処分について、有効であると判示した裁判例をご紹介します。

【盛岡地方裁判所一関支部 平成8年4月17日判決、岩手県交通事件】

(事件の概要)
本件は、バス会社の従業員が、趣味である民謡大会への出場を目的として生理休暇を取得したこと等を理由として、使用者であるバス会社から6ヶ月の懲戒休職処分を下されたことに対し、当該懲戒処分が無効であることの確認を求めた事案です。

(裁判所の判断)
バス会社の就業規則には、毎周期2日間の有給の生理休暇を認める規定がありました。

裁判所は、本件従業員が月経困難症であるとの証拠がなく、生理休暇を取得した経緯や休暇中の従業員の行動、業務の苦痛の程度などから、就業が著しく困難でないことは明らかだと認め、生理休暇の不正取得であり許されないと判示しました。
そして、要件を満たさずに生理休暇を取得したこと等が就業規則等に違反し、懲戒休職処分の要件に該当すると裁判所は認定しました。

ただし、バス会社が当初下した6ヶ月間の懲戒休職の処分は重過ぎるとして、3ヶ月程度の休職処分であれば有効になると判断しています。

生理休暇の取得を理由とした不利益な取扱いの禁止

労働基準法には、生理休暇を取得したことを理由に不利益に取扱うことを禁止する明文の規定はありません。
しかし、使用者が生理休暇の取得を大きく妨害するような行為は、生理休暇が設けられた趣旨に反するため、労働基準法68条に反すると判断される可能性があります。

不利益な取扱いにあたるか否かで争われることが多いケースとしては、生理休暇を取り過ぎているからとの理由でクビに(解雇)する、賞与や昇給についてマイナスの査定をする等が挙げられます。

以下で、生理休暇を取得したことを理由に、不利益な取り扱いを受けたとして争われた2つの判例をご紹介します。

生理休暇に関する取扱いが有効とされた判例

【最高裁 昭和60年7月16日第3小法廷判決、エヌ・ビー・シー工業事件】

(事件の概要)
本件は、被上告人である会社が、生理休暇を取得すると減額される「精皆勤手当」を創設し、さらに、その金額を2倍に増額したところ、当該「精皆勤手当」が生理休暇を取得する権利を侵害するとして争われた事案です。

(裁判所の判断)
裁判所は、生理休暇の趣旨について以下のように判断しました。

  • 有給であることまでは保障していない。
  • 取得日を出勤扱いにすることまでは義務づけていない。
  • 生理休暇が欠勤扱いとされることで、経済的利益を得られなくなる措置等を設けると、生理休暇の取得が事実上抑制される場合もある。

そして、被上告人である会社が「精皆勤手当」を創設し、さらに金額を2倍にした取り扱いについては、生理休暇の取得を一般的に抑制する趣旨ではなく、生理休暇が設けられた趣旨に反しないため、労基法68条に違反するものとは言えないと判示しました。

生理休暇に関する取扱いが無効とされた判例

【最高裁 平成元年12月14日第1小法廷判決、日本シェーリング事件】

(事件の概要)
本件は、賃金引上げに関する労働協約のうち、「法律上の権利に基づく不就労」(生理休暇・年次有給休暇等)も計算に入れて、前年の稼働率(出勤率)が80%以下の従業員を賃金引上げ対象者から除外するという条項(以下、本条項)の違法性が争われた事案です。

(裁判所の判断)
まず、従業員の出勤率の低下を防止するため、出勤率の低い者が経済的利益を失う制度には一定の合理性があるため、本条項が「法律上の権利によらない不就労」(欠勤・遅刻・早退等)についてのみ出勤率を算定するものであれば、違法とするべきではないと裁判所は判断しました。

しかしながら、本条項は「法律上の権利に基づく不就労」も含めて出勤率を算定するものであり、本条項に該当した従業員の不利益は大きく、さらに、労働基準法上の生理休暇の取得を強く抑制するもので、法が労働者に生理休暇を保障した趣旨を実質的に失わせるため、公序良俗に反して無効であると判断しました。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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