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生理休暇

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働基準法では、女性に特有の生理的機能を理由として休業することを制度として認めています。しかし、当該「生理休暇」の制度は、世間に広く認知されているとは言い難く、ほとんど利用されていない企業もあるかと思います。

では、対象となる女性労働者から請求された場合に、使用者にはどのような配慮が求められるのでしょうか。今回は、求められる配慮を考えるにあたって、生理休暇の概要や取得させるうえでのポイント等について解説します。なお、生理休暇以外の制度に関しては、下記の記事をご覧ください。

女性従業員の労働

生理休暇の概要

生理日の就業が著しく困難な女性労働者が休業を請求した場合、使用者は、その労働者を就業させることはできません(労基法68条)。これは、女性が備える、妊娠・出産を可能とする生理的機能(母性機能)を保護するために定められた制度であり、「生理休暇」といいます。

生理休暇は、法律で定められた制度であるため、たとえ就業規則に規定がなくとも、請求された場合には必ず付与しなければなりません。なお、あくまで「就業が著しく困難」であることが取得する条件となるため、生理日だからといって当然に取得できるわけではありません。

生理休暇の対象者

生理休暇は、「生理日の就業が著しく困難な女性労働者」であれば、誰でも取得できます。役職や年齢、勤続年数、雇用形態等による制限はありません。

したがって、正社員はもちろん、パートタイマーやアルバイター、契約社員等、非正規労働者から請求されたとしても、使用者は拒否することができません。

生理休暇の証明義務

生理休暇は、その性質上事前に申請することが難しいので、当日あるいは後日に申請するケースが多くみられます。このとき、医師の診断書等で「就業が著しく困難であったこと」までも証明させる必要はないと解されており、仮に会社側が証明を必要とする場合でも、上司や同僚の証言程度の簡単な証明で足りるとされます(昭和23年5月5日基発682号、昭和63年3月14日基発150号、婦発47号)。

生理休暇の取得条件として診断書等の提出を義務づけてしまうと、就業が困難なほどの症状をおしてまで通院し、費用をかけて診断書を入手しなければならなくなり、結果的に、生理休暇という労働基準法で保障される権利の行使が妨げられてしまうおそれがあることが、その理由とされています

生理休暇の日数制限

生理期間やその間の苦痛の程度、就労の難易度は個人で異なるので、一般的な基準は存在しません。したがって、就業規則等によって、生理休暇の日数を制限することは許されません。ただし、「有給とするのは1ヶ月につき1日に限り、それ以上取得した場合は無給とする」というように、生理休暇自体の日数を制限しないのであれば、有給扱いにする日数を定めても問題ありません(昭和23年5月5日基発682号、昭和63年3月14日基発150号、婦発47号)。

また、必ずしも暦日単位で生理休暇を付与する必要はなく、対象者から時間単位で請求された場合には、その範囲で付与すれば良いとされます(昭和61年3月20日基発151号、婦発69号)。

生理休暇中の賃金

生理休暇中の賃金を有給とするか無給とするかは、労働基準法で定められていないため、労使間の取り決めによって決めることができます (昭和23年6月11日基収1898号、昭和63年3月14日基発150号、婦発47号)。したがって、無給としても問題はありません。

なお、労働契約や就業規則等で生理休暇を有給とした場合、使用者・事業主はその定めに拘束されます。そのため、就業規則等で有給である旨を定めているにもかかわらず、労働者が実際に生理休暇を取得したときになって、労働基準法に規定がないことを理由に、生理休暇期間の賃金の支払いを拒否することは許されません。

生理休暇の不正取得について

残念ながら、生理休暇を取得する際に厳格な証明が求められないことを利用して、取得条件を満たさないにもかかわらず、生理休暇を取得することもできてしまいます。

だからといって、生理休暇を取得する条件として、医師の診断書のような厳格な証明を必須とすることは、生理休暇という権利の行使が妨げられるおそれがあるので認められていません(昭和23年5月5日基発682号、昭和63年3月14日基発150号、婦発47号)。生理休暇の不正取得への対策としては、次のように、虚偽の申告で取得するメリットをなくす方法が考えられるでしょう。

  • ・就業規則等で生理休暇を無給とする旨を定める
  • ・有給とする生理休暇の日数を制限し、制限日数を超えた分は無給とする
  • ・不正取得者に対する懲戒のルールを定める

不正取得で懲戒処分がなされた裁判例

生理休暇を不正取得したとして下された懲戒処分について、有効であると判示した裁判例をご紹介します。

盛岡地方裁判所一関支部 平成8年4月17日判決、岩手県交通事件

<事案の概要>

バス会社の貸切バスガイドである原告が、取得条件を満たさないにもかかわらず生理休暇を取得する等したとして、使用者である被告から6ヶ月の懲戒休職処分を下されたことに対し、当該懲戒処分が無効であることの確認を求めた事案です。

<裁判所の判断>

被告の就業規則では、生理日で就業が著しく困難であるときは、本人の請求により、毎周期2日間の生理休暇(有給かつ処遇上出勤扱いとされる)を取得することが認められていました。当該規定について、裁判所は、文言及び労働基準法が改正されてきた経緯を考慮して、生理日であれば当然に休暇を取得する権利を認めるものではなく、生理日の就業が著しく困難な場合にのみ休暇を与えるという趣旨の規定であると解しました。そのうえで、少なくとも、取得者が月経困難症であるとの証拠もなく、生理休暇を取得した経緯、休暇中の取得者の行動及び休暇を取得しなければ就業したであろう業務の苦痛の程度等から、就業が著しく困難でないと明らかに認められる場合に生理休暇を取得することは、不正取得であり許されないと判示しました。

この点、原告は、趣味である民謡大会への出場を目的に、かねてから有給休暇の取得を請求していたものの被告から就労要請を受けていた日にたまたま生理となったので、自身の判断で生理休暇を取得する旨を連絡し、深夜遠隔地へ長時間をかけて旅行し、翌日の民謡大会に出場しました。しかし、原告には月経困難症であったとの証拠もないうえ、生理休暇を取得した日に入っていた業務にはそれほど苦痛でない業務も含まれていました

これらの事実から、裁判所は、原告は生理日のため就業が著しく困難であったとはいえないことは明らかであるとして、生理休暇の要件を具備していないのに取得した点等が、就業規則等に違反し、懲戒休職処分の要件に該当すると判断しました。

ただし、被告が当初下した6ヶ月間の懲戒休職の処分は重過ぎるとして、休職3ヶ月間を超える部分は懲戒権の濫用で無効であり、3ヶ月間の限度で処分が有効になると判示しました。

生理休暇を理由とした不利益な取扱いについて

労働基準法には、生理休暇を取得したことを理由に不利益に取扱うことを禁止する明文の規定はありません。このことは、育児休業の取得等に対する不利益取扱いが、マタニティハラスメントとして禁止されていることと対照的です。しかしながら、判例では、生理休暇という権利の行使を抑制し、権利の趣旨を実質的に失わせるものに限り、公序良俗に反して無効と判断されています。したがって、たとえ不利益な取扱いを受けたとしても、権利行使の抑制度合いが小さく、権利の趣旨を実質的には失わせないと考えられる場合には、労働基準法に違反しないものと扱われます。

不利益な取扱いに当たるか否かで争われることが多い例としては、賞与や昇給の査定、精皆勤手当の計算に当たり、生理休暇の取得日を欠勤日として扱う場合等が挙げられます。

生理休暇による不利益な取扱いに関する判例

ここで、生理休暇を取得したことを理由に不利益な取扱いを受けたとして、使用者を訴えた判例を2つご紹介します。どちらも同一の基準で判断が行われたものの、具体的な事情が異なることから、異なる判断が下されました。

最高裁 昭和60年7月16日第三小法廷判決、エヌ・ビー・シー工業事件

<事案の概要>

精皆勤手当の算定に当たって、生理休暇の取得日数を出勤不足日数として扱う措置が、旧労働基準法67条(現行68条)に違反するか否かが争われた事案です。第一審、控訴審ともに、当該措置は法律に反しないと判断されたため、労働者側から上告がなされました。

<裁判所の判断>

裁判所は、まず、生理休暇の趣旨について以下のように判断しました。

  • ・取得日における就労義務を免れ、その間の労務の不提供について労働契約上債務不履行の責めを負わないことを定めるだけであり、有給であることまでは保障しない
  • ・使用者に対して、取得日を出勤扱いにすることまでは義務づけておらず、出勤扱いとするか欠勤扱いとするかは、原則として労使間の合意に委ねられる

もっとも、労使間の合意等により生理休暇を欠勤扱いとされることによって、労働者が経済的利益を得られない結果となるような措置や制度を設けたときには、生理休暇の取得が事実上抑制されることも起こり得ます。この点について、裁判所は、上述の生理休暇の趣旨に照らし、「このような措置ないし制度は、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、生理休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、生理休暇の取得を著しく困難とし」、労働基準法が「女子労働者の保護を目的として生理休暇について特に規定を設けた趣旨を失わせるものと認められるのでない限り」、旧法67条(現行68条)に違反しないと判示しました。

そして、この基準を本件についてあてはめ、被上告人である使用者が精皆勤手当を創設した後、手当の金額を2倍にしたのは、「所定の要件を欠く生理休暇及び自己都合欠勤を減少させて出勤率の向上を図ることを目的としたものであって、生理休暇の取得を一般的に抑制する趣旨に出たものではないとみるのが相当であり、」精皆勤手当の算定にあたり、生理休暇の取得日数を出勤不足日数として扱うことによって労働者が失う経済的利益の程度を考慮しても、被上告人がした措置は、「生理休暇の取得を著しく困難とし労働基準法が女子労働者の保護を目的として生理休暇について特に規定を設けた趣旨を失わせるものとは認められない」と考え、旧法67条(現行68条)に違反しないとして、上告を棄却しました。

最高裁 平成元年12月14日第一小法廷判決、日本シェーリング事件

<事案の概要>

賃金引上げに関する労使間の協定のうち、前年の稼働率が80%以下の者を賃金引上げ対象者から除外するという趣旨の条項(以下、本条項)の違法性が争われた事案です。第一審、控訴審ともに、本条項が無効であると判断されたため、使用者側から上告がなされました。

<裁判所の判断>

まず、裁判所は、従業員の出勤率の低下防止等の観点から、稼働率の低い者がある種の経済的利益を得られないこととする制度には一応の経済的合理性があるので、当該制度が、法律上の権利に基づく不就労(生理休暇・有給等)以外の不就労(欠勤・遅刻・早退等)を基礎として稼働率を算定するものであれば、違法とすべきではないとしました。そして、当該制度が法律上の権利に基づく不就労を含めて稼働率を算定するものである場合には、基準となっている稼働率の数値との関連で、当該制度が、法律上の権利を行使したことによって経済的利益を得られないようにすることにより、権利の行使を抑制し、法が労働者に権利を保障した趣旨を実質的に失わせると認められるときに、公序に反するものとして無効になると解するのが相当であるという基準を示しました。

そして、この基準を本件にあてはめた結果、本条項は、法律上の権利に基づく不就労も基礎に含めて稼働率を算定するものであり、本条項によって賃金引上げの対象から除外される場合、ベースアップ分の賃金も引き上げられず、また、上告会社では、毎年前年度の基本給額を基礎として賃金引上げ額が決められるので、賃金引上げの対象から除外されて生じた不利益はずっと残り続け、退職金額にも影響が及ぶので、本条項に該当することによる不利益は大きく、80%という稼働率の数値からみて、一般的に法律上の権利の行使をなるべく差し控えようとさせるものであると考えられ、その権利行使に対する事実上の抑制力は相当強いものであるとみなければならないと判断しました。そして、本条項は、法律上の権利に基づく不就労も基礎に含めて稼働率を算定する限りで、法律上の権利行使を抑制し、法が労働者に権利を保障した趣旨を実質的に失わせるため、公序に反して無効であると判断し、本条項は全体として公序に反し無効であるとした原審の判断には一部誤りがあるとして、原審に差し戻しました。

労働基準法違反に対する罰則

使用者が、対象となる女性労働者に請求されたにもかかわらず生理休暇を付与しなかった場合、30万円以下の罰金を科されるおそれがあります(労基法120条1項)。

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