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生理休暇に関する法律上の定め

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働基準法では、女性に特有の生理的機能を理由として休業することを制度として認めています。しかし、当該「生理休暇」の制度は、世間に広く認知されているとは言い難く、ほとんど利用されていない企業もあるかと思います。

生理休暇の存在が知られていても、従業員が「女性だけ休みがあるのは不公平だ」「虚偽の休日ではないか」等の不満を抱く場合もあるため、使用者は生理休暇が正当な権利であることの理解を促す必要があります。

では、対象となる女性労働者から請求された場合に、使用者にはどのような配慮が求められるのでしょうか。今回は、求められる配慮を考えるにあたって、生理休暇の概要や取得させるうえでのポイント等について解説します。

なお、生理休暇以外の女性従業員の労働に関する制度については、下記の記事をご覧ください。

女性従業員の労働

生理休暇とは

生理休暇とは、女性が生理による体調不良で就業が著しく困難な場合に、休暇を取得できる制度です。労働基準法が適用される労働者が取得できますが、公務員についても「病気休暇」等によって実質的に取得可能です。

生理休暇は、女性が備える、妊娠・出産を可能とする生理的機能(母性機能)を保護するために定められた制度です。これは法律で定められた制度であるため、たとえ就業規則に規定がなくとも、生理日であり就業が著しく困難な女性から請求された場合には、必ず付与しなければなりません。付与せずに就労させた場合には、30万円以下の罰金刑を受けるおそれがあります。

なお、あくまで「就業が著しく困難」であることが取得する条件となるため、生理日だからといって当然に取得できるわけではありません。

生理休暇の取得率

厚生労働省の調査によれば、生理休暇を取得した女性は0.9%となっており、取得率はとても低くなっています。取得率が低くなってしまう理由として、休みを取りにくい職場の雰囲気であることや、上司や同僚から生理の辛さを理解してもらえないこと、恥ずかしくて言い出しにくいと感じていること等が挙げられます。

生理が辛かったとしても、薬を飲んで我慢したり、生理休暇ではなく有給休暇を取得したりするケースが少なくないようです。

生理休暇の対象者

生理休暇は、「生理日の就業が著しく困難な女性労働者」であれば、誰でも取得できます。役職や年齢、勤続年数、雇用形態等による制限はありません。

したがって、正社員はもちろん、パートやアルバイト、契約社員等、非正規労働者から請求されたとしても、使用者は拒否することができません。

生理休暇の日数

従業員から生理休暇を請求された場合に、付与する日数には明確な上限がありません。なぜなら、「生理日の就業が著しく困難な女性」であれば生理休暇の請求が可能であり、日数を制限する規定が存在しないからです。

なお、生理の前に頭痛や腹痛等を生じるPMS(月経前症候群)については「生理日」ではないため、企業が生理休暇を与える義務は無いと考えられます。しかし、PMS(月経前症候群)も生理が原因で症状が出るものであり、人によっては重い症状が出るケースもあるため、各社の就業規則等により生理休暇の対象とすることは可能です。

取得日数の制限

就業規則等によって、生理休暇の日数を制限することは許されません。なぜなら、生理の期間の長さや苦痛の程度、就労の難易度は個人で異なるので、一般的な基準が存在しないからです。

そのため、たとえ特定の従業員が生理休暇を毎月取得しても拒否することはできません。

ただし、「有給とするのは1ヶ月につき1日に限り、それ以上取得した場合は無給とする」というように、生理休暇自体の日数を制限しないのであれば、有給扱いにする日数を定めても問題ありません。

時間・半日単位での取得

生理休暇は、必ずしも暦日単位で付与する必要はなく、対象者から時間単位や半日単位で請求された場合には、時間・半日単位での取得を認める必要があります。

例えば、出社してから生理痛が激しくなる等して、午後に生理休暇を取得する等の状況が考えられます。

有給休暇付与への影響

有給休暇は、通常であれば出勤率が8割に満たない従業員には付与されません。また、生理休暇を出勤日として扱ったり、出勤するべき日から除外したりすることは、法律上規定されていません。

そのため、生理休暇を何十日も取得するようなことがあれば、出勤率が下がって有給休暇が付与されない従業員が現れるかもしれません。

なお、年次有給休暇の出勤率の算定方法については、以下の記事で詳しく解説しておりますのでご覧ください。

年次有給休暇の出勤率の算定方法について

生理休暇中の給料

生理休暇中の賃金を有給とするか無給とするかは、労働基準法で定められていないため、労使間の取り決めによって決めることができます。したがって、生理休暇を無給としても問題はなく、「1ヶ月に1日だけ生理休暇を有給で取得できる、2日目以降は無給である」と定めることもできます。

なお、労働契約や就業規則等で生理休暇を有給とした場合、使用者・事業主はその定めに拘束されます。そのため、就業規則等で「生理休暇は有給とする」と定めている場合には、従業員が実際に生理休暇を取得したときに、生理休暇期間の賃金の支払いを拒否することはできません。

生理休暇の申請方法

生理休暇は従業員間のトラブルに発展するケースがあるため、申請に関するルールを定めて周知するべきです。
特に生理休暇の性質上、「当日申請は認めるべきか」「診断書等の提出を義務づけても良いか」といったことが問題になりやすいので、以下で解説します。

当日申請の可否

生理休暇は、口頭により、当日に申請することが可能とされています。なぜなら、事前に生理で就業が困難な日を予測するのが難しいからです。

生理休暇の証明義務

生理休暇を取得するために、従業員が医師の診断書等で「就業が著しく困難であったこと」までも証明させる必要はないと解されています。仮に会社側が証明を必要とする場合でも、上司や同僚の証言程度の簡単な証明で足りるとされます。

生理休暇の取得条件として診断書等の提出を義務づけてしまうと、就業が困難なほどの症状に耐えてまで通院し、費用をかけて診断書を入手しなければならなくなり、本人の負担が大きくなってしまいます。結果的に、生理休暇という労働基準法で保障される権利の行使が妨げられてしまうおそれがあるため、厳密な証明は必要ないとされているのです。

生理休暇の不正取得について

残念ながら、生理休暇を取得する際に厳格な証明が求められないことを利用して、取得条件を満たさないにもかかわらず、生理休暇を取得することもできてしまいます。だからといって、不正を疑うあまり、生理の状態や症状等について聞き出そうとすればセクハラになってしまうリスクがあります。

生理休暇の不正取得への対策としては、次のように、虚偽の申告で取得するメリットをなくす方法が考えられるでしょう。

  • 就業規則等で生理休暇を無給とする旨を定める
  • 有給とする生理休暇の日数を制限し、制限日数を超えた分は無給とする
  • 不正取得者に対する懲戒のルールを定める

不正取得で懲戒処分がなされた裁判例

従業員が生理休暇を不正取得したとして下された懲戒処分について、有効であると判示した裁判例をご紹介します。

【盛岡地方裁判所一関支部 平成8年4月17日判決、岩手県交通事件】

事件の概要

当該事案は、バス会社の従業員が、趣味である民謡大会への出場を目的として生理休暇を取得したこと等を理由として、使用者であるバス会社から6ヶ月の懲戒休職処分を下されたことに対し、当該懲戒処分が無効であることの確認を求めた事案です。

裁判所の判断

当該バス会社には、毎周期2日間の有給の生理休暇を認める規定がありました。この規定について、生理日であれば当然に休暇を取得する権利を認めるものではなく、生理日の就業が著しく困難な場合にのみ休暇を与えるという趣旨の規定であると裁判所は判断しました。そして、取得者が月経困難症であるとの証拠もなく、生理休暇を取得した経緯、休暇中の取得者の行動及び業務の苦痛の程度等から、就業が著しく困難でないことは明らかだと認め、生理休暇の不正取得であり許されないと判示しました。

そして、生理休暇の要件を具備していないのに生理休暇を取得した点等が、就業規則等に違反し、懲戒休職処分の要件に該当すると裁判所は認定しました。

ただし、被告が当初下した6ヶ月間の懲戒休職の処分は重過ぎるとして、3ヶ月間の限度で処分が有効になると判断しています。

生理休暇を理由とした不利益な取扱いについて

労働基準法には、生理休暇を取得したことを理由に不利益に取扱うことを禁止する明文の規定はありません。しかし、生理休暇という権利の行使を抑制し、権利の趣旨を実質的に失わせる処分等は、公序良俗に反して無効と判断されると考えられます。

不利益な取扱いに当たるか否かで争われることが多い例としては、生理休暇の取得を理由として解雇する、賞与や昇給についてマイナスの査定をする、生理休暇の取得日を欠勤扱いにする等が挙げられます。

生理休暇による不利益な取扱いに関する判例

ここで、生理休暇を取得したことを理由に不利益な取扱いを受けたとして争われた裁判の判例を2つご紹介します。
どちらも同一の基準で判断が行われたものの、具体的な事情が異なることから、異なる判断が下されました。

【最高裁 昭和60年7月16日第3小法廷判決、エヌ・ビー・シー工業事件】

事件の概要

当該事案は、被上告人である会社が、生理休暇を取得すると減額される「精皆勤手当」を創設し、さらに、その金額を2倍に増額したところ、当該「精皆勤手当」が生理休暇を取得する権利を侵害するとして争われた事案です。

なお、被上告人である会社には2つの労働組合が存在し、一方の組合に所属する従業員について、「もう一方の組合に所属する従業員」や「他企業の従業員」と比較して生理休暇の取得率が高いことから、所定の要件を欠く生理休暇の取得がかなりあったと推認されています。

裁判所の判断

裁判所は、生理休暇の趣旨について以下のように判断しました。

  • 有給であることまでは保障されていない
  • 取得日を出勤扱いにすることまでは義務づけられていない
  • 生理休暇が欠勤扱いとされることで、経済的利益を得られなくなる措置等を設けると、生理休暇の取得が事実上抑制される場合もある

そして、被上告人である会社が「精皆勤手当」を創設し、さらに金額を2倍にしたことについて、生理休暇の取得を一般的に抑制する趣旨ではないと認め、生理休暇について特に規定を設けた趣旨を失わせるものとは認められないと判示しました。

【最高裁 平成元年12月14日第1小法廷判決、日本シェーリング事件】

事件の概要

当該事案は、賃金引上げに関する労働協約のうち、「法律上の権利に基づく不就労」(生理休暇・年次有給休暇等)も計算に入れて、前年の稼働率が80%以下の者を賃金引上げ対象者から除外するという趣旨の条項(以下、本条項)の違法性が争われた事案です。

裁判所の判断

まず、従業員の出勤率の低下防止等の観点から、稼働率の低い者が経済的利益を失う制度には一応の合理性があるので、本条項が「法律上の権利によらない不就労」(欠勤・遅刻・早退等)について稼働率を算定するものであれば、違法とするべきではないと裁判所は判断しました。

そして、本条項が法律上の権利の行使を抑制し、法が労働者に権利を保障した趣旨を実質的に失わせると認められるときに無効とするのが相当であるという基準を示しました。

その上で、本条項は「法律上の権利に基づく不就労」も含めて稼働率を算定するものであり、本条項に該当した従業員の不利益は大きく、法律上の権利行使に対する事実上の抑制力は相当強いものであると認定しました。

そして、本条項は、「法律上の権利に基づく不就労」も含めて稼働率を算定する部分について、法律上の権利行使を抑制し、法が労働者に権利を保障した趣旨を実質的に失わせるため、公序に反して無効であると判断しました。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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