紹介予定派遣とは|一般派遣との違いやメリット・デメリット・注意点など

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
紹介予定派遣とは、簡単にいうと「直接雇用することを前提に、人材派遣会社から派遣社員を紹介してもらう制度」です。企業と労働者が合意すれば、派遣期間中または派遣終了後に直接雇用に切り替えることができます。
紹介予定派遣は企業にも様々なメリットがありますが、採用過程や入社後の労務管理には一定のルールがあるため注意が必要です。
本記事では、紹介予定派遣と一般派遣の違い、紹介予定派遣のメリットとデメリット、利用する際の流れや注意点などを詳しく解説していきます。
目次
紹介予定派遣とは
紹介予定派遣とは、労働者派遣のうち、派遣元事業主が労働者派遣の開始前又は開始後に、派遣労働者及び派遣先に対して、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものです。
最長6ヶ月の派遣期間が「試用期間」とみなされるので、企業は当該派遣社員が自社に適した人材かどうかしっかり見極めたうえで、直接雇用につなげることが可能です。入社後のミスマッチが減り、早期離職などのリスクも防止できます。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律労働者派遣法
(用語の意義)第2条4 紹介予定派遣 労働者派遣のうち、第五条第一項の許可を受けた者(以下「派遣元事業主」という。)が労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受ける者(第三章第四節を除き、以下「派遣先」という。)について、職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含むものとする。
紹介予定派遣と派遣の違い
一般派遣と紹介予定派遣の違いは、「派遣期間終了後の直接雇用を前提としているかどうか」にあります。そのため、紹介予定派遣では、より通常の選考に近い形で派遣労働者の受け入れが可能です。
派遣契約期間は最長6ヶ月
一般派遣と紹介予定派遣の最も大きな違いは、「派遣契約期間」です。
通常の派遣期間が最長3年以内とされているのに対し、紹介予定派遣の派遣期間は最長6ヶ月と短くなっています。
これは、紹介予定派遣の派遣期間が、直接雇用のための「試用期間」とみなされるためです。
なお、派遣期間の合計が6ヶ月以内であれば、当初3ヶ月だった派遣期間をさらに3ヶ月延長する、といった対応も可能です。
派遣契約期間の制限や延長については、以下のページでも詳しく解説しています。
事前の書類選考や面接が可能
紹介予定派遣は直接雇用を前提とした制度なので、事前に履歴書や面接による選考を行ったうえで、派遣労働者を受け入れることが可能です。
一般派遣の場合、派遣先がどの労働者を受け入れるか選定(指名)することは禁止されているため、あらかじめ選考ができる点は紹介予定派遣の大きな特徴といえます。
なお、派遣社員の選考においても、年齢や性別による不当な差別がないように進めなければなりません。
例えば、男性と女性で採用基準を変える、女性にのみ結婚や出産の予定を尋ねるといったやり方は“違法”とみなされる可能性があります。
直接雇用が前提である
紹介予定派遣は、派遣期間終了後に直接雇用することを見越した制度です。派遣期間は最長6ヶ月ですが、期間中であっても企業と派遣社員が合意すれば直接雇用に切り替えることができます。
令和5年度の「労働者派遣事業報告書」でも、約52.4%と半数以上の派遣労働者が、紹介予定派遣を経て直接雇用されていることが分かります。
一般派遣から直接雇用に切り替える場合、まずは派遣元と派遣労働者の雇用関係を解消したうえで、改めて派遣先との雇用契約を締結しなければなりません。
そのため、ある程度直接雇用を視野に入れているならば、一般派遣よりも紹介予定派遣の方が手間や時間を削減できるでしょう。
紹介予定派遣を利用する企業側のメリット
紹介予定派遣を利用することで、企業には以下のようなメリットがあります。
- 採用後のミスマッチの防止
- 採用にかかるコストの削減
採用後のミスマッチの防止
派遣期間中に労働者の能力やスキル、仕事への適性を見極めることで、直接雇用後のミスマッチを予防できます。
また、通常派遣の場合には、派遣労働者を特定することが禁止されているのに対し、事前に履歴書や面接による選考もできるので、ある程度自社が求める人材のみを派遣社員として受け入れることが可能です。
さらに、ミスマッチの予防は労働者の早期離職を防ぐためにも重要です。
仕事自体には問題がなくても、「社風が合わない」「職場に馴染めない」といった理由で早々に退職してしまう労働者は少なくありません。
6ヶ月の派遣期間(試用期間)を通し、労働者側も企業の雰囲気を十分感じることができるため、入社後のストレスや精神的不安を大きく軽減できるでしょう。
採用にかかるコストの削減
紹介予定派遣を利用すれば、労働者の採用自体は派遣元(人材派遣会社)が行ってくれます。そのため、派遣先企業では以下のような採用コストを大幅に削減できる可能性があります。
- 求人広告の掲載費
- 募集要項や採用パンフレットの作成費
- 合同説明会や面談会への参加費
- 採用担当者の人件費
- 内定者向けの研修費
また、派遣労働者の“給与計算”や“社会保険料の管理”などは雇用主である派遣元が行うため、派遣先は労務管理にかかるコストも軽減できる可能性があります。
紹介予定派遣を利用する企業側のデメリット
紹介予定派遣には以下のようなデメリットもあるため、利用前に必ず確認しましょう。
- 必ず採用できるとは限らない
- 紹介手数料がかかりうる
必ず採用できるとは限らない
紹介予定派遣後の直接雇用は、労使間の合意があることが前提です。そのため、自社のニーズにマッチする派遣労働者がいても、労働者側が入社を希望しない場合は直接雇用することはできません。
言い換えると、企業が採用をオファーしても、労働者に断られ、人材確保のチャンスを逃すリスクがあるということです。
派遣期間中は企業だけでなく、派遣労働者も企業との相性や適性をチェックしているということを念頭に置いておきましょう。
紹介手数料がかかる
紹介予定派遣では、通常の派遣料金に加え、「紹介手数料」も発生することがあります。
紹介手数料とは、派遣期間中または終了後に直接雇用へ切り替えた際、派遣先が派遣元に対して支払う費用のことです。
労働者の理論年収(1年間フルタイムで働いた場合の想定年収)の30%程度が手数料の相場です。
例えば、
- 理論年収(賞与や手当を含む):500万円
- 手数料率:20%
→紹介手数料=500万×0.2=100万円
といった計算になります。
紹介予定派遣契約の流れ
紹介予定派遣の契約の流れは、以下のとおりです。
- 派遣元会社、派遣先会社の労働者派遣契約
紹介予定派遣を扱っている派遣元会社(人材派遣会社)と派遣先会社が「労働者派遣契約」を締結します。 - 求人の紹介
派遣元会社は、派遣先会社からのヒアリング結果などを踏まえ、企業のニーズに合った労働者を紹介します。 - 書類審査・面接
就労開始前に、派遣先企業による選考(書類審査や面接)が行われる場合があります。 - 就業開始~派遣期間満了
派遣元・派遣先・派遣労働者の間で紹介予定派遣として働くことに合意したら、労働契約を交わして就業開始となります。紹介予定派遣として働く期間は最長6ヶ月ですが、平均して3ヶ月程度とすることが多いようです。 - 双方の意思確認
派遣期間満了後、派遣先会社と派遣労働者の双方に直接雇用に関する意思確認がなされます。なお、派遣期間中であっても直接雇用の内定を出すことは可能です。 - 直接雇用
直接雇用について双方が合意すれば、労働条件などを提示のうえ、派遣先企業が当該労働者を正式に採用します。
企業が紹介予定派遣を導入する際の注意点
紹介予定派遣を利用する際は、以下のルールに注意が必要です。
直接雇用後に試用期間を設けることはできない
紹介予定派遣では、直接雇用後に改めて試用期間を設けることは禁止されています。
通常、企業は試用期間中に労働者のスキルや能力を判断しますが、紹介予定派遣では派遣期間が試用期間とみなされるため、追加で試用期間を設ける必要はないと考えられています。
仮に直接雇用後に試用期間を設けた場合、行政指導の対象となる可能性があるため注意が必要です。
試用期間については以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。
紹介予定派遣に関する事項を記載・明示する義務がある
紹介予定派遣として労働者派遣契約を締結する場合、派遣先会社は、当該職業紹介により従事すべき業務の内容及び労働条件その他の当該紹介予定派遣に関する事項を定めなければなりません(労派遣法26条1項9号)。また、派遣先管理台帳に、紹介予定派遣に関する事項を記載しなければならないという定めもあります(同法42条1項9号)。
労働契約に記載する事項としては、主に次のものが挙げられます。
- ①紹介予定派遣であること
- ②直接雇用に切り替える場合、雇用期間の定めの有無
- ③直接雇用に切り替える場合、有給休暇や退職金の取扱いに派遣期間を算入するか否か
派遣元会社は、派遣先が提示したこれらの就労条件を労働者本人に明示する必要があります(労派遣法34条1項2号)。
また、派遣元会社が紹介予定派遣として労働者を雇用する場合、その雇用が紹介予定派遣であることを当人に明示する義務があります(労派遣法32条1項)。
なお、すでに雇用している派遣労働者を紹介予定派遣に切り替える場合、その旨を当人に通知し、同意を得なければなりません(同条2項)。
採用拒否の理由を明示する義務がある
紹介予定派遣の契約を結んでも、派遣先会社が派遣労働者を必ず直接雇用する義務はありません。そのため、労働者の能力や適性を考慮した結果、派遣先が直接雇用(採用)を拒否することも可能です。
ただし、直接雇用を行わない理由について派遣元から説明を求められた場合、派遣先は以下のいずれかの方法で採用拒否の理由を明示しなければなりません。
- 書面
- ファックス
- 電子メール
また、労働者本人から採用拒否の理由を求められた場合、派遣元がその理由を説明する義務があります。
社会保険・税務上の手続きを行う必要がある
紹介予定派遣として勤務している派遣労働者を直接雇用に切り替えた際は、派遣先会社が当該労働者に関する社会保険や税金に関する手続を行わなければなりません。
社会保険・労働保険は、新規に採用した場合と同じく、資格取得届を作成して届け出ます。
税金に関しては、派遣元会社を「前の勤務先」として源泉徴収票を受け取り、年末調整の際に反映させます。
派遣先会社に向けた助成金
有期労働者、パートタイム労働者、派遣労働者といったいわゆる”非正規労働者”を正規労働者として雇用した事業者は、厚生労働省の「キャリアアップ助成金」を受けることができます。
これには「紹介予定派遣から直接雇用したケース」も含まれ、以下の要件を満たした事業者が支給対象となります。
- 派遣労働者を正規雇用労働者又は多様な正社員として直接雇用する制度を労働協約又は就業規則その他これに準じるものに規定している事業主であること
- 派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位において6ヶ月以上の期間継続して労働者派遣を受け入れていた事業主であること(6ヶ月以上の期間継続して派遣就業していた同一の派遣労働者を直接雇用した場合に限られます)
- 直接雇用された労働者に対して直接雇用後6ヶ月分の賃金を支給した事業主であること
なお、支給額は事業の規模や正規雇用する前の労働者の契約形態、生産性の向上の有無によって変化します。
また、キャリアアップ助成金を受けようとする事業者は、事前にキャリアアップ計画の提出が必要です。まずは都道府県労働局またはハローワークに相談しましょう。
企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ
企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・オンライン法律相談無料※
会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません。
受付時間:平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00
平日 9:00~19:00 / 土日祝 9:00~18:00
※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。
この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
