人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

退職証明書・解雇理由証明書

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働者から、退職証明書・解雇理由証明書が請求されることがありますが、使用者はこれに応じなければならないのでしょうか。

そして、これらの書面に記載する事項についても労働基準法に定められています。何を記載しなければならず、何を記載してはいけないのか、また、発行しなければどうなるのか、知っておくことで、労働者とのトラブルを防ぐことができます。

退職証明書・解雇理由証明書の交付義務

労働基準法では、労働者が退職や解雇された場合、退職・解雇の紛争防止や再就職活動等のために、在職中の使用期間(在職期間)、従事した業務の種類、役員等の地位、賃金、退職事由・解雇事由について証明書を請求したときには、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないと定めています(労働基準法22条1項)。

労働者からの請求を拒否することはできるのか

上記のように、使用者は、労働者の請求があれば、遅滞なく証明書を発行しなければならず、労働基準法上の義務ですので、使用者側は、退職証明書の請求を拒否することはできません。拒否した場合には、後述のように労働基準法違反となり、罰則が科されてしまいます。退職証明書の請求があった場合は、しっかりと対応するようにしましょう。

退職証明書について

退職証明書の交付が必要なケース

退職証明書が必要になる場合は、主に労働者が転職先の会社から提出を求められた場合や、失業手当の給付、国民健康保険の手続きをする際に離職票の代わりとして使用する場合等です。そして、退職証明書は公文書ではなく、上でみたように労働者の申請に対して使用者が発行する文書ですから、書式や様式の指定もありませんし、労働者からの請求がなかった場合には、発行する必要はありません。言い換えれば、企業としては、労働者からの請求があった場合にのみ退職証明書の交付が必要となります。

離職票や在職証明書との違い

離職票は、企業を辞めると必ず発行される書類です。正式には、「雇用保険被保険者離職票」といいます。これは退職後10日以内に発行される書類で、退職証明書と違って企業に交付を請求する必要はありません。使用する場面としては、金銭面を含む事務手続が多いです。たとえば、失業給付金を受け取る際にハローワークに提出する、確定申告に使用する、国民健康保険の手続に使用するなどの場面です。

在職証明書は、会社に在籍した経歴を証明する書類であり、求められる場面は退職時とは限りません。例えば、在職中に、保育園の入園の際に求められることなどがあります。

退職証明書に記載すべき事項

退職証明書に記載すべき事項とは、使用期間、業務の種類、事業における地位、賃金、退職の事由(または解雇理由)です。

「退職の事由」(労働基準法22条1項)とは、自己都合退職、勧奨退職、解雇、定年退職等、労働者としての身分を失った原因を示すものをいいます。

なお、これらに該当する事項であっても、労働者が請求していないものに関しては記載してはいけないので、記載事項を明示していない請求に対しては、明示するよう促す等、適切な記載内容となるように協議すべきでしょう。

退職及び解雇 退職事由
退職及び解雇 解雇事由
退職及び解雇 定年

解雇理由証明書について

解雇理由証明書の交付が必要なケース

解雇した労働者から請求された場合、使用者は、当該労働者に解雇理由証明書を交付する義務があります。請求されない場合には交付しなくとも構いませんが、労働者から請求された場合は、解雇の前後を問わず、遅滞なく解雇理由証明書を交付しなければなりません。

具体的には、2、3日以内に交付するようにすると良いでしょう。

解雇理由証明書に記載すべき事項

使用者が労働者から解雇理由の証明書を請求された場合、使用者は解雇の理由を具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記載しなければならないとされています。

実務では、就業規則の解雇規定に基づいて解雇することが大半ですので、就業規則において定めている解雇事由のどれに該当するかという適用条番号と、解雇の理由とした具体的な事実を証明書に記載することになります。勤務態度不良のように、具体的な事実が多数に及ぶ場合には、その類型ごとに主要な具体的事実を記載していれば足ります。

後日、解雇の有効性が争われた場合には、記載した解雇理由以外を主張することが制限されることが一般的であるため、記載にあたっては、紛争に備えた記載を十分に行っておくことが重要です。

退職及び解雇 解雇事由

退職証明書・解雇理由証明書を作成する際の注意点

労働者の希望しない事項を記載してはならない

労働基準法22条3項は、「前2項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。」と規定しています。「前2項」には、上記でみた労働基準法22条1項が含まれますので、退職証明書・解雇理由証明書には、労働者の希望しない事項を記載してはなりません。

会社で証明書を発行する場合には、退職者・解雇者から、記載しなければならない内容について確認しておくことで、退職証明書・解雇理由証明書に余計なことを記載してしまい再発行しなければならなくなる事態を防ぐことができます。

証明書発行義務の時効と発行回数

労働基準法115条では、同法の規定による賃金(退職手当以外)や災害補償その他の請求権は2年間、同法の規定による退職手当の請求権は5年間行使しないと、時効によって消滅する旨が規定されています。

企業側に課せられている退職証明書・解雇理由証明書の発行義務は、2年間で時効にかかりますが、退職・解雇から2年が経過するまでは、労働者は何回でも証明書の申請が可能であり、企業は必ずこれに応じなければなりません。

労働基準法違反に対する罰則

退職証明書・解雇理由証明書の交付は労働基準法上の制度ですから、使用者がこれに違反して証明書を交付しない、あるいは意図的に遅らせて交付したときは、労働基準法22条1項または2項の違反として、30万円以下の罰金に処せられることになっています(労働基準法120条1号)。

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます