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不当労働行為とは|6つの種類や具体例、罰則など

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

不当労働行為は、労働組合への対応や団体交渉の場面で、使用者が必ず理解しておく必要があるものです。
不当労働行為のおそれがある言動をしてしまうと、組合の行動が激化したり、労働委員会への救済申立てがなされるリスクがあります。救済命令に従わなければペナルティを受けるリスクもあります。

そこで、本ページでは、不当労働行為の概要や具体例、行った会社に対する罰則等について、わかりやすく解説していきます。トラブル回避のための参考にしていただければ幸いです。

不当労働行為とは

不当労働行為とは、憲法第28条が保障する勤労者の労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を実質的に保障することを目的として、労働組合法によって禁止している使用者の行為です。

労働三権は、それぞれ下の表のような権利です。

団結権 労働者が労働組合を結成する権利
団体交渉権 労働者が使用者と団体交渉する権利
団体行動権 労働者が要求実現のために団体で行動する権利

労働組合法において、禁止されている不当労働行為には、以下の6つの類型があります。

  • 不利益取扱い
  • 黄犬契約
  • 団体交渉拒否
  • 支配介入
  • 経費援助
  • 報復行為

これらは同法7条に定められています。

①不利益取扱い

使用者が労働者に対して、以下のような理由で解雇、懲戒処分、組合活動が難しくなる配置転換といった不利益な取扱いをすることは、不当労働行為にあたります。

  • 労働組合員であること
  • 労働組合に加入したこと
  • 労働組合を結成したこと
  • 労働組合の正当な活動をしたこと

これらを理由として解雇等をしたと証明するのは難しいので、「使用者が日頃から組合を嫌悪していたか」「加入のタイミングとの時的近接性」等の事情から推認されます。

また、次に挙げるような行為も不利益取扱いに該当します。

  • ストライキ等に参加したことによる不利益取扱い
  • 労働組合の壊滅を目的とした全員解雇

不当労働行為の1つである「不利益取扱い」については、以下のページでさらに詳しく説明しているので、併せてご覧ください。

不当労働行為の不利益取扱について

②黄犬契約

黄犬契約とは、労働者雇入れの際、労働組合に加入しない、あるいはすでに加入している労働組合から脱退することを採用の条件とすることです。
例えば、次のような行為が該当します。なお、「黄犬」とは英語の「yellow-dog(=卑劣な者)」という言葉に由来します。

  • 「労働組合に加入しないことを約束してくれれば採用する」と告げる
  • 「労働組合には加入しない」という趣旨の誓約書に署名させる
  • 入社時に組合加入の有無を調査する

③団体交渉拒否

使用者が労働組合からの団体交渉の申し入れを“正当な理由”なく拒否することは、不当労働行為にあたります。
“正当な理由”とは、例えば、組合側からの暴言・暴力により心身に危険が及ぶおそれがある、交渉を重ねたもののこれ以上進展が見込めない等の状況が考えられます。

また、使用者は団体交渉に単に応じるだけでなく、誠実な交渉を行う義務を負っており、不誠実な態度で臨む交渉(=不誠実団交)も「団体交渉拒否」に含まれると解されています。
例えば、次のようなケースが該当します。

  • 交渉に必要な情報の開示請求を拒む
  • 対面での話し合いには応じず書面・電話等で対応する
  • 正当な理由もなく労働協約の締結(合意内容の書面化)を拒否する

なお、「団体交渉」について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

団体交渉について

④支配介入

労働者が行う労働組合の結成や運営に使用者が支配介入することは、不当労働行為にあたります。
例えば、次に挙げるような行為がこれに該当し得ます。

  • 使用者が、日頃から組合を嫌悪する言動をしている
  • 組合への加入状況を調査・聴取した
  • 組合結成の動きに対して威嚇又は非難を行った
  • 組合結成大会の当日に、あえて緊急性の乏しい業務を命じた
  • 組合への加入を妨害した
  • 組合員に脱退を働きかけた
  • 既存の組合を弱体化させるために、新たな組合を結成するように促した
  • 複数併存する組合において扱いに差異を設けている

「支配介入」については、以下のページでさらに詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

不当労働行為の支配介入について

⑤経費援助

労働組合の運営のために必要な諸経費、活動資金を使用者が援助すること(経費援助)は、その援助によって組合を支配し、労働組合の自主性を損なわせて弱体化させるおそれがあるため、不当労働行為にあたります。

なお、以下の行為は「経費援助」に含まれないとされています。

  • 就業時間中の団体交渉等に対する賃金の支払い及び有給休暇の付与
  • 最小限の広さの組合事務所の供与
  • 組合の福利厚生基金に対する寄付

ただし、これらを使用者が一方的に取りやめた場合、取りやめたことが不当労働行為とみなされるリスクがあるため、提供を行うかどうかは慎重に判断する必要があります。

また、就業時間中の争議行為(ストライキ等)に対する賃金の支払いは不当労働行為に当たり得るため、注意が必要です。

⑥報復的不利益取扱い

報復的不利益取扱いとは、不当労働行為の救済申立てを行ったこと等を理由とする不利益な取扱いのことです。
不利益な取扱いを禁止することによって、労働者の権利をより確実に保護する目的があります。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 労働委員会に不当労働行為救済の申立てをしたことで、使用者が労働者を解雇した
  • 不当労働行為の命令について再審査申立てをしたことで、使用者が労働者を配置転換した
  • 労働委員会が行う調査等のときに証拠を提出・発言したことで、使用者が労働者にパワハラを行った

不当労働行為の救済申立て制度について

不当労働行為救済制度とは、労働者や労働組合が会社から不当労働行為を受けたときに、労働委員会に対して不当労働行為の救済を申し立て、審理を求めることができる制度です。

不当労働行為があったと認定されると、労働委員会が使用者に対して是正を命じます。この命令を「救済命令」といいます。
労働委員会の救済命令は、どのような命令を出すかについて幅広い裁量権を有しています。

救済申立てが行われた場合には、会社は申立書を確認し、答弁書を作成して提出します。申立書の内容が事実と異なる場合には、答弁書によって否認して、証拠となる資料等を添付して提出します。

不当労働行為の救済手続きについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

不当労働行為の救済手続きについて

不当労働行為をした場合の罰則

不当労働行為を行ってしまうと、使用者は次のようなペナルティを受けるおそれがあります。

  • ①民事上の損害賠償責任
  • ②救済命令違反に対する罰則

これらのペナルティについて、以下で解説します。

民事上の損害賠償責任

不当労働行為は、民法における不法行為(民法709条)にあたります。そのため、不当労働行為により労働者や労働組合が損害を受けた場合、使用者は民事上の損害賠償責任を負うことになります。

不当労働行為にあたる解雇をすると、その解雇が無効とされることにより、解雇していた期間の給与の支払いを命じられる等、損害賠償の金額が大きくなりやすいです。

救済命令違反に対する罰則

不当労働行為について救済命令が発されたとしても、救済命令に不服がある場合には、「再審査の申立て」又は「取消訴訟の提起」が可能です。

これらの手続きを行わずに、又は敗訴するなどして救済命令が確定したにもかかわらず、使用者が命令を履行しなかった場合には、以下のようなペナルティを受けるおそれがあります。

  • 取消訴訟なしで救済命令に違反した場合:50万円以下の過料
  • 取消訴訟を経て救済命令に違反した場合:1年以下の禁固刑もしくは100万円以下の罰金刑

不当労働行為にあたるとされた裁判例

どのような言動が不当労働行為であるかについて、相手方から「正当な理由がある」等と争われるケースがあります。
これに関連する、次のような裁判例があります。

【東京地方裁判所 令和2年6月26日判決】

事件の概要

この事例は、労働組合員である看護師の物忘れが激しくなり、休職命令を受けた後で精密検査を受けたところ、復職は可能であると診断されて診断書を提出したものの復職を拒まれた事例です。

裁判所の判断

病院側は、当該看護師の物忘れの原因が解明されていないこと等を復職拒否の理由として挙げ、不当労働行為には当たらないと主張しました。
しかし、当該看護師が「復職は可能である」と記載されている診断書を提出していること等から、復職を拒む正当な理由はないと認め、復職拒否は看護師が組合員であることを理由として行われたと認定しました。

そして、病院側の対応は誠実交渉義務に違反し、実質的な団交拒否であり、組合員の復職に向けた労働組合の活動を妨害した支配介入に当たると認定しました。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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