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障害者雇用

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

障害のある方が、個々の適正に応じた仕事に就き、能力を発揮できることが「当たり前」となる社会を実現すべく、企業に対しても国から【障害者雇用】を促進するための対策が講じられているものの、まだまだ積極的に取り組んでいる企業が多いとはいえないのが実情です。

各企業は、障害者雇用に対する理解を深めるとともに、自社の課題を検討し、社内ルールや職場環境を見直していくことが必要です。

このページでは、障害者雇用促進法の保護の対象となる“障害者”の雇用について、企業が把握しておくべき基本的な事項を説明していきます。なお、各項目の内容について、さらに掘り下げて解説しているリンクページも併せてご覧いただくと、より理解を深めていただけるかと思いますので、そちらもぜひ参考になさってください。

障害者雇用について

障害者雇用とは、障害のある方が障害のない方と同様に働く機会を得られるようにすることを目的として、企業や自治体などが特別な雇用枠(=障害者雇用枠)で障害のある方を雇用することです。一般的には“障害者手帳”を持っている方を対象としており、一般雇用枠とは違った基準での採用となります。

障害について会社に告げずに、障害のない方と同じ条件のもと一般雇用枠で働く方もいますが、障害者雇用枠での雇用により、対象者は障害の特性に応じた配慮を受けながら就労することができます。

障害者雇用促進法

障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)」とは、障害がある方の職業の安定を図ることを目的とする法律です。例えば、以下のような方策が定められています。

・職業生活での自立を促進するための措置
・障害者の雇用義務等に基づく雇用促進等の措置 など

先進諸国の動きを受けて1960年に「身体障害者雇用促進法」を制定して以降、数回の改正を経て名称も変わり、今日にいたります。

障害者雇用促進法における障害者

「障害者雇用促進法」の保護の対象となる“障害者”とは、主に以下の3つの障害のいずれかに当てはまるために、長きにわたって職業生活に相当の制限を受ける者、あるいは、職業生活を営むことが著しく困難な者を指します(障害者雇用促進法2条1号)。

  • ①身体障害
  • ②知的障害
  • ③精神障害
  • ④その他の心身の機能の障害がある者

この①~③の障害について、さらに詳しくみていきましょう。

障害の種類

身体障害

視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、音声・言語・そしゃく機能障害、肢体不自由、心臓・腎臓機能障害、呼吸器機能障害といった“身体障害”に加え、ぼうこう・直腸・小腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害、肝臓機能障害などの“重度身体障害”にあたる障害がある方で、「身体障害者手帳」の交付を受けていることが、障害者雇用促進法の保護の対象となる条件になります(障害者雇用促進法2条2号、3号、障害者雇用促進法施行規則1条、身体障害者福祉法4条1項)。

知的障害

知的障害者判定機関(児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医・障害者職業センター)で“知的障害”があると判定された、あるいは知的障害の程度が重い、つまり、“重度知的障害”と知的障害者判定機関に判定された方が対象となります(障害者雇用促進法2条4号、5号、障害者雇用促進法施行規則1条の2、1条の3)。一般的には、各自治体が発行する「療育手帳」や判定書を持っている方といえるでしょう。

精神障害

精神障害”があるとして、「精神障害者保険福祉手帳」を交付されている方、あるいは手帳の交付は受けていないものの、統合失調症、そううつ病、てんかんにかかっている方で、症状が安定し、就業が可能な状態にある方を指します(障害者雇用促進法2条6号、障害者雇用促進法施行規則1条の4)。

なお、自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害といった“発達障害”もこれに分類されますが、やはり基本的に「精神障害者保険福祉手帳」を受けていることが条件となります。

事業主の責務

事業主には、“社会の構成員同士助け合いましょう”という社会連帯の理念に基づいて、障害者が仕事を通じて社会に参加し、自立しようとする努力に対して協力する責務があります。そのために、障害者の能力を適切に評価し、雇用の場を提供し、適正な管理をすることで、障害者雇用の安定を図る努力をしなければなりません(障害者雇用促進法5条)。

障害者雇用率制度

障害者の雇用対策として、自治体や企業には法定雇用率”以上の障害者を雇用する義務が課せられています。これを、「障害者雇用率制度」といいます。

例えば、民間企業の法定雇用率は令和3年3月から2.3%に引き上げられており、従業員43.5人の雇用につき1人以上の障害者を雇用する必要があります。

“法定雇用率”については別ページにて詳しく解説していますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。

障害者雇用の雇用率について

障害者トライアル雇用

「障害者トライアル雇用」とは、“障害者雇用”について事業主と障害者がお互いに理解を深めるために有用な制度です。

具体的には、ハローワークや職業紹介事業者などから、就職することが難しい障害者の紹介を受けて、原則として3ヶ月試行(トライアル)雇用します。このトライアル期間中に、対象者の適性や業務遂行能力を確認し、その後も継続して雇用するかどうかを決めることができるシステムです。

障害者の採用

障害のある方の「採用」に関する詳しい内容は、別途ページを設け、主に、次の3つのテーマに沿って順に解説しています。

  • ①採用方針・採用計画
  • ②障害者の募集方法
  • ③障害者の選考・面接

障害者の雇用管理

就業規則・社内規定の整備

障害者雇用の促進は、企業が一体となって対応できる体制にあることが求められます。まずは経営陣が積極的に障害者雇用を推し進める方針を固め、採用を担当する部署や、採用後に障害者を配置する予定の部署など、直接的にかかわりのある従業員だけに負担が集中しないよう、また、障害があることを理由に当該従業員が不当な扱いを受けることがないよう、就業規則や社内規定、職場環境を整備することが大切です。

労働時間との関係

企業の実際の障害者雇用率(=「実雇用率」)を算定する際には、原則として週に30時間以上働く障害者は1人分、週に20時間以上30時間未満で働く障害者は1人につき0.5人分というように、労働時間によってカウントの方法が変わってきます。

つまり、週20時間未満で働く障害者は、カウントの対象となりません。なお、重度の身体・知的障害者、一定要件を満たす短時間精神障害者は、上記とは異なるカウントの方法になります。

最低賃金の減額特例許可制度

障害のある労働者に支払う給与についても、基本的には最低賃金法が適用されます。ただし、障害があることで業務に支障が出てしまう労働者は、「最低賃金の減額特例許可制度」の対象となり得ます。

一般の労働者に比べて労働能力が際立って低い労働者に対して最低賃金を一律に適用することは、かえって雇用の機会を狭めてしまうおそれがあります。そこで、都道府県労働局長の許可を受けることができれば、対象労働者の労働能力や業務への支障の程度等に応じた最低賃金の減額が特例として認められます(最賃法7条)。

減額率の算定方法

最低賃金を減額する際の割合(=減額率)を決めるためには、まず、減額率の上限値を算出します。

具体的には、減額の対象とする労働者と同じような業務に就き、かつ最低賃金と同じくらいの給与が支払われている一般労働者の労働能率を100%としたとき、対象労働者の労働能率が何%にあたるかを検討します。

例えば、対象労働者の労働能率が75%だとすると、減額率の上限値は[100%-75%=25%]となります。

そのうえで、個々の対象労働者の職務の内容・成果・労働能力・経験等を勘案して、25%までの範囲で最終的な減額率を定めます(最賃法施行規則5条)。

障害者雇用における留意点

障害者雇用に関する届出

43.5人以上 の労働者を雇用する事業主には、毎年、障害者雇用に関する状況を「障害者雇用状況報告書」に記載し(6月1日現在)、翌月15日までに公共職業安定所(ハローワーク)に提出する義務が課せられています(障害者雇用促進法43条7項)。

また、解雇時には「解雇届」をもって速やかにハローワークへ届け出る必要があります(同法81条1項)。

障害者職業生活相談員の選任

障害のある者を5人以上雇用する事業所では、“資格”を有する労働者から「障害者職業生活相談員」を選任し、障害のある者の職業生活全般に関する相談・指導を行う役割を担ってもらわなければなりません。

障害者の虐待・差別禁止

障害者を雇用する事業主は、障害者への虐待を防止するために、労働者に対する研修の実施、障害者やその家族からの苦情を処理する体制の整備等の措置を講じる必要があります(障害者虐待防止法21条)。

《障害者虐待の例》

  • 身体的虐待
    暴力をふるったり、正当な理由なく身体を拘束したりするなど、体を傷つけること。
  • 性的虐待
    性的な行為を強要したり、性的な嫌がらせをしたりすること。
  • 心理的虐待
    暴言を浴びせるなどして心に傷を負うような言動をすること
  • 放置等による虐待
    衰弱するほど食事を与えなかったり、仕事を与えず放置したりすること。
  • 経済的虐待
    財産を不当に処分したり、障害者から不当に利益を得たりすること。

障害者の虐待の予防・対応について事業主が講ずべき具体的な措置など、詳しい解説は以下のページをご覧ください。

障害者の虐待防止

事業主は、労働者の募集や採用に際し、障害のある者とない者とで平等な機会を与えなければならず、また、就職後の賃金、福利厚生などの待遇についても、障害があることを理由に不当な差別的な取扱いをしてはなりません(障害者雇用促進法34~35条)。

《障害者差別の例》
障害があることを理由に、以下のような取扱いをすること。

  • 採用の対象から外す
  • 低い賃金額を設定する
  • 昇進をさせない
  • 必要な実習や訓練を受けさせない
  • 施設の利用を認めない

障害者に対する安全衛生等の合理的配慮

障害がある労働者と障害がない労働者との均等な雇用機会・待遇の確保、障害がある労働者の能力発揮の妨げとなる事情の改善のため、原則、事業主は、障害の特性に配慮した必要な措置を個別に講じなければなりません。これを、合理的配慮の提供義務といいます。

以下のページでは、「合理的配慮の提供義務」の法的根拠や、この義務の対象外となる“過重な負担がかかる場合”などについて詳しく解説しています。ぜひこちらも併せてご覧ください。

障害者雇用の合理的配慮

障害者に対する安全配慮義務

企業は、労働者が心身の安全を確保し、安心して働けるよう配慮する義務、すなわち安全配慮義務を負っています(労契法5条)。障害者に対しては、厚生労働省が定める障害者雇用対策基本方針に記載される“障害の種類別の配慮事項”を骨組みとして、労働者の障害の程度等に応じた個別の安全管理や施設等の整備などが必要であると考えられます。

障害者の在宅就業

企業との雇用関係を持たずに、請負契約によって自宅などで働くことを“在宅就業”といいます。

在宅就業障害者の就業機会拡大を目的とした「在宅就業障害者支援制度」では、在宅就業障害者に仕事を発注する企業(※登録要件を満たす必要があります。)に対し、障害者雇用納付金制度から助成金の支給がなされます。

障害者総合支援法

障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)」は、障害の有無に関係なく、全ての国民が基本的人権を持つ個人として同じように尊重される社会を実現することや、障害のある方の日常生活や社会生活を営むための総合的な支援を行うこと、また、その妨げになるものの除去に努めることなどを基本理念とする法律です。

障害者雇用促進法とその目的や基本理念が異なるため、「障害者総合支援法」の保護対象となる“障害者”の定義は「障害者雇用促進法」と異なります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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