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フレックスタイム制の仕組みやメリット・デメリットについて解説

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

新型コロナウイルス感染症による影響で、より一層働き方に多様性が求められる昨今ですが、本ページにおいてご紹介する【フレックスタイム制】の導入も、“新しい生活様式”の一つとして一考に値するのではないでしょうか。

ここでは、【フレックスタイム制】の導入を検討されている使用者の皆様に向けて、制度の概要及び制度導入のメリット・デメリット等をお伝えしていきます。

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制】とは、3ヶ月を限度とした一定期間(清算期間)において、あらかじめ決めた総労働時間の中で、労働者が毎日の出退勤時間を自由に決定することができる制度です。変形労働時間制の一つであり、フレックスタイム制の導入によって、労働者は業務と生活の都合に合わせた柔軟な働き方ができます。

下図のように、「コアタイム」と呼ばれる時間帯と、「フレキシブルタイム」と呼ばれる時間帯とを設けて運用していることが一般的です。

フレックスタイム制とは

なお、フレックスタイム制以外の変形労働時間制の詳細については、以下のページをご参照ください。

変形労働時間制

コアタイム

フレックスタイム制において、1日の中で“この時間は必ず勤務していなければならない”と決められた時間帯のことを「コアタイム」といいます。コアタイムを利用して会議やミーティング等を行い、労働者間のコミュニケーション不足の解消、必要な情報の共有を図るといったことが可能です。

もっとも、制度の導入に際し、必ずコアタイムを設定しなければならないというわけではありません。設定の要否は会社・事業場ごとに自由に決めることができます。設定する場合、就業規則への記載、労使協定の締結が必要です。

フレキシブルタイム

労働者が自分の選択により働く時間を自由に決められる時間帯のことを「フレキシブルタイム」といいます。つまり、必ず勤務していなければならない「コアタイム」に対し、その時間帯であればいつ出退勤しても良い時間帯ということになります。

「コアタイム」と同じく必ず設定しなければならないものではなく、定める場合、就業規則への記載、労使協定の締結が要件となります。ただし、フレキシブルタイムの設定時間が極端に短いと、労働時間の決定について労働者の裁量が著しく制限されることから、フレックスタイム制の趣旨に反するとして、有効なものと認められないおそれがあります。

清算期間

フレックスタイム制において、労働者が労働すべき時間を定める期間のことを「清算期間」といいます。この「清算期間」を単位として、法定労働時間の総枠の範囲内で定めた総労働時間を基に、毎日の労働時間を調整することになります。

働き方改革により清算期間が3ヶ月に延長

従前、「清算期間」は《1ヶ月》を上限としていました。しかし、働き方改革による労働基準法の改正に伴い、より柔軟に労働時間を調整できるよう、「清算期間」の上限は《3ヶ月》に延長されています。

フレックスタイム制に適した職種

フレックスタイム制の導入にあたっては、扱う業務が技術的であったり、個人の役割が明確なものであったりと、外部からの影響が少なく、1人あるいは少人数で進行できる業務であるかどうかに着目して適否を検討すると良いでしょう。具体的には、情報通信産業、いわゆるIT業界で導入されていることが多く、職種でいえば企画職、エンジニア職、デザイナー職等が適しているといえます。

しかしながら、厚生労働省による就労条件総合調査(平成31年)によれば、フレックスタイム制を導入している会社は全体の5%と非常に少ない割合であることがわかっています。

次項以降ではフレックスタイム制のメリット・デメリットを比較していきます。

フレックスタイム制のメリット

生産性の向上

フレックスタイム制の導入により、労働者は労働時間を効率的に配分できるようになります。ワークライフバランスの実現(※次項参照)を図ることで労働者個々のパフォーマンスが上がり、結果として会社・事業場全体の生産性の向上が期待できます。

ワークライフバランスの実現

フレックスタイム制は労働者が自身で出退社時間等を調整できることから、長時間労働の予防措置として有用です。また、調整した時間を有効に活用すれば、育児・介護と仕事との両立が求められる労働者の負担軽減や、資格取得のための時間を確保する等プライベートの充実、満員電車による通勤ストレスの解消等が見込めます。つまり、ワークライフバランスの実現が可能になります。

ワークライフバランスの実現は、生産性の向上(※前項を参照)、優秀な人材の確保(※次項を参照)に繋がります。

優秀な人材の確保

フレックスタイム制が導入されている会社・事業場は、労働者にとって働きやすい環境といえることから、労働者の離職を抑止し、優秀な人材を自社に定着させるといったことが期待できます。

また、採用活動時にはフレックスタイム制を会社の魅力としてアピールすることができます。そのため、例えば、募集業務に係る十分なスキルを持っているにもかかわらず、規定の労働時間に拘束されては働けない等の事情を抱える労働者を採用することができるため、優秀な人材を確保できる可能性が高まります。

フレックスタイム制のデメリット

労働者同士のコミュニケーション不足

労働者それぞれの出退勤時間がバラバラであると、労働者同士が顔を合わせる機会がなくなり、コミュニケーション不足に陥るおそれがあります。その結果、労働者間で信頼関係が築けなかったり、必要な情報共有がなされなかったり等、業務に支障を来す原因となり得ます。

フレックスタイム制の導入によって労働者のパフォーマンスの低下を招いては本末転倒です。会社としては、対面でのコミュニケーションができない分、コミュニケーションツールで補う等、何らかの対策を講じる必要があるでしょう。

急な業務に対応できないおそれがある

フレックスタイム制を導入している会社・事業場では、個々の労働者ごとに始業・終業時間が異なると考えられることから、突発的な会議や緊急の電話等に応じられないケースも生じるでしょう。

例えば、取引先からの問い合わせ時に担当者がまだ出社していない、あるいはすでに帰宅してしまい、不在であること等が予想されます。そのため、特に外部との連絡が多い職種においてフレックスタイム制を導入する場合には、取引先等の信頼を損ねないよう、会社・事業場内でほかの労働者が代理対応できるような体制を整備しておく必要があります。

勤怠管理が難しい

フレックスタイム制を取る場合、労働者ごとに日々異なる出退勤時間を管理する必要があります。加えて、清算期間における総労働時間と実労働時間との差異を確認し、不足等があれば、法定労働時間に照らして翌月へ繰越すべきか、賃金で調整すべきかといった判断も、個別に行うことになります。

これらの管理は非常に複雑であり、人事部にとっては大きな負担となります。しかし、適正な額の賃金を計算するため、また、労働者の遅刻・早退の常態化等を防止するためにも、適切な勤怠管理がなされなければなりません。

フレックスタイム制の勤怠管理の注意点

年次有給休暇の取扱い

フレックスタイム制を導入した会社・事業場において労働者が年次有給休暇を取得した場合には、実労働時間に、労使協定に定めた「標準となる1日の労働時間」を加算した労働時間を基礎として、賃金の計算を行います。

なお、実労働時間が清算期間中の総労働時間に満たない場合に、その不足分を補う目的で年次有給休暇を取得したものとして処理することは、年次有給休暇制度の趣旨に反するとして認められていません。

清算期間の途中に昇給があった場合の割増賃金の算定

フレックスタイム制か否かによらず、割増賃金は各賃金締め切り日時点での賃金額を基礎に算出します。したがって、清算期間の途中に昇給があった場合、昇給以後の賃金締め切り日においては、昇給後の賃金額を基礎として割増賃金を算出することになります。

清算期間の途中で事業場が異動となった場合の賃金の取扱い

フレックスタイム制を導入する事業場に勤務する労働者が、清算期間の途中でフレックスタイム制を導入していない通常の労働時間制度の事業場へ異動となった場合には、各々の労働期間に対して各々の労働時間制度に基づいた賃金の計算をします。

フレックスタイム制における時間外労働

フレックスタイム制においても、時間外労働としてカウントされる部分については割増賃金の支払いが生じますが、“時間外労働のカウント方法”がほかの労働時間制度と異なります。

フレックスタイム制の導入手続

フレックスタイム制は、就業規則への規定や労使協定の締結等、適切な手続を経て導入し、運用する必要があります。

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