初回1時間 来所・zoom相談無料

0120-630-807

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

退職金制度とは|支払い義務や必要性について解説

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

退職金とは、労働者が退職するときに受け取る金銭のことです。
退職金の支給方法として、以下のものが挙げられます。

  • 退職一時金
  • 確定給付企業年金
  • 確定拠出年金
  • 中小企業退職金共済

これらのうち、一般的に知られているのは「退職一時金」であり、昔ながらの支給方法だと言えるでしょう。しかし、「退職金」であっても、その金額をどのように支給するか、支給するタイミングはいつなのか等、会社によって異なります。

ここでは、会社が支払うべき「退職金」について、その多様性の説明を含め解説していきます。

退職金制度とは

退職金制度とは、正式には「退職給付制度」といいます。退職給付制度には、退職時に1回だけ金銭等が支給される制度(退職一時金制度)や、退職後に年金として金銭を受け取ることが可能になる制度(企業年金制度)等があります。

退職金は、定年退職した労働者以外にも、一定の年数以上勤務した労働者には支給されるケースが少なくありません。

退職一時金制度

退職一時金制度は、退職時に退職金を一括にて支給する制度です。一般的に「退職金」といえば、退職一時金を指していることが多いです。

  • 【メリット】
    • 一度にまとまった金銭を支払うため、労働者から感謝されやすい。
    • いわゆる「退職金」であるため労働者に理解されやすく、安心感を与えられる。
  • 【デメリット】
    • 退職金を支払うための積立をしても減税がない。
    • 退職者が増えると、蓄積していた内部留保が流出し、資金繰りに苦労するおそれがある。

確定給付企業年金制度

確定給付企業年金制度とは、あらかじめ定められた、一定額の給付を保障する企業年金制度です。企業が生命保険会社等と契約して掛金を運用してもらい、あらかじめ決められた金額が退職者に直接支給されます。

  • 【メリット】
    • 掛金を損金として算入できる。
  • 【デメリット】
    • 運用に失敗したときには多額の損失を補填することになる。

確定拠出年金制度

確定拠出年金制度とは、労働者の在職中に、決められた掛金を労働者又は会社が積み立て、退職後に年金として支給する制度です。

この掛金は、労働者本人が選んだ方法で運用され、最終的な支給金額の増減というリスクも本人が負担します。運用に関しては、外部の金融機関が取り扱うため、退職金も選んだ機関より支給されます。

  • 【メリット】
    • 掛金を損金として算入できる。
    • 損失が発生しても補填する必要がない。
  • 【デメリット】
    • 労働者の年金の支給額が不十分になるリスクがある。

中小企業退職金共済

中小企業退職金共済とは、中小企業に勤める労働者を加入させることができる公的な退職金制度です。月5,000円~30,000円の掛金を企業が全額負担して積み立て、労働者の退職時には共済から退職金が支払われます。

  • 【メリット】
    • 掛金を損金として算入できる。
    • 掛金の一部を国から助成してもらえる。
  • 【デメリット】
    • 掛金を減額するのが難しいため、経営が苦しくなったときに負担が重くなるリスクがある。
    • 短期間で退職した労働者には退職金が支給されない。
    • 中小企業に勤める労働者しか加入できない。
    • 経営者や役員等は加入できない。

企業には退職金を支払う義務があるか

法律上、必ず退職金制度を導入する義務はありません。したがって、会社で退職金制度を設けていなければ、支給する必要はありません。一方、就業規則等に退職金制度の規程がある場合には、必ず退職者に支給する義務が生じます。

退職金の必要性

退職金制度には、企業側と労働者側にとって、それぞれ以下のような必要性が挙げられます。

【企業側】

  • 良質な労働力を得られる
    福利厚生の良さをアピールできます。
  • 労働者を確保できる
    退職金を増やすために、転職を防止する効果があります。
  • 退職後のトラブルを防止できる
    早期退職を募集したときには増額する等の対応が可能です。
  • 労働者の不正を防止できる
    退職金が受け取れなくなる規定を設ければ、不正を防止できます。

【労働者側】

  • 退職後の生活の資金を企業に準備してもらえる
    老後に備えて自分で積み立てる資金が少なくて済みます。
  • 全てを給与で受け取るよりも税負担が少ない
    退職金には所得税の優遇が設けられています。

これらのうち、企業側のメリットについて、以下で詳しく解説します。

良質な労働力を得る

退職金制度があることによって、求職者から魅力的な企業だと判断してもらえる可能性があります。

近年では、退職金制度を廃止する企業もありますが、長期間に渡って勤務したら企業から退職金を受け取りたいと考えている労働者は多いです。
魅力的な退職金制度があれば、求職者にアピールできる材料になるでしょう。

労働者の確保

退職金は、一般的に、より長く勤めた労働者の方が高額になるので、労働者の退職を防止する効果を期待することができます。
近年では、転職への抵抗感が薄れてきているため、人材の流出を防ぐための手段として、退職金制度を設けることが考えられます。

退職後のトラブル防止

経営状態の悪化等の事情が生じたときに、退職金が労働者の生活を保障するので、退職してもらうときのトラブルを防止する効果が期待できます。
特に、退職金を上乗せして支払う制度を設けておけば、労働者の同意を得やすくなります。

労働者の不正防止

労働者が、業務上横領等の重大な不正行為をした場合には、退職金を減額・不支給とする規定を設けておくことによって、不正を防止する効果が期待できます。

ただし、退職金を減額・不支給とする規定があったとしても、減額・不支給が必ず有効になるわけではないので、過去の裁判例・判例等を確認しながら、有効だと考えられる程度の減額に抑えるようにしましょう。

就業規則に退職金制度を定める際の注意点

就業規則に退職金制度を定めるときには、以下の事項を明示しておく必要があります。

  • 退職金支給の対象者
  • 中途退職した場合の退職金

退職金支給の対象者

退職金制度を導入するにあたっては、支給対象となる者や勤続年数を明確化し、規程にしておくことが大切です。そこでは、支給対象者を正社員のみにするか、契約社員やパート、アルバイトも含めるかどうかの判断は会社の自由となります。

ただし、規定の内容によっては労働契約法20条違反となる可能性があるため、注意が必要です。また、支給対象外とする者がいる場合は、その旨を規程に明示しておくとトラブル防止になるので、記載しておくことをおすすめします。

中途退職した場合の退職金

転職等の理由による、定年退職前に退職する者への退職金支給に関する取扱いは、会社によって異なります。退職金を支給するか否か、退職の時期で減給や不支給とするか否かについては、退職金規程を設けたり、就業規則に規定したりする必要があります。

退職金の算定方法

退職金の算定方法は、賃金によって計算する場合と、勤続年数等によって計算する場合があります。賃金によって計算するならば、最終給与を根拠にする方法や、勤務していた全期間の給与を平均する方法等があります。

より詳しい支給方法については、以下のページをご覧ください。

退職金の算定方法
月齢賃金と連動している場合
最終給与連動方式 退職金=退職時の基本給×支給率×退職事由係数
退職時の基本給を根拠にするため、計算が簡単です。
ただし、昇給後に退職する労働者が増えると、企業の負担が重くなるリスクがあります。
全期間平均給与方式 退職金=在職中の平均基本給×支給率×退職事由係数
退職するまでの平均基本給を根拠にするため、企業の負担は想定に近くなりやすいです。
ただし、労働者にとっては退職金が増額されづらく、不満が生じるリスクがあります。
別テーブル方式 退職金=基本金額(役職、等級等に応じたテーブルで設定)×支給率×退職事由係数
退職時の役職等に応じたテーブルを根拠にするため、計算が簡単であり、企業は負担を予測しやすいです。
ただし、昇進等ができずに退職した労働者は不満を抱くおそれがあります。
月齢賃金と連動していない場合
勤続年数別定額方式 退職金=積立額の合計×支給率×退職事由係数
退職時の勤続年数を根拠にするため、計算が簡単であり、企業は負担を予測しやすいです。
ただし、即戦力として中途入社した労働者にとっては、新卒入社した労働者と比較して不公平な金額になりやすいです。
ポイント制方式 退職金=ポイント累積値×ポイント単価×退職事由係数
勤続年数や企業への貢献度等に応じてポイントを付与して根拠とするため、公平性が高いと感じられやすいです。
ただし、管理が大変になるおそれがあります。

退職金支給日

労働基準法では、労働者から退職金の請求があった場合は、7日以内に支払わなければならないと規定されています(同法23条)。しかし、会社の就業規則等で退職金の支給日を定めていれば、その期間内に支給すれば良いとされています。

退職金請求権の消滅時効期間

退職金の請求権の時効は「5年間」と定められています(労基法115条)。また、退職金以外の賃金等に関する請求権の時効は2年とされています(令和2年4月1日以降は当面3年となっています。)。

したがって、労働者から退職金の請求があった際は、消滅時効期間が過ぎていないか注意が必要となります。

貸付制度があった場合の退職金の控除

会社の貸付制度等による借入金の残高がある者に退職金を支給する場合、賃金控除協定があれば退職金から控除が可能です。また、労使間が納得のうえで、全額控除して良いという旨の自由意思に基づいた契約を結んでいるならば、相殺することもできます。

このように会社に貸付制度等がある場合は、退職金の控除も見据え、賃金控除協定に「退職金支給の際、貸付金の残高があれば控除する」等の規定を設けておくと、トラブル防止につながるでしょう。

労働者が退職金を放棄した場合

労働者が退職金を放棄する意思をみせた場合は、その労働者の真意や自由意思を慎重に考慮する必要があります。

判例では、退職金を放棄するという労働者の意思表示が自由な意思に基づくことを認めるに足る合理的な事情が客観的に存在していたのであれば、放棄が有効になると判断したものがあります(最高裁 昭和48年1月19日第2小法廷判決、シンガー・ソーイング・メシーン事件)。

しかし、退職金には「賃金の後払い」という性質があると考えられており、簡単に減額や不支給が認められるわけではありません。
少なくとも、労働者に迫って退職金を放棄する旨の文書に署名させれば、必ず放棄させられるわけではないことに注意しましょう。

退職金の不支給・減額

退職金を支給するにあたり、不支給や減額をすること自体は、就業規則の理由規定が合理的かつ、社会的にも問題がない限り、有効となります。
なにが合理的か否かについては、必要性と労働者の被る不利益を勘案して判断します。

退職金の不支給・減額についての詳細は、以下のページをご覧ください。

退職金の減給・不支給

使用人兼務取締役の退職金請求権

使用人兼務取締役である地位の者に対して退職金を支給するには、金額や算定方法について定款での定めがあるか、または株主総会の決議によって定められている必要があります(会社法361条1項)。

死亡退職金の受給者

労働者が死亡した場合の退職金は、就業規則等に規定によって受取人の順位を定めていれば、その規定に従って支給します。規定がない場合は、法定相続人が受け取ることになります。

より詳しい内容については、以下のページをご覧ください。

死亡退職金

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

受付時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

0120-630-807タップで電話開始

平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます