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退職金

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

「退職金」と聞くと、定年退職を迎えた退職者に支払うものと、多くの方が思うでしょう。しかし、定年を迎えず、転職等の理由で退職する者に対しても退職金を支給する場合もあります。また、「退職金」と一言で言っても、その金額をどのように支給するか、支給するタイミングはいつなのか等、会社によって異なります。本記事では、会社が支払うべき「退職金」について、その多様性の説明を含め解説していきます。

退職金の法的意義

労働者が退職する際、会社が支給する報酬を退職金といいますが、退職金には以下のような意義があると考えられています。

  • 功労報償
    会社が労働者に対して、今まで勤務してきたことによる功労に報いようとするもの。
  • 賃金後払い
    在職中の勤務に値する賃金を支払うこと。

退職金の必要性

退職金制度には、以下のような必要性が挙げられます。

  • 良質な労働力を得る
    退職金制度は労働者が重視する労働条件の一つとなるため、求人への関心も大きくなる。
  • 労働者の確保
    一般的に、長期にわたって勤務した労働者に向けた制度であるため、離職を防ぐことができる。
  • 退職後のトラブル防止
    会社の都合によって労働者を退職させる場合、退職金制度が金銭的な補償につながるため、トラブルを防ぐことができる。
  • 労働者の不正防止
    労働者が懲戒等に相当するような不正をした場合に、退職金を減額・没収する規定を設けることで、不正防止につながる。

企業には退職金を支払う義務があるか

法律上、必ず退職金制度を導入する義務はありません。したがって、会社で退職金制度を設けていなければ、支給する必要はありません。一方、就業規則等に退職金制度の規程がある場合には、必ず退職者に支給する義務が生じます。

退職金支給の対象者

退職金制度を導入するにあたっては、支給対象となる者や勤続年数を明確化し、規程にしておくことが大切です。そこでは、支給対象者を正社員のみにするか、契約社員やパート、アルバイトも含めるかどうかの判断は会社の自由となります。ただし、規定の内容によっては労働契約法20条違反となる可能性があるため、注意が必要です。また、支給対象外とする者がいる場合は、その旨を規程に明示しておくとトラブル防止になるので、記載しておくことをおすすめします。

中途退職した場合の退職金

転職等の理由による、定年退職前に退職する者への退職金支給に関する取扱いは、会社によって異なります。退職金を支給するか否か、退職の時期で減給や不支給とするか否かについては、退職金規程を設けたり、就業規則に規定したりする必要があります。

退職金制度の種類

一言で退職金といっても、いくつかの種類が存在します。本項では、主に3つの退職金制度について解説していきます。

退職一時金制度

退職一時金制度は、一般的と広く認識されることが多い退職金を指します。この制度は、退職時に退職金を一括にて支給する制度になります。支給額は会社によって定められていますが、特段事情がなければ、規定に則った計算式にて算出します。

確定給付企業年金制度

あらかじめ定められた、一定額の給付を保障する制度になります。会社等が外部機関と契約をして、会社が掛金を拠出して運用し、あらかじめ決められた金額が退職者に直接支給される制度です。この制度は、退職金の金額が決められているため、運用リスクは会社が負担することになります。制度によって、一時金と年金を選択することができます。

確定拠出年金制度

この制度は、労働者の在職中に、決められた金額を労働者または会社が積み立て、退職後に年金として支給するものです。この掛金は、労働者本人が選ぶ方法で運用され、最終的な支給金額の増減というリスクも本人が負担することになります。運用に関しては、外部の金融機関が取り扱うため、退職金も選んだ機関より支給されます。

退職金の支給方法

実際に退職金を支給する際の方法としては、会社によって自由に定めることができますが、大きく分けると、一時金として支払われる形式と、年金として支払われる形式の2種類があります。

より詳しい支給方法については、以下のページをご覧ください。

退職金の算定方法

退職金支給日

労働基準法では、労働者から退職金の請求があった場合は、7日以内に支払わなければならないと規定されています(同法23条)。しかし、会社の就業規則等で退職金の支給日を定めていれば、その期間内に支給すれば良いとされています。

退職金請求権の消滅時効期間

退職金の請求権の時効は「5年間」と定められています(労基法115条)。また、退職金以外の賃金等に関する請求権の時効は2年とされています(令和2年4月1日以降は当面3年となっています。)。したがって、労働者から退職金の請求があった際は、消滅時効期間が過ぎていないか注意が必要となります。

退職金の控除

会社の貸付制度等による借入金の残高がある者に退職金を支給する場合、賃金控除協定があれば退職金から控除が可能です。また、労使間が納得のうえで、全額控除して良いという旨の自由意思に基づいた契約を結んでいるならば、相殺することもできます。

このように会社に貸付制度等がある場合は、退職金の控除も見据え、賃金控除協定に「退職金支給の際、貸付金の残高があれば控除する」等の規定を設けておくと、トラブル防止につながるでしょう。

労働者が退職金を放棄した場合

就業規則等に退職金の支給について明確に規定がある場合、使用者は支払義務を負います。さらに、労働基準法上の賃金全額払いの原則についても、通常の賃金のみでなく、退職金にも適用されます(同法24条1項)。

しかし、労働者が退職金を放棄した場合はどうなるのでしょう?実際の判例では、退職金の放棄が労働者の「自由な意思に基づくことを認めるに足る合理的な事情が客観的に存在していたものということができる」ことから、そのような場合では、放棄が有効になると判断したものがあります(最高裁 昭和48年1月19日第二小法廷判決、シンガー・ソーイング・メシーン事件)。この判断から、労働者が退職金を放棄する意思をみせた場合は、その労働者の真意や自由意思を慎重に考慮する必要があるといえます。

退職金の不支給・減額

退職金を支給するにあたり、不支給や減額をすること自体は、就業規則の理由規定が合理的かつ、社会的にも問題がない限り、有効となります。なにが合理的か否かについては、必要性と労働者の被る不利益を勘案して判断します。

使用人兼務取締役の退職金請求権

使用人兼務取締役である地位の者に対して退職金を支給するには、金額や算定方法について定款での定めがあるか、または株主総会の決議によって定められている必要があります(会社法361条1項)。

死亡退職金の受給者

労働者が死亡した場合の退職金は、就業規則等に規定によって受取人の順位を定めていれば、その規定に従って支給します。規定がない場合は、法定相続人が受け取ることになります。

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