有期労働契約

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
有期労働契約とは、無期労働契約(期間の定めのない雇用契約)と異なり、あらかじめ期間を定め、労使間で雇用契約を締結することをいいます。有期労働者は、法律上、無期労働契約の労働者とはさまざまな点で区別されています。
このページでは、有期労働契約、そして有期労働者に関して、その概要を説明します。
目次
有期労働契約について
有期労働契約とは、いわゆる“正社員”(正規職員)などの期間の定めのない労働契約とは違い、使用者と労働者が雇用期間を定めて労働契約を結ぶことをいいます。
パートタイマー、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託社員など、非正規雇用の場合は、有期労働契約を結んでいることが多いかと思います。非正社員≒有期労働契約を結んでいる労働者といっていいでしょう。
有期労働契約は、労働基準法14条1項により、原則、上限3年と定められています。
企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ
企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料※
会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません
受付時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30
平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30
※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
就業規則・有期労働契約の関係
有期労働者に向けた就業規則がない場合、無期労働者に適用されている就業規則がそのまま適用される可能性があります。
労働契約法では、就業規則よりも不利な条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、就業規則に則すると定められています(12条)。つまり、有期労働契約を結ぶ際、就業規則より不利な条件があったとしても、この条項により無効になるということです。就業規則は労働条件の最低基準を定めているので、無期労働者に適用されている就業規則がそのまま有期労働者に適用される可能性があるのです。
有期労働者に無期労働者とは別の規定を適用したい場合、別途、有期労働者用の就業規則を作成する必要があります。
なお、就業規則の概要に関しては以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。
有期労働契約締結時の明示項目
労働者と有期労働契約を締結する際、使用者から労働者に対して、明示しなければならない項目があります。以下でその項目を解説します。
更新の有無の明示
有期労働契約を締結する際は、契約の更新の有無を明示しなければなりません。自動的に更新するのか、場合によっては更新があり得るのか、更新はないのか等、具体的な内容を明示する必要があります。
判断基準の明示
有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、更新の判断基準も明示しなければなりません。
例えば、勤務成績・勤務態度により判断する、能力により判断する、会社の経営状態により判断する、契約期間が満了した際の業務量により判断する等です。
その他の留意すべき事項
上記のほか、トラブル防止という観点から、所定休日に労働を命じることがあるか否か、所定労働時間外の労働を命じることがあるか否かなども書面に明示しておくことが望ましいでしょう。
有期労働者の労働法・保険
有期労働者であっても、無期労働者と同じく、労働者保護のための法令が適用されます。
例えば産前・産後休業は、有期・無期に関わらず、すべての労働者に適用されます。妊娠したことを理由に契約を更新しないこと等は「不利益取扱い」として禁止されています。
また、同じ企業で1年以上勤務しており、子が1歳6ヶ月になるまでに契約が終了することが明らかでない場合には育児休業を、同じ企業で1年以上勤務しており、休業の開始予定日から93日が経過した日から6ヶ月が経過する日までに契約が終了することが明らかでない場合には介護休業を取得することができます。
社会保険の加入
有期労働者でも、雇用期間が2ヶ月以上であれば、社会保険に加入しなければなりません。また、契約時の契約期間が2ヶ月未満であっても、契約内容に2ヶ月以上の雇用継続が見込まれるような規定がある場合は社会保険に加入する必要があります。
企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ
企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料※
会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません
受付時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30
平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30
※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
有期労働契約期間の上限
有期労働契約の期間は、労働基準法14条1項により、上限3年と定められています。しかし、この定めは契約の更新を禁止したり制限したりするものではありません。
また、例外も存在します。一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの、一定の高度な専門的知識を有する者、60歳以上の労働者は、上限5年の有期労働契約を締結することが認められています。「高度の専門的知識」の基準は、博士の学位を有する者、弁護士、公認会計士や税理士、社会保険労務士、医師や歯科医師、獣医師、システムアナリスト、特許発明の発明者、農林水産業等の技術者、システムエンジニア等が該当します。
有期労働契約期間の下限
有期労働契約の上限は3年という定めがありますが、法令上、下限に関しての定めはありません。
しかし、労働契約法で、有期労働契約を結ぶ際には、必要以上に短い期間を設定し、契約の更新を反復しないようにという配慮義務が定められています(17条2項)。もっとも、違反しても、定めた期間や契約自体は無効にはなりません。
有期労働契約期間途中の解雇・解除
有期労働契約の期間中に途中解雇・解除することは、やむを得ない事情がない限り認められません。
「やむを得ない事情」に当たるものとしては、企業の倒産、天災地変等が考えられますが、これ以外であっても直ちに雇用契約を終了するほかないような事情がある場合には認められる可能性があります。
有期労働契約の解除については、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひこちらをご一読ください。
有期労働者の雇止め法理
有期労働契約でも、契約の更新が繰り返され、実質的に無期労働者と変わらず何年も労働している場合があります。このようなケースにおいては、契約の更新に対して期待することに合理性があると考えられるため、使用者は契約更新を拒否することができません。労働者側から契約の更新を求められた場合は、更新されたものとみなされます。これを、「雇止め法理」といいます。
有期労働契約の雇止め法理に関しては、以下ページで詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
無期転換ルール
2012年に改正された労働契約法では、有期契約で働く労働者が特定の条件を満たしていて、かつ本人が希望すれば無期契約に転換される制度が導入されました。一定の条件とは、同一の使用者との間で更新された有期労働契約の通算期間が5年を超えることです。
例えば、1年契約の有期労働契約を4回更新して5年働いた場合、この契約をもう一度更新すれば6年目になります。6年目の契約期間中に当該労働者が無期契約への転換を希望した場合、無期契約を締結したとみなされ、6年目の契約期間満了日の翌日(7年目)から無期契約で働くことができます。これが無期転換ルールです。
期限の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
また、2012年の労働契約法改正で、有期労働契約者に対して、不合理な労働条件を禁止するという条文が新たに設けられました。この条文は、有期契約で働く労働者と無期契約で働く労働者との待遇格差を是正する目的で導入されたものです。
労働条件などの点で、有期労働者と無期労働者の間で不合理な相違があると認められた場合、いわゆるパートタイム・有期雇用労働法8条に基づき、そのような労働条件は無効となります。
企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ
企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料※
会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません
受付時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30
平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30
※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
この記事の監修
- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある