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割増賃金の支払いに代わる代替休暇制度とは

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

長時間労働は、労働者のワーク・ライフ・バランスを崩し、健康障害を生じさせるリスクがありますが、法定労働時間を超過して働いている労働者は少なくありません。そこで、仕事と私生活の調和を図り、労働者の健康を確保することを目的として、2010年に法定割増賃金率の引き上げ等をはじめとする労働基準法の改正が行われました。この改正によって新設されたのが、「代替休暇制度」です。

今回は、代替休暇制度の概要や社内規定への制度導入時の注意点について、解説していきます。

割増賃金の支払いに代わる代替休暇制度とは

割増賃金の支払いに代わる代替休暇制度

労働時間は、法律上、原則として、週40時間1日8時間までに制限されています(法定労働時間)。ただし、三六協定を結ぶことにより月45時間まで、特別条項付の三六協定を結んだ場合にはこの限度を超えて、時間外労働(法定時間外労働)をさせることができます。

なお、労働者に時間外労働をさせる場合、使用者は、通常の賃金に加えて“割増賃金”を支払わなければなりません。具体的には、月60時間以下の労働については25%以上、60時間を超える労働については超過分に対して50%以上の割増賃金を支払う必要があります。

代替休暇制度」とは、月60時間を境に25%程度増加する割増賃金について、労使協定により、金銭での支払に替えて有給の休暇(代替休暇)を付与することを認める制度です(労働基準法37条3項)。働き方改革に伴う労働基準法の改正によって、月60時間を超える割増賃金率が引き上げられるとともに新設されました。より詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。

【働き方改革】2023年から中小企業の割増賃金率が引き上げられます

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年次有給休暇との違い

代替休暇は、年次有給休暇とは異なるものであり、労働基準法37条3項でも区別されています。

なお、年次有給休暇を付与すべきか否かを判断する際には一定期間内の出勤率を算定しますが、代替休暇日は正当な手続きにより労働義務を免除された日に当たるため、出勤率の計算上、労働日としてカウントされません。

また、代替休暇を半日取得した場合には、出勤率の計算上以下のように扱われます。

  • ①残りの半日は出勤した:出勤
  • ②残りの半日は年次有給休暇を取得した:出勤
  • ③残りの半日は欠勤した:欠勤

年次有給休暇の出勤率の詳しい計算方法等、詳細については下記の記事で説明しています。

年次有給休暇の基礎知識

代休との違い

「代休」とは、“休日労働させる代わり”に、他の勤務日の労働義務を免除することをいいます。一方、「代替休暇」は“一定の割増賃金を支払う代わり”に労働義務を免除することです。

どちらも労働義務を免除するという点で共通しますが、主に目的が異なります。

代替休暇制度の導入には労使協定の締結が必要

代替休暇制度を導入する場合には、当該制度に関する労使協定を締結しなければなりません。労使協定は、締結することで労働基準法が定める制限を解除するものです。この点、代替休暇制度は、労働基準法37条3項で定められていますが、割増賃金に関する例外規定であるため、実際の導入にあたって必要となると解されます。

また、代替休暇制度は、労働基準法89条1項1号に定める「休暇」に関する事項であり、導入にあたっては就業規則にも規定する必要があるため、忘れないように注意しましょう。

取得させることは義務ではない

代替休暇制度の導入にあたっては労使協定の締結が不可欠ですが、これはあくまでも制度を導入するための協定であり、労働者に代替休暇の取得を義務づけるものではありません。したがって、代替休暇の取得要件を満たした労働者は、対象の割増賃金を金銭として受け取るか、代替休暇の取得に替えるかを選択することができます。

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労使協定で定める事項

代替休暇制度に関する労使協定では、制度の詳細についても定める必要があります。具体的には、以下の項目に関して規定しなければなりません。

  • ①代替休暇として付与できる時間数の算定方法
  • ②代替休暇の単位
  • ③代替休暇を付与できる期間
  • ④代替休暇の取得日の決定方法
  • ⑤割増賃金の支払日

代替休暇の時間数の算定方法

代替休暇に換算できるのは、月60時間を超える時間外労働時間に対する割増賃金率(50%以上)と、通常の時間外労働に対する割増賃金率(25%以上)の差(25%以上)に相当する割増賃金です。つまり、代替休暇の時間数は、次の計算式により求められます。

代替休暇の時間数=(1ヶ月の法定時間外労働時間数-60)×換算率

換算率=月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率-代替休暇取得時に支払うべき割増賃金率(具体的な数値は労使協定によって定めます。)

実際に計算してみましょう。

例:月60時間を超える時間外労働時間に対する割増賃金率⇒50%

代替休暇取得時に支払うべき割増賃金⇒30%

法定時間外労働時間数⇒100時間

例の場合、換算率は「1.5%-1.3%=0.2%」なので、

「代替休暇の時間数=(100時間-60時間)×0.2%=8時間」

したがって、この月に関して、労働者は8時間の代替休暇を取得することが可能です。なお、次項のとおり、代替休暇の取得単位は定められているため注意が必要です。

代替休暇の単位

代替休暇制度は、長時間労働を抑制するとともに、長時間労働をした労働者に休息の機会を与えることを目的としています。そのため、まとまった休息をとらせるべく、代替休暇の取得単位は1日または半日と定められています。

ただし、労使協定の定めによっては、“半日”の定義について、厳密に1日の所定労働時間の2分の1としないことも可能です。例えば、前半3時間30分と後半4時間30分に分け、それぞれを“半日”とするといったことができます。

端数の時間がある場合

代替休暇の計算上、端数が生じる場合があります。このような場合には、以下のいずれかの方法で処理することになります。

  • ①端数とならない部分についてのみ代替休暇を取得させ、端数分については割増賃金として支払う
  • ②取得単位に満たない部分については、他の有給休暇を組み合わせる

例:1日の所定労働時間が8時間、代替休暇の時間数が11時間のケース

①の方法による場合

代替休暇を1日分取得させ、端数(3時間)分については金銭で割増賃金として支払う。

②の方法による場合

1日分の代休休暇と、半日分の休暇(代替休暇3時間分にその他の有給休暇の1時間分を組み合わせる)を取得させる。

代替休暇を与えることができる期間

代替休暇は、労働者に休息の機会を確保することを目的としているため、時間外労働をした月と近接して付与する必要があります。そのため、時間外労働をした月から2ヶ月以内、つまり翌月または翌々月に付与することとされています。

例えば、7月20日~8月19日の法定時間外労働数が60時間超になった場合、代替休暇の取得期限は8月20日~10月19日となります。

なお、2ヶ月連続で法定時間外労働時間数が60時間超になったときは、前後の代替休暇を合算することもできますが、取得期限は変わりません。

代替休暇の取得日の決定方法

代替休暇は、労働者がそれぞれの意思で取得するものであるため、使用者は、代替休暇の取得希望の有無を労働者に確認する必要があります。このとき、実際の取得日や取得単位について確認することまでは求められず、取得を希望するか否かを確認する程度で足りるとされます。

ただし、代替休暇には取得期限があるため、早期に意思確認し、取得日を決定することが望ましいでしょう。トラブルを回避するためにも、例えば給与計算の締日から1週間以内に意思確認を行い、取得を希望する場合には取得日を決定するというように、取得日の決定方法についてあらかじめ労使協定で定めておくべきだといえます。

時季変更権の有無

代替休暇は年次有給休暇とは異なるものです。したがって、年次有給休暇で使用者に認められているような時季変更権はありません。そこで、代替休暇の取得日として決定していた期日に出勤の必要性が生じたような場合には、労使間で話し合って対応を決めることにする等、労使協定で対処方法を定めておく必要があります。

割増賃金の支払日

代替休暇の取得の有無によって、当該休暇に相応する割増賃金を支払うべきか否かが変わるので、割増賃金の支払日が問題となります。この点、トラブル回避のために、割増賃金の支払日に関しても、あらかじめ労使協定で定めておくことが重要です。

一般的に、以下の例のように定めるケースが多いようです。

  • ①労働者が代替休暇の取得を希望する場合
    割増賃金が発生した賃金計算期間に対応する賃金支払日
  • ②代替休暇の取得を希望したものの、実際には取得できなかった場合
    代替休暇を取得できないことが確定した賃金計算期間に対応する賃金支払日
  • ③代替休暇の取得を希望しない、または希望が確認できない場合
    割増賃金が発生した賃金計算期間に対応する賃金支払日
  • ④意思確認時に代替休暇の取得を希望しなかったが、後日希望してきた場合
    割増賃金が発生した賃金計算期間に対応する賃金支払日(過払分については翌月の賃金支払日に清算する)

賃金毎月払・全額払の原則との関係

割増賃金の一部の支払を代替休暇の付与に替えることは、賃金の“毎月払いの原則”および“全額払いの原則”に反するのではないかと疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。

しかし、代替休暇を付与することは、法が予定する行為の範囲内であるため、代替休暇の付与がこれらの原則に反するとされることはありません。ただし、2ヶ月の取得期間内に代替休暇を取得できない場合には、取得できないことが確定した賃金計算期間に対応する賃金支払日に、相応する割増賃金を支払う必要があります。代替休暇を取得できないにもかかわらず割増賃金を支払わない場合には、賃金の“全額払いの原則”に反することになります。

代替休暇制度を設ける際の注意点

これまで説明してきた代替休暇ですが、中小企業に関しては、改正後の労働基準法の施行が2023年4月まで猶予されているため、法定時間外労働の時間数にかかわらず、割増賃金率の最低ラインは25%のままです。そのため、中小企業の場合、代替休暇の導入を検討する必要性は比較的小さいというのが現状です。

また、そもそも代替休暇の対象となるほど長時間の法定時間外労働が行われている会社では、代替休暇を付与することが現実的ではないケースがあります。そして、実際に制度を導入しても労働者に取得を義務づけられず、また、運用上、給与計算や人事管理の難易度が上がるため、導入や運用のコストに見合わないケースもあります。

したがって、代替休暇制度を設ける際には、社内の需要を十分に考慮することが重要であるといえます。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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