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労働基準監督署からの「是正勧告」について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働条件や労働環境に問題点がある場合、企業は厳しい取り締まりを受けます。その一例として挙げられるのが、労働基準監督署による「是正勧告」です。

是正勧告がなされると企業はさまざまなリスクを負うため、日頃から対策を徹底しておく必要があります。また、是正勧告を受けてしまった場合も、速やかに適切な対応をとり、ダメージを最小限に抑えることが重要です。

本記事では、是正勧告の概要や企業に求められる対応について詳しく解説します。労働条件の見直しやより良い職場作りにも役立ちますので、ぜひご一読ください。

労働基準監督署の是正勧告

是正勧告とは、労働基準監督官が、調査(臨検監督)の結果、法令違反があると認められた企業に対して違反事項を指摘し、改善を求めることをいいます。是正勧告を受けた企業は、速やかに違反の状態を解消し、その旨を報告する必要があります。

是正勧告の法的拘束力

是正勧告は、行政指導であって、行政処分にはあたらないため、法的拘束力は伴いません。よって、勧告に従わないことを直接の理由として罰則を受けることはなく、改善するかどうかの判断は企業に委ねられています。

ただし、労働基準監督官から法令違反の事実があると指摘されている状況に変わりはないため、勧告を無視し続けると以下のようなデメリットが起こり得ます。

是正勧告に従わない場合

是正勧告は行政指導のため、これに従わないことを理由に罰則を受けることはありません。

ただし、勧告の事由は法令違反に該当する事実ですので、刑事事件に発展し、労働基準監督官が司法警察権を発動し送検手続きをとる可能性があります。

これは、労働基準監督官は警察と同等の権限をもつ「司法警察官」にあたるためです(労基法102条)。つまり、“何度是正勧告をしても改善の意思がみられない”“是正勧告に対して虚偽の報告をした”といった重大・悪質な事案に対しては、事業主を逮捕・送検することが認められています。

送検手続きがとられると、起訴をされ、裁判で有罪判決が下されるおそれもあるため注意が必要です。

労働基準監督官の権限について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

労働基準監督署の権限|司法警察員としての権限

企業名の公表

一定の法令違反が認められる企業は、送検される以前の“是正勧告を受けた段階”で社名が公表される可能性があります。
公表の対象となる企業については、以下のように定められています(平成29年1月20日基発0120第1号)。

複数の事業場を有する社会的に影響力の大きい企業(中小企業に該当しない企業)であって、概ね1年程度の期間に2ヶ所以上の事業場で、次の実態が認められる企業

  • 1事業場で10人以上又は4分の1以上の労働者について、あるいは過労死等の被災労働者について、1ヶ月あたり80時間を超える時間外・休日労働が認められ、かつ、労働時間関係違反の是正勧告等を受けていること
  • 重大悪質な労働時間関係違反等が認められること

なお、公表制度の目的は、遵法意識の啓発、法令違反の防止の徹底や自主的改善の促進により、同種事案の防止を図ることにあり、企業への制裁は目的ではありません。
とはいえ、社名が公表されれば、社会的信用の低下は避けられないでしょう。是正勧告にはきちんと従うのが賢明です。

なお、時間外労働の規定や罰則は以下のページで解説しますので、併せてご確認ください。

時間外労働とは | 特殊な勤務形態における時間外労働

是正勧告の不服申立て

是正勧告に対して不服申立てや取消訴訟を提起することはできません。なぜなら、是正勧告は行政指導にあたり、行政不服審査法や行政事件訴訟法における手続きが利用できないためです。

したがって、実質的には是正勧告に従わざるを得ないといえるでしょう。

是正勧告書の交付

「是正勧告書」とは、労働基準監督署による調査の結果、法令違反が認められた場合に交付される書面です。主に違反事項とその根拠条文・是正期日等が記載されます。

なお、是正勧告書は当日交付されるのではなく、後日、事業主や責任者が労働基準監督署に出頭して受け取るのが一般的です。このとき、受領日・受領者職・受領者名の署名捺印が求められます。

是正勧告書が交付された場合、企業は是正期日までに違反事項を改善し、その旨を労働基準監督署に報告する必要があります。法的拘束力がないからといって無視していると、罰則や社名の公表等さまざまなリスクがあるためきちんと対応しましょう。

指導票との違い

「指導票」とは、法令に直接違反するものではないものの改善の必要がある事項がある場合に交付される書面です。例えば、36協定の範囲内ではあるが、長時間労働が続いているようなケースです。

また、労働技官(労働基準監督署の技術職員)から労働安全衛生に関する指導を受けた場合も交付されることがあります。

労働技官については、以下のページでご説明します。

労働技官|労働基準監督署の職員構成

一般的に、指導票には事業場の問題点や危険性・改善方法等が記載されます。また、是正勧告書と同じく、交付時は受領日・受領者職・受領者名の署名捺印が求められます。

指導票にも法的拘束力はありませんが、指摘事項を改善し、その旨を報告する必要があります。法令違反はなくても一種の“警告”といえるため、きちんと応じることが重要です。

使用停止等命令書との違い

「使用停止等命令書」とは、労働者が就業する施設や設備に安全衛生基準の違反が見つかり、労働者に急迫した危険があると判断された場合に交付される書面です。これは、労働基準法103条、96条の3第1項の規定に基づき交付されます。

ポイントは、是正勧告や指導とは異なり、使用停止等命令は法的拘束力をもつ行政処分であるということです。よって、命令に従わない場合、「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」という罰則が科せられます(労安衛法119条)。

使用停止等命令書が交付された場合、企業は適切な措置をとり、その旨を労働基準監督署に報告する必要があります。ただし、不服がある場合、行政不服審査法や行政事件訴訟法に基づく不服申立てを行うことも可能です。

是正報告書の提出

是正勧告書の交付を受け、違反事項を改善した後は、労働基準監督署長に「是正報告書」を提出します。報告書作成のポイントについて、以下で見ていきましょう。

提出期日

指摘された内容を改め、決められた期日までに「是正報告書」を提出します。
期日を守らなかった場合、労働基準監督署に「改善できていない」と疑われ、再調査が行われる可能性があります。また、再調査は抜き打ちで実施される場合もあるため注意が必要です。

一方、期日までに改善できないからといって直ちに罰則が科される可能性は高くありません。

そのため、期日までの対応が難しければ、労働基準監督署に正直に申し出ましょう。遅延に正当な理由があると認められれば、期日を延長してもらえる可能性があります。

記載内容

是正報告書には所定の書式がないため、企業が自由に作成することができます。ただし、以下の項目については必ず記載しましょう。

  • 違反事項とその根拠条文
  • 是正内容
  • 是正完了年月日

重要なのは、「指摘された内容を適正に是正した」ことがきちんと伝わることです。“どんな対応をしたのか”“今後どのような対策をとるのか”等、是正内容を具体的に記載して違反事実が解消されたことを明確に記載することがポイントです。

法令違反を弁解するような内容は避けましょう。例えば、「違反になると知らなかった」「悪意はなかった」等と記載しても、是正勧告が撤回されることはありません。
また、虚偽の報告は絶対にしてはいけません。虚偽の報告をした場合、悪質と判断され、逮捕や送検がなされるおそれがあります。

是正勧告の対象となる事項

是正勧告の対象となるのは、労働基準法・労働安全衛生法・最低賃金法といった「労働関係法令」に抵触している事由です。例えば、以下のような項目について指摘を受ける可能性があります。

  • 労働時間
  • 賃金、割増賃金
  • 休憩、休日、休暇(年次有給休暇を含む)
  • 就業規則
  • 法定帳簿(労働者名簿や賃金台帳)
  • 安全衛生管理体制
  • 健康診断

労働基準監督署の立ち入り調査では、これらの項目に違反がないか厳しくチェックされます。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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