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派遣労働における雇用安定措置の概要

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

派遣労働という働き方は、使用者側にとっては、人員が必要なときに即戦力となる労働者を一時的に雇えるという非常に便利な制度です。「派遣」という言葉、働き方、ともに世間に浸透し、今では当たり前の存在になりました。

しかし、労働者の側から見れば、派遣労働者という立場は通常の雇用(いわゆる“正社員”)と比べて非常に不安定です。そこで、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、労働者派遣法、労派遣法)」では、派遣元事業主に、派遣労働者を保護するための雇用安定措置を講じる義務を定めています。

ここでは、事業主が派遣労働者に対して講じなければならない雇用安定措置について説明していきます。

雇用安定措置の概要

労働者派遣法では、派遣元事業主は、同一の組織単位(同じ会社の同じ課など)において、個人単位での派遣可能期間である3年間の就業が完了する見込みがある労働者に対し、派遣の終了後の雇用を継続させる措置(雇用安定措置)を講ずることが義務づけられています(1年以上3年未満の労働者については努力義務とされています(労派遣法30条))。

派遣可能期間に関しては、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

派遣対象の業務と派遣可能期間(期間制限)について

派遣期間が3年未満の派遣労働者に対して

派遣元による雇用安定措置は、労働者派遣法により規定されています。派遣労働者の同一組織単位への在籍が最長の3年間に達すると見込まれる場合は、「講じなければならない」と義務づけられています(労派遣法30条2項)。一方、派遣期間が3年未満の労働者に向けては努力義務に留まっており、「講ずるように努めなければならない(同法30条1項)」と定められています。

雇用安定措置の対象外

労働者派遣には「常用型派遣」と「登録型派遣」の2種類があります。このうち「常用型派遣」は「無期雇用派遣」とも呼ばれ、労働者は派遣元会社に常に雇用されており、派遣先会社との契約期間が終了しても派遣元会社との雇用関係は終了せず、給与も発生します。派遣元会社と無期雇用派遣労働者の同意があれば、派遣元でいわゆる“正社員”となることも可能ですが、無期雇用派遣労働者の段階では雇用安定措置の対象外となります。

雇用安定措置における派遣元の義務・努力義務

派遣労働者が同一の組織単位で3年間の派遣可能期間を完了する見込みのとき、派遣元事業主には雇用安定措置として以下のいずれかを講じる義務が、1年以上3年未満の場合は努力義務が課されます。 以下、派遣元事業主に課される義務・努力義務を解説します。

派遣先会社に直接雇用を依頼

派遣労働者が、派遣可能期間の3年間が完了する見込みのある派遣先でそのまま働くことを希望したとき、派遣元事業主はその派遣先に、労働者を直接雇用するよう依頼しなければなりません。これに派遣先会社が同意すれば、派遣労働者は労働契約を結び、派遣先会社の社員となることができます。

派遣元事業主がこの措置を講じながらも直接雇用が成立しなかった場合は、別途、以下の措置のいずれかを講じなければなりません。

派遣労働者への新規派遣先の提供

派遣元事業主が派遣先会社に依頼しても直接雇用が結ばれなかったとき、派遣元事業主は、当該派遣労働者に新たな派遣先を紹介し、就業の機会を提供しなければなりません。

ただし、単純に別の派遣先を用意すればいいというわけではなく、当該派遣労働者の能力や経験等に照らして、新たな派遣先での就業条件が合理的なものでなければなりません。例えば、エンジニアとして勤務していた派遣労働者に清掃業を行う派遣先を紹介する等の行為は、雇用安定措置の趣旨に反するとみなされるおそれがあります。

派遣労働者以外(無期雇用労働者)としての雇用機会の提供

同一組織単位における派遣労働者の在籍が最長の3年間に達する見込みがあるとき、派遣元事業主は、まず当該派遣先への直接雇用の依頼をする義務があります。直接雇用が叶わないときは、新たな派遣先を提供するか、派遣元会社にて、派遣労働者以外の労働者(無期雇用労働者、いわゆる“正社員”)として雇用の機会を確保し、提供しなければなりません。

そのほかの雇用安定のための措置

そのほかの雇用安定のための措置とは、教育訓練や、紹介予定派遣の提供のことをいいます。

紹介予定派遣とは、6ヶ月を上限とする派遣期間終了後、当該労働者を派遣先会社で直接雇用することを念頭に置いた制度です。ただし、直接雇用は義務ではありませんので、紹介予定派遣で期間終了後に不採用となる場合もあります。

また、教育訓練は、資格の取得等、直接雇用に結びつくようなものに限られ、その期間は有給となります。

派遣先による雇用安定措置

2015年の労働者派遣法改正により派遣労働者保護が強化され、派遣元だけでなく、派遣先の事業主にも雇用安定措置が義務づけられました。以下でその内容を解説します。

派遣元から直接雇用の申入れがあった場合

受け入れた有期派遣労働者が、同一の組織単位において派遣可能期間の3年間が完了する見込みがあり、派遣元事業主から直接雇用の申入れがあったとします。その際、当該事業所、またはその他の派遣労働者を受け入れている就業場において労働者の募集を行うときは、当該派遣労働者が継続就業を希望している場合に限り、労働者の募集に係る事項を知らせなければならないと義務づけられています。

同一の派遣労働者の受け入れ

同一の事業所、または、その他の派遣労働者の受け入れ対象である就業場において、同一の派遣労働者を1年以上の期間受け入れている場合、当該事業所、またはその他の派遣労働者受け入れ対象である就業場において通常の労働者(いわゆる“正社員”)を募集するときは、当該派遣労働者に募集に係る事項を知らせなければならないと義務づけられています。

前項とともに、これらは“義務”であり、必ず講じなければなりません。

雇用安定措置における休業手当について

厚生労働省の指針では、派遣元事業主は、労働者の新たな就業機会の確保ができない場合には、休業手当の支払いといった労働基準法等に基づく責任を果たすことが要求されています。

休業手当に関しては、以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。

会社都合の休業による休業手当の支給義務

雇用安定措置における留意点

雇用安定措置は労働者派遣法で厳格に定められている義務・努力義務ですが、事業主として留意しておかなければならない点があります。以下で解説します。

3年の契約期間満了前に、更新しない旨を宣告すること

同一の組織単位に連続して派遣されていた労働者が、継続して就労することを希望しているにもかかわらず、雇用安定措置から逃れるために、3年の期間満了を迎える前に派遣元会社から「これ以降(3年目以降)の更新はない」と宣告することは、違法となるおそれがあります。

派遣元事業主は、同一組織単位に3年派遣される見込みがあり、継続した就業を希望している労働者に対しては、派遣先への直接雇用の依頼等、雇用安定措置を講じなければならない義務があります(<1 雇用安定措置の概要>参照)。

職業紹介手数料について

雇用安定措置では、同一の組織単位への派遣可能期間3年が完了する見込みがある労働者に関して、派遣元事業主は派遣先に直接雇用を依頼しなければならないと定められていますが、これは職業安定法上の職業紹介にはあたらないものです。したがって、派遣先会社は、当該労働者を正規で雇用するに至ったとしても、派遣元会社に職業紹介手数料を支払う義務は負いません。

派遣先会社と派遣元会社間での金銭授受により直接雇用の依頼に支障をきたせば、雇用安定措置の趣旨に反します。また、『派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者または派遣先となろうとする者で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならない(労派遣法33条2項)』と定める労働者派遣法への実質的な違反にもつながります。

無期雇用派遣労働者への切替えについて

雇用安定措置として、労働者の無期雇用派遣社員としての雇用を派遣元会社にて行う、あるいは行おうとしているものの、「一定期間派遣先が決まらないときは辞めてもらう」とすることは、法違反にあたるおそれがあります。労働者派遣法に定められた雇用安定措置では、派遣労働者を無期雇用に切り替える際はそれだけでは不十分であり、その後、該当労働者の能力や経験に照らして、合理的な条件での派遣先を提供しなければならないとされます。

また、厚生労働省の指針には、『無期雇用派遣労働者の雇用の安定に留意し、労働者派遣が終了した場合において、当該労働者派遣の終了のみを理由として当該労働者派遣に係る無期雇用派遣労働者を解雇してはならないこと』という定めがあります。

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