初回1時間 来所・zoom相談無料

0120-630-807

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません 会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

労働基準法における年次有給休暇の賃金支払いについて

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働者に年次有給休暇を付与した日は、当該労働者が実際に出勤した日と同様の扱いをすることとなっています。当然、賃金も生じます。

もっとも、このときの賃金額は、会社がどの計算方法を採用するか、各種手当をどのように扱うか等で異なってきます。しかし、適正な額の賃金額が支払われなければ、労働者にとって年次有給休暇の取得が不利益なものとなってしまいます。そのため、使用者には適切な方法で年次有給休暇の賃金を算定することが求められます。

ここでは、【年次有給休暇の賃金】に焦点をあて、その計算方法について解説していきます。順に確認していきましょう。

年次有給休暇の賃金

使用者は、労働者が年次有給休暇を取得した際に支払う賃金の計算方法について、以下の3種類から選択することができます(労基法39条9項)。

  • ①所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  • ②平均賃金
  • ③健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額

ただし、労働者ごと、事案ごとといったように、その都度計算方法を変更することはできません。

就業規則への規程

年次有給休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項とされています。そのため、年次有給休暇の賃金の計算方法も、上記①〜③のうちどの方法を選択するか、あらかじめ就業規則等に定めておく必要があります。

なお、【賃金】に関する詳しい内容は以下のページで解説していますので、併せてぜひご覧ください。

賃金を構成する要素

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

受付時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

0120-630-807

平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

有給休暇中の賃金の計算方法

所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

①所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金とは、労働者が通常どおり出勤していれば支払うことになる賃金のことを指します。以下、賃金の支払い方法によって異なる具体的な計算方法をみてみましょう。

時間給制の場合 時間給×所定労働時間数
日給制の場合 日給額
週給制の場合 週給額÷その週の所定労働日数
月給制の場合 月給額÷その月の所定労働日数
月、週以外の一定期間で賃金が定められている場合 上記4つの計算方法に準じて算定
出来高払制、その他の請負制の場合 (賃金算定期間の賃金総額÷当該期間における総労働時間数)×当該期間における1日平均所定労働時間数
上記のうち2つ以上の計算方法を併用する場合 それぞれの計算方法で算定した金額の合計

もっとも、行政解釈では、①の方法を選択する場合、通常の出勤をしたものとして扱えば十分であり、都度上記の計算を行なう必要はない(昭和27年9月20日基発675号)とされており、①〜③のうち、賃金計算がもっとも簡易的である点がメリットとしてあげられます。

平均賃金

②平均賃金とは、原則として、年次有給休暇の付与日の前日(賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日)から遡って3ヶ月間に支払った賃金の総額を、その期間の総日数(総暦日数)で除した金額を指します。

この点、賃金の全部又は一部の支払い方法が日給制、時間給制、出来高払制その他の請負制の場合、あるいは算定期間の欠勤日数が多いと、平均賃金が低額になることも考えられます。

このようなケースを考慮して、対象となる3ヶ月間に支払った賃金の総額を、その期間の労働日数で除した額の60%を最低保障額とすることが定められています。つまり、平均賃金の原則に従って計算した金額と最低保障額とを比較して、どちらか高い額を支払うことになります。

健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額

③健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額とは、健康保険料の基準となる標準報酬月額を30で除した金額を指します。ただし、標準報酬月額には上限額があります。労働者によっては実収入が上限額を超える場合もありますが、その場合にはその上限額を基準に計算することとなります。

また、③の方法を選択する場合、使用者は、過半数労働組合又は過半数を代表する者と、書面による労使協定の締結が必要になります(労働基準監督署への届出は不要です)。

日によって労働時間が異なる場合

変形労働時間制を採用している場合や、時間給制のパートタイム労働者等については、年次有給休暇付与日の所定労働時間に応じて賃金を支払うことになります。

①の方法で計算する場合、〈所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金〉で説明したように計算は簡単ですが、日によって所定労働時間が変わってくるため、所定労働時間が比較的長い日に年次有給休暇を取得した方が得であると考え、長時間勤務の日に取得申請が偏るといったデメリットが生じ得ます。

②の方法で計算する場合、年次有給休暇付与日の所定労働時間によらず、平均した一定額に固定されます。そのため、所定労働時間が比較的長い日に年次有給休暇の申請があった場合は、①の方法に比べて支払う賃金を低額に抑えることができます。ただし、平均賃金を都度計算しなければならない負担が生じます。

③の方法については、労使協定締結のハードルや、社会保険未加入の場合には適用できないといった事情から、実務上は①、②の方法を選択することが一般的です。

なお、変形労働時間制に関する詳しい内容は以下のページで解説していますので、併せてぜひご覧ください。

変形労働時間制

フレックスタイム制度の場合

フレックスタイム制度のもとで労働者に年次有給休暇を付与した場合は、労使協定で定めた“標準となる1日の労働時間‘’を労働したものとして扱い、これを年次有給休暇の賃金の算定基準とします。

フレックスタイムに関する詳しい内容は以下のページで解説していますので、併せてぜひご覧ください。

フレックスタイム

定年後に再雇用する際の注意点

労働者が定年退職後に再雇用制度を利用する場合、退職から再雇用までに相当期間が存するケースを除き、継続勤務として扱われ、労働契約は存続していると解されます。つまり、退職時までの勤続年数も通算して年次有給休暇を付与しなければならず、また、未消化分の年次有給休暇も、時効にかかる分を除き繰り越せることになります。

もっとも、再雇用時には改めて労働契約を結ぶことになりますが、その際に賃金の減額等が行われることは珍しくありません。年次有給休暇の賃金額は、付与日時点の労働契約の内容に応じて算定されるため、退職時の繰越分を付与する場合でも、新たな労働契約に則った賃金額を基準とすることに注意が必要です。

なお、【定年退職】【高齢者の雇用制度】に関する詳しい内容はそれぞれ以下のページで解説していますので、併せてぜひご覧ください。

高年齢者雇用安定法における継続雇用制度について
定年について

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

受付時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

0120-630-807

平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

有給休暇における各種手当の取扱い

年次有給休暇の賃金の算定において、②平均賃金、③健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額の場合は、算定対象となる期間中に支払った各種手当を含めた賃金の総額(臨時の賃金、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は除く)を基準とします。他方で、①所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の場合は、通常どおり出勤していれば支払うことになる賃金額を基準とします。そのため、手当の種類によっては必ずしも支払う必要がないものもあります。

この点、「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。(労基法136条)」とする規定に照らせば、住宅手当、家族手当等のように基本給に近い形で毎月支給しており、不支給とすると労働者の不利益となることが考えられる手当は算入するのが至当です。裏を返せば、労働者に不利益が生じない手当は不支給とすることが可能です。

各種手当の取扱いに関する法律上の規定はないため、労使トラブル防止のためにはこれらの扱いについて就業規則等に定めておくことが有用です。

なお、【不利益取扱い】【各種手当】に関する詳しい内容はそれぞれ以下のページで解説していますので、併せてぜひご覧ください。

不利益取扱い
会社が支給する給与の諸手当

深夜手当

深夜手当は、基本的に午後10時から午前5時(厚生労働大臣が認める場合には午後11時から午前6時)に労働した者に対して支払われる割増賃金です。

②、③の計算方法の場合は、前項で述べたとおり、深夜手当も算入します。

他方で、①の場合は、所定外労働時間に対する割増賃金は算入しないものとしています。なぜなら労働者は、年次有給休暇付与日には実際に深夜帯に出勤し、労働しているわけではないため、深夜手当は発生しないものと解することができるからです。しかしながら、所定労働時間に深夜帯が含まれている場合、通常どおり出勤していれば深夜手当は発生します。この場合には、割増賃金の支払いが必要となります。

通勤手当

①の計算方法の場合、定期券代等の日割り相当分を控除するようなことはできません。

しかしながら、通勤手当には実費弁償的な性格があります。年次有給休暇の付与日は、実際には通勤費用が生じていないため、その日の通勤手当を不支給とすることはやむを得ないと解することもできます。

また、②、③の場合、基準とする額にはすでに通勤手当も含まれていることから、重複して通勤手当を支給しないよう、1日あたりの通勤費用を控除しても労働者に不利益は生じません。

ただし、通勤手当の取扱いについて法律上の定めがない以上、そのような運用をするためには、就業規則等に“実際に出勤した日についてのみ支給する”といった規定を設けるべきといえます。

皆勤手当

年次有給休暇取得を理由に皆勤手当を不支給とした事案において、年次有給休暇の付与日を出勤したものとして扱わないことは労働者の休暇取得の妨げになりかねず、年次有給休暇制度の趣旨に反するため違法とした裁判例があります。他方で、皆勤手当の金額によっては不支給としても違法とはいえないとした裁判例もあります。

これについて、皆勤手当ての不支給が争点となった裁判例を2つ紹介しますので、そちらで詳しくみてみることにしましょう。2つの判断の違いについて注目してください。

皆勤手当の不支給が争点となった裁判例

■違法とみなされた裁判例

【横浜地方裁判所 昭和51年3月4日判決、大瀬工業事件】

事案の概要

被告会社の就業規則には、皆勤手当に関して『全労働日出勤のとき、又は所属長の承認を得て“休んだ日”数に応じて全額又は一部を支給する』旨の規定がありました。

被告会社に勤務する原告らが年次有給休暇を取得したところ、それを理由に皆勤手当の全部又は一部を支給されなかったことから、上記就業規則の規定中の“休んだ日”に「年次有給休暇を取得して休んだ日」が含まれるか否か争った事案です。

裁判所の判断

裁判所は、年次有給休暇中の賃金については、労働者が現実に出勤した日と実質的に同一の賃金を保障することによって休暇権の実効をあらしめるものとしたうえで、本件の場合、以下のような理由から年次有給休暇制度の趣旨に反する運用であるとして、違法と判示しました。

・使用者が賃金体系上、賃金の一部を皆勤手当等の諸手当とし、その諸手当の全部又は一部を、年次有給休暇を取得して休んだことを理由に支給しない旨就業規則で規定することは、年次有給休暇制度の趣旨に反する賃金不払として法的に許されない。

・被告会社の皆勤手当制度の内容は、通勤手当のような実費補償的性格のものでないことは明らかであり、就業規則の規定中の“休んだ日”に「年次有給休暇を取得して休んだ日」を含まないとする解釈をして運用するに限り有効な定めである。

■合法とみなされた判例

【最高裁 平成5年6月25日第二小法廷判決、沼津交通事件】

事案の概要

タクシー会社(被告)に勤務する乗務員(原告)が、勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得したことを理由に皆勤手当の全部又は一部を支給されなかったことについて、このような取扱いは労働基準法39条(年次有給休暇)、136条(不利益取扱い※<5 有給休暇における各種手当の取扱い>参照)に違反し無効であるとして争った事案です。

裁判所の判断

裁判所は、

・労働基準法136条の規定は、使用者の努力義務を定めたものであって、労働者の年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を有するものとは解されない。

・年次有給休暇制度の趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年次有給休暇取得に対する事実上の抑止力等諸般の事情を総合して、年次有給休暇を取得する権利の行使を抑制し、ひいては労働基準法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められない限り、公序に反して無効となるとすることはできないと解するのが相当である。

としたうえで、本件の場合、年次有給休暇の取得を理由に皆勤手当を控除する措置は労働基準法39条、136条の趣旨からして望ましいものではないとしても、以下のように解することができ、当該措置を無効なものとまではいえないと判示しました。

・被告会社の皆勤手当は、経営を運賃収入に依存する被告会社において、年次有給休暇の取得によって自動車の実働率が低下することを避ける配慮をした乗務員に対して支給することとしたものであり、年次有給休暇の取得を一般的に抑制する趣旨に出たものではない。

・乗務員が年次有給休暇を取得したことにより控除される皆勤手当の額は、現実の給与支給額に対して最大で1.85%の割合と、相対的にみて大きいものではないことから、この措置が乗務員の年次有給休暇を事実上抑止する力は大きなものではなかったというべき。

このように、皆勤手当制度の趣旨や、皆勤手当の額等から、労働者の年次有給休暇の取得を抑制するものではない場合は、年次有給休暇の取得を理由に皆勤手当を支給しないことが認められることもあります。もっとも、労働基準法39条、136条の趣旨から望ましいものでないことは確かですし、基本的には、皆勤手当を支給しないことは、控えるべきといえるでしょう。

労基法違反に対する罰則

労働者の年次有給休暇付与日の賃金について不当な減額等があった場合、労働基準法24条の賃金支払の原則に抵触するおそれがあり、その場合、使用者には罰則として30万円以下の罰金が科されます。

その他の年次有給休暇に係る罰則についての詳しい内容は、以下のページをご覧ください。

年次有給休暇の基礎知識
ちょこっと人事労務

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 来所・zoom相談無料

企業側人事労務に関するご相談 来所・zoom相談無料(初回1時間)

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

受付時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

0120-630-807

平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円) ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。 ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込11,000円)

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます