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フレックスタイム制における時間外労働のカウント方法

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

フレックスタイム制の導入により、労働者は自分のライフスタイルに合わせた働き方ができるとともに、近年、働き方改革の一つとして是正が掲げられている“長時間労働”を予防することも可能です。

しかし、フレックスタイム制のもとで「時間外労働」が生じることがないのかといえば、そうではありません。

このページでは、フレックスタイム制における「時間外労働」について、中でも、「時間外労働のカウント方法」に焦点を当て、解説していきます。

フレックスタイム制における時間外労働

フレックスタイム制は変形労働時間制の一つであり、清算期間中(一定の労働期間)の総労働時間の範囲内において、労働者の裁量で日々の労働時間を決められる制度です。

本制度の概要、制度導入のメリット・デメリット等について詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。

フレックスタイム制の仕組み

また、フレックスタイム制は、通常の労働時間制度とは時間外労働のカウント方法が異なります。この点、詳しくみていきましょう。

時間外労働をさせるには36協定の締結が必要

労働者に法定労働時間を超えて労働(=時間外労働)させるには、36協定の締結が必要です。したがって、フレックスタイム制を採用している会社・事業場では、労働者に清算期間を通算した法定労働時間の総枠を超えて労働させる可能性がある場合、36協定を締結する必要があります。

フレックスタイム制の時間外労働は、「1日」単位ではなく「清算期間」単位でカウントするため、36協定では「1日」あたりの延長時間を定める必要はなく、「1ヶ月」、「1年」あたりの延長時間を定めます。

時間外労働のカウント方法

ここでポイントとなるのは、清算期間が1ヶ月を超える場合のカウント方法です。

清算期間を1ヶ月とした場合、清算期間を通算した法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間が時間外労働としてカウントされます。

他方で、清算期間が1ヶ月を超える場合、当該期間を1ヶ月ごとに区分した各期間の労働時間が1週間あたり50時間を超えてはならない(労基法32条の3第2項)ことも考慮しなければなりません。 したがってこの場合、以下の(ア)と(イ)が時間外労働としてカウントされます。

  • (ア)清算期間を1ヶ月ごとに区分した各期間において、週平均50時間を超えて労働させた時間
  • (イ)清算期間を通算した法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間(※(ア)の時間は含めない)

フレックスタイム制における休日労働の取扱い

フレックスタイム制において法定休日(労基法35条)に労働させた場合は、通常の労働時間とは分けて取り扱い、休日労働として35%以上の割合で算出した割増賃金を支払う必要があります。

これに対して、法定外休日に労働させた場合、基本的には通常の労働時間と併せて取り扱い、清算期間を通算した法定労働時間の総枠を超えているときには時間外労働として25%の割増賃金を支払うことになります。

時間外労働の算定方法

では、清算期間を7月1日から9月30日までの3ヶ月間、実労働時間を7月【190時間】、8月【130時間】、9月【225時間】(※3ヶ月合計【545時間】)とした場合を例に、時間外労働の具体的な算定方法を、次項より順に確認していきましょう。

フレックスタイム制の枠組みを把握

まずは、時間外労働のカウントの基礎となる、7月から9月までの3ヶ月間における①法定労働時間の総枠②各月ごとに週平均50時間となる月間の労働時間を把握します。

①は、「1週の法定労働時間【40時間】× (7・8・9月の暦日数【92日】÷ 【7日】)」で求めることができ、法定労働時間の総枠は【525時間(※端数切捨て)】であることがわかります。

②は、「【50時間】×(各月の暦日数 ÷ 【7日】)」で求めることができます。7・8月の暦日数は31日、9月は30日であることから、各月ごとに週平均50時間となる月間の労働時間は7月【221.4時間】、8月【221.4時間】、9月【214.2時間】であることがわかります。

各月ごとに週平均50時間を超えた分が時間外労働

続いて、実労働時間と前項②の結果をもとに、各月ごとに週平均50時間を超えた分の時間外労働をカウントします(※<時間外労働のカウント方法>の(ア)にあたります)。

7月から9月の実労働時間のうち、9月は週平均50時間の値【214.2時間】を超過しているため、「9月の実労働時間【225時間】- 9月の週平均50時間となる労働時間【214.2時間】」により超過時間部分を時間外労働として求めることができます。

したがって、【10.8時間】分が時間外労働ということになります。

法定労働時間の総枠を超えた分が時間外労働

さらに、実労働時間と<フレックスタイム制の枠組みを把握>の①の結果をもとに、清算期間を通算した法定労働時間の総枠を超えた分の時間外労働をカウントします(※<時間外労働のカウント方法>の(イ)にあたります)。

算定にあたって、前項で算出した時間外労働【10.8時間】分は含めませんから、実労働時間の合計【545時間】から差し引きます。そして、法定労働時間の総枠である【525時間】を上回る部分を最終月の時間外労働としてカウントします。つまり、「【545時間】【10.8時間】【525時間】」で求めることができるため、【9.2時間】分を9月の時間外労働として扱うことになります。

結果、この例の場合には、「【10.8時間】+【9.2時間】」の【20時間】を9月の時間外労働としてカウントし、割増賃金を支払う必要があります。

フレックスタイム制における時間外労働の上限規制

フレックスタイム制における時間外労働も、労働基準法36条4項、5項によって以下のような〔時間外労働の上限規制〕の適用を受けます。


〔時間外労働の上限〕

原則
月45時間以内
年360時間以内

特別の事情がある(特別条項付き36協定が締結されている)場合
年720時間以内(※年6回以内の制限あり)
過労死ライン
時間外労働+休日労働が単月100時間未満
時間外労働+休日労働が2~6ヶ月平均80時間以内

法令違反となるケース

フレックスタイム制における時間外労働の時間数が前項記載の上限を上回ると、法令違反となるケースがあります。考えられるケースとして、以下の3つを紹介します。

月45時間を超えた回数が年間で7回以上となった

例えば、36協定の対象を1月から12月までの1年間としたケースで、1・3・4・6・8・9・12月は月45時間を超える時間外労働があった場合、時間外労働が起こり得る特別な事情について具体的に記載した「特別条項付き36協定」を結んでいても、時間外労働の上限である【月45時間】を超えて働けるのは【年6回】以内であるため、年7回超過しているこのケースは法令違反となります。

単月で合計100時間以上となった

例えば、清算期間が7月から9月の3ヶ月間で、実労働時間が7月【210時間】、8月【190時間】、9月【215時間】(※3ヶ月合計【615時間】)とした場合、9月の時間外労働は「【615時間】- 【525時間(※法定労働時間の総枠)】」で【90時間】となります。

これに加え、9月に休日労働が【10時間】あった場合、「時間外労働【90時間】+ 休日労働【10時間】」で合計【100時間】となります。

時間外労働+休日労働は【単月100時間】未満を上限としており、それを1回でも超過してしまったこのケースは法令違反となります。

2~6ヶ月平均のいずれかにおいて80時間を超えた

例えば、7月から12月の「時間外労働+休日労働」が7月【85時間】、8月【70時間】、9月【80時間】、10月【85時間】、11月【90時間】、12月【85時間】とします。

この点、【2~6ヶ月平均80時間】以内である必要がありますが、7月から10月までの4ヶ月平均までは80時間を超えないものの、7月から11月までの5ヶ月平均が【82時間】と、80時間を超えてしまいます。そのため、このケースは法令違反となります。

労務管理の注意点

通常の労働時間制度や、フレックスタイム制において清算期間を1ヶ月とした場合のカウント方法では〔時間外労働の上限〕の範囲内であったとしても、清算期間が1ヶ月を超える場合には、法定労働時間の総枠を上回る分は最終月の時間外労働として扱われることから、最終月で〔時間外労働の上限〕を超過し、法令違反となってしまうおそれがあります。

このように、フレックスタイム制において清算期間が1ヶ月を超える場合には、時間外労働のカウント方法が異なってくるため、労務管理には十分な注意が必要です。

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