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解雇予告|適切な伝え方や不要なケース、解雇予告手当について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働者を解雇する場合、使用者は解雇予告の実施又は解雇予告手当の支払いのいずれかをすることが義務付けられています。これは、解雇によって労働者の生活に突然影響が出ないよう配慮した制度です。

また、解雇予告を行う時期や、解雇予告手当の計算方法なども明確に決められているため、解雇を決断したときには早めに対応する必要があります。

本記事では、解雇時に求められる企業の対応について解説していきます。対応を誤ると労働トラブルにつながるおそれがあるため、十分注意しましょう。

解雇予告に関する労働基準法上の定め

解雇予告とは、解雇する旨をあらかじめ労働者本人に通知することをいいます。労働基準法では、解雇日の30日前までに、解雇予告を行わなければならないと定められています(解雇予告期間、労働基準法20条)。

なお、30日の解雇予告期間は、平均賃金を支払った日数分だけ短縮することができるため、例えば、平均賃金10日分を支払えば、予告日数は20日前で済むことになります。

解雇予告又は予告手当の支払いを怠った企業は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性もあるため注意が必要です(労働基準法119条)。

解雇予告手当を払えば解雇できるのか

解雇予告手当を支払ったからといって、必ず解雇が認められるわけではありません。

解雇は労働者の生活に大きく影響するため、行うには解雇に相当する客観的かつ合理的な理由と社会通念上の相当性が必要とされています(労働契約法16条)。
十分な解雇理由なく労働者を解雇した場合、たとえ解雇予告手当を支払っていても解雇権の濫用とされてしまい、当該解雇処分は無効となります。

なお、解雇が認められ得る正当な理由の主な事例は以下のようなものです。

  • 窃盗や横領などの犯罪行為を行い、その程度が悪質である
  • 2週間以上の無断欠勤が続いた
  • 採用において重視していた重要な経歴の詐称

解雇が認められるケースをさらに知りたい方は、以下のページもご覧ください。

正当な解雇事由とは

解雇予告手当について

解雇予告手当とは、解雇予告を行わない場合に支払うお金のことです。

30日以上の解雇予告期間を設けないケースでは、「解雇日までの日数」と「労働者の給与額」に応じた金額を支払うことで解雇予告期間を短縮することができます。
例えば、即日解雇のケースでは30日分の平均賃金を支払えばよく、解雇日の20日前に解雇予告を行うケースでは10日分の平均賃金を支払えば短縮することができます。

解雇予告手当を計算する際の基礎となる「賃金の総額」

解雇予告手当は、対象者の平均賃金をもとに計算します。平均賃金は、以下の式で求めるのが基本です(労働基準法12条)。

直近3ヶ月間に支払われた賃金総額÷その3ヶ月の総暦日数

賃金の締め日を定めている場合、直前の締め日から遡った3ヶ月間が対象となります。
また、賃金総額は、税金や社会保険料を差し引く前の額面上の金額を用います。ただし、臨時的に支払われたものなど、一部の金額は賃金総額に含まないため注意が必要です。詳しくは下表をご覧ください。

「賃金総額」に含まれるもの 「賃金総額」に含まれないもの
  • 基本給
  • 通勤手当
  • 精皆勤手当
  • 役職手当
  • 残業手当
  • 年次有給休暇の賃金
  • 確定している昇給分
  • 未払いの賃金
  • 労働災害が原因で休業している期間に対して支払われたもの
  • 産休、育休、介護休暇取得中の期間に対して支払われたもの
  • 会社の都合で休業している期間に対して支払われたもの
  • 試用期間に対して支払われる賃金
  • 臨時に支給されたもの(ボーナスなど)

なお、日給制や時給制の場合、計算方法が異なることがあるため注意が必要です(次項で解説します)。

解雇予告手当の計算方法

解雇予告手当の計算式は、以下のようになります。

平均賃金×解雇予告期間の不足日数

平均賃金を求める際は、賃金総額から除外される項目などに注意しましょう。
また、不足日数は、30日-解雇予告日から解雇日までの日数で求めることができます。

なお、日給制や時給制の場合、平均賃金は以下のうちどちらか高い方を用います。

・直近3ヶ月間の賃金総額÷3ヶ月の日数
・直近3ヶ月間の賃金総額÷3ヶ月の勤務日数×0.6

もっとも、上記が法律上の最低保障金額を下回る場合、最低補償金額を用いて計算する必要があります。

月収28万円(月末締め)、解雇日6月30日、解雇予告日6月10日のケース

・3ヶ月間の賃金総額=28万円×3ヶ月=84万円
・3ヶ月間のカレンダー上の総日数=31日+30日+31日=92日

よって、
「平均賃金=84万円÷92日=約9130円」

また、解雇予告期間の不足日数は20日のため、
「解雇予告手当=約9130円×10日(30日-20日)=約9万1300円
となります。

解雇予告の伝え方

労働者に解雇予告を伝える際は、次の手順を踏みましょう。

  1. 解雇の方針を社内で共有
  2. 解雇の理由をまとめたメモを作成
  3. 解雇予告通知書を作成
  4. 労働者を別室に呼び出し、解雇することを伝える

労働者とのトラブルに備え、解雇の決定までは慎重に検討するため、あらかじめ上司や車内において共有しておくことが重要です。また、労働者に不当解雇を訴えられないよう、解雇の理由や解雇日について具体的に説明しましょう。解雇理由に対する異議がある場合には、その内容も踏まえたうえで、本当に解雇すべきかという点を見直すことも必要です。

なお、解雇予告の方法にきまりはありませんが、後のトラブルを防ぐため、口頭ではなく解雇予告通知書などの書面で伝えるのが一般的です。

解雇予告通知書の詳細は、次項からご説明します。

解雇予告通知書による通知

解雇予告通知書とは、使用者が労働者に解雇する旨を伝えるための書面です。
口頭のみの通知だと、何をいつ伝えたのかを証明できなくなり、トラブルに発展するおそれがあります。そのため、証拠保全の意味で解雇予告通知書を作成しておくと安心です。

解雇予告通知書に決まった書式はありませんが、「解雇の意思」と「解雇の期日」が明確にわかるようにする必要があります。具体的には、次のような事項を盛り込むのが一般的です。

  • 会社名
  • 代表者名
  • 作成日付
  • 解雇予定日
  • 解雇理由(就業規則等に定められた解雇理由となる条項を含む)
  • 社印または代表社印
  • 解雇対象者の氏名

もっとも、解雇予告通知書を送付したからといって、必ず解雇が認められるわけではないことに注意が必要です。

解雇予告通知書と解雇理由証明書の関係

解雇理由証明書とは、解雇の理由を具体的に記載する書面のことです。労働者から申し出があった場合、使用者は速やかに発行することが義務付けられています(労働基準法22条)。

また、解雇予告通知書で解雇理由を伝えていても、労働者から申し出があれば、使用者は別途解雇理由証明書を発行しなければなりません。

これは、2つの書面の役割が異なるためです。例えば、解雇理由証明書は、裁判で解雇の有効性を判断する際の証拠となり得ます。 解雇理由を把握する目的は、その理由に納得がいっていないか異議があることを明らかにするためであることが多く、労働者から解雇理由証明書の発行を求められた場合、不当解雇や解雇の無効を訴えられる可能性に備えておくべきでしょう。

口頭による解雇予告

解雇予告の方法は定められていないので、口頭で通知しても法的な問題はありません。
しかし、解雇予告をした証拠が残らないため、口頭ではなく書面で通知するのが望ましいでしょう。

例えば、口頭による通知だと解雇予告をした証拠が残らないため、労働者から「予告されていない」、「予告日が異なる」などと主張される可能性があります。

また、いつ解雇予告をしたかは使用者側で立証しなければならないため、書面に残しておいた方がスムーズに対応できるでしょう。

解雇予告除外認定とは

解雇予告除外認定とは、解雇予告を行わなくても、労働者を即日解雇できる制度です。また、解雇予告手当の支払いも必要ありません。

ただし、解雇予告除外認定を利用するには、あらかじめ労働基準監督署の許可を得る必要があります。また、認定には一定の要件があり、必ず認められるものではないため注意が必要です。

解雇予告除外認定の対象となる解雇事由

次のような解雇事由であれば、解雇予告除外認定を受けることができます(労基法20条1項但書)。

  • 天災事変その他やむを得ない理由で事業が継続できなくなった
  • 労働者の故意・過失等が原因で解雇に至った

ただし、解雇予告除外認定の対象は限定的といえます。例えば、事業場や工場が震災で倒壊した場合など、復旧が見込めないケースに限られています。
一方、経営難や資材不足といった理由では、認められない可能性が高いでしょう。

また、労働者の故意や過失についても、重大又は悪質なものに限られます。例えば、窃盗や横領などの犯罪行為を繰り返した場合や、注意しても勤怠不良が改善されない場合などです。

解雇予告手当を支給した際の有給休暇について

予告された解雇日を迎えるまでは、労働者は有給休暇を取得することができます。解雇の効力発生日までは労働者であり、有給休暇を取得する権利も残っているためです。

そのため、労働者が「解雇予告日から解雇日まで有給休暇を取得したい」と申請した場合、基本的に拒否することはできません。
業務の引継ぎができないと支障が出るおそれもあるため、解雇時の有給休暇の取得ルールについては、あらかじめ就業規則で定めておくことが重要です。就業規則の規定がなくても、労働者と話し合って必要な時間を確保するよう努めましょう。

なお、有給休暇は退職した時点ですべて消滅するので、解雇日以降に労働者から有給休暇の消化や買取を求められたとしても応じる必要はありません。

下記の記事では、有休休暇の概要や労働者の退職に伴う有休消化について解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。

年次有給休暇

解雇予告及び解雇手当が不要となるケース

臨時的に雇用している一部の労働者については、解雇予告をすることが困難または不適当とされています。そのため、解雇予告義務や、解雇予告手当の支払義務はありません。

具体的には、下記のような労働者が対象となります(労働基準法21条各号)。

  • 日雇い労働者(1ヶ月以上継続して雇用された場合は制度の対象となります)
  • 契約期間を2ヶ月以内とする有期雇用労働者(契約期間を超えて引き続き雇用された場合は制度の対象となります)
  • 契約期間を4ヶ月以内として、海の家やスキー場での業務などの季節的業務に従事する労働者(契約期間を超えて引き続き雇用された場合は制度の対象となります)
  • 入社日から14日以内の試用期間中の労働者(入社15日目以降からは制度の対象となります)

なお、以上のケースはあくまで解雇予告制度が適用されなくなるだけなので、労働契約を途中で解約する民事上の責任は問われる可能性があります。

解雇予告・解雇予告手当にまつわる裁判例

【東京地方裁判所 平成26年1月30日判決、トライコー事件】

Y社で経理業務などを担うXは、「期限を守らない、資料を適切に管理しない」などの理由から、即日解雇を言い渡されました。
これに対しXは、当該措置は解雇権の濫用であり、また、解雇予告や解雇予告手当の支払いがなされていないことから、解雇の無効などを訴えました。

裁判所は、解雇予告や解雇予告手当の支払いがなかった(労働基準法20条に違反した)からといって、当然に解雇が無効になるわけではないと判断しています。
よって、Xの勤務態度が就業規則の解雇事由にあたる以上、解雇は有効であると認めました。

また、解雇の効力発生日については、「30日間が経過した後」又は「解雇予告手当が支払われたとき」であるとして、Y社に解雇予告すべき期間に相当する30日分の賃金の支払いを命じました。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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