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従業員への解雇予告|通知と解雇手当について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

使用者が労働者を解雇する際には、30日以上前に「解雇予告」をすることが義務とされています。この解雇予告制度は、使用者の一方的な労働契約の解約によって労働者が突然生活の糧を失ってしまう事態を避けるために、解雇を事前に予告させて労働者の生活を守ることを目的に設計されました。

今回は、労働者保護を目的とした制度のひとつである「解雇予告」について、具体的な運用方法や適用の対象外となるケースなどを詳しく解説していきます。

解雇予告に関する法律上の定め

使用者が労働者を解雇しようとするときは、少なくとも30日前にはその予告をしなければなりません。30日前に予告をしない場合、使用者は30日分以上の平均賃金を支払う必要があります(労基法20条1項本文)。この場合に支払う平均賃金を「解雇予告手当」といいます。

なお、予告日数(解雇予告をした日の翌日から起算して予告期間満了により解雇の効力が発生する日までの日数)は、平均賃金を支払った日数分だけ短縮することができます(同条2項)。したがって、短期間で解雇を実現したい場合には、予告手当を準備したうえで実施したほうが良いということになります。

なお、期間の定めのない労働契約について規定した民法627条1項によると、労働契約の解約予告期間は14日で足りるとされています。しかし、使用者が一方的にする解雇は労働者の生活の糧を奪う重大なものです。そこで、労働者の保護を図る労働基準法では、労働者の再就職活動の都合などを考えて予告期間を30日に延長しています。

解雇における正当な解雇事由

客観的に合理的な理由がなく、社会通念からみても相当といえない解雇は、使用者が解雇権を濫用したものとして無効になります(労働契約法16条)。言い換えれば、客観的にみて解雇という最終手段を選択せざるを得ないほどの理由(以下「正当な解雇事由」といいます)がなければ、解雇は有効と認められません。

一般的に、下記のような労働者に対しては、正当な解雇事由があると認められる可能性が高いでしょう。

  • 社内で窃盗や横領などの犯罪行為をしたケース
  • 正当な理由なく2週間以上無断欠勤を続け、出勤するよう求めてもこれに応じないケース
  • 病気や怪我が原因で通常の業務ができなくなったケース

なぜ正当な解雇事由が必要なのか、具体的にどのような事由があれば正当だと判断されるのか、気になる方は下記の記事をご覧ください。

正当な解雇事由とは

なお、解雇の有効性を判断する際に、予告手当が支払われたかどうかは考慮されません。解雇の有効性と予告手当の支払いの有無はまったく別の問題です。

解雇予告手当について

解雇予告手当とは、解雇日の30日以上前に予告していないにもかかわらず解雇する場合に、使用者が労働者に対して支払わなければならない金員をいいます(労基法20条1項本文)。

具体的な金額は、「平均賃金×(30日-解雇予告日から解雇日までの日数)」という計算式を使って求めます。

平均賃金とは、解雇を予告された労働者に過去3ヶ月間に支払われた賃金の総額を、カレンダー上の総日数で割った金額を指します(同法12条1項本文)。

例えば、給与を月末締めとしている会社で働く労働者に6月10日に解雇を言い渡した場合、3月1日から5月31日までに支払った賃金をカレンダー上の総日数(92日)で割ることになります。

また、解雇日の30日前を過ぎて解雇予告をしたときは、解雇を予告してから実際に解雇するまでの日数(30日に満たない日数分)を平均賃金にかけた金額を支払います。

つまり、解雇日の20日前に解雇を予告した場合は、30日分満額ではなく、10日分の平均賃金を支払えば良いということになります。

解雇予告手当を計算する際の基礎となる「賃金の総額」

解雇予告手当を計算する際の基礎となる平均賃金は、解雇を予告された労働者に過去3ヶ月間に支払われた賃金の総額をもとに計算します。

「賃金の総額」は、基本的に、解雇を予告された日の前日からさかのぼって3ヶ月間に支払われた額面上の賃金の合計額(源泉所得税や社会保険料などを差し引く前の金額)を指します。(賃金計算の締日を設定している場合は、解雇予告日の直前の締日からさかのぼって3ヶ月間に支払われた賃金の合計額となります。)

なお、「賃金の総額」には以下のようなお金が含まれます。

  • 基本給
  • 通勤手当
  • 精皆勤手当
  • 役職手当
  • 残業手当
  • 年次有給休暇の賃金
  • 確定している昇給分
  • 未払いの賃金

一方、この3ヶ月間に支払われた賃金でも、以下のいずれかに該当するものは「賃金の総額」の計算には入れないものとされています。

  • 労働災害が原因で休業している期間に対して支払われたもの
  • 産休、育休、介護休暇取得中の期間に対して支払われたもの
  • 会社の都合で休業している期間に対して支払われたもの
  • 試用期間に対して支払われる賃金
  • 臨時に支給されたもの(ボーナスなど)

解雇予告手当の計算方法

解雇予告手当は、「平均賃金×(30日-解雇予告日から解雇日までの日数)」という式に則って計算します。以下、流れを簡単に確認していきましょう。

まずは平均賃金を求めるため、賃金の総額を計算し、次に解雇日直前の賃金締切日からさかのぼって3ヶ月間のカレンダー上の総日数を計算します。(なお、さかのぼった3ヶ月の間に、労災による休業期間、産前・産後休業、育児休業、介護休業、試用期間が含まれている場合には、除外して計算する必要があります。)

平均賃金は、基本的に「3ヶ月間の賃金の総額÷3ヶ月間のカレンダー上の総日数」で求められます。
ただし、日給・時間給・出来高払制の労働者の平均賃金には、法律上最低基準が定められています。

そのため、平均賃金が「3ヶ月間の賃金の総額÷3ヶ月間に働いた日数×60%」を下回っている場合には、平均賃金ではなく最低基準の金額を支払う必要があります。

平均賃金が計算できたら、30日から「解雇予告日の翌日から解雇日までの日数」を差し引いた日数をかけ、解雇予告手当を算定します。

【計算例:月末締め・月収28万円の人が6月10日に、6月30日を期日とする解雇予告を受けた場合】

・3ヶ月間の賃金の総額=28万円×3ヶ月=84万円
・3ヶ月間のカレンダー上の総日数=31日+30日+31日=92日

なので、
「平均賃金=84万円÷92日=約9130円」

また、解雇予告日の翌日から解雇日までの日数は20日なので、
「解雇予告手当=約9130円×(30日-20日)=約9万1300円
となります。

解雇予告の伝え方

労働者に解雇予告を伝える際は、次の手順を踏みましょう。

  1. 社内で解雇の方針を共有
    解雇する労働者とトラブルになったときに会社全体で力を合わせて対応できるようにするために、会社の幹部や本人の直属上司などに話を共有し、あらかじめ理解を求めておくことが大切です。
  2. 解雇の理由をまとめたメモを作成
    労働者に解雇の話をする際に役立つので、直接指導してきた上司から聴き取りを行うなどして、解雇の理由を詳細・具体的にまとめたメモを用意しておきましょう。
  3. 解雇予告通知書を作成
    解雇予告は口頭・書面のどちらで伝えることもできますが、手続が正しく行われたかどうかを巡って争いになるリスクを減らすためにも、書面を作成することをおすすめします。
  4. 労働者を別室に呼び出し、解雇することを伝える
    会議室などに呼び出し、解雇予告通知書の提示や口頭で、解雇の意思・解雇の期日を本人にはっきりと伝えます。労働者からの反論や質問が予想されますが、事前に作成したメモを参考に冷静に対応しましょう。

解雇予告通知書による通知

解雇予告通知書とは、使用者が労働者に解雇する旨を伝える書面です。解雇予告通知書を送付したからといって解雇が必ず有効になるとは限りませんが、口頭のみの通知だと後で何をいつ伝えたのかを証明できなくなり、水掛け論のトラブルに発展するリスクが大きいので、証拠保全の意味で作成しておくべきです。

解雇予告通知書に決まった書式はありませんが、解雇予告は「解雇の意思」と「解雇の期日」を労働者が明確に認識できるようにする必要があります。そこで、主に次の事項を内容に盛り込むのが一般的です。

  • 会社名
  • 代表者名
  • 作成日付
  • 解雇予定日
  • 解雇理由(就業規則等に定められた解雇理由となる条項を含む)
  • 社印または代表社印

口頭による解雇予告

解雇予告の方法は法律で定められていないので、口頭で通知する方法でも問題ありませんが、解雇予告を口頭で済ませることは避けるべきです。なぜなら、いつ予告をしたのかが証拠として残らないため、解雇予告をした事実を立証することが難しいからです。

解雇予告は少なくとも30日前にしなければならず、30日以上前に予告しない場合には、30日分以上の平均賃金に当たる解雇予告手当を支払わなければなりません。

「○月○日に解雇予告をした」ことは使用者自身が立証する必要があるので、後日の立証にかかる負担を減らすためにも、書面で通知するなどして証拠を残しておくことをおすすめします。

解雇予告手当を支給した際の有給休暇について

予告された解雇の効力発生日を迎えるまでは、労働者は社員のままですから、社員の権利として有給休暇を取得することができます。

そのため、労働者が、解雇予告された日から解雇される日までの日数分の有給休暇を申請してきたとしても、拒絶できる根拠は法律上ありません。業務の引継ぎをしなければならないなど、解雇する労働者の対応が必要な事項がある場合に備えて就業規則にその旨規定しましょう。そのような規定がないときでも、労働者と話し合って必要な時間を確保するよう努めましょう。

なお、有給休暇は退職した時点ですべて消滅するので、解雇後に労働者から有給休暇の消化を求められたとしても応じる必要はありません。

下記の記事では、有休休暇の概要や労働者の退職に伴う有休消化について解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。

労働基準法で定められる年次有給休暇の基礎知識

解雇予告除外認定とは

一定の事情がある場合、解雇予告が不要になることがあります。
ただし、その場合でも、事前に労働基準監督署長に申請し、解雇予告の除外事由があることを認定してもらわなければなりません(労基法20条3項、19条2項)。この認定を「解雇予告除外認定」あるいは単に「除外認定」と呼びます。

解雇予告除外認定の対象となる解雇事由

次のような解雇事由があれば解雇予告除外認定を受けられるので、解雇予告や解雇予告手当の支払いが不要になる可能性が高いです(労基法20条1項但書)。

  • 天災事変その他やむを得ない理由で事業が継続できなくなった
  • 労働者の故意・過失等が原因で解雇に至った

懲戒解雇は労働者の故意・過失等が原因で行うことが多いですが、すべての懲戒解雇のケースで解雇予告除外認定が受けられるとは限りません。解雇予告除外認定の対象は、通常の懲戒解雇事由よりも限定的に判断されます。

例えば、労働者の問題行為が下記で挙げる例のように重大なものでない限り、解雇予告除外認定は受けられないでしょう(昭和23年11月11日基発1637号、昭和31年3月1日基発111号)。

  • ①社内で窃盗・横領・傷害などの犯罪行為を行い、その程度が軽微でない場合
  • ②一般的にみてかなり軽微な犯罪行為であるものの、次の事情があり悪質性が高い場合
    ・使用者が事前に防止措置を講じていたと客観的に認められる
    ・労働者の犯罪行為が継続的、または断続的に行われた
  • ③社外で行った窃盗・横領・傷害などの犯罪行為であっても、会社の名誉や信用を大きく傷つけ、取引先との関係を壊すと認められる場合

解雇予告及び解雇手当が不要となるケース

臨時的に雇用している一部の労働者については、解雇予告をすることが困難または不適当なので、解雇予告制度の適用対象となりません。具体的には、下記のような労働者に対しては、解雇予告や解雇予告手当を支払う必要がありません(労基法21条各号)。

  • 日雇い労働者(1ヶ月以上継続して雇用された場合は制度の対象となります)
  • 契約期間を2ヶ月以内とする有期雇用労働者(契約期間を超えて引き続き雇用された場合は制度の対象となります)
  • 契約期間を4ヶ月以内として、海の家やスキー場での業務などの季節的業務に従事する労働者(契約期間を超えて引き続き雇用された場合は制度の対象となります)
  • 入社日から14日以内の試用期間中の労働者(入社15日目以降からは制度の対象となります)

なお、以上のケースはあくまで解雇予告制度が適用されなくなるだけなので、労働契約を途中で解約する民事上の責任を問われなくなるわけではありません。

解雇予告・解雇予告手当にまつわる裁判例

裁判例の一部には、解雇予告義務に違反した解雇は絶対的に無効であるとするものもあります(大阪地方裁判所 平成元年10月25日決定、小料理屋「尾婆伴」事件)。

しかし、最高裁は、「解雇予告義務に違反する解雇は即時解雇としては効力を生じないものの、使用者が即時解雇に固執する趣旨で行ったわけではない限り、解雇の意思表示が到達してから30日が経過するか、又はその意思表示の後に解雇予告手当を支払ったときは、そのいずれかの時から解雇の効力を生じる」という立場をとっており(最高裁 昭和35年3月11日第2小法廷判決、細谷服装事件)、下級審の多くもこの判断に従っています。

したがって、解雇予告義務に違反した解雇であっても、労働基準法所定の期間が到来するまでの賃金相当額を支払うときは、当該期間が経過した日に解雇の効力が生じると考えることができます(もちろん、解雇権濫用法理によって解雇の有効性に関する検証はなされることになります)。

即時解雇にこだわると、解雇権の濫用などが争われて解雇が無効と判断されるリスクになるため、避けたほうが良いでしょう。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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