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解雇予告

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

従業員の解雇には、30日以上前の「解雇予告」が必要とされています。このことは、解雇という重大な処分を行うにあたって労働者の権利を十分に保護することが目的とされています。解雇予告を欠く解雇の効力はどのように考えられているのか、解雇予告に代わる手段はないのか等、後日のトラブルを防ぐため、労働基準法が定める解雇予告のルールをみていきましょう。

解雇予告に関する法律上の定め

使用者が労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労基法20条1項)。この予告日数は、平均賃金を支払った日数分だけ短縮することができます(労基法20条2項)。したがって、短期間で解雇を実現したい場合には、予告手当を準備したうえで実施したほうが良いということになります。

なお、民法627条1項によると、労働契約の解約予告期間はそもそも14日で足りるとされています。しかしながら、解雇は労働者の生活の糧を奪う重大なものであるため、労働者の再就職活動の便宜等を考慮して、労働基準法は、労働者保護のために民法上の予告期間を30日に延長しています。

解雇における正当な解雇事由

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労契法16条)。実務上は、厳格な判断がなされているため、慎重に実施する必要があります。

解雇事由についてもっと詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。

退職及び解雇 解雇事由

口頭による通知

労働基準法上には、解雇予告の方法について明記した規定はありません。よって、口頭による通知であっても有効なものとなります。しかしながら、先に述べたように、解雇予告は少なくとも30日前にしなければならず、30日前に予告をしなければ、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。30日以上前に予告したことは、使用者が立証しなければなりませんが、口頭による通知の場合、いつ予告をしたのか証拠として残りません。後日の余計な立証の負担を減らすためにも、口頭による通知のみを行うことは避けるべきでしょう。

解雇予告通知書による通知

予告は、解雇される日を特定し、労働者が明確にこれを認識できるようにしてなされる必要があります。また、予告は、解雇するという意思表示が直接本人に対して明確に伝わる方法で行っておかなければ、後日の立証の負担が過大になるおそれがあります。このような点から、解雇予告は文書で行うことが確実であり、その際には、「解雇予告通知書」という表題で、解雇の効力発生日、対象者、解雇予告を行った日付を明記して行うことが一般的です。

解雇予告手当について

使用者は、30日前に解雇予告をしなくても、30日分以上の平均賃金を支払うことによって、即時解雇することも認められています(労基法20条1項)。解雇予告制度の趣旨が、労働者を、突然解雇を言い渡されることによる生活への影響から守ることにあるとすれば、30日分に該当する賃金が支払われることによっても、30日前に予告される場合と同様に労働者の最低限の生活の保障になるからと考えられます。

また、平均賃金を支払った場合、支払った日数分だけ30日の予告日数から短縮することも認められています(労基法20条2項)。例えば、10日分の平均賃金を支払うことにより、10日間短縮して20日前に予告すれば良いことになります。

解雇予告手当における平均賃金の考え方

平均賃金とは、労働者に解雇を知らせた日までの3ヶ月間に、その労働者に対し支払われた「賃金の総額」を、その期間の総日数で割って算出したものです(労基法12条1項)。しかしながら、ほとんどの会社において賃金の締切日が定められているのが実状であり、こういった場合、計算の便宜上、解雇を知らせた日の直前の賃金締切日から起算して3ヶ月間を対象期間として算出します(労基法12条2項)。

解雇予告手当算出の基礎となる「賃金の総額」

「賃金の総額」とは、源泉所得税や社会保険料を差し引く前の、3ヶ月分の賃金の合計額(いわゆる「額面」)のことです。

例えば、給与体系が月末締め、翌月10日払いのケースで、解雇日が6月10日の場合、賃金締切日は5月末日となります。したがって、遡って3ヶ月間に該当する3月1日から5月31日を対象期間として、解雇した労働者の「賃金の総額」を算出することになります。

もっとも、この3ヶ月間に支給された賃金であっても、以下のいずれかに該当するものは、「賃金の総額」の計算には入れないものとしています。

  1. 労災で休業している期間に対応するもの
  2. 産休、育休、介護休暇取得中の期間に対応するもの
  3. 会社の都合で休業している期間に対応するもの
  4. 試用期間に対応する給与
  5. 賞与等臨時に支給されたもの

解雇予告手当の算出方法

平均賃金に予告期間の30日に不足する日数を乗じて、解雇予告手当を算出します。

まず、賃金の総額を計算し、続いて解雇日直前の賃金締切日より3ヶ月間の総日数を算出します。なお、この3ヶ月間に前項の①~④に該当する期間がある場合、その期間の日数は含めません。

そして、「賃金の総額÷総日数」の商が、法定の“平均賃金の最低額”未満となっていないか確認します。

“平均賃金の最低額”は、「賃金の総額÷解雇日直前の賃金締切日より3ヶ月間の出勤日数×0.6」で算出できます。

解雇予告手当を支給した際の有給休暇について

解雇することを決定し、予告したとはいえ、解雇の日までは、労働者には社員としての身分が継続しています。言い換えれば、労働者には解雇予告されたかどうかにかかわらず、有給を取得する権利は残っています。そのため、解雇予告されてから解雇されるまでの日数を有給休暇にあてることについて、法的に拒絶することは適いません。業務の引継ぎ等、対象となる労働者に対応を求める事項がある場合には、協議を重ねて必要な時間を確保する必要があります。

なお、有給休暇は退職時点ですべて消滅しますから、解雇後に、労働者から有給休暇の消化を請求されても応じる必要はありません。

以下のページでは、有給休暇に関する詳しい内容を説明していますので、ぜひご覧ください。

労働基準法で定められる年次有給休暇の基礎知識

解雇予告及び解雇手当が不要となるケース

先に述べたように、使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労基法20条1項)。ただし、この解雇予告には、次のとおり、解雇予告を不要とする例外があります。

解雇予告の適用が除外される労働者

一定の臨時的な雇用の場合には、解雇予告をさせることが困難あるいは不適当ですので、解雇予告制度の適用除外者として、次の者を定めています(労基法21条)。なお、使用期間中の解雇については、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は該当しません。そのため、雇い入れて15日目以降の解雇には、予告期間が必要となりますので、注意が必要です。

  1. 日日雇い入れられる者
  2. 2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
  3. 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者
  4. 試の使用期間中の者

※なお、④の『使用期間』は、『試用期間』とは異なるものであるため、注意が必要です。

解雇予告除外認定とは

解雇予告も一部の事情がある場合には、不要となることがあります。ただし、その場合でも、労働基準法において、事前に労働基準監督署長に申請して、除外事由にあたることの認定を受けなければなりません(労基法20条3項)。この認定を「解雇予告除外認定」あるいは単に「除外認定」と呼びます。

解雇予告除外認定の対象となる解雇事由

次のいずれかの場合には、解雇予告や解雇予告手当の支払いは不要です(労基法20条1項但書)。

  1. 天災事変その他やむを得ない理由によって事業が継続できなくなった
  2. 解雇につき労働者に帰責性(故意や過失、それと同等の事情)がある

懲戒解雇では、②に当たるケースが多いため、即時解雇の扱いを希望する場合もあるでしょう。この点、②に関して行政通達(昭23年11月11日基発1637号、昭31年3月1日基発111号)は、「原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合。また一般的にみて『極めて軽微』な事案であっても、使用者があらかじめ不祥事件の防止について諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、しかもなお労働者が継続的に又は断続的に盗取、横領、傷害等の刑法犯又はこれに類する行為を行った場合、あるいは事業場外で行われた盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為であっても、それが著しく当該事業場の名誉もしくは信用を失ついするもの、取引関係を喪失せしめるものと認められる場合」を指すとしています。通常の懲戒解雇事由より限定的な解釈となっているため、注意する必要があります。

解雇予告・解雇予告手当にまつわる裁判例

裁判例の一部には、解雇予告義務に違反した解雇は絶対的に無効であるとするものもありますが(大阪地方裁判所平成元年10月25日決定、小料理屋「尾婆伴」事件)、最高裁は、解雇予告義務に違反する解雇は、即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、解雇の意思表示到達後30日の期間を経過するか、又はその意思表示の後に予告手当の支払いをしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生ずる、という立場をとっており(最高裁 昭和35年3月11日判決、細谷服装事件)、下級審もこれに従うものが多数となっています。

したがって、解雇予告義務に違反した解雇であっても、労働基準法所定の期間が到来するまでの賃金相当額を支払うときは、当該期間経過日に解雇の効力が生ずると考えることができます(もちろん、解雇権濫用法理によって解雇の有効性に関する検証はなされることになります)。

即時解雇に固執することは、解雇無効を引き起こすリスクとなるため、避けたほうが良いでしょう。

解雇理由証明書の交付義務

労働者が、解雇の予告をされた日から退職する日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければなりません(労基法22条2項)。

以下のページでは、解雇理由証明書等に関する詳しい内容を説明していますので、ぜひご覧ください。

退職及び解雇 退職証明書及び解雇理由証明書
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