育児・介護休業法 所定外労働・時間外労働・深夜業の制限について

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」、通称育児・介護休業法では、子供を育てている労働者、または要介護状態にある家族を介護している労働者から請求があった場合、所定労働時間を超えて労働させてはならない「所定外労働の制限」、1ヶ月24間、1年150時間を超えて労働時間を延長してはならない「時間外労働の制限」、午後10時から午前5時までの深夜時間に労働させてはならない「深夜業の制限」を定めています。
このページでは、これらの制限において、事業主が講じなければならない措置、知っておくべきこと等を解説していきます。
目次
育児・介護休業法における制限規定
育児・介護休業法には、労働者が育児や介護と仕事を両立し、離職することなく働き続けられるよう、さまざまな規定が設けられています。「所定外労働の制限」、「時間外労働の制限」、「深夜業の制限」もそのような目的のもと制定された規定です。これらはいずれも、労働者からの申出があれば、事業の正常な運営を妨げる場合を除き拒むことができません。申出があった場合、事業主はその可否を当該労働者が担当している作業内容、作業の繁閑、代替要員の有無等を考慮して、客観的に判断することが求められます。
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所定外労働の制限
3歳に満たない子供を養育する労働者から請求があったとき、事業主は、当該労働者に所定労働時間を超えて労働させてはなりません。また、要介護状態にある対象家族の介護をする労働者から請求があったときも、それに準じた措置を講じなければなりません。ただし、どちらの場合も事業の正常な運営を妨げる場合はこの限りではありません。厚生労働省の指針では、この制度はあらかじめ導入され、就業規則等に記載されるべきものであるとされています。これらの制限は、以前は労働者の育児を支援するために事業主が実施するべき制度のうちのひとつでしたが、平成21年の改正によって事業主が必ず行うべき制度となりました。
所定外労働時間に関しては、以下のリンク先で詳しく解説していますのでご参照ください。
対象外となる労働者
所定外労働の制限に関して、日々雇用される者(1日限りの雇用契約または30日未満の有期契約で雇われている労働者)はその対象外となります。また、
- ・その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない
- ・1週間の所定労働日が2日以下
以上のいずれかに該当する労働者に関しては、あらかじめ労使協定で定めておけばその対象外とすることができます。
回数・期間
所定外労働の制限の請求は、1回につき、1ヶ月以上、1年以内の期間を指定することができます。また、請求回数に上限はありませんので、対象となる労働者ならば何回でもこの請求をすることができます。
時間外労働の制限
小学校就学の始期に達するまで(6歳を迎える誕生日を含む年度の3月31日まで)の子供を養育する労働者が請求したとき、事業主は、その労働者に1ヶ月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはなりません。また、要介護状態にある対象家族を介護する労働者から請求があったときも、これに準じて同じ措置を講じることが求められます。ただし、どちらも事業の正常な運営を妨げる場合はこの限りではありません。事業主には、この請求の可否に関して客観的に判断することが求められます。
時間外労働の詳細は、以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。
対象外となる労働者
時間外労働の制限では、日々雇用される者(1日のみの雇用契約、あるいは30日未満の有期契約で雇用されている労働者)は対象外となります。
また、下記の条件をあらかじめ労使協定で定めておけば、該当する労働者は時間外労働の制限の対象外とすることができます。
- ・事業主に雇用されている期間が継続して1年に満たない
- ・所定労働日数が、1週間で2日以下
回数・期間
時間外労働の制限の請求に関しての回数・期間は、所定外労働の制限と同様です。1回の請求につき、1ヶ月以上、1年以内の期間を指定することができ、また、対象となる労働者ならばその請求回数に上限はありません。
ただし、所定外労働の制限の請求と、時間外労働の制限の請求は、その期間が重複しないようにしなければなりません。
また、労働者が1年以内の期間で請求した場合には、その期間で150時間を超えないようにしなければなりません。なお、請求期間が6ヶ月以下の場合には、実質1ヶ月24時間の制限のみがかかります。
深夜業の制限
小学校就学の始期に達するまでの子供を育てる労働者が求めた場合、深夜(午後10時から午前5時まで)において当該労働者に労働させてはなりません。また、要介護状態の対象家族を介護している労働者が求めた場合にも、同じく深夜時間に労働させてはなりません。
ただし、事業の正常な運営を妨げるときは例外が認められますが、事業主は、労働者からのこの請求に関して客観的な判断をしなければなりません。
深夜労働の詳細については、以下のページで詳しく解説しています。
対象外となる労働者
深夜業の制限では、日々雇用される者は対象からは除外されます。
また、以下にひとつでも該当する労働者も対象から除外されます。
- ・雇用された期間が継続して1年に満たない
- ・所定労働日数が1週間で2日以下
- ・所定労働時間の全部が深夜である
- ・深夜において当該の子供を保育、あるいは当該の家族を介護できる同居の家族がいる
深夜において保育・介護できる同居の家族とは、16歳以上で、深夜に就業していないこと、負傷・疾病等により保育・介護が困難でないこと、6週以内に出産予定か出産後8週以内でないことのすべてに該当する者をいいます。
回数・期間
深夜業の制限に関しては、1回の請求につき、1ヶ月以上、6ヶ月以内の期間を指定することができます。また、請求回数に上限はありませんので、対象となる労働者ならば何度でもこの請求をすることができます。
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制限の期間が終了する事由
所定外労働・時間外労働・深夜業の制限について、当該の子供を養育しないことになったとき、または当該の家族を介護しないことになったときは、その制限期間が終了します。
また、所定外労働の制限に関しては子供が3歳になったとき、時間外労働・深夜業の制限に関しては供が小学校就学の始期に達したとき(6歳の誕生日を含む年度の、次の年度の4月1日を迎えたとき)には、労働者の意思にかかわらずその期間が終了します。
制限を受けている労働者が、産前産後休業、育児休業、介護休業を取得したときにも、期間が終了します。
産前産後休業、育児休業、介護休業に関しては、それぞれ以下のページで詳細に解説していますので、ご参照ください。
労働者から請求された際の手続き
所定外労働・時間外労働の制限を請求するとき、労働者は、1回につき1ヶ月以上1年以内の期間で、深夜業の制限を請求するときは1回につき1ヶ月以上、6ヶ月以内の期間で、その開始の日および終了の日を明らかにして、開始日の1ヶ月前までに申し出なければなりません。申出は書面に限らず、ファックス・電子メール等でも可能です。事業主は制限の申出、そして制限期間の待遇に関して、就業規則等に明記し、労働者に周知しておくことが必要です。
また、事業主は、労働者が所定外労働・時間外労働・深夜業の制限を請求したとき、請求に係る子供の出生、または対象家族が要介護状態にあること等を証明する書類の提出を求めることができます。
不利益取扱いの禁止について
事業主は、育児・介護休業法で義務づけられた休業、休暇、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限、所定時間労働の短縮等を労働者が申し出たこと、またはそれらの措置を労働者が利用したことを理由に、当該労働者に対して不利益な取扱いをすることは禁じられています。具体的には、解雇、降格、減給、不利益な配置変更、人事評価を下げること等です。
不利益取扱いに関しては、以下のページで詳細に解説していますのでご参照ください。
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この記事の監修
- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある