人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

賞与の査定方法

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

新型コロナウイルスのあおりを受け、世界的な不況が嘆かれる中で、【賞与】の査定方法について頭を抱えている会社も、少なからずあるのではないかと思います。

しかしながら、“不況”や“業績悪化”などを理由とした減額や、会社のために“良かれ”と思って行った賞与のカットが、法的に許されるものかどうかは、貴社がどのような査定方法をルールとして定めているかによって変わってくるのです。

このページでは、どのようなことを基準に賞与を査定するのが良いか、また、賞与の査定にあたって使用者が注意すべき点はどんなことか、といった内容を中心に解説していきます。

なお、【賞与】の定義など基本的な知識や、賞与にまつわるその他の問題・お悩みのヒントを紹介しているページもありますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。

賞与

賞与の査定に関する定め

賞与は法律によって支給が義務づけられているものではないため、支給の有無や支給額を判断するために重要な査定基準は、各社の賞与に関する規程によることになります。

まずは、賞与に関する規程において定めておくべき査定基準について、みていきましょう。

使用者が定めておくべき賞与の支給基準について

多くの会社が以下のような項目を査定基準としてあげていますが、どの項目を重要視するかは、自社の指針や特色に応じて変わってくるかと思います。一つ一つの項目を確認していきましょう。

対象者

就業規則等に退職規程を定める際には、支給対象者を記載します。対象となる者の在籍期間や出勤率などのほか、除外・減額の対象とする者の要件についても定めておくと良いでしょう。

一般的には、勤続年数にかかわらず正規雇用者のみが対象とされるケースが多いようですが、契約社員やパートタイマー、アルバイト等、非正規雇用者に支給するかどうかも、会社が選ぶことができます。

また、“賞与の支給日に在籍しない者には支給しない”とする支給日在籍要件を定めている会社もあります。

支給日在籍要件

業務評価

賞与査定の評価基準の中でも、最も比重が置かれるのが「業績評価」です。「業績評価」は、賞与 の査定期間において労働者自身が設定した目標を、どの程度達成できたのかを評価するものです。

具体的には、以下のような観点から評価していきます。

《例》

  • 目標設定(労働者の能力等に見合っているか)
  • 数値的な目標達成率
  • 目的達成のための上司、周囲との連携姿勢
  • 企業への業績貢献度

能力評価

能力評価」は、労働者個人のスキルや資格などを評価するものです。スキルの向上や資格取得は、業務への積極的な取り組みとして評価できるため、査定基準の一つにあげられています。

具体的には、以下のような事項が評価のポイントとなります。

《例》

  • 資格取得(業務に必要な資格、会社が推奨する資格等)
  • 外部セミナーへの参加
  • 重要な役職・ポジションへの配置

行動評価

行動評価」は、日々の出勤状況や勤務態度、仲間との協調性などを評価するものです。会社の行動指針等によって、重視するポイントが異なってくるのが特徴です。以下、項目として考えられる例をいくつかあげています。

《例》

  • 遅刻や欠勤の有無
  • 業務への積極性の有無(発言・姿勢)
  • 上司や同僚、部下等、ほかの労働者とのコミュニケーションの取り方

360度評価

360度評価とは、上司から部下への評価だけではなく、同僚や部下などからの評価も参考にする方法です。近年、プレイングマネージャーが増え、上司だけでは部下について適切な評価が難しくなったことを背景に、導入する会社が増えている傾向にあります。

ただし、運用の目的や評価基準、賞与査定への反映の程度等を明確にしたうえで、補助的な評価制度として導入するようにしましょう。なぜなら、評価者の主観が強く反映されるなどして適正な評価の結果とならないケースや、マイナスの評価をおそれてマネジメントに支障が出るといったケースが生じるおそれがあるからです。

賞与の査定期間

360度評価とは、上司から部下への評価だけではなく、同僚や部下などからの評価も参考にする方法です。近年、プレイングマネージャーが増え、上司だけでは部下について適切な評価が難しくなったことを背景に、導入する会社が増えている傾向にあります。

ただし、運用の目的や評価基準、賞与査定への反映の程度等を明確にしたうえで、補助的な評価制度として導入するようにしましょう。なぜなら、評価者の主観が強く反映されるなどして適正な評価の結果とならないケースや、マイナスの評価をおそれてマネジメントに支障が出るといったケースが生じるおそれがあるからです。

査定を踏まえた賞与額の計算

労働者ごとの賞与額を算出する方法は、各会社によって異なります。

  • 基本給をベースに支給額を決定める方法(給与連動型
  • 会社の業績に応じて賞与の総支給額を決定したうえで、各労働者の支給額を調整する方法(業績連動型
  • 勤続年数等に応じて一律一定額を支給する方法
  • 人事評価を金額に換算し、個別に支給額を決定する方法

従来は、計算がしやすいというメリットもあり、「基本給の●ヶ月分」というような給与連動型が一般的でした。しかし、近年では、業績連動型を採用する会社が増加し、主流となりつつあります。業績が直接労働者の支給額に響くことから、モチベーションアップの効果が期待できます。

また、基準額に、業績・能力・行動評価を数値に割り当てて算出した係数を乗じるなどして、賞与額に人事評価を反映させることもできます。

賞与支給の目的を明確にし、会社規模等を含め、自社に合った計算方法を採用しましょう。

賞与の査定における注意点

賞与は、法律の定めではなく、会社の独自ルール(就業規則等で定めた賞与規程)に従って支給します。このルールが不明瞭であることが労働者の不満発生の要因になり得るので、賞与に関する規程において、賞与の査定期間、支給回数、金額の計算方法等、査定方法を明確に定め、どのように査定しているのかきちんと労働者に周知するようにしましょう。

また、規程の内容が、複数の異なる解釈ができてしまうような表現で構成されている場合には、平等な査定ができません。今一度会社のルールを確認し、必要に応じて規程の修正を検討することも大切です。

退職・休職・時短・中途社員等の扱い

賞与の査定期間中に退職した、あるいは休職した労働者、育児等のために時短勤務をした労働者、中途入社した労働者などの扱いは、会社ごとに異なります。就業規則等に沿った運用となりますが、査定期間中に出社していなかった分を減額して支給する会社も多くあります。

具体的には、就業規則等に、それらによって実際に出社していない期間が含まれる場合に、不就労日数や、短縮した労働時間の割合を減額して賞与を支給することができる旨の取り決めがあれば、その取り決めに従って減額することができます。

また、退職者や中途入社の労働者については、支給日在籍要件の定めや、除外対象となる在籍期間の定めがあれば、定めに従って不支給とすることも可能です。

賞与の不当査定

賞与を減額する場合には、就業規則等の根拠となる規定を示すなど、客観的に合理的といえる理由を説明・立証できるようにしておく必要があります。例えば、評価者の個人的な感情を理由に賞与を減額した場合などには、不当査定として【不利益取扱い】とみなされるおそれがあります。

特定の労働者について、他の労働者と比べて明らかに低い査定とし、減額する場合には特に注意が必要です。

賞与の減額と【不利益取扱い】については、以下のページでさらに詳しく説明していますので、併せてぜひご覧ください。

賞与の減額

産休・育休取得者の扱い

賞与の査定期間中に、全日ではないにせよ出勤していた日数がありながら、産休・育休の取得を理由に労働者に対して賞与を全く支給しないことは、雇用機会均等法9条3項及び育児・介護休業法10条の【不利益取扱い】にあたり、原則として違法となります。

ただし、就業規則等に、産休・育休期間に応じた日数を欠勤扱いとして出勤率を算定することができる内容の定めがあれば、減額が認められる可能性があります。

賞与の査定による懲戒処分との二重制裁

懲戒処分には、一度処分が確定した事実について、再処分することは許されないとする“二重処罰禁止の原則”があります。そこで、すでに懲戒処分を受けている労働者の賞与を減額して支給すると、重ねて“減給”の制裁がなされたとして、二重処罰となるおそれがあります。

懲戒処分における“減給”とは、本来支給されるべき賃金、つまり、本来なら請求権が発生していた確定部分の賃金から、労働基準法91条の制限の範囲内で一定額を差し引くものです。

よって、賞与規程に「基本給の●ヶ月分を支給する」等と定められている場合、確定部分の賞与から減額することになるため、二重処罰となり得ます。他方で、規定が「会社の業績や本人の勤務状況等を勘案し、支給する」といったように、査定による減額の可能性があることを示す内容である場合には、“減給”の制裁がなされたとはみなされないと考えられます。

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます