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有期労働の雇止め法理

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

有期労働者は、定められた期間のみ労働するという労働契約を結ぶ点で、無期労働者とは異なる条件で労働に従事することになります。有期労働契約は、契約期間の満了後、使用者が必要に応じて、一定の場合に契約の更新拒絶ができます。しかし、そのような更新拒絶際の際に有期労働者が一方的に不利にならないよう、法律にはさまざまな規定が設けられています。例えば一定の条件を満たす場合、有期労働者と契約の更新拒絶は無期労働者の解雇と同様、相当程度の合理性を充たしている必要があるとする「雇止め法理」などがそれにあたります。

このページでは、雇止めに関するトラブルを未然に防ぐために、使用者が知っておくべき「雇止め法理」について解説します。

雇止め法理

有期労働者は、契約によって定められた雇用期間が満了すれば、使用者とのあいだの雇用関係が終了し、新たに雇用契約を更新するかどうかは当事者に委ねられるのが原則です。しかし、使用者が一方的に契約の更新拒絶をするというやり方では、労働者にとって不利に働くことがあり得ます。

そこで、労働者の働く権利を保護するために、有期労働契約者との契約の更新拒絶をする際には合理的な理由が必要とされる場合があります。これが有期労働の雇止めの法理です。

なお、有期契約労働の概要については以下のページで解説していますので、ぜひご参照ください。

有期契約労働について

対象となる有期労働契約

雇止めの法理は、すべての有期労働契約が対象となるわけではなく、一定の条件を充たす労働契約を対象とするものです。
対象は、労働契約法19条で以下のように定められています。

①過去に反復して更新されたことがある有期労働契約で、その雇止めが無期労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められるもの(同条1号)

②労働者において有期労働契約の期間満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められるもの(同条2号)

この2つのいずれかに該当する場合、当該契約の期間が満了するまでのあいだに労働者が契約の更新申込をした場合、又は当該契約期間の満了後、遅滞なく有期労働契約締結の申込をした場合にそれを使用者が拒否することが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」には、労働者による契約更新の申込を使用者が承諾したとみなされます。

この労働契約法19条の規定は、過去の最高裁判所の判例を明文化したものです。

有期労働契約の雇止めに関する判例

ここで、有期労働契約の雇止めが認められた判例、認められなかった判例をそれぞれ紹介します。

<雇止めが認められた判例>

【最高裁判所 昭和61年12月4日第一小法廷判決 日立メディコ事件】

事件の概要

原告は、日立メディコ柏工場で昭和45年12月1日から同月20日までの臨時員として雇用され、同月21日以降、期間2ヶ月の労働契約が5回更新されてきましたが、会社は不況に伴う業務上の都合を理由に、昭和46年10月21日以降の契約の更新を拒絶しました。原告はこれを不服とし、この雇止めは無効であるとして訴えを提起しました。

この工場では臨時員の業務は単純な作業、精度がさほど重要視されていない作業に従事させる方針をとっており、原告も比較的簡易な作業に従事していました。そして、臨時員の採用にあたって学科試験・技能試験などは行われず、面談では健康状態や経歴を聞くなどの簡易な方法で採用されていました。

また、臨時員の契約期間の更新については、更新期間の一週間前に本人の意思を確認し、労働契約書の「契約期間」に順次契約期間を記入し、押印を求めていました。原告のこれまでの契約更新も期間満了の都度に新たな契約を更新する旨に合意してなされていたものです。

裁判所の判断

裁判では、原告の業務は季節労働や臨時的作業のためのものではなく、継続が期待される種類のものであり、現に原告との間で5回の契約更新がなされていたことから、このような労働者には解雇に対する規制と同様の法理判断枠組みにより判断すべきとしました。

しかし、裁判所は、臨時員が簡易な手続きで採用され、短期の有期労働契約を締結して雇用されていることが前提としてあることから、無期労働者を解雇する場合とは合理的な差異があることを認めて、独立採算制をとっている被告会社の柏工場において事業上をやむを得ない理由により人員削減をする必要があり、配置転換も困難で、全臨時員を雇止めしなければならないことを理由に、臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないと判断し、原告の訴えを退けました。

一方で、臨時工に対する雇止めが認められなかったケースもあります。

<雇止めが認められなかった判例>

【最高裁判所 昭和49年7月22日第一小法廷判決 東芝柳町工場事件】

事件の概要

原告らは東芝柳町工場で期間2ヶ月の労働契約で臨時工として雇用され、それぞれ5回から23回の契約の更新がなされていましたが、会社は不況に伴う業務上の都合を理由に、臨時工らに雇止めの意思表示をしました。臨時工らはこの雇止めの意思表示は労働契約法上の解雇と実質的に同じであり、労働契約が存続するとして、訴えを提起しました。

裁判所の判断

最高裁は、①本件の臨時工は無期労働契約によって雇用された本工と仕事の種類・内容の点で差異がなく、②採用に際して使用者側が長期継続雇用や本工への登用の可能性を期待させるような言動をしたこと、③被告会社が、必ずしも期間満了の都度ただちに更新の手続を取っていたわけではないこと、④過去に臨時工が2ヶ月の期間満了によって雇止めされた事例はないことから、臨時工の労働契約は期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と異ならない状態で存続していたと判断しました。

その上で、本件臨時工の更新拒絶は無期雇用労働者の解雇と同様に扱うべきであるとして、解雇事由に該当するというような更新拒絶をする理由がない本件において、期間満了を理由として雇止めをすることは許されないとする判断を示しました。

上記2つの判例の判断枠組みは、形式上、雇止め法理と異なるものですが、無期雇用と同視できるか又は労働契約更新に対する期待を抱かせる合理的理由があるかという基準を充足するか、あるいは、更新拒絶が客観的合理的理由を欠き社会通念上相当であると認められないものであるか否かという判断に収れんします。そのため、現行法においても、上記2つの判例と類似の事案では同様の判断となるでしょう。

雇止め法理の目的

労働契約法19条、そしてこれまでの裁判例から、有期労働契約は4つのタイプに分けられ、雇止めが認められるかどうかについてもこのタイプに応じて一定の傾向がみられます。

以下の項で、4つのタイプについて解説します。

実質無期タイプ

期間の定めのない契約(無期労働契約)と実質的に異ならない契約になっている有期労働契約を「実質無期タイプ」と呼びます。

  • ①業務内容が雇用側にとって恒常的であり、無期契約の労働者とほとんど変わらない職責にある
  • ②契約の更新手続が形骸化している
  • ③採用あるいは契約期間中に雇用の継続や無期契約への転換を期待させる使用者の言動がある
  • ④同様の地位にある労働者が過去に雇止めされた事例がほとんどない

これらの特徴を充たす場合、有期労働者は「実質無期タイプ」といえ、雇止めが違法と判断されやすい傾向にあります。

期待保護(反復更新)タイプ

雇用継続への合理的な期待が認められる契約であるとされ、その理由として相当程度の反復更新の実態がある有期労働契約を「期待保護(反復更新)タイプ」と呼びます。

  • ①業務内容が雇用側にとって恒常的なものであり、契約の更新回数が多い
  • ②契約の更新手続にあたって面談や書面作成など厳格な手続きがなされていない
  • ③採用あるいは契約期間中に雇用の継続や無期契約への転換を期待させる使用者の言動がある
  • ④同様の地位にある労働者が過去に雇止めされた事例が少ない

これらの特徴を充たす場合、有期労働者は「期待保護(反復更新)タイプ」といえます。雇止めに対して一定の制約がかかる場合もありますが、使用者の経済的事由による雇止めは無期労働者と判断基準が異なるものとして判断され、雇止めが認められる例もあります。

期待保護(更新約束)タイプ

当初の契約締結時の事情から、雇用継続への合理的期待が生じていると認められる有期労働契約を「期待保護(更新約束)タイプ」と呼びます。

特殊なタイプですが、更新回数が概して少なく、有期労働契約の締結時の経緯等の事情により、雇用の更新が期待の範囲を超えて合意されていると認められる場合がこれにあたります。

裁判例では、契約締結時に特殊な事情が存在していたことを理由として、雇止めを認めない傾向があります。

純粋有期タイプ

期間満了後も雇用関係が継続するものと期待することに合理性が認められない有期労働契約を「純粋有期タイプ」と呼びます。

  • ①業務内容・契約上の地位が臨時的なもの
  • ②契約の更新手続が厳格である
  • ③使用者と労働者の双方が契約期間満了後に雇用関係の継続がないことを十分に認識している
  • ④同様の地位にある労働者が過去に雇止めされた事例が複数ある

これらの特徴を充たす場合、有期労働者は「純粋有期タイプ」といえます。この場合、裁判例では原則どおり契約期間の満了によって、契約関係は適法に終了すると判断される傾向にあります。

雇止め手続きについて

雇止めをしようとする際には、以下の項目の手続が必要になります。トラブルを防止し、有期労働契約が使用者・労働者の双方にとって良好なものとなるよう定められた厚生労働省の基準によるものです。

ただし、有期労働契約がどのような目的でのものかを問われることなく締結することは可能ですし、雇止め法理により雇止めを制限できることから、これらの手続が行われなかったということだけで雇止めが違法とされたり、無効になったりするわけではありません。

契約締結時の明示事項

有期労働契約者向けの就業規則が会社にない場合についての対応、また、就業規則の概要については以下のそれぞれのページで解説していますので、ぜひご一読ください。

有期契約労働について
就業規則について

有期労働契約を締結する際は、使用者から労働者へ明示しなければならないと定められている事項があります。以下のページで解説していますので、ご参照ください。

有期労働契約締結時の明示項目

雇止め予告

特定の条件を充たす有期労働契約で働く労働者を雇止めしようとするときには、少なくとも期間が満了する30日前までには予告をしなければなりません。ただし、契約を更新しないことがあらかじめ明示されている場合は、この限りではありません。

雇止めの予告をしなければならない有期労働契約は、以下のいずれかに該当する場合です。

  • ①3回以上契約が更新されている場合
  • ②1年以下の有期労働契約が更新され、最初に有期労働契約を結んでから継続して通算1年を超える場合
  • ③1年を超える契約期間の労働契約を結んでいる場合

雇止め理由明示

使用者は、雇止めの予告をした後、労働者からその理由についての証明書を求められた場合には、遅滞なく交付しなければなりません。このとき、雇止めの理由は、契約期間の満了とは別の理由(契約締結時から更新しないことが合意されていた、担当業務が終了した、無断欠勤が多く勤務態度が不良だった等)とする必要があります。

契約期間についての配慮

使用者は、契約を1回以上更新し、かつ1年を越えて継続雇用している有期労働者との契約を更新する場合、契約の実態と労働者の希望に応じて契約期間をできるだけ長くする配慮が求められています。これは、労働契約法に定められています(17条2項)。

有期労働契約期間の上限と下限については、以下のページで解説していますので、ぜひご参照ください。

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