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国籍による労働条件差別の禁止

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

外国人を雇用する際には、使用者は国籍による差別をしないよう、特に注意しなければなりません。賃金やその他の待遇だけでなく、求人や就業規則の作成等に関しても、留意しなければならない点が多々あります。

このページでは、外国人雇用において禁止されている、国籍による労働条件差別の禁止について詳しく解説します。

労働基準法による差別の禁止

労働基準法3条では、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由として、差別的取扱いをしてはならないと定められています。国籍を理由として、外国人労働者と日本人労働者に労働条件で差異を設けることは、差別的取扱いとして明確に禁止されています。

在留資格による差別の禁止

保有している在留資格と異なる種類の業務に外国人を就かせたり、そもそも在留資格のない(在留期限が切れている、あるいは不法に入国している)外国人を雇用したりすることは禁止されています(入管法73条の2第1項1号)。

しかし、「外国人の不法就労等に係る対応について(昭和63年1月26日基発50号)」では、このような不法就労者にも、労働基準法をはじめとする労働関連法規は適用されるとしています。よって、在留資格が適法な外国人労働者はもちろん、不法就労をしている外国人労働者も、労働関連法規に従った扱いをしなければなりません。

賃金の差別

<1 労働基準法による差別の禁止>で紹介した労働基準法3条により、合理的な理由なく、国籍を理由として、外国人労働者の賃金を日本人労働者よりも低い水準とすることは禁止されています。同一の事業所において、職種や能力とは関係のない理由を持ち出し、日本人労働者よりも劣った待遇で外国人を雇用してはなりません。

最低賃金制度の適用

労働者の賃金設定において最も重要なのは、最低賃金を割り込んでいないかを確認することです。

最低賃金法4条1項では、『使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない』とされています。

最低賃金は地域によって異なり、時給の形式で決定・公示されています(2020年9月現在、最高額は東京都の1013円、最低額は秋田県、島根県、鳥取県、沖縄県などの792円です)。

最低賃金は年度ごとに見直されるので、使用者は労働者に支払う賃金が最低賃金を割り込んでいないかを常に確認しなければなりません。もし最低賃金よりも低く賃金を設定していた場合、その賃金契約は無効になり、最低賃金と同等の賃金とする契約があったとみなされることになります。

最低賃金制度はパートタイマーやアルバイトにも同様に適用され、外国人労働者や技能実習生も例外ではありません。賃金の設定に際しては、最低賃金よりも同等以上の水準の賃金とするよう留意する必要があります。

特定最低賃金

最低賃金制度は、基本的に地域別(都道府県別)に設定されますが、特定地域の特定の産業については、地域別最低賃金よりも高い最低賃金が設定されています。これを「特定最低賃金」といいます。

例えば、和歌山県の地域別最低賃金は831円ですが、和歌山県内の鋼鉄業は特定最低賃金が948円に設定されていますので、和歌山県内の事業所で鋼鉄業に就く労働者には、より高額な948円が最低賃金として適用されます(金額は2020年9月時点のものです)。このように、地域別最低賃金と特定最低賃金では、高い方が適用されることに注意が必要です。

それぞれの最低賃金は、厚生労働省や各都道府県労働局のウェブサイトで確認することができます。

最低賃金の減額の特例

地域別最低賃金は雇用形態や国籍を問わずすべての労働者に平等に適用されるのが原則ですが、一部の条件の下にある労働者に対しては、使用者が都道府県労働局長の許可を受けて、個別に最低賃金を減額する特例が認められています。特例の対象となるのは、以下のような条件の下にある労働者です。

  • (1) 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
  • (2) 試みの使用期間中(試用期間)の者
  • (3) 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている者のうち厚生労働省令で定める者
  • (4) 軽易な業務に従事する者
  • (5) 断続的労働に従事する者

最低賃金の減額の特例許可を受けようとする使用者は、最低賃金の減額の特例許可申請書を作成し、労働基準監督署を経由して都道府県労働局長の許可を得なくてはなりません。

中間搾取の禁止

労働基準法6条では、中間搾取の禁止を定めています。
人材派遣会社など、職業紹介事業として厚生労働大臣の許可を得ている場合は例外となりますが、単に労働者に仕事を紹介することで、労働者、使用者から手数料を得たり、賃金の一部を中間搾取(ピンハネ)したりする行為は法律で禁止されています。

在留資格取得の条件

外国人が就労を前提とする在留資格を得るための条件として、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」が条件となっています。

これを受けて、使用者は、同一の労働を行う日本人労働者と同等額以上の賃金を外国人労働者に対して支払う必要があります。例えば、業務経験のある外国人を採用する場合、それと同じ業務経験を持つ日本人を中途採用で雇い入れた場合と同等以上の賃金を支払う必要があります。

技能実習生への差別

外国人技能実習制度は、日本での就労で技能を習得してもらい、母国の経済発展を担う人材を育成するための制度です。
技能実習生は実習先となる企業と雇用契約を結び、ほかの労働者と同様に労働関係法規の適用を受けます。

また、技能実習生の実習を適切に実施するために技能実習法が定められています。技能実習生であることを理由に低賃金で労働させたり、過重労働を強いたりするといった差別的な取扱いは許されません。

なお、外国人研修・技能実習生については以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

外国人研修・技能実習生

外国人の採用における留意点

求人募集

職業安定法3条では、人種や国籍、信条等により、差別的取扱いをすることを禁じています。
これに基づき、求人に際して、人種や国籍の条件をつけることはできません。「〇〇人のみの募集」、「△△国籍の人は応募できません」などの求人条件を設けることは禁じられています。

採用時

厚生労働省による「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」では、採用の際、従事する業務の内容、賃金、労働時間、就業の場所、契約の期間、労働・社会保険関連法令の適用に関する事項を明示することを求めています。

外国人との労働契約の締結にあたっては、理解できる言語で説明・記述するよう努めるべきでしょう。また、厚生年金保険等、外国人には理解が難しいと思われる制度については、より詳しく説明するように努めることが、採用後のトラブル防止の観点から望ましいといえます。

就業規則

労働基準法89条は、常時10人以上の従業員を雇用する使用者は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ることを定めています。

就業規則には、労働時間、賃金、退職に係る事項、その他福利厚生や職場のルールなどの事項を記載し、過半数組合か、労働者の過半数代表からの意見書を添えて提出します。また、労働基準法106条によって就業規則には周知義務があるため、外国人を雇用している事業所には、その外国人労働者が理解できる言語で書かれた就業規則を作成し、提示するよう努めることが求められます。

外国人労働者への就業規則の適用

労働基準法3条により、外国人労働者にのみ適用され、日本人労働者には適用されない就業規則を定めることや、外国人労働者には就業規則を適用しないといった規定を作ることは禁じられています。

就業規則は、同一の事業所において、同一の労働に従事している労働者すべてに、国籍や人種と関係なく適用されるものです。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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