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介護休業制度の正しい知識と会社が取るべき対応

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

介護休業は、労働者が、要介護状態にある家族を介護するために取得できる休業として「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称:育児・介護休業法)」に定められています。もとは合計特殊出生率の低下を受け「育児休業等に関する法律」が制定されたのが始まりですが、その後、認知症や寝たきりの高齢者が増えたことで介護休業の法制化の声が高まり、平成7年に「育児・介護休業法」として改正されました。この法律は、労働者が介護のために離職しなければならなくなることを防ぎ、「介護離職ゼロ」を目指すものですが、事業主としても、要介護の家族を抱える労働者が働きやすい環境を整えることは、人手不足のなか、優秀な労働力を確保することにつながります。

このページでは、介護休業とはどんな制度なのか、事業主として知っておかなければならないこと等を詳しく解説します。

介護休業の定義

介護休業とは、労働者が、要介護状態にある配偶者、父母、子供、配偶者の父母等の対象家族を介護するために、1人につき通算93日(最大3回まで分割可能)の休業を取得できるという制度です。「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことをいいます(育介法2条3号、同施行規則2条)。介護休業は、女性労働者に限らず、男性労働者、また有期契約労働者も取得することができます。

平成19年には介護離職の件数は約5万件でしたが、平成29年には約9万件と、倍近くに増えてしまっています。このまま増加すれば、労働力不足はさらに加速し、また企業にとっても貴重な人材を流出させることになってしまいます。

「常時介護を必要とする状態」の判断基準

介護休業の対象は、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」の対象家族です。この「常時介護を必要とする状態」については、厚生労働省によって詳しく判断基準が定められています。

詳しくは、厚生労働省の以下のページをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/otoiawase_jigyousya.html

介護休業と介護休暇の違い

育児・介護休業法に定められている介護休業ですが、平成21年の改正で追加された似た名称の制度として、介護休暇というものもあります。以下に主な違いについてまとめました。

介護休業 介護休暇
取得可能日数 要介護者1人につき、通算93日を限度として3回まで分割取得可能 1年度に5日間、対象家族が2人以上ならば10日間
介護休業給付金の有無 雇用保険制度から休業前の賃金の67%が「介護休業給付金」として支給される 企業によって異なる
申請方法 開始日の2週間前までに事業主へ申し出る 事業主への申出(詳細は企業によって異なる)

介護休暇について、詳しくは以下のページをご覧ください。

介護休暇について

介護休業の申出を拒否することは可能か?

労働者からの介護休業取得の申出について、「事業主は、労働者からの介護休業申出があったときは、当該介護休業申出を拒むことができない(育介法12条1項)」と定められています。ただし、拒むことができる場合もあり、この例外に関しては後述します。

就業規則への記載義務

介護休業については、あらかじめ制度を導入し、就業規則に記載する必要があるという指針を厚生労働省が出しています。これはあくまでも“指針”ですが、労働基準法では、事業主は、就業規則に始業・就業の時刻、休憩、休日、休暇、賃金等について必ず記載しなければならないと定められています(労基法89条)。介護休業は絶対的必要記載事項である「休暇」に当たるので、条件や待遇、取得中の賃金について等、必ず就業規則に記載しなければなりません。

育児・介護休業法の改正による変更点

育児・介護休業法は、その制定以降、度々改正されていますが、平成29年1月の改正では介護休業についても大きく内容が改正されました。以下に、簡単に変更点をまとめます。

  • ①分割取得が可能に……それまでは対象家族1人につき通算93日まで、原則1回に限るという内容でしたが、改正により93日を分割して最大3回まで取得できるようになりました。
  • ②介護のための所定労働時間の短縮措置等……育児・介護休業法では、家族を介護する労働者に対して、事業主は、所定労働時間の短縮措置、フレックスタイム制度、始業・就業時間の繰り下げ・繰り上げ、介護サービス費用の助成のうち、いずれかの措置を講じなければならないとしています。これについて、「介護休業と通算して93日の範囲内で取得可能」と定められていましたが、「介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能」と改正されました。
  • ③介護のための所定労働の制限(残業の免除)……改正以前は特に定められていませんでしたが、要介護の対象家族1人につき、介護の必要がなくなるまで、残業の免除を受けられるようになりました。
  • ④介護休業給付金の引き上げ……介護休業中は原則として無給ですが、雇用保険制度から給付金が支給されます。改正前は休業前の賃金の40%と定められていましたが、67%に引き上げられました。

労働時間の短縮に関して、詳しくは以下のページをご参照ください。

育児・介護休業法における所定労働時間の短縮措置について

介護休業の対象労働者

介護休業を取得できる労働者として対象になるのは、日々雇用者(一日限りの雇用契約、または30日未満の有期契約で雇用されている雇用者)を除く、要介護状態にある対象家族を介護する労働者です。性別にかかわりなく、男女ともに対象となります。

有期契約労働者からの申請があった場合

有期契約労働者にも介護休業を取得する権利がありますが、次の二つの要件を満たしていなければなりません。

  • ①入社して1年以上が経過していること
  • ②介護休業開始予定日から起算して、93日を経過する日から6ヶ月経過する日までに、労働契約が満了し、雇用契約が終了することが明らかでないこと

つまり、1年以上働いており、介護休業終了後6ヶ月以降も雇用を継続する予定であるならば、介護休業の申出は受理しなければなりません。

労使協定により対象外にできる労働者

事業主は、原則として労働者からの介護休業の申出を拒むことができませんが、次のいずれかに該当する者に関しては、労使協定で定められている限り対象外とすることができます。

  • ・入社してから1年未満
  • ・申出の日から93日以内に雇用期間が終了する
  • ・1週間の所定労働日数が2日以下

対象となる家族の範囲

介護休業は要介護状態の家族のために取得できる休業ですが、その対象になる「家族」とは、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫と定められています。子に関しては、法律上の親子関係がある場合のみ(養子を含む)とされています。また、以前は同居と扶養が要件として定められていましたが、平成28年に削除されており、現在は問われないこととなっています。

介護休業の期間

介護休業として取得できる休暇は、要介護状態である対象家族1人につき、上限3回、通算して93日までと定められています。回数と上限日数は定められていますが、その範囲内ならば、申出をする労働者が開始日と終了日を自由に決めることができ、分割して取得することも可能です。

事業主が休業期間を指定することはできるのか?

労働者が取得しようとしている、あるいはしている介護休業の期間を、事業主が指定することはできません。ただし、労働者が介護休業の取得を申し出た日が、休業開始日まで2週間に満たないときにかぎり、2週間経過日まで事業主が開始日を繰り下げて指定することができます。

介護休業が終了する事由とは

介護休業の期間は、次のとき、労働者の意思にかかわらず終了します。

  • ・対象家族を介護しなくなった場合……対象家族の死亡、離婚・婚姻の取り消し・離縁等により対象家族との家族関係の終了、労働者が負傷・疾病等により対象家族を介護できなくなったとき
  • ・介護休業中の労働者が、産前産後休業、育児休業、新たな介護休業を取得したとき

介護休業の回数

介護休業の取得は、以前は1回のみしか認められていませんでした。しかし、平成29年の育介法の改正により、対象家族1人につき通算93日まで、そして上限3回まで分割して取得することができるようになりました。分割しての取得が可能ですが、それぞれは連続したひとまとまりの期間でなければなりません(1日単位を「介護休業」として取得ということはできません)。

介護休業中の給与・社会保険料

【介護休業中の給与について】
介護休業法の給与に関しては、育児・介護休業法では定められていません。ノーワーク・ノーペイの原則に則れば無給ということになり、事業主に給与を支払う義務はありません。しかし、休暇や給与に関しては、労働基準法で就業規則に記載しなければならないと定められています。介護休業は「休暇」に当たりますので、その期間の給与について、必ず就業規則に記載してください。

【介護休業中の社会保険料について】
育児休業と異なり、介護休業は社会保険料が免除されません。介護休業を取得した労働者が無給となっても、支払義務が発生します。会社による立替えが必要となる場合もありますので、ご注意ください。

介護休業と年次有給休暇の関係

年次有給休暇とは、本来は出勤しなければならない日に、労働者が休む権利を行使できるものです。介護休業中は出勤の義務がない期間となりますので、もともと休日である日に有給休暇を取得しないのと同じく、介護休業中に重ねて有給休暇を取得することはできません。

また、年次有給休暇は「労働日の8割を出勤した者」がその付与対象となっていますが、ここで計算される出勤率に、介護休業で休んだ日は影響しません。労働基準法では、介護休業中は出勤したものとみなすと定められています。

年次有給休暇について、詳しくは以下のページをご参照ください。

労働基準法で定められる年次有給休暇の基礎知識

介護休業で事業主が行うべき手続き

介護休業の申出は、労働者から事業主に対して、休業開始日の2週間前までにしなければなりません。原則、申出書を提出とすることで行いますが、事業主が認める場合、ファックスや電子メール等で代替しても構いません。

申出書に記載しなければならない事項は、

  • ①申出の年月日
  • ②労働者の氏名
  • ③対象家族の氏名及び労働者との続柄
  • ④対象家族が要介護状態にあること
  • ⑤休業を開始しようとする日、及び休業を終了しようとする日
  • ⑥申出に係る対象家族についてのこれまでの介護休業日数

となりますが、このほか、事業主は労働者に対し、対象家族が要介護状態にあることを証明する書類の提出を求めることができます。

また、申出書の提出があった場合、事業主は速やかに労働者に対して介護休業取扱通知書を交付しなければなりません。この通知書に記載しなければならない内容は、

  • ①介護休業申出を受けた旨
  • ②介護休業開始予定日、および介護休業終了予定日
  • ③申出を拒む場合には、その旨およびその理由

となっています。こちらも、労働者が希望する場合にはファックスや電子メール等で代替することも可能です。

通知書の交付は「速やかに」と定められていますが、これは労働者からの申出があった時点からおおむね一週間以内とされています。

休業期間変更の申出があった場合

介護休業期間の延長に関しては、労働者が事業主に対し、本来休業の終了を予定していた日の2週間前までに申し出ることで、93日以内の範囲ならば、1回の休業につき1回に限り休業終了日の繰り下げが可能です。

一方、介護休業開始日、および終了日の繰り上げに関しては、法律による規定がありません。よって、開始日・終了日の繰り上げに関しては、事業主の裁量次第ということになります。

申出の撤回があった場合

介護休業の申出の撤回は、休業開始予定日の前日まで可能です。撤回の申出があった場合、事業主はそれに応じる必要があります。撤回の申出とは別に、介護予定だった対象家族を介護しないことになった場合(対象家族の死亡や、離婚等による家族関係の解消等)には、休業の申出はなかったことになります。

また、同じ対象家族に対する介護休業の申出を、連続で2回撤回した場合、事業主はそれ以降の介護休業の申出について拒否することができます。

介護中の労働者を支援するその他の制度

平成28年の育児・介護休業法の改正によって、介護を行う労働者にも所定外労働時間の免除が認められることになりました。つまり、要介護状態にある対象家族がいる労働者が請求した場合、事業主は、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。

詳しくは、以下のリンク先をご覧ください。

所定外労働・時間外労働・深夜業の制限

また、要介護状態の対象家族がいる労働者が請求したとき、1ヶ月24時間、1年150時間を超えて労働時間を延長してはいけません。同様に、労働者が請求した場合、深夜(午後10時から午前5時まで)に労働させてはいけません。

要介護状態の対象家族がいる労働者で介護休業を取得していない者に対しては、①所定時間労働時間の短縮、②フレックスタイム制度、③始業・就業時間の繰り上げ・繰り下げ、④介護サービス費用の助成の1つを、④を除き2回以上利用できる措置として講じなければなりません。

育児・介護休業の全体的な概要に関しては、以下のページをご覧ください。

育児・介護休業

介護休業取得を理由とした不利益取扱いの禁止

事業主は、労働者が介護休業を取得したことを理由に、その労働者に対して不利益となる取扱いをすることを禁じられています。「不利益取扱い」とは、具体的には、解雇、降格、減給、不利益な異動・職務の変更、有期契約労働者の契約を更新しないこと、正社員から非正規雇用への変更を強要すること等です。

介護休業に関するハラスメントの防止措置

事業主は、労働者が介護休業、そのほか介護のための制度を利用したことによってハラスメントを受けることがないよう、相談に応じ、適切な対応をするために制度の整備等、必要な措置を講じなければなりません。このハラスメントの防止措置は、男女を問わず、またパートタイマーや有期雇用の労働者も対象にします。必要な措置とは、具体的には相談の窓口を設けること、被害者・行為者に速やかに適正な措置を行うこと、再発防止に努めること、プライバシー保護に努めること等です。

ハラスメントに関して、詳しくは以下のリンク先をご覧ください。

ハラスメントについて

介護休業を支援する企業への助成金

仕事と家庭を両立できる「職場環境づくり」のため、国が中小企業の事業主へ助成金を支給する「両立支援等助成金」という制度があります。介護をしながら働く労働者を支援するためのものとしては「介護離職防止支援コース」があり、主な要件としては「介護支援プラン」を作成し、支援する措置を実施する旨を就業規則等に明文化し周知すること、休業取得者を原職に復帰させること、支援プランに基づき、所定外労働の制限制度、短時間勤務制度等を利用させること等です(助成金の内容に関しては、年度ごとに変更があります)。

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