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障害者雇用の届出

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

このページでは、障害者の雇用義務を負う事業主に求められる【届出】について解説していきます。

障害のある方との共生社会を実現するためには、採用の間口を広げるとともに、雇用後においても、障害を理由とした不当解雇などが行われることなく、障害者が安定して働き続けられる職場環境をつくることが重要です。【届出】に必要な情報を収集することで、自社の障害者雇用へのそういった取り組みが、どの程度進んでいるのか確認するきっかけにもなるでしょう。

では、どのようなタイミングで【届出】の必要が生じるのか、順に確認していきましょう。

障害者雇用状況報告

一定数以上の常用雇用労働者を擁する事業主には、毎年6月1日現在の対象障害者の雇用に関する状況を、ハローワークに報告する義務があります(障害者雇用促進法43条7項)。具体的には、「障害者雇用状況報告書」の届出によって報告を行うことになります。

届出の意義

障害者の雇用状況や、法定雇用率の達成状況の確認が「障害者雇用状況報告書」の届出の主な目的であり、その内容は、障害者雇用の促進に関する施策づくりや、ハローワーク等から企業への助言・指導などに活用されます。

報告が必要となる事業主

「障害者雇用状況報告書」の届出が必要なのは、一定数以上の常用雇用労働者を擁する事業主であることをお伝えしました。では、“一定数以上”とは具体的に何人以上を指すのでしょうか。

事業主は、常用雇用労働者における障害者の雇用割合を、「法定雇用率」以上にする義務があります。民間企業の法定雇用率は2.3%ですから、障害者を1人以上雇用しなければならず、その旨届け出る必要があるのは、常用雇用労働者43.5人(=1÷2.3%)以上の企業ということになります。

障害者雇用状況報告書の記載内容

「障害者雇用状況報告書」は、基本的に厚生労働省が定めた様式の用紙がハローワークから送られてくるので、郵送や持参、電子申請によって提出します。主な記載内容は、以下のとおりです。

  • 事業主等の基本情報
  • 雇用の状況
    (常用雇用労働者の人数、対象障害者の人数、除外率、実雇用率等)
  • 事業所別の内訳
  • 障害者雇用推進者

詳しくは、厚生労働省のホームページからダウンロードできる書式をご覧ください。

障害者雇用状況報告の電子申請による提出 | 厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koureisha-koyou/shougaisha-koyou.html

では、上記の中からいくつかピックアップして、具体的に記載すべき内容を見ていきましょう。

事業主等の基本情報

「障害者雇用状況報告書」の上部には、事業主にかかわる基本情報の記載欄があります。具体的には、次のような項目について記載する必要があります。

  • 法人名称または代表者氏名
  • 住所(法人の場合、主たる事業所の所在地)
  • 事業の種類
  • 産業分類番号
  • 事業所の数

障害者雇用率

常用雇用労働者を43.5人以上雇用している企業では、対象障害者の雇用割合、すなわち障害者雇用率を、法定雇用率以上にしなければなりません。

「障害者雇用状況報告書」には、当該企業における障害者雇用率が法定雇用率を上回っているかどうか、あるいは下回っている場合に、何人分の雇用が不足しているのかを確認できる項目が設けられています。

企業の障害者雇用率の計算方法などが知りたい方は、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

障害者の雇用率

常用雇用労働者

常用雇用労働者は、正社員やアルバイトといった雇用契約にかかわらず、週20時間以上勤務で、1年を超えて雇用される者、あるいは雇用される見込みがある者を指します。具体的には、以下のような労働者が該当します。

  • 雇用期間の定めがない者
  • 1年を超える有期の雇用契約を結んでいる者
  • 1年以下の有期雇用契約を結んでいる者で、契約が反復更新されている者、または日々雇用される者(1日単位の雇用期間で雇用される者)で、雇用契約が日々更新されている者にあたり、かつこれまでに1年を超える期間を継続して雇用されている者、もしくは雇入れから引き続き1年を超えて雇用される見込みがある者

「障害者雇用状況報告書」には、常用雇用労働者のうち短時間労働者の数を0.5人分として計算し、“法定雇用障害者”の算定の基礎となる労働者の数を記載する必要があります。

除外率

法定雇用障害者の算定の基礎となる労働者を算定する際に、障害者の就業が難しいとされる業種については、常用雇用労働者数から業種に応じた“除外率”に相当する割合の人数を差し引くことができます。この除外率も「障害者雇用状況報告書」に記入欄が設けられていますが、除外率制度は今後廃止に向かって縮小していく予定であり、現在は経過措置として計算に含めることになっています。

業種による除外率制度に関するさらに詳しい解説は、以下のページをご覧ください。

業種による除外率制度

障害者雇用納付金の申告

常用雇用労働者の総数が100人を超える月が、年度内に5回以上ある企業の事業主は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に「障害者雇用納付金」の申告を行わなければなりません(障害者雇用促進法56条1項)。

併せて、法定雇用障害者数を下回る場合は納付金の納付を、反対に上回る場合は調整金や報奨金の支給申請を行います。

以下のページでは、「障害者納付金」制度の仕組みや、納付金、調整金、報奨金の金額などについて、さらに詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

納付金の徴収

報告を怠った場合の罰則

対象障害者の雇用義務を負う事業主が、ハローワークへの雇用状況の報告を怠った、あるいは虚偽の報告をした場合には、事業主に30万円以下の罰金が科せられます(障害者雇用促進法86条1号)。

事業主による障害者の把握・確認における留意点

障害者雇用率の算定や、障害者雇用納付金の申告にあたり、事業主は雇用する障害者の人数だけでなく、個々の障害の種類や程度などを把握・確認する必要が生じます。しかしながら、こういった情報は非常にデリケートなものであることから、個人情報保護法等の法令を遵守するのはもちろんのこと、十分にプライバシーに配慮し、適正に取り扱わなければなりません。

そこで、厚生労働省により、事業主に向けた『プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン』が策定されました。

障害者職業生活相談員の選任の届出

事業主は、事業所における対象障害者の雇用が5人以上になった日から3ヶ月以内に「障害者職業生活相談員」を選任し(障害者雇用促進法79条1項)、その旨をハローワークに届け出なければなりません。

障害者の仕事や生活面などの相談に乗ったり、指導を行ったりする役割を担う「障害者職業生活相談員」についての詳しい解説は、以下のページをご覧ください。

相談員選任の届出

障害者を解雇する場合の届出

労働者に責任がある場合の解雇や、天災地変、そのほかのやむを得ない理由により事業継続ができなくなった場合の解雇を除き、障害者を解雇しようとする場合、事業主はその旨を速やかにハローワークへ届け出なければなりません(障害者雇用促進法81条1項)。

一般に、障害者は次の就職先が見つからず、就職活動が難航するケースが見られます。そのため、この届出を受けたハローワークがいち早く、個々の障害の特性に応じた適当な求人の開拓や職業指導など、再就職に向けた支援を行うことを目的としています。

以下のページでは、障害者の解雇を検討する際の留意事項や、障害者解雇届の記載内容などについて解説していますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。

障害者の解雇

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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