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合併した際の退職金

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

合併は、複数の会社を1つに統合し、資金力アップや事業拡大を目指す組織再編の手法です。
しかし、所属していた会社が合併すると、労働条件も変更される可能性があります。そのため、「将来の退職金にも影響があるのか」等と心配する労働者も出てくることでしょう。

余計な労使トラブルを防ぐため、会社は退職金制度について十分理解し、適切に処理することが重要です。また、事前にしっかり説明することで、労働者の不安をなくすこともできるでしょう。

本記事では、合併時の退職金の取扱いについて詳しく解説していきます。会社の組織再編を検討中の方は、ぜひご覧ください。

合併後の退職金制度について

合併では、承継会社(合併先)が消滅会社の権利義務をすべて引き継ぎます。よって、退職金制度もそのまま承継され、合併前の内容が維持されるのが基本です。

しかし、それでは1つの会社に複数の制度が併存し、労務管理が難しくなります。また、同じ仕事をする労働者間で制度に差が出るため、不公平感にもつながります。
そこで、合併前または合併後に、それぞれの会社で退職金制度を統一しておくのが一般的です。

合併後に退職金は満額支給されるのか

「合併したら退職金も減るのではないか」と不安に思う労働者も出てくることでしょう。退職金は労働者のその後の生活に関わるため、会社は制度を理解したうえで説明を尽くす必要があります。
退職金が満額支給されるケースそうでないケースについて、以下で具体的にみていきましょう。

満額支払われるケース

合併直後であれば、退職金は満額支給となる可能性があります。
というのも、合併時は会社同士で退職金制度を統一するのが一般的ですが、運用開始までに猶予期間が設けられるケースも多いのです。

通常、合併後1~2年の猶予期間を経て統一されるので、その間であれば合併前の退職金制度が維持されます。

満額支払われないケース

合併前に労働条件が統一され、退職金の引下げが確定した場合、満額支給とはなりません。
また、合併後1~2年の経過措置期間を設けることもありますが、それ以降は合併前の制度による退職金は支給されません。

ただし、退職金の減額は労働条件の不利益変更にあたるため、基本的に労働者1人1人の合意を得ないと実行できません。一方的な変更は無効になるため、事前の説明や協議は十分行いましょう。

吸収合併による退職金の扱い

吸収合併は、既存の会社(親会社など)と合体する方法です。吸収先の会社のみ存続し、もう一方は消滅することになります。
合併時、消滅会社の退職金制度はそのまま承継されますが、それでは存続会社に複数の制度が混在してしまいます。そこで、存続会社の制度に合わせ、従来の制度を変更するのが一般的です。

では、存続会社の退職金の方が低い場合、労働者は合併によって不利益を被るしかないのでしょうか。以下でみていきましょう。

吸収合併前の退職金が満額支払われるケース

吸収合併後、制度が統一されるまでに猶予期間が設けられている場合、その間は従来の退職金制度が適用されます。したがって、労働者は合併前のルールで算出した退職金を請求することができます。

また、吸収合併する両社と労働者が合意すれば、合併時に一度退職の手続きをとり、退職金を清算することも可能です。これは、退職に伴う一時金であり「退職所得」に該当します。
例えば、合併前は退職金制度があったが、合併先には確定拠出年金規約しかないといったケースで行われることがあります。

吸収合併前の退職金が満額支払われないケース

吸収合併に際し、両方の会社が退職金減額に合意した場合、労働者は合併前の退職金を全額受け取ることはできません。

合併は業績低迷や赤字拡大が原因であることが多いため、「労働条件をできるだけ引き下げたい」という会社もあるでしょう。
ただし、労働条件の引下げには、基本的に労働者全員の個別同意が必要です。労働者と協議を重ね、同意書を取り交わすのが良いでしょう。

なお、一方的な引下げは無効になるだけでなく、損害賠償請求などの労働トラブルに発展するおそれがあるためご注意ください。

役職による退職金の違い

一般社員役員かによって、退職金の支給方法が異なります。

一般社員

労働条件をそのまま承継するのか、又は一度退職手続きをとって退職金を清算するのか、労働者と協議のうえで決定します。
なお、退職金規定を不利に変更する場合、労働者の個別合意を得る必要があります。

役員

存続会社から消滅会社の役員に対して、退職金を支給できる場合があります。
そのためには、合併を決定する株主総会(消滅会社側)において、退職金支給についても承認を得ておくことが必要です。
なお、退職金は役員を退任した場合だけでなく、合併後に存続会社の役員に就任する場合も支給できます。

退職金減給の場合

退職金を減額するには、労働者から個別に合意を得る必要があります(労働条件の不利益変更)。
しかし、ただ同意書があれば良いわけではなく、「労働者の意思に基づく合意であること」が前提となります。つまり、減額について十分な説明をしたうえで、労働者に判断を委ねることが重要です。
一方、労働者に不利な事実を隠したり、脅して同意書にサインを求めたりする行為は認められず、変更が無効になる可能性があるため注意しましょう。

もっとも、退職金は減額するが給与は上がるというケースや、総合的にみて労働者の不利益が小さいケースでは、個別合意ではなく就業規則の変更によって労働条件を引き下げられる場合もあります。

退職金における勤続年数の扱い

合併では労働契約が“包括的に”承継されるため、勤続年数もそのまま引き継がれます。よって、合併と同時に勤続年数がリセットされることはありません。

勤続年数は、有給休暇の日数や退職金の計算に影響する重要な項目です。積み上げてきた年数が維持されれば、労働者にとって大きなメリットといえるでしょう。

一方、会社の権利義務を“売買する”事業譲渡の場合、労働者は一度退職のうえ譲渡先に再就職するのが基本です。そのため、勤続年数はリセットされ、全員1年目からのカウントとなります。

退職金が移換される場合

退職金の移換とは、それまで積み立てた資産を引き継ぎ、承継会社で支給する方法です。

例えば、合併前は退職金制度があったが、承継会社では確定拠出年金制度しかないというケースです。また、合併後は承継会社の制度に統一されたとします。
この場合、労働者は合併時に退職金を清算することもできますが、それだと将来支給されるはずだった金額を受け取ることはできません。そこで、合併時における退職金を移換し、承継会社で運用するという方法が可能になっています。

ただし、制度の統一によって就業規則を変更する場合、事前に労働者の同意を得なければなりません。

就業規則の不利益変更

就業規則の内容を労働者にとって不利に変更する場合、会社が勝手に変更することはできません。必ず労働者から個別に同意を得たうえで実施する必要があります(労働条件の不利益変更、労働契約法9条)。

ただし、不利益の程度などを考慮し、変更が相当だと認められる場合、同意を得ずに就業規則を変更できる可能性があります(労働契約法10条)。詳しくは以下のページをご覧ください。

労働条件の不利益変更
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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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