人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

差別

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働者の雇用にあたっては、「差別」がないよう十分配慮しなければなりません。たとえ意図的でなくても、業務や採用選考、社内規定等で無意識に差別が行われているケースもあります。また、差別が明るみに出ると、会社が不利益を受けることもあるため注意が必要です。

本記事で、「どのような行動が差別にあたるのか」「差別をしないためのポイント」をしっかり理解しておきましょう。

労働基準法における差別の禁止

労働基準法では、使用者に対して差別の禁止を定めています。

まず、労基法3条では、労働者の国籍・信条又は社会的身分を理由とした、賃金・労働時間・その他の労働条件の差別的取扱を禁止しています(均等待遇の原則)。
また、同法4条では、労働者が女性であることを理由に、賃金を男性と差別的に取り扱うことを禁止しています(男女同一賃金の原則)。

なお、これらに違反した場合、以下のような罰則を受ける可能性があります。

労働基準法に違反した場合の罰則

労基法3条及び4条に違反した場合、会社の社長などの代表者に、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます(同法119条)。

また、労基法違反の疑いがかけられた場合、労働基準監督官による事業所調査(帳簿の確認や労働条件の尋問)が行われ、違反が認められると「是正勧告」を受けることになります。

なお、是正勧告は行政指導の一環であり法的拘束力はありませんが、従わずにいると逮捕・起訴される可能性もあります(同法102条)。また、社名が大々的に報道され会社の評判を大きく損ねるおそれもあるため、是正勧告を受けた場合、早々に対応すべきでしょう。

労働基準法3条における「信条」とは

労基法3条における「信条」とは、“特定の宗教的又は政治的信念”のことをいいます(昭和22年9月13日発基17号)。本条では、この「信条」を理由とする労働者への差別的取扱を禁止しています。例えば、労働者が特定の政党を支持していることを理由に、賃金の引き下げや解雇をすることは違反となります。

ただし、本条は、信条そのものを理由とする差別的取扱を禁じるものです。そのため、労働者が自身の信条に基づいて行動し、結果として、企業の秩序や利益が侵害された場合、その行動を理由に差別的取扱をしても違反にはあたらないとされています。

労働基準法3条における「社会的身分」とは

労基法3条における「社会的身分」とは、“生来的な立場”のことをいいます(昭和22年9月13日発基17号)。例えば、出身地・家柄・人種などが挙げられ、これらを理由とする労働者への差別的取扱も禁止されています。一方、パートタイマーや正社員といった雇用形態は、後天的なものであり社会的身分には含まないとされています。よって、雇用形態による待遇の違いは同条における「差別」にあたらず、同条に違反するものではないとするのが一般的です。

外国人への労働条件差別

労基法3条では、労働者の「国籍」による、賃金や労働時間といった労働条件の差別的取扱を禁止しています。そのため、合理的理由なく、外国人労働者の賃金を日本人労働者よりも低くするといったことは認められません。

一方、外国人労働者と日本人労働者の業務遂行能力が同等でないことや、賃金が日本人労働者よりも低額である代わりに会社が外国人労働者に寮を無償で提供するといった特別な援助をしていたことなどから、賃金格差の合理的理由を認めた裁判例もあります(東京地方裁判所 平成23年12月6日判決、デーバー加工サービス事件)。

女性の賃金の差別

労基法4条では、「男女同一賃金の原則」として、女性の賃金の差別的取扱を禁止しています。このため、女性の賃金を男性と差別的に取り扱うことは認められません。

なお、ここでいう「賃金」には、給与・手当・賞与など労働の対価として支払われるすべての項目が含まれます。

また、賃金の額だけでなく、その支給基準や支払形態の差別的取扱も禁止されていることに注意が必要です。例えば、住宅手当や家族手当の支給対象を男性のみとしていたり、男性は月給制・女性は日給制と区別していたりする場合、違反にあたる可能性があります。

間接差別について

間接差別とは、「表面上は男女平等だが、実際には男女どちらが不利益を受ける制度」のことをいい、男女雇用機会均等法7条で禁止されています。

具体的には、「事業主は、労働者の募集・採用・配置・福利厚生・雇用形態の変更・労働契約の更新といった措置であり労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省が定めるものについては、合理的な理由がなければ講じてはならない」と定めています。

間接差別禁止に違反すると、厚生労働大臣による助言や指導・勧告を受けたり、社名が公表されたりする可能性があります(同法29条1項、30条)。

なお、ここで禁止される「厚生労働省が定める措置」は3つあり、それぞれ以下で解説します。

身長・体重・体力を採用の要件とすること

間接差別になり得る措置として、「労働者の募集又は採用にあたって、労働者の身長・体重又は体力を要件とするもの」があります。

例えば、合理的な理由なく、

  • 募集や採用にあたり、身長・体重・体力の要件を満たしている者のみを対象とすること
  • 身長・体重・体力の要件を満たしている者と満たしていない者で処遇を変えたりすること
が挙げられます。

このうち、“業務遂行に必要な範囲を超えて”また“業務に関係なく”身長・体重・体力要件を採用基準にしているものは、合理的な理由がないと判断され間接差別にあたるおそれがあります。

転勤に応じられることを採用や昇進等の要件とすること

「労働者の募集もしくは採用、昇進又は職種の変更にあたって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること」も、間接差別にあたる可能性があります。

例えば、募集・採用・昇進・職種の変更にあたり、転居を伴う転勤に応じることができる者のみを対象とすることや、採用・昇進の基準の中に転勤要件を含むことが挙げられます。

このうち、実際は広域に支社や支店がなく、転居を伴う転勤の可能性が極めて低い場合や、転勤先で業務を積むことが労働者の能力育成や組織運営に必要だと認められない場合、合理的な理由がないとして間接差別となる可能性があります。

転勤の経験を昇進の要件とすること

「労働者の昇進にあたり、転勤の経験があることを要件とすること」も、間接差別になり得ます。
例えば、以下が挙げられます。

  • 転勤の経験がある者のみを対象とすること
  • 転勤の経験がある者とない者で処遇を変えたりすること

このうち、昇進先の役職の業務を遂行するうえで、
・異なる支社・支店での勤務経験が必要とは認められない場合
・転居を伴う転勤といった人事異動が必要とは認められない場合
は、合理的な理由がないと判断され、間接差別にあたるおそれがあります。

なお、これら3つの措置は、厚生労働省のホームページでより詳しく確認することができます。

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/danjyokoyou_h.pdf

各法律における差別の取り扱い

性別による差別

性別による差別の禁止は、男女雇用機会均等法で定められています。具体的には、労働者の募集・採用・配置・昇進・降格・教育訓練・一定範囲の福利厚生・職種や雇用形態の変更・退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新など、雇用管理の各ステージにおいて、性別を理由に差別することを禁止しています。

障害者の差別

障害者の差別の禁止は、障害者差別解消法で具体的に定められています。同法は、障害者に対する「不当な差別的取扱の禁止」と「合理的配慮の提供」という2つの措置を掲げ、すべての国民が尊重し合い共生できる社会の実現を目指しています。

また、障害者雇用促進法においても、事業主に“障害者の雇用義務”を課す等して、障害者の職業の安定を図っています。

労働組合員に対する差別

労働組合法7条1号では、事業主による労働組合・労働者への不当労働行為を禁止しています。
不当労働行為とは、以下を理由に、労働者の解雇や、その他の不利益な取り扱いをすることをいいます。

  • 労働者が労働組合の組合員であること
  • 労働者が労働組合に加入しようとしたこと
  • 労働者が労働組合を結成しようとしたこと
  • 労働者が労働組合の正当な行為をしたこと

また、同項では、以下を雇用条件とすることも禁止しています。

  • 労働者が労働組合に加入しないこと
  • 労働組合から脱退すること

労働組合の詳しい解説は、以下のページをご覧ください。

労働組合

法律で明文化されていないが配慮が必要な差別

セクシュアルマイノリティの差別

セクシュアルマイノリティとは、性のあり方における少数派のことをいいます。
令和3年6月現在、セクシュアルマイノリティの差別を明確に禁止する法律はありませんが、労働者を雇用する際は配慮が必要です。

病気による差別

“病気”による差別は法律で明文化されていませんが、“障害”にかかわる部分もあるため、労働者を雇用する際は配慮する必要があります。

採用選考時の差別の禁止

採用選考時は、応募者を差別することなく公正に選考する必要があります。そのためには、以下の点を押さえることが重要です。

  • 応募者に広く門戸を開くこと
    採用条件に合致するすべての人が応募できるようにします。
  • 応募者の適性や能力に基づいて判断すること
    「応募者が、業務遂行上必要な適性や能力を備えているかどうか」を基準に判断します。出身地や思想等、業務遂行とは関係ない事項は採用基準にしないことが必要です。
  • 応募者の適性や能力とは関係ない事項を把握しないようにする
    採用基準にするつもりがなくても、これらの事項は採否結果に影響を与えかねず、就職差別につながるおそれがあります。

企業の様々な人事・労務問題は弁護士へ

企業側人事労務に関するご相談 初回1時間 電話・来所法律相談無料

会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません

0120-630-807

受付時間:平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

0120-630-807タップで電話開始

平日 10:00~20:00 / 土日祝 10:00~18:30

※初回1時間無料、1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。 ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。 ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます