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企業が導入することのできる「特別休暇制度」について

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

企業は、労働契約上定めた「休日」や法律上付与が義務化された「法定休暇」以外に、独自の判断で、労働者に「特別休暇」を付与することができます。「特別休暇」の内容は企業が独自に決めることができるので、特別休暇の有無やその内容で他企業と差別化を図り、労働者にとってより魅力的な企業にすることで、優秀な人材および安定した労働力の確保に繋げることが可能です。

そこで、今回は、特別休暇について解説していきます。ぜひ本記事をご覧いただき、適切な制度運用による、安定した企業の成長を実現していただければ幸いです。

特別休暇の概要

特別休暇」とは、法律上の義務ではなく福利厚生の一環として、企業が労働者に付与する休暇です。です。労働者が仕事と私生活を両立しながら、健康を保ったうえで、様々な面で豊かな生活を送ることができるように、ワーク・ライフ・バランスを整えることを目的としています。これによって、労働者の仕事へのモチベーションや作業能率も高まりますし、企業イメージも向上します。

なお、特別休暇は企業が独自の判断で制度化できますが、必ず就業規則に明記し、企業内に周知しておく必要があります。

法定休暇との違い

特別休暇は、法律上、労働者への付与が企業に義務化されていない点で、法定休暇とは異なります。したがって、例えば他企業が付与していることを理由に、労働者から特別休暇を付与するよう請求されたとしても、自企業がルールとして定めていない限り付与する必要はありません。また、法定休暇とは異なり、付与しない場合に懲役や罰金等を科されるといった心配もありません。

法定休暇について、詳しくは下記の記事をご覧ください。

休暇について

特別休暇を導入するメリット・デメリット

メリット

特別休暇を制度として導入するメリットは様々です。

例えば、労働者のワーク・ライフ・バランスを整え、仕事と私生活の両立を可能にし、充実した生活が送れるように後押しできます。また、休暇中にリフレッシュできるので、労働者の心身の健康管理にも役立ちます。そのようにすれば、労働者の仕事に対する意欲が高まりますし、企業自体のイメージの向上による優秀な人材の獲得にも繋がるため、企業の生産性も高まります。さらに、忌引休暇等、個々の労働者の事情によって休暇を与えることができるので、仕事と私生活を切り分けることで、仕事の能率の向上も期待できます。

デメリット

特別休暇制度の導入には、デメリットもあります。

まず、特別休暇を取得する労働者が重なったり、元々労働者数が少なかったりする企業では、人手不足になるおそれがあります。また、そもそも年次有給休暇の取得率が低い企業では、特別休暇制度を導入してもあまり利用されず、導入した目的を果たすことが難しいだろうと予想されます。

年次有給休暇について、詳しくは下記の記事をご覧ください。

労働基準法で定められる年次有給休暇の基礎知識

特別休暇の種類

特別休暇は、企業によって独自に制度化できるため、その内容も様々ですが、多くの企業で導入されている次のような特別休暇もあります。

  • ・慶弔休暇
  • ・病気休暇
  • ・リフレッシュ休暇
  • ・ボランティア休暇
  • ・バースデー休暇
  • ・夏季休暇
  • ・教育訓練休暇

それぞれの内容については、次項より紹介していきます。

慶弔休暇

慶弔休暇とは、労働者本人の結婚や、親族の不幸といった出来事を理由に付与する休暇です。特に大企業のほとんどが導入しています。また、お祝いやお悔やみの意を込めて、有給扱いとすることが多いようです。

休暇として付与する日数は、少ない企業でも1~2日、多いところでは3~5日程度とする傾向にあります。具体的には、慶弔の内容や本人との続柄ごとに日数を定めます。

詳しくは下記の記事をご覧ください。

慶弔休暇について

病気休暇

病気休暇とは、労働者が業務外で怪我を負ったり病気を発症したりした場合に、労働者としての地位を失わないまま治療できるように付与する休暇です。

時間単位での取得を可能にする等、柔軟な運用を可能にしている企業が多くみられます。なお、上限とする期間は、勤続年数に応じて定めるとともに、無給扱いとする場合が多いようです。

なお、類似の制度として、業務外で怪我を負ったり病気を発症したりして欠勤している労働者の欠勤期間が長期にわたった場合に、労働者としての地位を失わないまま、一定期間の勤務を免除し解雇を猶予する私傷病休職という制度もあります。

リフレッシュ休暇

リフレッシュ休暇とは、勤続年数が一定に達した、または一定の年齢に達した労働者に対して、慰労の意味を込めて付与する休暇です。勤続年数に応じて、3~7日程度付与する企業が多く、勤続年数が長いほど多くの日数を付与するのが一般的です。また、勤続の節目として付与する休暇のため、有給扱いとする場合が多いようです。

ボランティア休暇

ボランティア休暇とは、労働者にボランティア活動を通じて社会貢献してもらうために付与する休暇です。2011年の東日本大震災以来、労働者のボランティア活動を企業の社会的責任の一環と捉える企業が増え、ボランティア休暇の導入が進みました。企業のイメージアップにも繋がる休暇のひとつです。

ボランティア活動にかかる交通費やボランティア保険等の費用を負担し、有給扱いとする企業もみられます。また、東京都では、ボランティア休暇制度を整備する企業へ助成金を支給する試みもなされています。

バースデー休暇

バースデー休暇とは、労働者の誕生日に付与する休暇です。誕生日当日だけでなく、その前後1週間の間に1~3日の休暇を付与するといった規定を設けている企業もあります。

まだ導入している企業が少ないため、求職者に対して、福利厚生が充実していることをアピールする要素として導入する企業もみられます。

夏季休暇

夏季休暇とは、特にお盆等の時期に連続して休めるよう、労働者に付与される休暇のことです。

ただし、企業によっては、特別休暇ではなく「年次有給休暇」として付与される場合があります。このように、企業の都合で労働者の年次有給休暇の取得日を指定できる制度を「年次有給休暇の計画的付与」といいます。詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

有給休暇の計画的付与制度

教育訓練休暇

教育訓練休暇とは、労働者が業務上の知識やスキルを向上させるために、一定の日数業務から離れて訓練するために付与する休暇です。

教育訓練休暇の制度を導入する企業は、一定の基準を満たした場合に、国から助成金を受け取ることができます。なお、最低でも以下の基準を満たす必要があります。

  • ・教育訓練休暇を有給とする場合、5年に5日以上かつ1年間に5日以上付与すること
  • ・教育訓練休暇を無給とする場合、5年に10日以上かつ1年間に10日以上付与すること
  • ・期間の初日から、1年につき1人以上(自発的に)休暇を取得していること

特別休暇中の給与支払い

ノーワーク・ノーペイという給与支払いの原則があるとおり、特別休暇中、企業には給与を支払う法的な義務はありません。給与支払いのうえで特別休暇をどのように取り扱うかは、企業がそれぞれ決めることができます。

なお、特別休暇を無給とする場合、給与の計算上は欠勤と同じ扱いになるため、給与から休んだ日数分の給与が控除されることになります。

また、特別休暇を有給とするか無給とするかは、特別休暇を設ける旨の規定と同様に就業規則に明記し、労働者に周知する必要があるため、気をつけましょう。

特別休暇の取得要件

特別休暇は、法定休暇と異なり、導入するかどうかは企業が決めることができ、また、取得するための要件や手続き、対象者の範囲等に制限を設けることもできます。例えば、就業規則に「企業が多忙である場合には、労働者からの特別休暇の請求を拒否できる」と規定しておけば、実際に多忙を理由として特別休暇を付与しないことも適法とされます。

もっとも、就業規則に特別休暇について定めている以上、取得要件を満たした労働者が特別休暇を取得することを、不当に妨げるべきではありません。また、取得制限を設ける際は、企業内で不公平な運用がなされないよう、明確な規定を定める必要があります。

対象者

特別休暇は、企業が独自に制度として設けるものなので、対象者に関しても自由に設定できます。したがって、雇用形態や勤続年数、退職予定の有無等で労働者を区別することが可能です。例えば「勤続年数1年以上の正社員で、今後2年以内に退職予定のない者に限る」というように、対象者の範囲を定められます。

なお、退職および解雇について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

退職及び解雇

取得日数

特別休暇の日数は、企業が自由に決めて付与することができます。なお、特別休暇について定める際には、有給扱いとするか否か、無給扱いとする場合には、出勤扱いとするか否かについても決めておく必要があります。なぜなら、年次有給休暇は、対象となる期間における出勤率が8割以上の労働者に付与されるところ、特別休暇を取得した日も、年次有給休暇の出勤率を算定する際の対象期間に含まれるからです。詳しくは下記の記事で説明しています。

年次有給休暇の出勤率の算定方法について

取得期限

特別休暇について定めた法律はないため、法定休暇の時効について2年と定めた労働基準法115条の規定も適用されません。つまり、特別休暇の取得期限は、企業が自由に定めることができます

そのため、例えば、特別休暇の有効期間を1年とした場合に、年度内に取得されなかった休暇の繰り越しを認めず消滅させることも可能です(法定休暇の場合、2年の消滅時効の規定があるため、当該繰越し制限は違法とされます)。

また、同様のケースで、年度内に取得できなかった休暇について、企業が買い上げることも適法とされます。ただし、好ましくはないため、なるべく避ける必要があるでしょう。

特別休暇を導入する流れ

導入する特別休暇の目的を定める

特別休暇を導入する際には、様々な部署の労働者から聞き取りを行う等、企業全体のニーズを確認するとともに、企業が現状抱えている課題を把握します。そのうえで、特別休暇を導入する「目的」と休暇の「内容」を検討することで、労働者のニーズを踏まえながら、企業が目指す方向へ成長するために役立つ特別休暇を設定することができます。

また、「対象者の〇%以上が利用できるよう促進する」といった数値目標を設定しておくと、より効果的に運用することが可能になります。

就業規則の策定

「休暇」に関する規定は、必ず就業規則に記載しなければならない、絶対的必要記載事項に該当します。したがって、特別休暇を導入する際には、その旨の規定を就業規則に設けなければなりません。

就業規則には、取得するための要件(入社〇年目以上から取得可能、〇〇の場合に取得できる等)や取得日数、申請手続き、給与の支払いの有無といった詳細な条件についても記載する必要があります。

なお、就業規則の変更後、労働基準監督署へ届け出ることを忘れないようにしましょう。

従業員への周知

就業規則を変更したら、変更後の就業規則を周知する(労働者が知りうる状態に置くこと)必要があります。そこで、実際に新設した特別休暇を利用してもらうためにも、メールや社内報、社内掲示板、社内SNS等のツールを活用して、労働者に特別休暇を新設したことを周知することをお勧めします。

また、実際に特別休暇を取得した労働者の感想を企業内に伝えることも、特別休暇の取得の促進に繋がります。そこで、特別休暇取得者にアンケートを実施すると良いでしょう。

特別休暇の廃止による不利益変更

特別休暇は、就業規則で規定されているため、廃止するためには就業規則を変更する必要があります。これは労働者の権利を失わせる変更であり、就業規則の不利益変更に当たります。そのため、次のような事情を総合的に考慮したうえで、当該変更が合理的なものであると認められる場合に限り適法とされます。

  • ・労働者が受ける不利益の程度
  • ・労働条件の変更の必要性
  • ・労使間の交渉の経緯
  • ・不利益変更に対する代償措置の有無
    (例:一定期間を設けて休暇数を低減させる、休暇を金銭に換算したうえで給与額を見直す等)

なお、たとえ特別休暇の廃止が合理的なものであると判断されたとしても、労働者から反発が起きないとは限りません。なぜ特別休暇を廃止するのか、廃止にあたってどのような代償措置を設けるのかを十分に説明し、労働者からの反発をできる限り抑えましょう。

特別休暇を取得しやすい環境を作るには

労働者に特別休暇を取得させることは、企業にとって様々なメリットがあります。そこで、労働者が休暇を取得しやすい環境を整え、特別休暇の利用を促すことが大切です。

そのためにも、①引継ぎを実施したり業務マニュアルを作成したりする等、他者がフォローしやすい体制を確立する、②経営者や管理職の労働者が積極的に特別休暇の取得を促す、③企業全体に特別休暇の取得についての理解を深めさせる等して、休暇を取得しやすい環境を作る必要があります。

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