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戒告・譴責

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

「戒告」と「譴責」という懲戒処分がありますが、その他の「懲戒解雇」「諭旨解雇」、「降格」、「出勤停止」、「減給」といった処分に比べて、軽い処分として位置づけられます。以下では、この「戒告」と「譴責」について、具体的に説明します。

懲戒処分にあたる戒告・譴責の定義

懲戒処分をするにあたっては、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当であると認められ」ることが必要です労契法15条)。懲戒処分の一種としての「戒告」「譴責」についても、処分をするにあたっては、これらの要件を満たす必要があるものと考えられます。

戒告(かいこく)

戒告とは、戒めるという文字のごとく、従業員が過失をおかしたことをとがめる、注意すること等を指し、口頭又は書面でなされます。戒告処分を受けた従業員は、口頭での反省で済む場合もあれば、次に述べる譴責のように書面での反省を求められる場合があります。したがって、戒告と譴責は処分としての内容はほぼ同じですが、一般的に、戒告は書面での反省を必ずしも促されるとは限らないことから懲戒処分の中では最も軽い処分となります。

譴責(けんせき)

譴責とは、一般的には、従業員の過失等について厳しくとがめ、始末書や顛末書を提出させることをいいます。譴責は、従業員に始末書等を提出させることが多いことから、戒告よりも少し重い処分といえます。始末書等では、従業員に自らの行為を反省ないし謝罪させ、将来同じ過ちをおかさないことを誓約させるといった内容が記載されることが一般的です。

「戒告」と「訓告」の違い

戒告と訓告は、どちらも従業員の過失等について注意をし、場合によっては従業員に反省を記した書面を提出させるといった点では同じです。しかし、戒告については国家公務員法等の法律に公務員に対する制裁として定めがあるのに対し、訓告については省庁の規程等を除いて定めがないことから、一般的に訓告のほうが戒告よりも軽い処分として捉えられています。このような一般的な理解を前提にすると、訓告よりも戒告のほうが後の昇給等に影響するおそれが高くなるよう定めていることが多いといえます。

戒告・譴責処分の根拠となる就業規則

最高裁の判決では、使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則で懲戒の種別及び事由を定めておく必要があるとされていますので、戒告・譴責についても就業規則に定めることが望ましいといえます。

懲戒処分

戒告・譴責処分にあたる懲戒事由

懲戒処分としての戒告・譴責をなすには、就業規則の懲戒事由に該当するか否かをまず確認しなくてはなりません。戒告・譴責の具体例としては、職務懈怠、規律違反等が挙げられます。

懲戒処分 懲戒事由

戒告・譴責処分の通知方法

戒告・譴責処分の通知方法は、以下のとおりです。

就業規則に始末書を提出するよう記載されている場合
従業員に対して、対象者、社名及び代表者、処分日、処分内容(就業規則上の根拠条文)、処分理由、始末書提出の期限、始末書に記載する内容(例:今回のような非違行為を二度と起こさないよう誓約する等)等を記載した通知書を交付することが考えられます。
就業規則に、始末書の提出が記載されていない場合
対象者、社名及び代表者、処分日、処分内容(就業規則上の根拠条文)、処分理由、今後同じような非違行為を起こさないよう注意する旨等を記載した通知書を従業員に交付することが考えられます。

昇給査定・賞与査定への影響

各企業における昇給査定や賞与査定のあり方にもよりますが、一般的には、戒告処分や譴責処分を受けた従業員は、昇給査定や賞与査定において不利に扱われるものといえます。逆に、懲戒処分としての戒告処分や譴責処分を受けたということは、当該従業員を昇給査定や賞与査定における対象外とする合理的な理由があるものといえます。

しかし、戒告処分や譴責処分を受けた従業員を昇給査定等において不利に扱ったことにより、当該従業員から処分は無効だ等として争われる可能性はあります。注意点としては、就業規則の懲戒事由に非違行為が該当すること、非違行為の証拠を残しておくこと、非違行為者に弁明の機会を付与するといった適正手続きを確保する等方法で非違行為の内容を十分吟味すること等が挙げられます。

譴責処分による始末書の提出について

始末書提出の目的としては、社員の指導、再発防止等が挙げられますが、場合によっては、始末書が裁判となった場合の証拠となることがあり得ます。そこで、始末書の内容としては、非違行為の内容、日時、原因、反省の弁等を記載させることが重要となります。

顛末書・報告書との違い

始末書と顛末書・報告書との違いは、始末書は反省文として提出されることがあるのに対し、顛末書・報告書は、非違行為の一部始終やその原因等を記載するものという点で違いがあります。しかし、文書の題名にかかわらず、後に従業員との間で処分の有効性が問題となったときのために、非違行為の内容、日時等を記載してもらい、当該従業員自身が非違行為を起こしたことを認める旨を証拠として残しておくことが重要と考えられます。

始末書の提出拒否で懲戒処分は可能か?

始末書は、顛末書・報告書と異なり、反省の弁を述べるという性質の濃いものなので、これを強制するときは、憲法上保障された思想・良心の自由に鑑み、慎重にならなければなりません。裁判例では、始末書の不提出が職務命令ないし秩序維持に協力する義務に反するものとして懲戒処分を有効としたものもあります(従業員の思想・良心の自由を不当に制限しないことが前提です)が、提出拒否を理由に懲戒処分をするのであれば、顛末書・報告書のように非違行為の報告のみを求め、反省の弁等を強制しないことがポイントとなります。

懲戒処分が認められなかった裁判例

過去の裁判例では、就業規則に定められた非違行為を行ったわけではない場合に始末書の提出を要求する行為が許されないと判断したものや、謝罪文の提出を命じることは、個人の意思を尊重する現行法の精神からいって強制することは許されないとしたもの、始末書の提出を拒んだ行為に対して新たな懲戒処分を行うことが許されなかった例等があります。

懲戒処分を有効に実施するためには、就業規則の根拠規定と具体的な懲戒事由の定めのほか、懲戒事由に該当する行為を特定すること、個人の意思を侵害しないこと等に配慮しながら実施していく必要があります。

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