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雇用形態に関わらない公正な待遇の確保【働き方改革】

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

働き方改革では、雇用形態による不合理な格差の解消が注目されています。

これは、パートや契約社員、派遣社員といった非正規雇用労働者が増加している状況を踏まえた施策です。これら労働者の待遇を改善することで、勤労意欲や定着率の向上、ひいては労働力不足の解消につなげるのが狙いといえます。

では、本施策の内容は具体的にどういったものでしょうか。また、企業にはどのような取組みが求められるのでしょうか。本記事でわかりやすく解説していきます。

【働き方改革】雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

いわゆる働き方改革の柱として、国より「雇用形態に関わらない公正待遇の確保」が掲げられています。

公正な待遇の確保とは、同一企業内の正社員と非正規雇用労働者(契約社員、パート・アルバイト、派遣社員など)との間にある不合理な待遇差を是正することをいいます。

つまり、同じ会社の中で、仕事の内容や責任の範囲などが同じ労働者であれば、雇用形態が違ったとしても、同じ給与や待遇としなければならないことを意味します。
本施策を実行するため、以下の3つの法律が改正されています。

  • パートタイム・有期雇用労働法(旧パートタイム労働法)
  • 労働契約法
  • 労働者派遣法

これらの法律改正の要点は、以下のとおりです。詳しくは後述します。

  • ①不合理な待遇差をなくすための規定の整備
  • ②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
  • ③行政ADR等の規定の整備

「公正な待遇の確保」の対象となる有期雇用労働者・パート社員について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

有期労働契約

改正の目的

法改正の目的は、同一企業における正社員と非正規雇用労働者の間の不合理な賃金格差や待遇格差をなくし、どのような雇用形態でも納得できる待遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにすることです。

日本では正社員を優遇することが根付いており、仕事内容は同じでも、正社員か非正規かという違いだけで、賃金や待遇面において格差が生じているのが通例でした。
例えば、契約社員やパート社員の時給が正社員よりも低い、正社員だけに賞与や手当を支給するといったケースが多くみられていました。

少子高齢化による人手不足が進む中、非正規雇用労働者は貴重な労働力であり、このような状態は好ましくありません。そこで、非正規雇用労働者に不利な労働条件を改善し、働き方の選択肢を増やすため、今回の法改正に至りました。

働き方改革による改正要点

①不合理な待遇差をなくすための規定の整備

給与や賞与、福利厚生、教育訓練などあらゆる待遇について、正社員と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差を設けることが禁止されました。
つまり、雇用形態ではなく、労働者の職務内容(業務内容+責任の程度)、職務内容・配置の変更範囲(転勤、人事異動、昇進等の有無や範囲)、個々のスキルや経験等に応じて待遇を決めるよう義務付けられています。

例えば、職務内容や人事異動の範囲が同じ労働者については、基本的に待遇も同じにする必要があります。また、これらに相違があっても、相違の程度を考慮して、合理的な待遇差に抑えなければなりません。

また、本改正により、派遣先の正社員と派遣労働者の間に不合理な待遇差を設けることも禁止されました。これに伴い、派遣先企業に対し、派遣労働者の比較対象となる正社員の待遇情報を派遣元企業に提供するという「情報提供義務」も新設されています。

不合理な待遇差の判断基準について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

不合理な待遇差の禁止の改正要点

なお、正社員と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を解消するための取組みを、「同一労働同一賃金」といいます。これを実行するための手引きとして、国は「同一労働同一賃金ガイドライン」を策定し、どのような待遇差が不合理にあたるのか、基本的な考え方と具体例を記載しています。

詳しく知りたい方は、以下のリンクをご参照ください。

同一労働同一賃金ガイドラインの具体例や注意点

②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」について説明を求めることができるようになり、事業主は、非正規雇用労働者からの求めに応じて説明することが義務付けられました。

そのため、事業主(派遣労働者については派遣元)は、非正規雇用労働者から説明を求められた場合は、正社員との待遇差の内容や理由を開示しなければなりません。また、説明を求めた労働者に不利益取扱いをすることも禁止されています。

例えば、非正規雇用労働者から「なぜ同じ仕事をしているのに、正社員より給料が少ないのか」と聞かれた場合は、給料が少ないことに対する合理的な説明を行わなければ、違反となるため注意が必要です。

また、本改正により、契約社員に対しても、雇入れ時の待遇説明が義務付けられることになりました。

説明すべき項目や説明方法は、以下の記事で解説していますので、ご確認ください。

待遇に関する説明義務の強化

③行政ADR等の規定の整備

行政からも、事業主に対して公正な待遇について助言・指導ができるようになりました。
また、事業主と労働者の間でトラブルが発生した場合、都道府県労働局の行政ADRを利用することもできます。

行政ADRとは、労使間トラブルを裁判以外の方法で解決する手続きのことです。労働問題の専門家が調停委員となり、中立的な立場で解決をあっせんしてくれるため、裁判よりも迅速かつ柔軟な問題解決が見込めます。行政ADRは基本的に無料で非公開となっています。

本改正により、「正社員と非正規雇用労働者間の不合理な待遇差」や「待遇の内容・理由に関する説明」についても、行政ADRの対象となりました。
そのため、今後もしも不合理な待遇差関連で、労使間トラブルが発生した場合は、裁判ではなく、行政ADRによって解決を図るという選択も可能です。

行政ADRの詳細は、以下のページでも解説しています。併せてご覧ください。

行政ADR等の規定の整備

使用者の責務

非正規雇用労働者の処遇を改善することは、使用者の責務といえます。適切な待遇になれば労働者のモチベーションが上がりますし、生産性の向上にもつながるためです。また、労働者が働き方を柔軟に選択することで、人手不足の解消にも貢献できます。

具体的な取組みとしては、同一労働同一賃金の実現はもちろん、非正規雇用労働者の正社員転換を進めることも重要です。非正規雇用労働者は雇用期間が決まっていることも多く、キャリアアップや能力向上が図りにくいという問題があります。

限られた労働力で企業を支えていくには、非正規雇用労働者の人材活用が大きなカギとなるでしょう。

使用者が取り組むべきこと

労働者の雇用形態を確認

不合理な待遇差をなくため、まずは法の対象となる労働者の有無を確認します。具体的には、正社員と比べて1週間あたりの所定労働時間が短い「短時間労働者」と、雇用契約期間に定めがある「有期雇用労働者」が対象となります。

呼び名ではなく実態で判断するため、フルタイムで働き、雇用契約期間に定めのない労働者はすべて正社員となります。
なお、同じ事業所内に正社員がいなくても、同一企業内に正社員がいる場合は対応が必要です。

その後、非正規労働者を社員タイプ(パートナー・アルバイト・サポーターなど)で分類します。さらに、待遇が同じグループに分類し、それぞれの人数も把握しましょう。

正社員と待遇に違いがあるか確認

正社員と短時間労働者・有期雇用労働者の間に、待遇の違いがあるかを確認します。また、違いを設けている場合はその理由も確認しましょう。この点、厚生労働省がワークシートを公表していますので、活用することをおすすめします(厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法のための取組手順書(リンク先はPDF)」)。

待遇は、基本給・手当・賞与・福利厚生その他の4つに分類するのが一般的です。特に「福利厚生その他」では、施設の利用や教育訓練の機会、休暇や休職の取得なども含まれるため注意しましょう。

また、基本給については、業務内容が最も近い正社員の金額と比較することになります。

「不合理ではない」ことを説明できるよう準備

待遇差がある場合、その理由が不合理ではないか検討します。不合理かどうかは、非正規雇用労働者の職務内容、配置変更の範囲、その他の事情(能力や経験)を基準に、各待遇の性質や目的を踏まえて判断します。

例えば、急なトラブルや繁忙期の休日出勤にも対応する正社員の基本給を、それ以外のパート社員よりも高くすることは、責任の程度(職務内容)が異なるため合理的といえるでしょう。
また、転勤がある正社員だけに転勤者用社宅の利用を認めることも、配置変更の範囲が異なるため合理的といえます。

また、労働者にきちんと説明できるよう、待遇差の内容と合理的な理由を項目ごとに整理しておくことも重要です。
一方、待遇差が不合理といえる場合、以下のような対応が必要です。

改善に向けた待遇の見直し

不合理な待遇差がある場合、改善に向けた取組みが必要です。非正規雇用労働者の意見も聞きながら、早急に待遇を見直しましょう。
例えば、通勤手当を正社員だけに支給している場合、具体的事情によっては、不合理となる可能性があります。

そこで、すべての労働者に一律で支給する、又は出勤日数に応じて日額の交通費を支給するなどの方法も一案として考えられます。
ただし、待遇差をなくすために正社員の待遇を不利益に変更することは望ましくないとされています。具体的には、正社員の賃金を引き下げる、正社員にのみ支給していた手当をなくすといった手法は避けるべきでしょう。

違反した場合の罰則

不合理な待遇差があっても、罰金や懲役などの罰則を受けることはありません。同一労働同一賃金は、雇用形態による格差を解消するための指針にすぎないためです。

ただし、労働者から、同一労働同一賃金違反に基づく損害賠償請求をされるリスクはあります。実際、不合理な待遇差をめぐって裁判となり、企業が敗訴するケースもあります。

また、労働者の離職率増加や企業のイメージダウンなど様々なデメリットも起こりえます。

処遇改善の取組みに対する助成金

非正規雇用労働者の社内キャリアアップを推進するため、正社員化や処遇改善に取り組む企業には、キャリアアップ助成金が支給されます。この助成金は、労働者のモチベーションや能力を高め、優秀な人材を確保し、生産性を向上させるために有効な制度です。

少子高齢化による人手不足や転職が一般化しつつある中で、非正規雇用労働者は貴重な労働力となります。助成金を活用しながら待遇改善を行い、雇用の安定を図りましょう。

具体的には、以下の6コースが用意されています。

【正社員化支援】
●正社員化コース(有期雇用労働者等の正社員化)
●障害者正社員化コース(障害のある有期雇用労働者等の正社員化)

【処遇改善支援】
●賃金規程等改定コース(有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し3%以上増額)
●賃金規程等共通化コース(有期雇用労働者等と正社員との共通の賃金規定等を新たに作成・適用)
●賞与・退職金制度導入コース(有期雇用労働者等に賞与・退職金制度を新たに設け、支給又は積立てを実施)
●短時間労働者労働時間延長コース(非正規雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、社会保険を適用)

どのコースでも、キャリアアップ計画の作成や就業規則の変更、転換後半年間の賃金支払いなどを経て、支給申請をする手順となります。

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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