休職期間とは|決め方や給料・社会保険料・有給などの取り扱い
私傷病の休職期間についてYouTubeで配信しています。
私傷病休職期間を設けようと考えていますが、休職期間をあまり長く設定するのは避けたいです。そこで、休職期間を2週間にして、その2週間で回復しない場合には、退職になるよう設計しようと考えていますが、問題ないでしょうか?といった質問例を設けました。
動画では、この質問例についてに回答し、その理由を解説しています。

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
労働基準法や労働契約法では、休職に関する規定がないため、休職期間についての規定もありません。そのため、休職期間は会社側が独自に定めることができます。
この記事では、どのような場合に休職を認めると良いのか、休職させる期間はどの程度か、休職期間が満了した場合の対応等について解説します。
休職期間とは
休職期間とは、従業員が病気やケガなどで働けなくなったときに、休職制度に基づき、労働契約を継続したまま仕事を休ませる期間のことです。休職制度は法律で義務づけられたものではないため、休職期間にも特別な上限はなく、企業ごとに自由に設定することができます。
休職期間を定めることが多い休職の理由として、以下があげられます。
- 傷病休職
- 事故欠勤休職
- 起訴休職
- 出向休職
- 組合専従休職
- その他(公職就任、海外留学など)
なお、休職と似た言葉に「欠勤」がありますが、両者には違いがあります。欠勤は単に仕事を休んでいる状態を指すのに対し、休職は会社の制度として認められ、一定期間働く義務が免除されている状態をいいます。
休職制度について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
休職期間の平均・目安【種類別一覧】
休職期間は、一般的には3ヶ月~3年程度です。ただし、休職期間を最長でも2年までとしている会社が多いようです。
休職が認められる期間は、大企業の方が中小企業よりも長い傾向があります。
| 休職の種類 | 休職期間の目安 |
|---|---|
| 傷病休職 | ●勤続年数に応じて設定することが多い 例) 1年以上5年未満であれば3ヶ月 5年以上10年未満であれば6ヶ月 10年以上であれば1年 |
| 事故欠勤休職 | ●傷病休職と同じ そもそも私傷病休職と分けていないか、それに準じる場合として扱われる場合が多い |
| 起訴休職 | ●個別の事情に応じて決定 期間が不透明な場合が多いため、就業規則への定め方としては「会社が必要と認めた期間」等 |
| 出向休職 | 出向期間と同じ |
| 組合専従休職 | 専従期間と同じ |
| その他(公職就任、海外留学等) | ●個別の事情に応じて決定 就業規則への定め方としては「会社が必要と認めた期間」等 |
うつ病などメンタル不調の休職期間
うつ病等のメンタルヘルス不調により休職する従業員は増加傾向にあり、症状が重くなるほど休職期間が延びる傾向があります。
うつ病の症状の重さと休職期間の長さの目安は、以下のとおりです。
| うつ病の症状の重さ | 休職期間の長さの目安 |
|---|---|
| 軽度 | 1ヶ月程度 |
| 中等度 | 3~6ヶ月程度 |
| 重度 | 1年以上 |
休職期間の決め方・判断基準
休職期間はあらかじめ一律に決められるものではありません。従業員ごとの事情に応じて総合的に判断し、適切な期間を設定することが重要です。
主な判断要素として、次のようなものがあげられます。
- 医師の診断書
- 休職者の勤続年数
- 傷病手当金の支給期間
医師の診断書
休職期間を判断するうえで最も重要な資料は、医師の診断書です。診断書をもとに、「仕事ができる状態かどうか」や「どのくらい治療に時間がかかるのか」といった点を把握し、適切な休職期間を決定します。
治療を続けるうちに、医師がさらに休養が必要と判断することがあります。このような場合には、就業規則で定めた休職期間の上限に達するまで、休職を延長するのが一般的です。
なお、診断書の内容があいまいな場合には、そのまま判断せず、主治医に追加の診断書や詳細な説明を求めることが必要です。また、主治医の意見は治療を優先した内容になりやすいため、就労の可否を判断するときは、産業医の意見も踏まえて総合的に判断することが望ましいといえます。
休職者の勤続年数
休職期間を決定するときには、勤続年数などにかかわらず一律で決めることもできますが、実際には勤続年数を考慮するケースが多いです。2024年度の調査によれば、60.3%の企業が勤続年数ごとに休職期間を設定しているというデータが出ています(労務行政研究所 2024年5月 労政時報4077号「私傷病欠勤・休職制度の最新実態」)。
このような背景には、私傷病による休職が、解雇を猶予する制度であるという考え方があります。特に長く勤務してきた従業員については、企業への貢献度も高いことから、できるだけ回復の機会を確保し、安易に雇用を失わせない配慮が必要です。そのため、勤続年数が長いほど休職期間を手厚く設定する運用が、一般的に採用されています。
傷病手当金の支給期間
傷病手当金は通算して1年6ヶ月になる期間だけ受給することができるため、休職期間もその範囲に定める場合が多いです。
休職期間は、会社からの給与について無給とされることが多いため、健康保険による傷病手当金を受け取ることにより、日々の生活や社会保険料の支払い等についての不安を軽減することができるでしょう。
どのような場合に、傷病手当金を受け取れるのか等については、こちらをご覧ください。
休職期間の通算の考え方
休職期間を通算するためには、就業規則に“同一ないし類似の私傷病による休職期間”が連続した場合には、それらの期間を“通算できる”ことを定めておく必要があります。
例えば、メンタルヘルスが悪化したことによる就労不能などは、一度復職した後に再発するなど断続的に生じることが多く、その病名が同一でないケースもあります。
この場合、就業規則に定めがなければ、連続した複数の休職期間を通算することができず、リセットされることになります。
何度も休職を繰り返しながら休職期間が満了しなければ、いつまで経っても休職している従業員を抱え続け、復職に向けて備え続けなければならないこととなってしまいます。
なお、通算する休職期間が、あまりに間隔が空いてしまうと、“同一ないし類似の私傷病による”ものであるかに疑義が生じてしまうため、“復職後3ヶ月以内”に生じたものに限定する等の工夫は必要だと考えられます。
休職期間中の給料・社会保険料・有給等の取り扱い
休職期間中は、給与や社会保険料などの取扱いが通常時とは異なるため、あらかじめ内容を確認しておくことが大切です。主な確認項目として、以下があげられます。
- 給料
- 賞与・ボーナス
- 社会保険料
- 有給休暇
- 退職金
- 税金
休職期間中の社内規定については、以下の記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
給料
会社には、休職期間中である従業員の給料の支払い義務はありません。そのため、たとえ傷病手当金等を受給したとしても、休職期間が長すぎると従業員の経済的リスクは高くなってしまいます。
休職できる期間に制限を設けることは、従業員のためでもあることを本人に説明することが望ましいでしょう。
また、休職中の給料については、忘れずに就業規則に明記しましょう。休職期間が長引いたときに、従業員から思いもよらない請求を受けることのないように、丁寧な説明を心がけるようにしてください。
賞与・ボーナス
休職期間中の賞与・ボーナスは、休まず働いている従業員との公平性を保つため、基本的に支給されないのが一般的です。もっとも、実際に支給されるかどうかは、就業規則や賃金規程で定められた評価期間や算定基準によって判断されます。
例えば、評価期間の一部のみ休職していたときは、働いていた期間の実績が評価され、一部支給される可能性があります。一方、評価期間の大半を休職していた場合には、勤務実績がほとんどないため、支給されないケースが多いです。
賞与の査定方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
社会保険料
休職中であっても、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料は免除されず、会社と従業員の双方が引き続き負担する必要があります。一方、雇用保険料や労災保険料は給与額をもとに算定されるため、無給であれば発生しません。
通常、社会保険料は給与から天引きされますが、休職中に給与を支払わない場合には、別の方法で対応しなければなりません。会社がいったん立て替えて復職後に精算する方法や、従業員が毎月振り込む方法、傷病手当金を会社が受け取りそこから差し引く方法などがあげられます。
どの方法を採るかは、あらかじめ就業規則で定めておくことが大切です。
有給休暇
有給休暇の付与日数を算定するときには、基本的に休職期間を除外して計算します。そのため、出勤するべき日数にも出勤した日数にも加算しません。
ただし、労災による休職期間については、出勤するべき日数と出勤した日数に加算して計算します。
年次有給休暇を付与するときに出勤率を算定する方法については、以下の記事で解説しておりますのでご確認ください。
退職金
退職金を算定する際も、休職期間を除外して算出する規定を設けている会社が多いです。
一般的に、勤続年数が長い従業員について退職金を増額する規定を設けている会社が多いため、休職期間を勤続年数から除外されると退職金の額は下がることになります。
退職金の算定については、以下の記事をご覧ください。
税金
給与から発生する主な税金として、所得税と住民税があげられます。
所得税は毎月の給与から源泉徴収されるため、休職中で無給である場合には発生しません。
一方で、住民税は前年の収入をもとに課税されるため、休職していても納付義務がなくなるわけではありません。たとえ無給の状態であっても、住民税を支払う必要があります。
給与からの天引きができない場合は、自治体から送付される納付書を使って、本人が直接支払う方法に切り替わります。休職に入る前の段階で、住民税の支払い方法や納付スケジュールを従業員にしっかり説明しておくことが重要です。
休職期間が満了した従業員への対応
休職期間が満了した従業員については、次のような対応が必要となります。
- 復職への支援
- 休職期間の延長
- 自然退職の検討
- 解雇の検討
なお、休職した従業員の退職や復職については、こちらの記事でも詳しく解説しているので併せてご覧ください。
復職の支援
休職していた従業員が復職するためには、すでに体調が回復しており、元の職場に戻ることや、他の職場での新たな仕事に適応できることが条件となります。
復職の判断は難しく、従業員本人との面談を行い、主治医の診断書を確認する必要があります。可能であれば、主治医との面談や従業員の家族との面談等も検討すると良いでしょう。
さらに、職場復帰の直後は心身への負担が大きいことから、勤務時間や作業内容の調整、リハビリ出勤などの支援を検討しましょう。
復職できるかどうかの判断基準や、リハビリ出勤制度について詳しく知りたい方は、以下の各ページをご覧ください。
休職期間の延長
私傷病による休職をしている従業員から、療養に想定よりも時間が長くかかることを理由として、休職期間の延長を申し入れられることがあります。
このような場合、就業規則に延長に関する定めがあれば、そのルールに従って判断するのが基本です。一般的には、本人の回復状況、主治医・産業医の意見などを踏まえて、延長の可否や期間を検討します。
ただし、休職期間の延長を認めるのは、復職の見込みがある場合に限るのが望ましいといえます。「あと1~2ヶ月で復職できる見込みがある」といったように、具体的な回復の目安が診断書などで確認できる場合に限って、延長を認めるのが適切です。「もう少し経過を見たい」といった曖昧な理由で延長を認めると、休職の長期化や、周囲の社員の負担増につながる可能性があるため注意が必要です。
さらに、実際に休職期間を延長する場合には、延長が繰り返されることを防ぐため、期間の上限を設定しておくことも欠かせません。
休職期間を延長する際の注意点
休職期間を延長するときには、後でトラブルが生じることを防ぐために、次のような事項を記載した文書を作成して残すようにしましょう。
- 休職期間を延長するに至った詳細な経緯
- 休職期間の延長期間
- 復職を認める条件
- 延長期間満了後、復職できなかった場合の対応
- 延長期間中の給料の有無
自然退職の検討
休職期間が満了しても復職できない従業員については、就業規則の定めに従い、自然退職として扱うことができます。
このとき、従業員は基本的に自己都合退職したことになります。ただし、業務内容を限定しない雇用契約の場合は、復職のために配置転換等が可能か検討し、可能であれば(従業員の申し出も踏まえたうえで)、自然退職として扱う前に、現に配置転換等を実施する必要があります。
従業員が自然退職することになった場合には、すぐに雇用保険の手続きを行いましょう。雇用保険の手続きが遅れてしまうと、従業員が失業給付を受け取るのが遅れてしまうため、不満を募らせて退職トラブルのきっかけになってしまうおそれがあります。
解雇の検討
休職期間が満了しても復職できない場合は、就業規則の定めにより解雇することもできる場合があります。
ただし、解雇が認められるのは、一定の条件を満たす場合に限られます。具体的には、医師の診断などから復職が困難であると客観的に判断できることや、配置転換などを含め、会社が雇用継続のための努力を十分に尽くしてきたこと等が求められます。
休職の原因がハラスメントや長時間労働など社内環境にある場合には、不当解雇と判断されるリスクがあるため、事前の確認も欠かせません。これらの条件を満たしてはじめて、勤務の継続が困難であることを理由とした普通解雇が認められる可能性があります。
また、解雇時は30日前までに予告する義務があり、日数が不足する場合は解雇予告手当の支払いが必要です。さらに、業務上の傷病による休職では、休職中と復職後30日間は基本的に解雇が制限されるため注意しましょう。
正当な解雇事由について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
休職期間に関する企業の注意点
就業規則における休職期間の規定
休職制度を適切に運用するためには、就業規則に休職期間に関するルールを明確に定めておくことが大切です。こうした定めがないまま運用すると、会社と従業員との間で認識のズレが生じ、思わぬトラブルにつながるおそれがあります。
就業規則には、主に次のような事項を定めておきましょう。
- どの程度の期間について休職させるかの判断基準
- 休職期間の延長を認めるか
- 休職期間中の過ごし方
- 休職期間中の給与の有無
- 休職期間中の社会保険料の支払い
- 傷病手当金の受給方法
- 復職の判断方法
- 復帰後の待遇
- 復職後直ちに再休職する場合の休職期間の取り扱い
- 休職期間が満了した場合の取り扱い
これらの内容は、休職に入る前の段階で従業員にしっかり説明しておくことが重要です。
就業規則の作成方法について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
休職期間中の過ごし方とフォロー
休職期間中は、従業員が治療に専念できるよう、一定の行動ルールを設けることは可能です。
ただし、うつ病などの場合は、旅行や趣味といった活動が回復に役立つこともあるため、遊んでいるという理由だけで懲戒を行うのは難しいと考えられます。遠方への移動時は事前に報告してもらうなど、無理のない範囲でルールを設けることが重要です。
また、休職中の従業員とは月に1回程度を目安に、メールなどで連絡を取り合うことも大切です。体調や生活の様子を確認することで信頼関係を保ち、円滑な復職につなげることができます。
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この記事の監修

- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、企業法務担当執行役員を務め、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある
