従業員の休職に要する期間とは?就業規則に定める際の留意点

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員
休職制度とは、従業員を労務に従事させることが不能または不適切な場合に、その従業員との労働契約を維持しながら、一定期間労働を免除または禁止する措置・制度をいいます。
休職制度は、私傷病によるものや出向によるものまで、様々な理由により活用されるものです。
これから、それぞれの場面において、どのような要件により、どれくらいの期間の休職を設定すべきか等を解説していきます。
目次
休職期間に関する定めと労働契約時の明示について
休職制度は、様々な場面において活用されるものであるため、各場面に応じたルール作りが必要です。
特に、会社から従業員を一方的に休職させる休職命令を行うには、就業規則における定めをおいておく必要があります。
休職と就業規則への規定についての詳細は、こちらをご覧ください。
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休職期間の一般的な設定日数
休職の種類 | 休職期間の目安 |
---|---|
傷病休職 | 勤続年数に応じて設定することが多い例) 1年以上5年未満であれば3ヶ月 5年以上10年未満であれば6ヶ月 10年以上であれば1年 |
事故欠勤休職 | 傷病休職と同等 そもそも私傷病休職と分けていないか、それに準じる場合として扱われる場合が多い |
起訴休職 | ケースバイケース 期間が不透明な場合が多いため、就業規則への定め方としては「会社が必要と認めた期間」等 |
出向休職 | 出向期間と同じ |
組合専従休職 | 専従期間と同じ |
その他(公職就任、海外留学等) | ケースバイケース 就業規則への定め方としては「会社が必要と認めた期間」等 |
休職期間が長過ぎることのリスク
休職制度は、使用者の立場から見た場合には、解雇猶予措置としても位置付けることができます。
私傷病による休職等については、休職期間が満了すれば、就業規則の定めにより当然に退職させることを定めておくことが一般的です。
一方で、私傷病による就労不能な従業員を会社が解雇したいと考えた際、休職制度がある場合には、まずは、解雇の前に休職を実施しなければ、解雇が有効とならないという考え方が支配的です。
裏を返せば、休職制度を設けると、使用者自らが定めた休職期間が満了するまで解雇できない事態が生じることがあるということです。
そのことを想定すると、休職期間を不用意に長期化させすぎることは、解雇したい従業員を解雇できない期間を長期化させることにもつながるため、注意が必要です。
休職期間中の取り扱いについて
休職期間中の賃金は、無給と定めることが一般的です。出向期間中などは、出向先との協議で定めることもあります。
その他の取り扱いについては、こちらをご覧ください。
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休職期間を決定する際の判断基準
医師の診断書
私傷病による休職等を命じる場合には、一般的に“就労が不能であること”を確認し、“どの程度の休職期間を設定すべきか”ということを判断する必要があります。
求職の原因となる傷病や必要な療養期間を確認するには、医師の診断書を確認することが最も適切でしょう。
休職者の勤続年数
特に、解雇猶予措置として行われる私傷病による休職については、休職者のこれまでの会社への貢献を加味し、その猶予期間を延長するという趣旨で、勤続年数が長い従業員については、その休職期間が長く設定されることが一般的です。
このように、基本的には、休職期間を決定する際において、休職者の勤続年数を考慮することが多いといえます。
傷病手当金の支給期間
休職期間は、会社からの賃金について無給とされることが多いですが、私傷病による休業中、従業員は、健康保険による傷病手当金を受け取ることができる場合があります。
どのような場合に、傷病手当金を受け取れるのかについてや、その支給期間については、こちらをご覧ください。
休職期間の通算の可否について
就業規則に定めがない限り、連続した複数の休職期間を通算することは、通常できません。
しかしながら、メンタルヘルスが悪化したことによる就労不能などは、一度復職した後に再発するなど、断続的に生じることが多く、その病名も、かならずしも一定のものではありません。
そうすると、何度も休職を繰り返しながら、休職期間が満了することがなければ、いつまで経っても休職し続ける従業員を抱え続け、復職に向けて備え続けることとなってしまいます。
したがって、就業規則には、“同一ないし類似の私傷病による休職期間”が連続した場合には、それらの期間を“通算できる”ことを定めておく必要があります。
なお、通算する休職期間が、あまりに間隔が空いてしまうと、“同一ないし類似の私傷病による”ものであるかに疑義が生じますので、基準を明確にするためにも、例えば“復職後3ヶ月以内”に生じたものに限定する等の工夫は必要なものと考えられます。
起算日の考え方
休職期間は、休職命令を発した日を起算日とします。
私傷病による休職については、欠勤日が開始された日を、休職期間の起算日と考えたくなるところですが、休職制度は、「従業員を労務に従事させることが不能または不適切な場合に、その従業員との労働契約を維持しながら、一定期間労働を免除または禁止する措置・制度」であることからすると、労働義務を免除した日から起算すべきものです。制度の趣旨を理解いただくことで、元々労働義務があり、それを欠勤した日はあくまでも欠勤日であって、休職期間に含めるべきではないということがお分かりいただけると思います。
休職期間の起算日が争点となった裁判例
ここで、休職期間の起算日をいつにするかについて争われた裁判例(京都地裁平成28年2月12日判決)を紹介します。
この裁判で、被告となった会社の就業規則において、「業務外の傷病により引き続き1ヶ月を超えて欠勤したとき」に休職命令をすることができると定められていました。また、「休職期間満了後、復職ができないとき」には、自然退職となる旨についても、あわせて定められていました。
しかしながら、当該事案において、被告会社は、「事故日から6ヶ月間」の休職を命じてしまいました。そのため、裁判所は、被告会社のかかる休職命令を、「本件事故当日からの休職を命じたものとして、就業規則上の要件を欠く休職命令」である等として、その休職命令については無効であると判断しました。
この裁判所の判断により、休職期間が満了したとして退職扱いされていた従業員の退職についても、同様に無効であると判示されました。
また、この裁判例においては、「休職期間6ヶ月の起算日は,1ヶ月を超えた欠勤後に休職命令がされた日である」と判断されています。したがって、やはり、休職命令があった時を休職期間の起算日とすると判断しています。
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休職期間は勤続年数に含まれるのか?
一般的に、休職期間は、現実に労務提供をしていない期間が継続することから、勤続年数に算定されないと定められることが多いものです。
もっとも、休職制度そのものが、法律により規制されているものではないため、休職期間を通算して勤続年数を算定することも可能です。
勤続年数への通算は、退職金算定との関係で、非常に重要なポイントとなります。
退職金の算定については、こちらをご覧ください。
有給休暇の付与日数を計算する場合
年次有給休暇の付与日数は、その多くが、勤続年数に応じて付与されます。
会社が付与すべき年次有給休暇の日数を算定する際に、当該従業員に休職期間があった際に、どのように対応するか問題となる場合があります。
これについては、年次有給休暇の付与に関する詳細をご覧ください。
休職期間が満了した従業員の対応
多くの就業規則においては、私傷病等による休職期間が満了した際、当該従業員は当然に退職するといった定めが置かれています。
では、実際に休職期間が満了した従業員への対応が問題となる場合があります。
詳細はこちらをご覧ください。
休職者から期間延長を求められた場合
私傷病による休職をしている従業員から、療養に時間が想定よりも長くかかりそうであることを理由として、休職期間の延長を申し入れられることがあります。
休職期間については、基本的に法律上の規制が及ぶものではないため、会社として、当該従業員に復職してもらうことを望む場合には、当該従業員と合意して、できる限り復職が実現できるように休職期間を延長することもできると考えられます。
しかしながら、休職期間の延長について、就業規則に明確な定めがない場合には、不用意な延長は控えるべきものと考えられます。
なぜなら、他の復職が見込めない従業員が休職しているケースにおいて、当該従業員が休職延長を求めてきた際に、その延長を承諾しなかった場合、延長を認めた従業員との合理的な違いが説明できなれば、解雇に類するものとして休職期間満了による退職の効力を争われる原因となりかねません。
休職期間の延長については、その判断は慎重にする必要があるものであるほか、就業規則に明確な根拠を記載し、延長の基準は客観的かつ合理的な内容にしておくべきものといえます。
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この記事の監修
- 弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある