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退職及び解雇

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

退職と解雇、どちらも会社を辞めるということになりますが、法律的には意味合いが異なります。労働者が退職するとき、労働者を解雇するとき、どう対処するべきかきちんと理解しておく必要があります。間違った手続や不当に解雇等をしてしまうと、その労働者の人生を狂わせてしまうおそれや、会社の不利益につながり兼ねません。そうならないためにも、本記事では、退職・解雇にかかわる法律上の定めについて解説していきます。

退職・解雇による労働契約の終了について

労働契約の終了には、大きく2つに分かれます。それが、「退職」(辞職ということもあります。)と「解雇」です。

「退職」とは、労働者からの申し出による労働契約の終了を指し、労働者の申し出に応じて使用者との合意で退職する場合も含むことがあります。労働者の立場からは、退職にあたり、正社員等定年まで働くことが予定されているとき(契約期間が定められていないとき)は、2週間前までに退職の申し出をすれば法律上いつでも会社を辞めることができます。反対に、契約期間の定めがある場合(有期労働契約、有期契約社員等と呼ばれる場合もあります。)は、やむを得ない事情がない限り、契約期間の満了前に退職することはできません。

一方、「解雇」とは、使用者(会社側)からの申し出による一方的な労働契約の終了をいい、労働者の承諾は要件に含まれません。しかし、解雇はいつでも行えるものではなく、客観的かつ合理的な理由と社会通念上の相当性が必要となります(労働契約法16条(以下、労契法とします。))。

退職・解雇については、さらに細分化できるため、以下で解説していきます。

労働契約法
(解雇)第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

退職の種類

退職は、「自主退職」「合意退職」「自然退職」の3つに区別することができます。以下で、それぞれ解説します。

「自主退職」…労働者の意思のみによる退職のことをいい、つまり、労働者自身に退職の理由がある場合です。退職する方の多くはこれに該当するでしょう。具体的には、転職希望による退職や、結婚や妊娠によっての退職等が挙げられます。

「合意退職」…労働者と使用者の意思表示の合致によって労働契約が終了することをいいます。具体的には、希望退職募集制度による早期退職や、退職勧奨による退職が挙げられます。労働者側の都合によるケースもあれば、使用者都合に近いものもあります。

「自然退職」…ある条件に該当したときに、労働者または使用者に退職の意思の有無にかかわらず、労働契約を終了することをいいます。ある条件には、契約期間の満了、定年、休職期間の満了、本人の死亡等が含まれます。

労働基準法における退職成立事由

労働基準法では、会社に対して、就業規則に必ず記載しなければならない事項を定めています。それを「絶対的必要記載事項」といいます。この「絶対的必要記載事項」には、労働時間、賃金、退職(解雇事由を含む)に関する内容等、労働条件として特に重要な内容が含まれています。就業規則において、退職の要件を有効に成立させるためには、理論上当然に労働契約が終了すると判断できるような場合を除き、絶対的必要記載事項として、これを明記しておくことが原則といえます(労働基準法89条(以下、労基法とします。))。

具体的な退職成立事由についての詳細は、下記のページをご覧ください。

退職事由について

労働基準法
(作成及び届出の義務)第89条
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
3 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

民法における退職願(退職届)の提出時期

民法627条によると、退職する2週間前に申告すれば退職可能となっています。そのため、退職届の提出時期は、退職を希望する日の2週間前となります。

かつては、給与形態や雇用形態によって2週間前の申告では退職できないケースもありましたが、民法の改正に伴い、定年まで働くことを前提とした正社員の場合は、2週間前の申告による退職に統一されました。旧民法の規定が適用されるのは、令和2年3月31日までに締結された労働契約であり、令和2年4月1日以降に締結された場合には新民法が適用されることになります。

退職者の義務に関する定め

退職が決まった労働者が、有給消化等で引継ぎもせず退職してしまうことが多々あります。個人で行っていた業務内容や顧客の情報等を共有しないために、会社にとって不利益につながるおそれがあります。しかしながら、たとえ退職する日が決まったとしても、労働者には、退職日まで誠実に労務を提供する義務があります。会社にとって不利益が生じるような事態を防止するために会社としてできることは、就業規則に退職前の業務引継義務を明示したうえで、懲戒処分の根拠となる規程を設けて対策する方法が考えられます。

退職者の引継ぎに関して定める義務については、下記のページをご参照ください。

退職者等の義務

定年制度

定年制度とは、定年制度を導入している会社の労働者が、あらかじめ定められた年齢に達したときに労働契約が終了する制度のことをいいます。

かつては60歳での定年退職が一般的でしたが、高齢化が進んだ関係で、定年年齢を定める場合には、60歳以上とすることが義務付けられました(高年齢者雇用安定法8条)。さらに、定年年齢を65歳未満としている事業主は高年齢者雇用確保措置の実施を義務付けています。高年齢者雇用確保措置とは、①65歳まで定年年齢を引き上げる、➁65歳までの継続雇用制度を導入する、③定年制を廃止する、のいずれかを実施する必要があります。

高年齢者雇用についての詳細は、下記のページをご覧ください。

高齢者雇用について

高年齢者雇用安定法
(定年を定める場合の年齢)第8条
事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りではない。

解雇に関する事項

解雇は主に、「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3つに分けることができます。これらについて、就業規則において区別して定めておく方が、それぞれの分類に応じた適切な対応がしやすくなります。それぞれについて、簡単に区別すると以下のようになります。

「普通解雇」…解雇に相当する事由があるとき、使用者が一方的に労働契約を解約することをいいます。
労働者の債務不履行がある場合等が主たる事由として挙げられます。

「懲戒解雇」…労働者が会社の秩序を乱す行為を行ったときや労働者による労務提供が期待できない状況において、使用者が一方的に労働契約を解約することをいいます。懲戒処分の中でも最も重い処分とされています。

「整理解雇」…経営上の理由による人員削減のために行う解雇のことをいいます。使用者側の事情による解雇となるため、裁判例においては、➀人員削減の必要性、➁解雇回避の努力、③人選の合理性、④解雇手続の妥当性等を踏まえて、整理解雇の有効性について、厳しく判断されています。

解雇権濫用法理について

使用者は、その申し出によって、労働者の労働契約を一方的に終了させることができ、これが解雇と呼ばれています。解雇には、客観的かつ合理的な理由と処分の程度について社会的な相当性があるという2つの要件を満たさなければなりません。これらの要件が認められない場合は、解雇権を濫用したものとして、解雇が無効とされます。この規定は、かつて裁判例が形成してきた「解雇権濫用法理」を明文化したものといわれています(労契法16条)。この条文ができるまでには、過去の労働者たちが不当で一方的な解雇に対して闘った裁判例の積み重ねの結果であり、裁判所においても非常に重要な法理として位置づけられています。

解雇が有効とされる事由

解雇はいつ行っても有効になるものではありません。使用者は労働者を解雇する際、正当な事由がないと不当解雇となってしまうため、解雇するに足りるふさわしい事由が必要となります。不当解雇に対しては、労働者が労働審判や裁判(訴訟)を申し立て、紛争となるほか、不適切な解雇を行った使用者は、多額の金銭を支払って解決せざるを得なくなる等のリスクを負うおそれがあります。不当解雇とならないためにも、解雇が有効になる要件(客観的かつ合理的な事由と社会的相当性)を満たしていることをきちんと確認する必要があります。

解雇予告・解雇予告手当について

労働者を解雇する場合、使用者(会社側)には、少なくとも30日前にその予告をする、解雇予告義務があります(労基法20条)。予告期間が30日未満である場合、満たなかった日数分の平均賃金の支払いが必要になります。これを「解雇予告手当」といいます。また、解雇の予告をしない場合は、解雇と同時に30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。ただし、解雇予告の規定が適用されない労働者もいるので、注意が必要です。

労働基準法
(解雇の予告)第20条
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りではない。

退職証明書・解雇理由証明書の交付義務

労働者が退職する際は「退職証明書」、労働者を解雇する際は「解雇理由証明書」の交付が求められることがあります。どちらも労働者からの請求を経て、交付という流れになります。

「退職証明書」は、労働者が退職した後のみの請求になります。対して、「解雇理由証明書」は解雇予告をした時点で請求されることが多いため、解雇を伝える前にあらかじめ準備しておくことが望ましいでしょう。どちらの証明書も、使用者は請求された場合、遅滞なく交付しなければなりません(労基法22条)。そして、それぞれの証明書に記載する内容は異なります。

労働基準法
(退職時等の証明)第22条
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2 労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

解雇・退職者に定める義務について

解雇した、退職した者に対して、退職後も負担させることが望ましい義務として、競業避止義務と秘密保持義務が挙げられます。会社としては、労働者の退職後の行動によって、会社の不利益になることは避けたいところです。そのため、あらかじめ退職者にこれらの義務を負担する旨就業規則や誓約書等に定めることで、会社に対する不利益な行動を一定程度制限することが期待できます。

退職や解雇の法的トラブルを防ぐためにも、労務問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします

労働者が退職するとき、労働者を解雇するときは様々な法律上の規制があります。また、労働者の契約の種類やその解雇原因に応じて、準備すべき適切な手続も様々といえるでしょう。労務紛争が顕在化するのは、ほとんどが退職や解雇の後です。退職や解雇の際に、紛争の火種を消しておくことは、非常に重要といえるでしょう。

したがって、後々、労働者とトラブルにならないためには、退職時の協議や解雇に向けた手続について細心の注意をもって行うことが重要になります。手続の際に、法律的にどうなのか、あるいはトラブルになり労働者から訴えられそう、といった場合は弁護士にご相談ください。弁護士法人ALGでは、分野別の案件を取り扱う事業部制になっており、企業法務事業部は使用者側の立場からの労働分野にも精通しています。労働契約の終了に関して不明点やトラブルがあった際は、お気軽にお問い合わせください。

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