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外国人雇用の適切な人事管理・教育訓練・福利厚生

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

事業主が外国人を雇用する際に留意すべきことは多岐に渡りますが、厚生労働省の告示にその指針がまとめられています。指針には、外国人労働者を採用・募集する段階から、労働契約の締結、採用後の対応、就業規則の周知等の、一連の手続が含まれています。

本記事では、この指針の内容に沿って、外国人を雇用する際の適切な人事管理、教育訓練、福利厚生などについて解説します。

外国人雇用における事業主の努力義務

外国人労働者の人事管理や福利厚生を適切に運用するため、労働施策総合推進法に基づいて、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(以下:指針)が定められています。

募集・採用時や、労働条件における差別の禁止、労働関連法令の適用、解雇の予防など、外国人労働者を雇用する事業主に向けて、講じるべきさまざまな措置が挙げられています。

適切な人事管理

指針 第四 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずべき必要な措置
五 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等

1適切な人事管理
事業主は、その雇用する外国人労働者が円滑に職場に適応できるよう、社内規程その他文書の多言語化等、職場における円滑なコミュニケーションの前提となる環境の整備に努めること。

また、当該職場での評価や待遇に納得しつつ就労することができるよう、職場で求められる資質、能力等の社員像の明確化、評価・賃金決定、配置等の人事管理に関する運用の透明性・公正性の確保等、多様な人材が適切な待遇の下で能力発揮しやすい環境の整備に努めること。

その際、公共職業安定所の行う雇用管理に係る助言・指導を踏まえ、適切に対応すること。

外国人労働者に関する円滑な人事管理のため、指針では上記のように定められています。

日本人労働者ならば容易に理解できることであっても、外国人労働者にとっては、言語や文化の面でそうはいかない場合もあります。慣習や言語の違い、コミュニケーション不足等で外国人労働者が不利益を被らないよう、事業主には人事管理上の措置を講ずる努力が求められています。

生活支援等

指針 第四 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずべき必要な措置
五 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等

2 生活支援
事業主は、外国人労働者の日本社会への対応の円滑化を図るため、外国人労働者に対して日本語教育及び日本の生活習慣、文化、風習、雇用慣行等について理解を深めるための支援を行うとともに、外国人労働者が地域社会における行事や活動に参加する機会を設けるように努めること。

また、事業主は、居住地周辺の行政機関、医療機関、金融機関等に関する各種情報の提供や同行等、外国人労働者が、居住地域において安心して日常生活又は社会生活を営むために必要な支援を行うよう努めること。

外国人労働者に対する生活支援に関しては、上記のように定められています。

言語だけでなく、生活習慣や雇用慣行の違いから、外国人労働者は思わぬトラブルに巻き込まれてしまうおそれがあります。例えばごみの出し方といった生活上のことから、社会保険などの日本における制度にいたるまで、事業主には、外国人労働者が快適に生活できるよう、さまざまな指導、助言、相談などを積極的に行うことが求められています。

苦情・相談体制の整備

指針 第四 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずべき必要な措置
五 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等

3 苦情・相談体制の整備
事業主は、外国人労働者の苦情や相談を受け付ける窓口の設置等、体制を整備し、日本における生活上又は職業上の苦情・相談等に対応するよう努めるとともに、必要に応じ、地方公共団体が情報提供及び相談を行う一元的な窓口等、行政機関の設ける相談窓口についても教示するよう努めること。

外国人労働者からの苦情・相談に関しては、上記のように定められています。

日本における生活上の文化はもとより、職場でのルール、明文化されていない暗黙の了解なども、外国人労働者にとっては馴染みがなく、トラブルの元となってしまうおそれがあります。トラブルが起こる前に解決できるよう、事業主には苦情・相談を受け付ける窓口の設置をするなどして、対応に努めることが求められます。また、社内では解決できないなどの事情があれば、必要に応じて行政機関が設けている相談窓口を紹介することも求められます。

教育訓練の実施等

指針 第四 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずべき必要な措置
五 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等

4 教育訓練の実施等
事業主は、外国人労働者が、在留資格の範囲内でその能力を有効に発揮しつつ就労することが可能となるよう、教育訓練の実施その他必要な措置を講ずるように努めるとともに、母国語での導入研修の実施等働きやすい職場環境の整備に努めること。

外国人労働者への教育訓練や研修等の実施に関しては、上記のように定められています。

職業上の教育訓練や研修についても、外国人労働者にとって理解しやすくなるよう、事業主は配慮しなければなりません。必要に応じて、当該外国人労働者の母国語を用いた研修を取り入れることも考慮に入れるべきでしょう。

福利厚生施設

指針 第四 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずべき必要な措置
五 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等

5 福利厚生施設
事業主は、外国人労働者について適切な宿泊の施設を確保するように努めるとともに、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、外国人労働者にも十分な機会が保障されるように努めること。

外国人労働者にも、日本人労働者と同様の福利厚生を受ける権利があります。特に医療は重要な福利厚生の要素であり、日本の医療制度に詳しくない外国人労働者も多いので、事業主から進んで説明するようにしましょう。そのほか、福利厚生施設の利用などについても、外国人労働者が十分な利用の機会が得られるよう、事業主は心がけなければなりません。

帰国及び在留資格の変更等の援助

指針 第四 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずべき必要な措置
五 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等

6 帰国及び在留資格の変更等の援助
イ 事業主は、その雇用する外国人労働者の在留期間が満了し、在留資格の更新がなされない場合には、当該外国人労働者の雇用関係を終了し、帰国のための諸手続の相談その他必要な援助を行うよう努めること。

また、その雇用する外国人労働者が帰国する際、病気等やむを得ない理由により帰国に要する旅費を支弁できない場合には、当該旅費を負担するよう努めること。特に、特定技能の在留資格をもって在留する者については、出入国管理及び難民認定法第二条の五第一項に規定する特定技能雇用契約(以下「特定技能雇用契約」という。)の基準として、当該外国人労働者が特定技能雇用契約の終了後の帰国に要する旅費を負担することができないときは、当該旅費を負担するとともに、契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとされていることに留意すること。

また、技能実習生については、帰国事由が自己都合による場合も含め、監理団体(企業単独型技能実習の場合は事業主)が帰国に要する旅費を負担するとともに、契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとされていることに留意すること。

ロ 事業主は、外国人労働者が在留資格を変更しようとするとき又は在留期間の更新を受けようとするときは、その手続を行うに当たっての勤務時間の配慮その他必要な援助を行うように努めること。

ハ 事業主は、外国人労働者が一時帰国を希望する場合には、休暇の取得への配慮その他必要な援助を行うよう努めること。特に、特定技能の在留資格をもって在留する者については、特定技能雇用契約の基準として、当該外国人労働者が一時帰国を希望した場合には、必要な休暇を取得させることとされていることに留意すること。

外国人労働者が帰国しようとしたり、在留資格を変更しようとしたりする際のことに関しては、上記のように定められています。とりわけ脱退一時金制度などについては、事業主が配慮や助言をするべきでしょう。

また、帰国の際に病気などのやむを得ない理由で当該外国人労働者が旅費を工面できない場合、事業主はその旅費を負担するよう努める必要があります。

労働者派遣又は請負を行う事業主に係る留意事項

派遣元事業主の留意事項

指針 第四 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずべき必要な措置
七 労働者派遣又は請負を行う事業主に係る留意事項

1 労働者派遣
労働者派遣の形態で外国人労働者を就業させる事業主にあっては、当該外国人労働者が従事する業務の内容、就業の場所、当該外国人労働者を直接指揮命令する者に関する事項等、当該外国人労働者の派遣就業の具体的内容を当該外国人労働者に明示する、派遣先に対し派遣する外国人労働者の氏名、雇用保険及び社会保険の加入の有無を通知する等、労働者派遣法等の定めるところに従い、適正な事業運営を行うこと。また、派遣先は、労働者派遣事業の許可を受けていない者からは外国人労働者に係る労働者派遣を受けないこと。

指針には、派遣労働者として働く外国人労働者の派遣元事業主は、労働者派遣法を遵守し、適正な事業運営を行うことと定められています。
また、派遣先会社の事業主には、労働者派遣事業の許可を受けていない事業者からの外国人労働者派遣を受け入れないようにすることと定められています。

請負事業主の留意事項

指針 第四 七 2

請負
請負を行う事業主にあっては、請負契約の名目で実質的に労働者供給事業又は労働者派遣事業を行うことのないよう、職業安定法及び労働者派遣法を遵守すること。

具体的には、自ら雇用する外国人労働者の就業場所が注文主である他の事業主の事業所内である場合には、当該注文主が当該外国人労働者の使用者であるとの誤解を招くことがないよう、当該事業所内で業務の処理の進行管理を行うこと。また、その就業場所において適切に雇用管理がなされるよう、当該事業所内で、第六で選任する雇用労務責任者等に人事管理、生活支援等の職務を行わせること。

さらに、請負を行う事業主は、外国人労働者の希望により、労働契約の期間をできる限り長期のものとし、労働契約の期間中に業務に従事させることができない期間が生じた場合にも教育訓練を実施する等により労働契約を継続する等、安定的な雇用の確保に努めること

請負を行う事業主に対しては、上記のように定められています。具体的には、請負の就労先において、労働者に対する指揮命令権は請負会社が持つものであり、注文者が指揮命令権を持つようなことがないようにしなければなりません。

また、外国人労働者の就業場所が注文者の事業所である場合、その場所で雇用労務責任者等に人事管理、生活支援等を行わせること、さらに、労働契約の期間をできるだけ長いものとし、外国人労働者の雇用の安定に努めること等を請負事業主に対して定めています。

職業安定法や労働者派遣法などの法令の遵守はもちろん、請負事業主は、外国人労働者への適切な人事管理や生活支援がなされるよう留意しなければなりません。

雇用労務責任者の役割

事業主には、雇用管理の改善等に関する事項を管理するための、雇用労務責任者を選任することが求められます。雇用労務責任者は、外国人労働者の雇用保険や労災保険、健康保険などを管理する役割を担います。

外国人雇用における指針のその他の事項について

人事管理、教育訓練、福利厚生以外では、外国人労働者の募集及び採用の適正化、適正な労働条件の確保や安全性の確保、雇用保険、労災保険、健康保険及び厚生年金の適用に関しての事項などが定められています。

外国人雇用の概要に関しては、以下のページで解説しています。ぜひご一読ください。

外国人の雇用について

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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