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定年

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

労働者にとって、定年は人生において大きな節目になります。そのような労働者に対し、会社としてどのような手続や対応をとるべきなのでしょうか。

本記事では、定年制の概要及び、定年退職時について説明していきます。

定年制の概要

定年制とは、会社があらかじめ定めた年齢に労働者が達したときに、労働契約を自動的に終了させる制度です。多くの会社がこの定年制をとっており、定年年齢60歳が一般的でしたが、法律の改正に伴い、60歳以下を下回ることができなくなりました。また、就業規則にも定年に関する事項の記載が義務付けられており、退職する際にスムーズに手続が行えるように、定年年齢も定めておく必要があります。

退職についての詳細は、下記のページをご覧ください。

退職及び解雇

定年制の適法性

定年制は、定年退職制定年解雇制の2つに分類されます。

定年退職制とは、定年が到達したときに使用者の特別な意思表示がなくても、当然に労働契約を終了させることをいいます。例えば、就業規則に「定年は○○歳とし、定年に達した月の末日をもって退職とする。」との規定を定めておきます。

定年解雇制とは、定年が到達したのを解雇事由と捉え、労働契約終了のためには、解雇の意思表示が必要とされることをいいます。具体的には、定年解雇に関する就業規則内の解雇事由に、「○○歳の定年に達したとき」と記載すれば、定年解雇制を採用していることになります。

定年制は、一定の年齢に到達したときに、労働能力や適格性等の有無を問うことなく、労働契約を終了させてしまいます。そのため、定年制は労働者の権利を侵害するか否か、または、年齢差別と評価されて公序良俗違反となるか否か等に配慮しておく必要があります。

定年年齢の定め

定年制において定年年齢は、一定の年齢が定められており、60歳を下回ってはいけないとされています(高年齢者雇用安定法8条(以下、高年法とします。))。そのため、就業規則内の定年年齢を60歳以下と定めた場合、その定めは無効となります。

本記事で頻出する高年法とは、進行する高齢化に対応し、高年齢者が年金受給開始年齢までは意欲と能力に応じて働き続けられる環境を整備することを目的に施行された法律になります。

定年制の例外

定年年齢は60歳以上とすると法律上で定められていますが、省令にて例外が認められています(高年法8条)。例外で認められているのは、鉱業法に規定されている事業における坑内作業の業務であり、その業務に従事している労働者は、定年年齢が60歳未満でも認められています(高年法施行規則4条の2)。

高年齢者雇用安定法

(定年を定める場合の年齢)第8条

事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りではない。

高年齢者雇用安定法施行規則

(法第8条の義務)第4条の2

法第8条の厚生労働省令で定める業務は、鉱業法(昭和25年法律第289号)第4条に規定する事業における坑内作業の業務とする。

鉱業法

(鉱業)第4条

 この法律において「鉱業」とは、鉱物の試掘、採掘及びこれに附属する選鉱、製錬その他の事業をいう。

公務員の定年年齢

国家公務員は国家公務員法において、特別な定めがある場合を除いて、定年年齢を原則60歳と定めています。地方公務員においても、国の基準に基づいた各自治体の条例に定められることになりますが、国家公務員の定年に準じて60歳を定年年齢とすることが限度となります。

しかし、年金の支給開始年齢が60歳から65歳に徐々に引き上げられる関係で、2030年度には公務員の定年年齢も65歳に引き上げることが予定されています。

定年前の早期退職制度

労働者のなかには、定年に達する前に退職される方もいます。いわゆる早期退職といわれるものです。このように、自らの意思によって早期退職する人もいますし、会社の経営状況による人員整理や活性化を促す目的もあります。ちなみに、会社の経営状況を背景とする場合、早期退職者には、退職金を多めに支払ったり、通常よりも多い有給休暇を付与する等の、優待措置をとったりすることで、早期退職者を募る方法が一般的となっています。

そこで、会社として早期退職制度をとるメリット・デメリットはどのようなものでしょうか。

メリットとしては、人件費が削減できる、会社内の活性化、解雇することによる労働者との対立を回避できる等が挙げられるのに対して、デメリットとしては、優秀な人材が流出してしまう、経営危機と認識されてしまうおそれがある等が挙げられます。デメリットを減らすために、早期退職の趣旨を明確にアナウンスすることに加えて、早期退職による優待措置を行う条件として守秘義務の遵守等を定めておくことが大切になるでしょう。

定年退職となる日

定年制をとる場合、就業規則に具体的な定年年齢と定年退職日を定めておく必要があります。定年退職日を定めるにあたり、例えば、以下のような内容で解釈の余地を残さないように具体的に記載しなければなりません。

  1. 定年年齢に達した日
  2. 定年年齢に達した日を含む月の末日
  3. 定年年齢に達した日を含む賃金支払い計算期間の締め日
  4. 定年年齢に達した日を含む年度の末日

等と、いくつか挙げられます。

また、定年年齢において、「○○歳に達した日」は誕生日当日を指すのではなく、「○○歳の誕生日の前日」を指すことになります(年齢計算ニ関スル法律が初日を参入していることが原因です。)。

定年退職時の退職金の支給

会社によっては、退職金制度を導入しているところもあるのではないでしょうか。退職金制度を導入することは使用者の義務ではありませんが、退職金制度を導入している場合は、定年に達して退職する者に対して退職金の支払い義務が生じます。退職金として支給する金額または計算方法についても、明確に定めておく必要があります。

定年退職者の業務の引継ぎ

定年退職を予定している労働者の業務を、確実に引継ぎをしてもらうためには、どうするべきでしょうか。その対処法として、下記のページにて詳細に解説していますので、ご覧ください。

退職及び解雇 退職者等の義務

定年制と高齢者の雇用確保

高齢化が進み、定年年齢が60歳以上と定めている会社が多くなってきました。そのような状況を受け、65歳未満を上限とする定年制を導入している会社は、65歳まで安定した雇用を確保するための措置を講じることが義務付けられています(高年法9条)。

詳しくは高年齢者雇用について、下記のページをご覧ください。

高齢者雇用

高年齢者雇用安定法

(高年齢者雇用確保措置)第9条

定年(65歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

  1. 当該定年の引上げ
  2. 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
  3. 当該定年の定めの廃止

高齢者雇用状況報告書の提出義務

高年齢者を雇用している使用者は、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用に関する状況を、ハローワークを経由して、厚生労働大臣に報告する義務があります(高年法52条)。報告には、既定の報告書に必要事項を記載し、事業所所在地管轄のハローワークへ提出しなければなりません。この報告書は、今後の施策の検討に役立てるとともに、行政が各企業に対し、高年齢者の雇用確保のための措置等に対する助言、指導等に用いられます。

高年齢者雇用安定法

(雇用状況の報告)第52条

事業主は、毎年1回、厚生労働省令で定めるところにより、定年及び継続雇用制度の状況を厚生労働大臣に報告しなければならない。

定年による解雇が争点となった裁判例

ここでは、定年によって解雇された労働者が、会社に対して争った裁判例をご紹介します。

【最高裁 昭和43年12月25日大法廷判決、秋北バス事件】

<事件の概要>

当該会社の就業規則には、一般職種の労働者の定年解雇制が50歳と定められていましたが、主任以上の労働者に対してこの適用はありませんでした。ところが、会社はこの就業規則を変更し、主任以上の労働者に対する定年を55歳と定めました。この改正に基づき、使用者はすでに定年年齢に達している当該労働者に解雇の通告をしました。これに対して、当該労働者は、一方的に不利益な労働条件に変更した就業規則の改正は無効であると主張し、提訴した事例です。

<裁判所の判断>

裁判所としては、労働条件は本来、労働者と使用者が、対象の立場において決定すべきものであるが(労基法2条)、多数の労働者を使用する会社においては、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は経営主体で定める契約内容に従わざるを得ないのが実情とし、合理的な労働条件を定めているものである限り、法的規範性が認めることができると判断しました。

さらに、本件就業規則に記載された定年に関する条項は、一般職員との比較においても低いものではなく、定年に達したことによって自動的に退職する「定年退職」制ではなく、定年に達したことを理由に解雇する「定年解雇」制を定めていたものであり、労基法20条の適用(解雇予告)による保護も受けられること、再雇用の制度も用意されていることを指摘しました。

以上の事情を踏まえて、本件就業規則は、不合理なものとは言えず、当該会社が設けた規定は、信義則違反や権利濫用とは認めることができないとして、労働者は本件就業規則の適用を拒否することができないとしました。

労働基準法

(労働条件の決定)第2条

労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

(解雇の予告)第20条

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りではない。

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