人事・労務・労働問題を法律事務所へ相談するなら会社側・経営者側専門の弁護士法人ALGへ

企業における安全衛生管理体制

この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員弁護士家永 勲(東京弁護士会)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

会社における安全衛生管理体制は、労働者の健康を確保するためにも万全でなければいけません。そのためにも、法律に則った方法で体制を整えていく必要があります。会社の労働者全員での協力が必要となるため、周知し、協力を仰ぎましょう。

本記事では、安全衛生管理体制について、細かく分けて解説していきます。

企業における安全衛生管理体制の整備

安全衛生管理体制の整備は、労働災害を防ぎ、使用者の自主的な安全衛生活動を確保するために必要になります。また、こういった整備は、労働者全員の協力も必要とします。

安全衛生管理体制は、事業場の労働者数の増減等が生じた都度、整備する必要があります。細かいように感じるかと思いますが、そのような対応が労働災害や労働者の健康障害を防止することにつながっていきます。

安全衛生管理体制を担う各管理者の選任義務

労働安全衛生法では、事業場を一つの適用単位として、本社、工場、支店、事務所、営業所、店舗等 の事業場の業種、規模等に応じて、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医、安全衛生推進者又は衛生推進者の選任を義務付けています。

選任時期・届出

選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行い、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告する義務があります(労安衛則2条、4条1項1号、7条1項1号)。

安全衛生推進者及び衛生推進者の場合、同様に14日以内に選任する必要がありますが、労働基準監督署への届出は不要となります。労働基準監督署への報告義務はありませんが、選任された者の名前を見やすい場所に提示する等、労働者への周知を行いましょう(労安衛則12条の3、12条の4)。

総括安全衛生管理者

総括安全衛生管理者とは、一定の規模以上の事業場における、事業全体を実質的に統括管理する者をいいます。この総括安全衛生管理者を選任する場合、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任します。また、選任後は、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告しなければなりません(労安衛則2条)。なお、総括安全衛生管理者には安全管理者、衛生管理者等を指揮させ、労働者の危険や健康障害を防止するための措置等の業務を統括管理させることになっています(労安衛法10条)。

総括安全衛生管理者の選任が必要な事業場の条件に関しては、以下の表のとおりです。

業種 事業場の規模
(常時使用する労働者数)
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 100人以上
製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 300人以上
その他の業種 1,000人以上

総括安全衛生管理者の資格要件

総括安全衛生管理者に選任するには、当該事業場において、その事業の実施を実質的に統括管理する権限及び責任を有する者(工場長等)であることが要件となります。

総括安全衛生管理者の職務内容

総括安全衛生管理者に伴う職務内容は、以下のようになります。

  • ・安全管理者、衛生管理者等の指揮
  • ・労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること
  • ・労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること
  • ・健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
  • ・労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
  • ・その他労働災害を防止するために必要な業務
    • ・安全衛生に関する方針の表明に関すること
    • ・危険または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること
    • ・安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること

安全管理者

安全管理者は一定の業種及び規模の事業場ごとに選任し、その者に安全衛生業務のうち、安全に係る技術的事項を管理させることが定められています(労安衛法11条)。

安全管理者を選任しなければならない事業場としては、以下のとおりです。

業種 事業場の規模
(常時使用する労働者数)
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 50人以上

また、安全管理者のうち、少なくとも1人を専任としなければならない事業場は以下のとおりです。

業種 事業場の規模
(常時使用する労働者数)
建設業、有機化学工業製品製造業、石油製品製造業 300人
無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業 500人
紙・パルプ製造業、鋼鉄業、造船業 1,000人
上記以外の業種 2,000人

安全管理者の資格要件

安全管理者になるためには、ある一定の要件が必要となります。

厚生労働大臣の定める研修を修了した者のうち、①大学の理科系統の課程を卒業し、その後2年以上産業安全の実務を経験した、②高等学校等の理科系統の課程を卒業し、その後4年以上産業安全の実務を経験した、③その他厚生労働大臣が定める者(理科系統以外の大学を卒業後4年以上、同高等学校を卒業後6年以上産業安全の実務を経験した者、7年以上産業安全の実務を経験した者等)、④労働安全コンサルタントのいずれかに該当することが必要となります。

安全管理者の職務内容

安全管理者が行う主な職務としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ・建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置
  • ・安全措置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的な点検及び整備
  • ・作業の安全についての教育及び訓練
  • ・発生した災害原因の調査及び対策の検討
  • ・消防及び避難の訓練
  • ・作業主任者その他安全に関する補助者の監督
  • ・安全に関する資料の作成、収集及び重要事項の記録
  • ・その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における安全に関し、必要な措置

衛生管理者

衛生管理者は、常時50人以上の労働者を使用する全事業場に設置することが法的に義務付けられています。衛生管理者には安全衛生業務のうち、衛生に係る技術的事項を管理させることになっています。

また、衛生管理者の選任が必要となる事業場の規模については、以下のとおりになっています。

事業場の規模
(常時使用する労働者数)
衛生推進者の数
50人~200人 1人
201人~500人 2人
501人~1,000人 3人
1,001人~2,000人 4人
2,001人~3,000人 5人
3,001人以上 6人

衛生管理者の資格要件

誰でも衛生管理者に選任できるわけではなく、選任されるためには業種に応じた資格が必要となります。業種ごとの資格要件としては、以下のとおりになります。

業種 資格要件
農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 第一種衛生管理者免許もしくは衛生工学衛生管理者免許を有する者または医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなど
上記以外の業種 第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許もしくは衛生工学衛生管理者免許をもつ者または医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなど

衛生管理者の職務内容

衛生管理者は、健康に異常のある労働者を発見し、処置を行ったり、実際の作業環境の衛生上の調査を行ったり、労働衛生保護具や救急用具等の点検・整備等を行います。また、その他の職務としては、以下のような内容が挙げられます。

  • ・作業条件や施設等の衛生改善
  • ・労働者への衛生教育、健康相談、その他労働者の健康保持に必要な事項
  • ・労働者の負傷・疾病、それによる死亡・欠勤及び移動による統計の作成 等

衛生管理者は、少なくとも毎週1回は作業場を巡視し、異常がある場合には必要な措置を行わなければなりません。

安全衛生推進者・衛生推進者

常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、安全衛生推進者または衛生推進者を選任することが義務付けられています(労安衛法12条)。

なぜなら、安全管理者や衛生管理者の選任の義務がない、中小規模事業場の安全衛生水準の向上を図る必要があるからです。安全衛生推進者は、労働者の安全や健康確保等にかかわる業務を担当します。安全衛生推進者が業務を行う業種対象は以下のようになり、安全衛生推進者が選任する事業場以外は、衛生推進者を選任し、衛生に係る業務を担当してもらいます。

業種 推進者
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 安全衛生推進者
上記以外の事業場 衛生推進者

安全衛生推進者等の資格要件

安全衛生推進者等には、以下の資格や経歴等を有する者を選任しなければなりません。

  • ・大学、高等専門学校を卒業し、1年以上安全衛生の実務に従事している
  • ・高等学校、中等教育学校を卒業し、3年以上安全衛生の実務に従事している
  • ・安全衛生の実務経験が5年以上
  • ・労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等の資格を有する
  • ・都道府県労働局長の登録を受けたものが行う講習を修了している

安全衛生推進者等の職務内容

安全衛生推進者、衛生推進者の具体的な職務内容は、以下のようになります。

〈安全衛生推進者〉

  • ・労働者の危険、または健康障害を防止するための措置
  • ・労働者の安全、または衛生のための教育
  • ・健康診断の実施、その他の健康の保持増進のための措置
  • ・労働災害の原因の調査及び再発防止対策

〈衛生推進者〉

  • ・衛生に係る業務に限る

産業医

会社における安全衛生管理体制のなかで、産業医は医学的専門家として労働者の健康管理等に従事させるため、一定の人数の労働者がいる事業場では選任する義務があります。

産業医についての詳細は、以下のページをご覧ください。

企業における産業医の選任義務について

安全委員会・衛生委員会の設置義務

労働安全衛生法では、一定の基準に該当する事業場では安全委員会、衛生委員会(あるいは両委員会を統合した安全衛生委員会)の設置を義務付けています(労安衛法17条、18条、19条)。

委員会を設置する最大の目的は、労働災害を防止することです。ただし、労働災害を防止するためには、使用者だけではなく、労働者からの協力も必要となるため、両者が協力して取り組むことが大切です。また、委員会は月1回以上開催し、労働災害や労働者の健康障害を防止するための対策や重要事項等の審議を行い、決議内容を労働者へ周知させる必要があります。

したがって、設置義務があるのにもかかわらず、委員会を設置しなかった場合は、法令違反として50万以下の罰金が科せられます(労安衛法120条柱書1号)。

安全委員会

使用者は政令で定められている業種や規模の事業場ごとに、安全委員会を設置する必要があります(労安衛法17条)。安全委員会は、基本的に労働者の安全に関する審議を行い、労働災害の防止や再発防止等の対策を図ることを目的としています。

衛生委員会

衛生委員会は、50人以上の労働者がいるすべての事業場で、業種にかかわらず設置が義務付けられています。この委員会は、労働者の健康障害を防止し、健康の保持増進を図るための対策を目的として設置されます。また、衛生に関する労働災害の防止や、発生した場合の原因追及や再発防止策を講じることも含みます(労安衛法18条)。

安全衛生委員会

安全委員会及び衛生委員会を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができると定められています(労安衛法19条)。

安全委員会・衛生委員会を設置する基準

安全委員会、衛生委員会それぞれの設置基準については、以下のとおりです。

〈安全委員会〉

  • ・労働者が50人以上で下図に該当する業種
  • ・労働者が100人以上で下図に該当する業種

〈衛生委員会〉

  • ・業種を問わず、常時労働者が50人以上在籍している場合

以下が、業種の詳しい内容となります。

衛生委員会 安全委員会
従業員50人以上
全業種
従業員50人以上
①林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業
従業員100人以上
②製造業のうち①以外の業種、運送業のうち①以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業

委員会の構成と人数

安全委員会、衛星委員会における構成をそれぞれ説明します。

〈安全委員会〉
安全委員会の構成員は、使用者が指名します。

●総括安全衛生管理者またはそれ以外の者で、その事業場において事業の実施を統括管理するもの、もしくはこれに準ずる者 … 1名(議長)

●安全管理者 … 1名以上

●当該事業場の労働者で、安全に関して経験がある者 … 1名以上

〈衛生委員会〉

●総括安全衛生管理者またはそれ以外の者で、その事業場において事業の実施を統括管理するもの、もしくはこれに準ずる者 … 1名(議長)

●衛生管理者 … 1名以上

●産業医 … 1名以上

●当該事業場の労働者で衛生に関し経験がある者 … 1名以上

どちらの委員会も、議長以外の構成員の半数は、その事業場の過半数労働組合または労働者の過半数を代表する者の推薦によって指名しなければなりません。

委員会で調査・審議する内容

安全委員会、衛生委員会はどのような調査・審議をしているのでしょうか。それぞれの内容を説明します。

〈安全委員会〉

  • ・労働者の危険を防止するための基本となるべき対策について
  • ・労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものについて
  • ・安全に関する規程の作成について
  • ・危険性または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、安全に係るものについて
  • ・安全に関する計画の作成、実施、評価及び改善について
  • ・安全教育の実施計画の作成について

〈衛生委員会〉

  • ・労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策について
  • ・労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること
  • ・労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関する重要事項
  • ・衛生に関する規程の作成について
  • ・衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善について
  • ・衛生教育の実施計画の作成について
  • ・定期健康診断等の結果に対する対策の樹立について
  • ・長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立について
  • ・労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立について

どちらの内容も、重要なものに係る記録を作成し、3年間保管をします。

危険防止・有害業務に関する規制

開催頻度・周知・議事録について

安全委員会、衛生委員会の共通ルールが法律上で定められています(労安衛則23条)。

  • ・開催頻度…月1回以上
  • ・周知…労働者に議事の大まかな流れを周知すること
  • ・議事録…3年間保存すること

開催頻度については、災害時や緊急時には臨時で開催が求められます。

周知に関しては、委員会後、遅滞なく労働者へ周知する必要があります。常時、作業場の見やすい場所に提示するまたは書面を労働者に交付するといった方法で周知をしなければなりません。

労働法務記事検索

労働分野のコラム・ニューズレター・基礎知識について、こちらから検索することができます