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変形労働時間制の導入手順や注意点

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 家永 勲

監修弁護士 家永 勲弁護士法人ALG&Associates 執行役員

業務の性質上、時期によって繁忙期・閑散期がはっきりと分かれている事業場では、変形労働時間制の導入によって、労使ともにプラスの効果がもたらされることが期待できます。もっとも、適切な手順を経て導入しなければその効力は発揮されず、適正な運用がなされなければ労働者に過重労働を強いたり、賃金の未払いが発生したりするおそれがあります。制度を有効に活用するためにも、変形労働時間制の導入に際し、使用者が把握しておくべき導入手順及び注意点について、理解を深めていきましょう。

変形労働時間制の導入にあたり

  • ・1ヶ月単位の変形労働時間制
  • ・1年単位の変形労働時間制
  • ・1週間単位の変形労働時間制
  • ・フレックスタイム制

変形労働時間制度の導入の際には、上記の4つの中から自社に適したものを選択することになります。本ページでは、これらの制度導入の手順や、主に1ヶ月単位・1年単位の変形労働時間制に関する注意点を説明していきます。

なお、4つのうちのどの制度を採用するか検討するにあたっては、以下のページで各制度の概要・要件を説明していますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。また、リンク先には、変形労働時間制を導入するメリット・デメリット等も掲載していますので、導入の適否について検討する際の参考にしていただければと思います。

フレックスタイム制の仕組み
変形労働時間制の仕組み

1ヶ月単位の変形労働時間制 1年単位の変形労働時間制 1週間単位の変形労働時間制
労使協定の締結
※就業規則への定めでも可
労使協定の届出
特定の事業・規模のみ
労働者数30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店
休日の付与 週1日または4週4日の休日 週1日
※連続労働日数の上限は原則6日
週1日または4週4日の休日
労働時間の上限 1日10時間
1週52時間
1日10時間
1週平均の労働時間 40時間
※特例措置対象事業は44時間
40時間 40時間
あらかじめ時間・日を明記

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変形労働時間制導入の手順

自社の労働者の勤務実績を調査

まずは、制度導入の前に、自社の労働者の勤務実績を調査し、現状を把握するところから始めます。この調査は、変形労働時間制の採否の判断のために、また、変形労働時間制を導入する場合に、繁閑の時期等を見極め、対象期間や所定労働時間の割り当てを適切に設定するために、必要となります。

対象者や労働時間等を決定する

変形労働時間制の導入の際には、<就業規則の見直し><労使協定の締結>が必要になります。そのため、それらに定める内容を、勤務実績の調査結果に基づき決めておかなければなりません。具体的には、制度の対象となる者、対象期間、特定期間、当該期間内における労働日と各日の労働時間、労使協定の有効期間等を検討します。

就業規則の見直し

変形労働時間制の導入は、労働者のワークスタイルに大きな影響を及ぼします。例えば、就業規則の絶対的必要記載事項でもある始業・終業時間等の記載にかかわることから、就業規則の作成・届出義務が課されている事情場においては、本制度の導入時、就業規則の整備等が基本的には必要となります。

労使協定の締結

労働基準法には、変形労働時間制の導入時に労使協定の締結が基本的には必要である旨が定められています(1ヶ月単位の変形労働時間制の場合には、労使協定ではなく就業規則等に記載することでも可能です)。したがって、<対象者や労働時間等を決定する>で決めた内容等について、使用者と労働者代表との合意のうえで協定を結びます。

労働基準監督署へ届出

<就業規則の見直し><労使協定の締結>を経た就業規則及び労使協定は、所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。なお、労使協定には有効期間があるため、制度の運用を継続する場合には、期間を徒過する前に改めて届け出なければなりません

また、残業や休日出勤が生じることが想定できる場合には、36協定も同時に届け出るのが一般的です。

※フレックスタイム制において清算期間が1ヶ月以内の場合、労使協定の作成は必要ですが、届出は不要です。

労働者への周知

実際に変形労働時間制を運用するためには、労働者に対して本制度の導入、有用性の説明を行うとともに、届出を終えた就業規則や労使協定の内容等をきちんと周知し、労働者に理解してもらわなければなりません。労働時間、賃金等、労働者にとって重要な労働条件にかかわることですから、十分な理解が得られるよう、周知の方法にも配慮すべきでしょう。

制度の適正な運用

変形労働時間制の導入後は、就業規則や労使協定に定めた規定に則った運用がなされなければなりません。例えば、各日で所定労働時間が異なると、労働時間と残業時間との境目が曖昧になり、適正な残業代(割増賃金)の支払いができていないといったトラブルが生じるおそれがあります。担当部署の負担が懸念されるものの、勤怠管理を徹底し、残業代の計算方法を明瞭化する等、特に制度導入当初は法令違反とならないよう慎重な確認作業が求められるでしょう。

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1年単位の変形労働時間制の導入の注意点

変形労働時間制の導入により、基本的には労働時間が週平均で40時間を超過しなければ、繁閑に応じた労働日数・労働時間の設定をすることができます。ただし、無制限に設定できるわけではありません。以下、1年単位の変形労働時間制を運用するにあたって注意すべき一定の“限度”を確認していきましょう。

対象期間における労働日数の限度

本制度の対象期間が3ヶ月を超え、1年未満である場合、当該期間には労働日数の制限がかかります。

まず、1年間の中で労働日数として定めることができるのは《280日》までとなっていますので、3ヶ月以上、1年未満の労働日数の限度は、原則としてこのように算出することができます(端数は切り捨てとなります)。

280×(対象期間の暦日数÷365)

例えば、対象期間が3月1日から6月30日の4ヶ月間(122日間)だとすると、当該期間の労働日数の限度は93日(※端数切り捨て)ということになります。

対象期間における1日及び1週間の労働時間の限度

各日・週の労働時間に過度な偏りが生じ、労働者に長時間労働を強いることを防止するため、対象期間の長短にかかわらず、原則として1日あたり《10時間》、1週間あたり《52時間》が労働時間の上限とされています(隔日勤務のタクシー運転の業務に従事する労働者のうち、一定のものについては、1日の労働時間の限度は《16時間》となります)。

また、本制度の対象期間が3ヶ月を超える場合、基本的には、労働時間が48時間を超過する週は連続で3週以内とすること、対象期間を3ヶ月ごとに分けて労働時間が48時間を超過する週は初日から数えて3回以内とすること、という制限があります(積雪地域において、一定の業務に従事する者については、制限はありません)。

対象期間及び特定期間における連続して労働させる日数の限度

本制度の対象期間において連続して労働できる日数は6日までです。なお、労使協定において特定期間(対象期間中、特に忙しいといえる期間)を指定していれば、当該期間は1週間に1日の休日が確保できる日数を限度としています。つまり、1週目の初日と2週目の最終日に休日を設定すれば、最大12日の連続勤務が法的には可能ということになります。

1ヶ月単位の変形労働時間制の導入の注意点

1ヶ月単位の変形労働時間制では、本制度の対象期間における労働日・労働時間について、週平均が40時間を超過しないよう注意しながら、シフト表・カレンダー等を用いて、すべて具体的に設定しておかなければなりません。

この点、就業規則等に具体的な変更事由の記載があるといった場合を除き、特定した労働日・労働時間を使用者の裁量で自由に変更することは認められません。

満18歳未満の年少者へは原則禁止

原則として、満18歳未満の年少者を変形労働時間制の対象者とすることはできません。

ただし、一定条件を満たせば、4つの制度のうち1ヶ月単位の変形労働時間制・1年単位の変形労働時間制の適用が可能になります。適用条件についての詳しい説明は、以下のページに譲ります。

未成年・年少者の労働条件について

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この記事の監修

執行役員 弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 東京法律事務所執行役員 弁護士家永 勲 保有資格弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」、エルダー(いずれも労働調査会)、労政時報、LDノート等へ多数の論稿がある

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